執筆者
管理栄養士/分子栄養学カウンセラー
岡かな
大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。
オリーブオイルとテストステロンの関係とは?
「オリーブは健康に良い」と聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
実際に、オリーブオイルは男性の健康の要であるテストステロンにも良い影響をもたらします。
今回は、オリーブオイルとテストステロンの関係について解説していきましょう。
ポリフェノールがテストステロンを増やす可能性
オリーブオイルには、フェノール酸、オレウロペイン誘導体、リグナン、フラボノイドなどの形でポリフェノールが豊富に存在しています出典[1]。
中でもテストステロンを増やす作用が示されているのが「オレウロペイン」というポリフェノール。
オレウロペインは、オリーブの葉から抽出されるエキスに含まれており、オリーブオイルの苦味や辛みの原因となる成分です。
オレウロペインは、たんぱく質の合成に関連するホルモンの濃度を高めることでテストステロン値を上昇させることが確認されているんです。
実際に、オレウロペインを含む40%カゼイン食を与えられたラットは、オレウロペインを含まない40%カゼイン食のラットよりも、テストステロン濃度が上昇していたことがわかりました出典[2]。
また、この研究では、オレウロペインの投与量が多くなるほどラットの黄体形成ホルモンの分泌量が増加したこともわかっています。
黄体形成ホルモンはテストステロンの分泌を促すホルモン。
オレウロペインは、黄体形成ホルモンの分泌量を増やすことでテストステロン値を上昇させる効果があると言えるでしょう。
酸化しにくい油で活性酸素の発生を防ぐ
私たちが生きるためには呼吸や代謝をする必要がありますが、その際に必ず生まれてしまうのが活性酸素。
活性酸素が過剰に発生すると、酸化ストレスによりテストステロンの合成能力や性機能の低下に繋がることがわかっています出典[3]。
そこで酸化ストレスの減少に役立つのが、抗酸化物質。
オリーブオイルには抗酸化物質であるビタミンEやポリフェノールなどが豊富に含まれています。
とくに、オリーブオイルに含まれるポリフェノール化合物には複数の生理活性作用があることがわかっており、抗酸化、抗炎症、抗アレルギー、抗動脈硬化などの効果が期待できることが示されています出典[1]。
オリーブオイルに含まれるポリフェノールと言えば、さきほど解説したオレウロペインやヒドロキシチロソール、プロトカテク酸といった物質も豊富です。
これらのポリフェノールは血中のLDLコレステロールの酸化を抑えたり、体内の酸化ストレスを低減することがわかっています出典[4]。
実際に、オレウロペインとヒドロキシチロソールを豊富に含む抽出物を、抗酸化活性の低下した糖尿病ラットに4週間投与したところ、コレステロールのレベルが大幅に低下するとともに、抗酸化活性が回復したことがわかりました出典[5]。
オリーブオイルの摂取は、酸化ストレスから精巣を保護し、テストステロンの維持に貢献してくれるでしょう。
オリーブオイルの効果を高める3つのポイント
オリーブオイルがテストステロンの維持・増加に効果的なことは分かりましたが、どのようにして摂取すればよいのでしょうか。
ここからは、テストステロンの向上効果を最大化させるためのオリーブオイルの選び方や摂取量、食べ方を解説します。
エキストラバージンオリーブオイルがおすすめ
オリーブオイルには、製造方法により大きく2種類に分類されます。
- バージンオリーブオイル
- 精製オリーブオイル
バージンオリーブオイルは、粉砕や圧搾などの物理的な加工以外の化学的な処理を行わずに抽出されたもの。
一方、精製オリーブオイルは、バージンオリーブオイルを精製処理してオリーブ特有の香りや色を取り除いたものをさします。
精製オリーブオイルは、製造過程でビタミンやポリフェノールなどの低分子天然成分が取り除かれてしまいます。
よって、おすすめはバージンオリーブオイルです。
さらに、バージンオリーブオイルの中でもエキストラバージンオリーブオイルが一押しです。
じつはバージンオリーブオイルの中にも、エキストラバージンオリーブオイル、ファインバージンオリーブオイルなど様々な種類があります。
エキストラバージンオリーブオイルは収量が少ないため他の種類のオリーブオイルよりも高価ですが、ポリフェノールの含有量が最も高いことが示されているんです出典[1]。
オリーブオイルを購入する際は、表示名をしっかり確認して「エキストラバージンオリーブオイル」を選びましょう。
1日大さじ1~2杯をほかの油に置き換える
いくら健康に良いとは言え、「食べれば食べるほどテストステロンが増加する」といったうまい話はありません。
オリーブオイルは油なので高カロリー。
油の主成分である脂質は1gあたり約9kcalあり、糖質やたんぱく質と比較して倍以上のエネルギー量があります。
普段の食事に追加でオリーブオイルを摂取するだけでは、むしろ肥満のリスクになる可能性も否めません。
そこでおすすめは、1日大さじ1~2杯をほかの油に置き換えて摂取すること。
ほかの油に置き換えることで余分にカロリーを摂取することなく、オリーブオイルの健康効果を期待することができるでしょう。
ちなみに、肥満リスクの高い油脂と言えば、飽和脂肪酸を多く含むバターやトランス脂肪酸を含むマーガリンやショートニングなど。
実際に、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取量が多いほど体重も増えるという関係が、41,518人を対象としたアメリカでの大規模調査により判明しているのです出典[6]。
また、飽和脂肪酸を多く含む食事は精巣の形態を変化させ、精巣上皮の高さ、直径、細胞増殖を低下させることもわかっています。
バターやマーガリンの代わりにオリーブオイルを摂取することで、体重増加のリスクを減らし、精巣の健康やテストステロン維持にも役立つでしょう。
加熱調理には使用しない
「オリーブオイルは加熱しても大丈夫」と聞いたことはありませんか?
確かに、オリーブオイルに豊富なオレイン酸という脂肪酸は、加熱に強いため酸化しにくい特徴があります。
ところが、オリーブオイルを加熱するとビタミンEやポリフェノール類が減少するという結果も出ているんです出典[7]。
オリーブオイルを加熱し酸化安定性と抗酸化活性を調査した研究では、200°C以上になると酸化分解が顕著に起こり、300~365°Cで熱劣化が最大になることがわかりました出典[8]。
200℃以下であっても100℃を超えると緩やかに抗酸化活性が低下する出典[8]ため、オリーブオイルはなるべく生で摂取すると良いでしょう。
生での摂取が難しい場合であっても、温かいスープにかけたり、風味づけに炒め物の最後にかけたりする程度であれば問題ないでしょう。
ソテーや揚げ油に使うのは避けたほうが良いですね。
まとめ
オリーブオイルにはポリフェノールが豊富に含まれており、とくにオレウロペインというポリフェノールにはテストステロン値を上昇させる効果が示されています。
また、ポリフェノールの強い抗酸化作用により精巣を保護し、テストステロン値を維持することも期待できるでしょう。
オリーブオイルは、ポリフェノールの含有量が一番多いエキストラバージンオリーブオイルがおすすめ。
食べ過ぎると体重増加の可能性もあるため、1日大さじ1~2杯を他の油に置き換えて摂取してください。
多少の加熱は大丈夫ですが、100℃を超えると少しずつ抗酸化活性が失われます。
オリーブオイルはできるだけ低温で調理するか生で摂取すると良いでしょう。
出典
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