

執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
精液量が少ないと不妊の原因になることも

妊活の成功率を高めるためには、男性の側でもコンディションを整えることが重要。男性が改善できる要素として、精液や精子の状態があります。
妊娠のためには精子の量が十分にあることや、運動性のある精子の割合や、正常な形態の精子の割合が高いことなどが注目されがち。しかし精液量については、あまり気にしていない方も多いかもしれませんね。
精子を女性の生殖器官に送り込み、卵子の受精を可能にするには、十分な量の精液が必要です出典[1]。射精量が極端に少ないと、含まれる精子の量も減るため、妊娠できる確率も下がってしまうでしょう。
精液や精子の質に関わるホルモンとして、男性ホルモンのテストステロンがあります。加齢にともなうテストステロンの減少では性腺機能低下症が見られ、精液量の減少をはじめ、精子の量や質の問題、射精遅延、勃起不全など、さまざまな問題が起こりやすいことがわかっているのです出典[2]。
低テストステロンが原因で精液量が少ない場合、精子の量や質にも改善が必要な可能性も。専門的な検査をせずに自身の目で見られる射精量は、生殖機能を見るバロメーターとしても役立つでしょう。
射精管の閉塞や精管の欠損など、物理的な問題で精液量が少ない場合もありますが、ホルモンバランスや生活習慣に課題がある場合には、暮らしを見直すことで射精量を増やせるかもしれません。まずは自身の生活習慣に見える問題を解決するところからはじめましょう。
精液量が多いのはこんな人!
精液量には個人差がありますが、1回あたり1.5mlより少ない場合には量が少ないとみなされることが多いようです出典[3]。精液量の少なさには、いくつかの理由があるかもしれません。
また、精液量が多い人にも、体質や生活習慣にいくつかの共通点があるものです。次に紹介する特徴をぜひチェックしてみましょう。
30~35歳

若い男性ほどテストステロンが高いため、精子や精液を作る機能も高いと考えられます。しかし精液量は若ければ若いほど多くなるというわけでもないようです。
2007年にイスラエルのベングリオン・ゲネフ大学の大学医療センターから発表された論文では、6022名もの男性の精液サンプルの検査結果が発表されました。その結果、最も精液量が多い年齢層は30~35歳で約3.51ml、最も精液量が低い男性は55歳以上で約2.21mlであることがわかったのです出典[4]。
ちなみに運動性のピークは25歳未満、総運動精子数のピークは30~35歳であり、どちらも最低値はやはり55歳以上の方でした。高齢になるほど精液量も精子の質も落ちる点は間違いないようです。
精液量や精子の量など、妊活に有利に働く可能性のある要素は30~35歳でピークを迎えることがわかります。裏を返せば、35歳を過ぎれば精液量も精子の量も落ちていくということ。
テストステロンのうち、性欲や性機能の増加のような活性を発揮する遊離テストステロンは、35~40歳を超えると年1~3%もの勢いで減少するとされています出典[5]。
35歳を過ぎると、やはり加齢とともに精液量も精子の量や質も落ちていくものです。女性の妊活は若いうちにとはよく言われますが、男性においても、若いうちの妊活が有利と言えそうですね。
BMIが25未満
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体が引き締まった、贅肉の少ない男性は、肥満の男性よりも精液量が多い傾向にあります。
肥満男性では精液量が減少することに加え、精子の量の減少、精子の運動率の低下なども見られやすいことがわかっています出典[6]。
過剰な脂肪組織は炎症を起こしやすく、精巣にダメージを与える活性酸素や、テストステロンを減らす酵素などの発生量を増やしてしまいます出典[7]。肥満によりテストステロンが減りやすくなることと、射精量が減ることとは決して無関係とは言えないでしょう。
射精量を増やしたい方の取り組みとして、減量は最もシンプルかつ分かりやすいものです。難しい取り組みではありますが、地道に取り組むことで体脂肪を落とせば、減少した精液量の回復をはじめ、精子の量や質の改善、勃起機能の向上など、さまざまな性機能へのよい効果が期待できるでしょう。
筋トレや有酸素運動の習慣がある
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筋トレや有酸素運動など、いわゆる「トレーニング」の習慣がある方も、精液量が多い傾向にあると言えるかもしれません。
年齢 25~40 歳の男性がウォーキングやランニング、HIITなどさまざまな運動をおこなうプログラムに24週間取り組んだところ、プログラムを最後まで完了した男性は精液量が平均で8.3%増加したとのデータが確認されています出典[8]。
適度な運動を習慣化することで、活性酸素による酸化ストレスを減らし、精巣および精子へのダメージを減らすように働いたことで、精液の量や質の改善につながったのではと考察されています。
実際、1日4000歩未満と歩行量の少ない男性では低テストステロンのリスクが高いことや出典[9]、筋肉自体がテストステロンを分泌する能力を持っていることなどが明らかになっています出典[10]。歩行習慣や筋トレ習慣はテストステロンの維持に役立つと言えそうですね。
運動といっても、本格的な器具を用いたり、1日何時間も取り組んだりする必要はありません。TVを見ながら腹筋やスクワットをおこなう習慣を付けたり、1日の歩数を昨日より1000歩多くしたりするだけでも出典[9]、性機能を高める効果は期待できます。
毎日無理なく続けられるものを、ぜひ今日から取り入れてみましょう。
ストレスを溜め込まない

ストレスが健康上よくないことは多くの人が知っていることでしょう。うつ病はもちろん、糖尿病や高血圧のような生活習慣病とストレスの関連も指摘されています。となれば、やはり性機能にもよくない影響があると考えるべきでしょう。
不妊治療クリニックを訪れた男性179名を対象に、ストレス評価と精液サンプルの調査をおこなったところ、ストレスの多い仕事に従事している方ほど、精液量と精子形成率に悪影響があることがわかりました出典[11]。
ストレスの多い環境で長期間過ごすことで、テストステロンが減少した例もいくつか確認されています出典[12]出典[13]。ストレスは射精量の減少をはじめ、性機能全般に悪い影響を与える可能性が高いと言えそうですね。
ストレスを溜めない生活を意識すれば、精液量を増やせるかもしれません。苛烈な仕事内容や人間関係を避けることはもちろん、リフレッシュの手段として趣味を楽しんだり、入浴や睡眠で疲れを十分に取ったりすることも重要となるでしょう。
3日以上禁欲している
1回あたりの精液量を物理的に増やす手段として最も簡単なものが、精液を「溜める」ことです。
射精後には新しい精液が作られ始めますが、すぐに十分な量を蓄えられるわけではありません。そのため次回の射精までの間隔を普段よりも空けて、精液を作るための猶予を十分に取れば、次の射精での精液量を増やせるでしょう。
射精してから4日間においては、禁欲日数を1日増やすごとに精液の量が11.9%増加するとのデータもあります出典[14]。世界保健機関(WHO)でも、精液の採集に際しては2~3日の禁欲が適切とも述べられているため、毎日射精している方は、2~3日の禁欲期間を設けるようにするとよいかもしれませんね。
睡眠時間が7時間台
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射精量を増やすための睡眠時間については「7時間台がベスト」という面白いデータが得られています。
睡眠不足により性機能の低下をはじめ、さまざまな健康への悪影響が出ることは容易に想像できるでしょう。実際、睡眠不足でテストステロンが大きく低下したり出典[15]、うつ病や生活習慣病などのリスクが高まったりすることが判明しています出典[16]。
しかし精液量に関しては、睡眠時間が長すぎる「眠りすぎ」の状態もよくないことがわかっているのです。
2016年に中国の重慶市第三軍医大学で発表された論文の内容を紹介しましょう。654名の男性の睡眠時間と精液サンプルを調べたところ、睡眠時間が6.5時間以下では、射精量が4.6%、総精子数が25.7%減少したとの結果が得られました。加えて睡眠時間が9.0時間を超えると、精液量が21.5%、総精子数が39.4%も減少することがわかったのです出典[17]。
さらに睡眠時間が9.0時間以上の男性が1年かけて睡眠時間を7.0~7.5時間に変更したところ、精液量や総精子数が増えたことも確認できています出典[17]。
1日に何時間の睡眠が適切かは個人差がありますが、精液量においては7時間台が適切のようです。睡眠不足の方や眠りすぎの方は、生活リズムを見直して睡眠時間を調整してみましょう。
お酒を飲まない

お酒は百害あって一利なし。少量の飲酒は血流の改善に役立つとも言われていますが、生殖機能に限定するならば断酒が一番と覚えておきましょう。
2023年にベトナムのフエ大学から発表された論文では、アルコール摂取が男性の生殖機能に与える影響を調べた、40件の研究の分析がおこなわれています。
分析の結果、1週間に7単位(純アルコール換算で140g)以上のアルコールを摂取する方は、アルコールを摂らない方よりも、射精1回あたりの精液量が減少する可能性が高いことがわかりました出典[18]。
また、1週間に7単位未満の摂取に留めている方では、アルコールをまったく摂らない方との間に、精子の量、濃度、運動率、正常形態率、テストステロンなどに有意は差は見られなかったとも報告されています。適量の飲酒であれば、精子の量や質、テストステロンは守られると考えられそうですね。
ただし精液に関しては、週に1単位(純アルコール換算で20g)のアルコール摂取でも、全く摂らない方と比較すると射精1回あたりの量が少ないと報告されています出典[18]。
精液量は、アルコール摂取の影響をとくに受けやすいようです。精液量を少しでも増やしたい場合には、思い切って断酒をする必要があるかもしれません。
禁煙している

タバコもまた、生殖機能を落とす分かりやすい因子です。
中国の健康な男性男性1,631名を対象とした調査では、喫煙歴が10年以上ある方は、タバコを全く吸わない方よりも、精液量や総精子数が少なく、喫煙年数×本数の値が高いほど、精液量や総精子数の減少が大きいことがわかっています出典[19]。
喫煙では勃起不全のリスクも高まるため出典[20]、性交渉をスムーズに進めるためにも、タバコは避けた方がよいと言えるでしょう。
タバコの害を避けるためには禁煙が一番。1日20本以上の喫煙を1年以上継続していた男性48名が3か月間禁煙したところ、禁煙前の精液サンプルと比較して、禁煙後では精液量が約16.9%、精子濃度が約22.7%、総精子数が約44.5%も改善していたのです出典[21]。
精液量を増やすだけでなく、精子の量や質、勃起をはじめとする性機能を改善するためにも禁煙は有効です。しかし長年タバコを吸い続けてきた場合では、自力での禁煙が難しくなることも。禁煙外来や禁煙薬などの力を借りれば、禁煙の成功率も高まるでしょう。
精液量を増やすためにできる3つのこと
精液量は年齢、体脂肪率、運動習慣、睡眠、お酒、タバコ、ストレスなど、さまざまな要因に影響されることがわかりました。精液量を減らす生活習慣を避けることで、自然に精液量を増やせる可能性があるでしょう。
ここからはより積極的に精液量を増やしたい方に向けて、意識したいことを3つ解説します。精液量を増やして妊活の成功率を高めたい方は、ぜひ参考にしてください。
亜鉛を積極的に摂る

男性の性機能に大きく関わるミネラルとして、亜鉛があります。亜鉛はテストステロンの形成にも精子の形成にも重要な栄養素。
亜鉛不足により、精子濃度や精子数が減少することはもちろん、精液量も減りやすくなることがわかっているのです。
1日10.4mgの亜鉛を摂取できている人と比較して、1日1.4mgにまで亜鉛摂取を制限した人では、血清テストステロンが約18.6%、精液量が約32.1%低下していたというデータが存在します出典[22]。
テストステロンの減少を防いで性機能を保つためにも、精液量を増やすためにも、亜鉛の補給は重要と言えそうですね。
亜鉛を効率的に摂りたい場合には、牡蠣がおすすめ。4粒ほどで1日に必要な亜鉛量をすべてカバーできる優秀な食品です。レバーや赤身の肉や魚、卵やカシューナッツなども摂取源として重宝するでしょう。
ただしすでに亜鉛を十分量摂れている方や、テストステロンが減少していない方では、亜鉛をさらに補給してもテストステロンや精子へのよい効果は見られないこともわかっており出典[23]出典[24]、精液量を増やす効果も期待できない可能性があります。
亜鉛補給による精液量の増加は、あくまで不足を補った場合に見られるものと考えた方がよさそうですね。
射精間隔は2~7日を目安に

射精量を増やして妊活の成功率を高めたい場合、射精間隔を2~7日の間で取ることをおすすめします。
毎日射精をおこなっていると、やはり精液を溜める時間が十分に取れないため、1回あたりの射精量も減りがち。少なくとも2日の禁欲期間を設ければ、射精量を増やしやすくなるでしょう。
禁欲後最初の4日間では、禁欲日数を1日延ばすごとに精液量が11.9%増加することを考えると出典[14]、2日より3日、3日より4日の方がより効果的かもしれませんね。
ただし、禁欲日数が増えるほど、精子の質が下がりやすくなる点に注意が必要です。2日間から18日間の禁欲をおこなったあとの精液サンプルを分析したところ、次のような傾向があることが確認できています出典[25]。
- 禁欲期間が長くなると増えるもの:精液量、精子濃度、精子総数
- 禁欲期間が長くなると減るもの:精子の運動率、精子の正常形態率
とくに7日後からは、精子の正常形態率が有意に低下したと報告されています出典[25]。長すぎる禁欲は妊活において悪影響であると言えるでしょう。
以上より、精液量を増やしつつ、精子の質を保てる日数として、2~7日が目安となるでしょう。精液量を重視したい場合にはこの範囲で禁欲日数を増やし、精子の質を優先したい場合には2~3日の禁欲に留めることをおすすめします。
バイオドーパの活用

精液量を増やすため、サプリメントを活用する方法もあります。
バイオドーパはムクナ豆の抽出物であり、ムクナ豆由来のL-DOPAを30%以上含むよう規格化された成分。L-DOPAは高い抗酸化能力を持つことに加え、ドーパミンの前段階(前駆体)として機能することでも知られています。
ドーパミンにはテストステロンの分泌を増やすほか、射精を促す効果も確認されています。射精をスムーズにおこなうためのホルモンの調子が整えば、射精量も増えやすくなるでしょう。
実際に不妊男性60名がそれぞれムクナ豆抽出物を3か月摂取したところ、それぞれのグループで次のように精液量と総精子数の増加が確認できています。
【ムクナ豆抽出物の摂取による精液量と総精子数の増加率出典[26]】
精液量 | 総精子数 | |
---|---|---|
精子に異常のないグループ | 35.7%UP | 124.9%UP |
乏精子症のグループ | 15.2%UP | 593.8%UP |
精子無力症のグループ | 2.1%UP | 49.9%UP |
このほか、すべてのグループで精子濃度や運動率にも改善が見られ、さらに精液における酸化ストレスのバロメーターとなる、過酸化脂質(マロンジアルデヒド)の量が減少したことも確認できています。
ドーパミンやテストステロンの増加、酸化ストレスの減少など、性機能全般によい影響をもたらすバイオドーパは、精液量を増やすためにうってつけのサプリメントと言えそうですね。
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妊活においては精子の量や質の改善が優先され、精液量への注目は後回しにされがち。しかし生活習慣の見直しや射精間隔のコントロールにより精液量を適切に増やせれば、妊活の成功率を高める効果も期待できるでしょう。
精液量を増やすためにできる取り組みは多数ありますが、どれから取り組めばよいかと悩む方もいるかもしれません。
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