執筆者
管理栄養士/分子栄養学カウンセラー
岡かな
大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。
紅茶がテストステロンにもたらすメリット3つ
紅茶がテストステロンに効果があるとされる最大の理由は、紅茶の摂取が活性酸素の発生を抑えて精巣を保護し、テストステロンの合成能力を守るからなんです。
私たちが生きるためには呼吸や代謝をする必要がありますが、その際に必ず生まれてしまうのが活性酸素による酸化ストレス。
とくに精巣は酸化ストレスの影響を受けやすく、酸化ストレスによりテストステロンの合成能力や性機能の低下に繋がることがわかっています出典[1]。
紅茶は、様々な機序により活性酸素の発生を抑える働きがあり、結果的にテストステロンの維持向上に役立つというわけです。
では早速、紅茶がテストステロンにもたらすメリット3つを詳しく解説しましょう。
食後高血糖を改善する
紅茶には食後高血糖を改善する効果が確認されています。
紅茶に豊富なカフェインやカテキン、テアフラビンには血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きを増やす効果が確認されているんです出典[2]。
インスリンの働きが亢進すると血糖値が下がりやすくなるのは、想像がつくでしょう。
そもそも食後高血糖は、テストステロンにどのような影響を及ぼすのでしょうか?
じつは血糖の急上昇や急降下(血糖値スパイク)は活性酸素を発生させることがわかっているんです。
活性酸素が発生すると、酸化ストレスによりテストステロンの合成能力や性機能の低下に繋がるのでしたね。
実際に、19~74歳の74人の男性に対し、75gの経口ブドウ糖負荷試験を行いテストステロン濃度を測定した研究では、血糖値スパイクによりテストステロンの濃度が平均25%低下したことが明らかになりました出典[3]。
そこで、血糖値スパイクを予防するのにおすすめなのが紅茶。
2017年に発表された研究では、20~60歳の正常および糖尿病予備群の男女24人に対し、紅茶重合ポリフェノールを含むショ糖入りの紅茶飲料を摂取してもらい、その後の血糖値を測定した研究結果が発表されました。
その結果、プラセボと比較して紅茶飲料を摂取した場合、正常及び糖尿病予備群のどちらのグループでも、血糖値の上昇度合いが有意に抑えられたことがわかりました出典[4]。
食後高血糖が心配な人や食後高血糖からテストステロンを保護したい人は、食事のお供に紅茶がおすすめです。
コレステロールを減らして酸化LDLの生成を抑える
紅茶には、高血糖だけでなく血中コレステロールを低下させる効果も確認されています。
実際の研究では、軽度高コレステロール血症の15人の男女に1日5杯の紅茶を摂取してもらったところ、カフェインを添加したプラセボと比較して、総コレステロールが6.5%、LDLコレステロールが11.1%減少したことが示されました出典[5]。
もちろん、血中コレステロールが正常化すると、テストステロンにもメリットになるんです。
血中LDLコレステロールが活性酸素の影響で酸化すると、酸化LDLとなり、精巣のライディッヒ細胞におけるテストステロン合成を阻害してしまいます出典[6]。
よって、紅茶の摂取によりコレステロール値が正常化すると、テストステロンの減少も防ぐことができますね。
さらに、カフェインには交感神経を刺激することで、脂肪の分解やエネルギー消費を増やす効果もあります。
よって、紅茶を飲むと体内の余分な脂肪を減らし、コレステロールの蓄積を抑える効果も期待できます。血中コレステロールの改善だけでなく予防にも効果的と言えそうですね。
LDLコレステロール値が気になる人にも、紅茶がおすすめです。
有害物質による活性酸素の生成を抑える
「内分泌かく乱物質」というワードを聞いたことがあるでしょうか?
内分泌かく乱物質とは、体内に取り込まれた場合にホルモンの正常な働きを乱す化学物質のことを言います。
環境省によると、内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質として、カドミウムや水銀、鉛、PCBなど60以上の物質があるとされています出典[7]。
私たちは、水や食品などからだけでなく、農薬、放射線、大気汚染などの影響により意図せず内分泌かく乱物質を体内に入れているのです。
そして、内分泌かく乱物質は、活性酸素の生成を刺激し酸化ストレスを誘発することで、ホルモン機能障害を引き起こす可能性が示されているんです出典[8]。
ところで、紅茶には酸化ストレスから精巣を保護する効果がありましたね。
紅茶の摂取によって、有害物質が誘発してしまう活性酸素の影響を減らすことができるんです。
実際に、カドミウム毒性により生じる精巣損傷を持つラットに対し、紅茶に豊富に含まれるテアフラビンを5日間投与したところ、精子損傷が軽減され、血清テストステロン濃度の上昇、精子の質やDNA損傷の改善が見られたのです出典[9]。
このように、紅茶の摂取は有害物質による活性酸素を抑えることで、精巣保護及びテストステロン維持に役立つでしょう。
効果的な紅茶の摂り方とは?
紅茶には、酸化ストレスを低減させることにより精巣保護やテストステロンの低下を防ぐ効果が期待できることがわかりました。
ここからは、テストステロン維持向上のための紅茶の摂り方やタイミング、注意点について解説しましょう。
コーヒーやエナジードリンクを飲んでいる方は量を調整
いくらテストステロンに効果的とは言え、紅茶の摂り過ぎは逆にテストステロンにマイナス働く可能性があります。
というのも、紅茶にはカフェインが含まれているからです。
じつは、カフェインの摂り過ぎはテストステロンを下げる可能性が示されています。
実際に、372人の成人男性を対象とした2013~2014年に行われた横断研究では、血中カフェイン濃度が高ければ高いほど、血清テストステロン値が低くなることが明らかになりました出典[10]。
カナダ保険省や米国食品医薬局の発表では、健康な成人の場合、マグカップ入りのコーヒーの摂取は1日3杯、カフェイン換算では400mg/日までであれば健康への悪影響は生じにくいとしています出典[11]。
コーヒー3杯に紅茶をプラスで飲むと、カフェインの摂り過ぎになるということですね。
コーヒーと並んでカフェインが多量に含まれている飲料と言えば、エナジードリンク。
典型的なエナジードリンク1缶には、約32~300mgのカフェインが含まれています出典[12]。
【各飲料のカフェイン濃度出典[12]】
食品名 | カフェイン濃度 |
コーヒー | 60mg/100mL |
エナジードリンク | 32~300mg/100mL |
玉露 | 160mg/100mL |
紅茶 | 30mg/100mL |
ウーロン茶 | 20mg/100mL |
エナジードリンクは、それぞれの製品のカフェイン濃度にもよりますが、2本以上を飲む習慣がある方は要注意。
紅茶を飲むのであれば、コーヒーやエナジードリンクの量を調整して減らすようにしたいですね。
食事中の摂取で効果倍増
紅茶を飲むタイミングは食事中がおすすめ。
血糖値やコレステロールが上昇しやすい食事中に紅茶を摂取することで、食後高血糖や血中コレステロールの増加を予防できるでしょう。
また、食事量が増えやすい外食時や夕食での摂取も良いですね。
食事に紅茶をプラスすることで華やかさや特別感を演出でき、より楽しく、ゆっくり食事ができるでしょう。
ゆっくり食べることで食後高血糖がさらに予防できますよ。
夜に飲む場合は水出しの紅茶がおすすめ
覚醒作用のあるカフェインを夜間に摂取すると、睡眠の質を下げて睡眠不足を生じる可能性があります。
睡眠不足はテストステロンを大きく減らすため、夜遅い時間帯の紅茶には注意が必要。
若い男性が5時間睡眠を1週間続けた研究では、血中テストステロンが10~15%減少したという報告もあります出典[13]。
カフェインによる不眠の影響を抑えるため、紅茶の飲み過ぎを避けるとともに、カフェインの少ない水出しでの紅茶づくりをおすすめします。
じつはカフェインは水に溶出しづらい特徴があります出典[14]。
できるだけカフェインを控えたいときや夜間には、水出し紅茶にしてみてくださいね。
まとめ
紅茶は、活性酸素の発生を抑えることで精巣を保護し、テストステロンの維持向上に役立ちます。
食後高血糖や酸化LDLコレステロールの増加、内分泌かく乱物質の影響により酸化ストレスが増加してしまいますが、紅茶が酸化ストレスを軽減することで精巣を保護します。
このようにいくつかのメリットがある紅茶ですが、飲みすぎるとカフェインの過剰摂取につながり、不眠の原因となるため危険です。
カフェインの摂取量が多いほどテストステロン値が低くなるため、摂り過ぎには注意しましょう。
具体的にはコーヒーを3杯以上、エナジードリンクを2杯以上摂取している人は要注意。
紅茶をプラスするときはコーヒーやエナジードリンクの量を減らすことを忘れないでください。
また、食事中の紅茶摂取で食後血糖値やコレステロールを予防できるでしょう。
夜間に紅茶を摂取するときは、水出しにしてカフェインを少なくする工夫をしてみてくださいね。
出典
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