男性ホルモンを減らす食べ物・飲み物とは?想像以上に危険
2025年7月15日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

男性ホルモンは食事の影響を受ける

男性ホルモンのテストステロンには、性欲や勃起力のような性機能のほか、身体面や精神面などへのさまざまな作用が確認されています。男性の性機能や健康などは、テストステロンにより支えられていると言っても過言ではないでしょう。

しかしテストステロンの体内量は、加齢のほか、睡眠や運動、ストレスなど、さまざまな要因により変化します。食事もまた、テストステロンの体内量を増減させる重要な要素のひとつ。乱れた食生活を続けていると、テストステロンも減りやすくなるでしょう。

食事によるテストステロンの減少を防ぐためには、まずは肥満の原因となる、食べ過ぎや飲みすぎを防ぐ必要があります。男性においてはBMIが上がるほどテストステロンが下がるという逆相関の関係が明らかになっているため出典[1]、テストステロンを増やしたい場合、肥満の改善はとくに重要となるでしょう。

増えすぎた体脂肪が炎症を起こすと、炎症性サイトカインやインスリン、レプチン、アロマターゼのような、テストステロンを分泌する脳からの指令を邪魔する物質の発生量が増えることが分かっています出典[2]出典[3]

テストステロンの減少を抑えるためには、体脂肪を増やしすぎないことが重要と言えそうですね。

また、テストステロンの分泌能力は、摂取カロリーに加え、摂取した栄養素にも影響を受けます。ビタミンやミネラルが不足していたり、有害物質を取り入れたりすると、テストステロンはさらに減りやすくなるでしょう。

テストステロンは35~40歳以降から大きく減少が見られるホルモン出典[4]ただでさえ中年以降は減りやすくなるテストステロンを、余計に減らしてしまうことがないよう、食事の量や内容を工夫してみましょう

男性ホルモンを減らすリスクのある食べ物・飲み物7選

テストステロンを減らさないためには、カロリーの摂りすぎ防止や、ミネラルの十分な摂取などが重要です。加えてテストステロンを減らしやすい食品に注意することで、テストステロンの体内量を維持する効果が期待できるでしょう。

ここからはテストステロンのために避けた方がよい食べ物や飲み物を紹介するとともに、具体的なリスクや食品との正しい付き合い方について解説します。

 

甘いお菓子や清涼飲料水

まず注意したいのが甘いお菓子や清涼飲料水。間食としてお菓子やジュースを摂りすぎている場合には、当然ながら量を調整する必要があるでしょう。

加えてお菓子やジュースのような糖類の多い食品は、血糖値を急激に上昇させるという問題があります。血糖値の急上昇では「肥満のリスクを高める」ことと「酸化ストレスを増やす」ことの2点が問題となります。

まず肥満のリスクについて。血糖値が急激に上昇すると、血糖値を下げるためのホルモン、インスリンが大量に分泌され、血中の余った糖分を脂肪へ蓄えるよう働きかけます。血糖値が急激に上がるほど、インスリンの分泌量も増えるため、体脂肪も増えやすくなってしまうでしょう。

ダイエットにおいて糖質制限食が推奨されることがありますが、これは血糖値の急上昇を防ぎ、インスリンの分泌量を増やさないことを狙いにしているのです。

また、血糖値の急上昇では活性酸素が大量に発生し出典[5]テストステロンの分泌場所である精巣に大きなダメージを与える可能性も出典[6]

アメリカの20~39歳の男性を対象とした調査では、砂糖入り飲料の摂取量が増えるほど、テストステロンの減少リスクが高まったとの報告も確認できています出典[7]

お菓子やジュースの摂取を減らし、体脂肪の増加や精巣へのダメージを防ぎましょう。

 

丼や麺類の大盛注文やセット注文

甘いものは血糖値を急激に上げることは想像しやすいでしょう。しかし甘くない糖質食品、具体的にはご飯や麺類などの食べ過ぎにも注意すべきです。

男性によくありがちなのが、外食での糖質の摂りすぎです。牛丼やうどんでは必ず大盛を頼むという方や、中華料理のラーメンとチャーハンのセット注文を好む方、ライスやパンの無料おかわりを利用する方などは要注意。これらの穀類でお腹いっぱいになろうとすると、糖質の摂りすぎで血糖値が急激に上がってしまうのです。

穀類には糖の吸収を抑える食物繊維が含まれているため、血糖値の上がり方は甘いお菓子やジュースよりも緩やかです出典[8]。しかし主食の摂取量はお菓子やジュースの量よりも多いため、糖質量も多くなりやすく、血糖値の上昇幅は間食時よりも大きくなりやすいため注意すべきでしょう。

男性では、1食あたりの炭水化物量をすべてお米で摂る場合には、300g程度が必要とされています出典[8]しかし実際の食事では野菜やイモ類、調味料などからも糖質を摂ることになるため、主食のご飯は1食200g程度にしておきましょう。うどんやそうめん、中華麺の場合は250~300gが目安となります。

物足りないと感じる場合には、主食以外の副菜で食事をボリュームアップさせましょう。スープのような液体料理や、サラダのような野菜料理は、低カロリーでありながらお腹に溜まりやすいため、ストレスなくカロリーの摂りすぎや血糖値の急上昇を防げます。

 

ファーストフードや超加工食品

テストステロンを減らす食品として、高糖質かつ高脂質のファーストフードや、カップ麺や菓子パン、スナック菓子のような超加工食品にも注意が必要です。

ファーストフードや超加工食品の大きな問題として、糖質の摂りすぎにより血糖値が急上昇することに加え、「ミネラルやポリフェノールを摂れない」ことと「食べ過ぎやすい」ことが挙げられるでしょう。

ファーストフードやカップ麺で食事を済ませていると、魚や野菜といった生鮮食品を摂る機会をほとんど得られません。その結果、テストステロンの分泌に関わるビタミンやミネラル、抗酸化物質として精巣を保護するためのポリフェノールなどが不足しやすくなるのです。

とくに亜鉛、ビタミンD、マグネシウムのような栄養素や、ポリフェノールの摂取不足は、テストステロンの分泌を促す脳からの指令効率を落とし、テストステロンを減らしやすくすることが分かっています出典[9]

また、ファーストフードや超加工食品には高塩分なものが多い点にも注意が必要。高脂肪食品でかつ塩分濃度が高い場合、満腹感を得づらくなり、エネルギー摂取量が増えやすくなるのです出典[10]

栄養素の不足と食べ過ぎによる肥満、2つのリスクを抑えるため、これらの食品はなるべく避けるべきでしょう。

おすすめは、主食、主菜、副菜が揃った定食型の食事です。スーパーで総菜を購入するときは、肉や魚を用いた主菜と、野菜を用いた副菜の両方を選ぶよう心がけましょう。定食を注文できる外食を利用すればよりお手軽です。

 

プラスチック容器入りの弁当や総菜

自炊の習慣がない方では、スーパーやコンビニなどで購入した弁当を食べることが習慣化している場合もあるでしょう。しかし弁当の加熱においては注意が必要

電子レンジの調理に対応していない容器で加熱したり、対応しているものでも指定の時間やワット数を上回って加熱したりした場合には、容器の成分が溶け出し、弁当の中身を汚染する可能性があるのです。

テストステロンや男性の生殖機能において注意したいのが、プラスチック容器から流出するフタル酸エステル私たちのホルモンの利用可能性に影響を与える可能性があることが指摘されています出典[11]

実際に、不妊治療クリニックに通う男性を調査したところ、尿中のフタル酸エステルの濃度が高いほど、血清テストステロン濃度が低かったという逆相関の関係が確認できています出典[12]出典[13]

尿中のフタル酸エステルの濃度が高い方では、精子の運動性や正常形態率の低下も確認できています出典[12]。不妊治療を目的にテストステロンを増やしたいと考えている方は、とくにプラスチック容器に入れられた食事に注意する必要がありそうですね。

 

乳製品

生クリームやバター、チーズなど、乳製品には高脂肪のものが多いため、食べ過ぎは禁物です。肥満のリスクを下げるためにも、クリーミーな洋菓子や洋風の煮込み料理などの摂取には慎重になった方がよいでしょう。

加えて、乳製品には女性ホルモンのエストロゲンが含まれており、体内のテストステロンを減らすように働く可能性があることが指摘されています。

たとえば20~35歳の男性11名が牛乳1Lを飲んだところ、女性ホルモンの増加とともに、30分後に血中テストステロン値が5.14ng/mlから3.46ng/mlへ、さらに1時間後には3.25ng/mlへ減少したとのデータが得られました出典[14]

また、男性7名、女性5名、児童6名が牛乳600mLを飲んだケースでも、血清テストステロンの減少が確認できています出典[15]

一方、牛乳に含まれるエストロゲンはごく少量で、テストステロンに影響を及ぼさないとする意見もあります出典[16]

動物由来のエストロゲンの含有量はバターが最多で、生クリームも多めです。ヨーグルトや牛乳は比較的少なめであるため出典[17]。牛乳やヨーグルトを完全に断つ必要はありませんが、水分補給の感覚で1日に1L飲むような極端な飲み方は避けましょう。

 

大豆製品

大豆は良質なたんぱく質や脂質、食物繊維などを豊富に摂取できる優秀な食品であり、サポニンやイソフラボンなど、特有の成分を含むことでも知られています。健康志向の方は納豆や豆腐、豆乳などを積極的に摂っているかもしれませんが、テストステロンの減少に注意したい場合には、これらの摂りすぎを避けた方がよいかもしれません。

大豆製品に豊富なイソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンに似た構造を持つポリフェノール。女性ホルモンの機能をサポートするように働き、エストロゲン自体を増やす効果はないとされていますが、男性の大量摂取によりテストステロンに影響を生じる場合があるとの報告が存在します。

テストステロンとイソフラボンの関係について調査した論文では、イソフラボンを1日100mg以上摂取した8件の研究のうち、1日120mgおよび141mgを摂取した2件でテストステロンが減少していました出典[18]出典[19]出典[20]

大豆製品によるテストステロンの減少リスクを抑えるための目安量として、論文では1日に75mgまでとの数値が示されています出典[17]食品中の植物エストロゲンに関する調査研究による、食品100gあたりのイソフラボン含有量を参考に、1食分あたりの量を計算すると次の表のようになります出典[21]

【主な大豆製品とイソフラボンの含有量(概算)】

食品

イソフラボン含有量の目安

豆乳(200ml)

50mg

豆腐半丁(175g)

35mg

煮大豆(50g)

35mg

納豆1パック(40g)

30mg

きな粉(10g)

25mg

味噌(20g)

10mg

1日に75mgを超えないよう、大豆製品の組み合わせや量を調整しましょう。

 

アルコール飲料

アルコール飲料の飲みすぎは、テストステロンを大きく減らすことが分かっています。飲み会や宅飲みなどでお酒を飲む機会が多い方や、一度に大量のお酒を飲む癖がある方は、これを機会に飲み方を改めた方がよいでしょう。

アルコール飲料の大量摂取では、主に次のような影響が生じます。

  • 体内の抗酸化活性を下げて精巣へのダメージを増やす出典[22]
  • アロマターゼの分泌量が増える出典[23]
  • テストステロンの分泌を指示するホルモンの生成をアルコールが阻害する出典[24]

飲みすぎにより、テストステロンの減少リスクが高まることが分かるでしょう。

アルコールの影響を避けるためには断酒が一番ですが、飲みの付き合いや嗜好によりお酒を完全にやめることが難しい場合もあるでしょう。性ホルモンへの影響が生じにくい摂取量として、論文では週あたり純アルコール換算で140g未満、1日に20g未満に抑えるとよいと示されています出典[24]

【主なアルコール飲料の1日あたりの摂取量目安】

酒類

アルコール度数

20gの目安量

ビール

5%

500ml(ロング缶1本)

ワイン

13%

200ml(グラス1杯と少々)

日本酒

15%

170ml(1合弱)

焼酎

25%

100ml

ウイスキー

40%

60ml

肥満のリスクを減らすため、糖質を含まない焼酎やウイスキーを選んだり、おつまみを低糖質かつ低カロリーなものへ置き換えたりする方法もおすすめです。量や種類を調節し、テストステロンが減らない範囲でお酒を楽しみましょう。

 

食生活を整えてテストステロンの減少を食い止めよう

男性ホルモンのテストステロンは加齢のほか、生活習慣の乱れによっても減少しますテストステロンの体内量を左右する要素として、食生活はとくに重要食べ過ぎを防いだり、テストステロンの分泌能力に影響を及ぼす食品を避けたりすることで、男性ホルモンの減少を防ぎやすくなるでしょう。

今回紹介した食品は、大きく3種類に大別できます。

  • なるべく避けたい食品:甘いお菓子、ジュース、ファーストフード、超加工食品、お酒
  • 量を調節したい食品:ご飯や麺類などの穀類、牛乳、ヨーグルト、大豆製品
  • 扱いに注意したい食品:プラスチック容器入りの弁当や総菜

穀類や乳製品、大豆製品は適量であれば体調管理や健康維持に役立つ食品です。摂りすぎに注意すれば、毎日食べても問題ありません。一方で、なるべく避けたい食品は減らすに越したことはないものです。多めに食べている方は、まずこれらの食品を控えることをおすすめします。

食生活のケアを継続して、テストステロンの減りにくい体を目指しましょう。

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