監修者
上級睡眠健康指導士 /NR・サプリメントアドバイザー
関川裕大
睡眠と運動と栄養の3つ面から皆様の健康的なライフスタイルをサポートします。睡眠と運動は特に男性のQoLにおいて非常に重要な役割を果たします。睡眠が不足すると筋肉が付きにくく太りやすくなりますし、運動が十分でない男性は睡眠の質も低下し易いと言われております。そして栄養が不足すると運動効率も睡眠の質も悪化してしまいます。医療に頼らない心と体の健康促進を目指します。
執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
睡眠は心身の回復に必要不可欠!
疲れた時はとにかく睡眠が一番ですよね。睡眠は心身の回復に必要不可欠であり、役割は以下のように多岐にわたります。
- 脳を休ませる
- 記憶を整理して定着させる
- 体のメンテナンスをする
- 自律神経やホルモンバランスを整える
- 免疫力を上げる
- 抵抗力を高める
慢性的な睡眠不足が続くと、2、3日睡眠時間を多くとっても回復しなくなってしまいます。疲れをためないために日々の睡眠をしっかりとりましょう。
睡眠不足が引き起こす3つの疲労
睡眠不足によって引き起こされる3つの疲労について解説します。
脳疲労
睡眠不足の時、脳は酔っ払っている時と同じような状態となり、集中力や判断力、記憶力、気分など、ほぼすべての脳機能が低下してしまいます。
睡眠時間が2時間短くなるだけでビール2、3本飲んだ時と同じくらいの眠気が生じるとも言われています出典[1]。
特に眠りが深くなった時に、脳内のゴミが処理されるため、脳の疲労を解消するためには睡眠時間の確保とともに睡眠の質を上げることが大切です。
身体性疲労
睡眠不足は身体を疲労させ、また損傷した細胞や組織の回復を妨げます。
睡眠の質が低いと、体内で炎症が生じ、正常なホルモンバランスを保つことができなくなります。例えば筋肉の合成や回復において重要な役割を果たすテストステロンや成長ホルモンが低下し、筋肉痛からの回復が遅れます。また逆に筋肉を分解するコルチゾールの上昇に繋がります出典[2]。
その他、寝不足ではケガのリスクも高まります。睡眠を十分にとることでパフォーマンスが向上することは間違いありません。身体を動かす機会が多い日尾はしっかりと睡眠をとって身体を回復させましょう。
精神的疲労
日本でメンタル関連の疾患は年々増加傾向にあります。中でもうつ病などの気分の障害が最も多いのです。これらの精神的な疾患は睡眠状態と密接に関係しています。
不眠症のグループと不眠症ではないグループとを比較した研究では、うつ病を発症するリスクが約2倍あることがわかっています。さらに睡眠の問題はうつ病の主要な症状である反面、うつ病発症やメンタル不調を予測する要因になりえることを示唆しています。
また昨今では睡眠障害を持たない人でも、睡眠の量や質がメンタルヘルスに影響を及ぼすことがわかっています。実際に睡眠時間が6時間以下または8時間以上の場合、6時間から8時間の睡眠の場合と比較して抑うつ傾向が強くなる傾向がみられたとの報告があります出典[3]。
健康な人でも睡眠不足で精神的な不調につながるので、睡眠の問題は早期に対応してメンタル疾患を予防をしましょう。
疲労回復のために睡眠で気を付けるべきこと
最後に適切にリカバリーするために睡眠で重要なことについてご紹介します。
7時間の睡眠の確保
心と身体を十分に休めるためにはどのくらいの睡眠時間が必要でしょうか?睡眠時間の不足はもちろんですが、寝すぎることも健康に悪影響を及ぼします。体内時計がずれることで睡眠の質が落ちてしまいます。
睡眠が10時間を超えるとがんや糖尿病のリスクが上がるとの研究報告も。このほかに肥満の増大、脳卒中の増加、メンタルの悪化、慢性痛の増加も示唆されています出典[4]。
6時間から8時間が最も早死にのリスクを減らすといわれています。忙しい毎日やストレスなどで睡眠の悩みをかかえているひとも、これからご紹介する方法をいかして7時間の睡眠を確保してください。
スマホの利用を減らす
毎日の生活に欠かせないスマートフォンですが、使いすぎで依存状態になると脳の情報処理が追い付かなくなり脳疲労の状態に。前頭葉の血流が減り、判断力や意欲が低下してしまいます。
コロナ渦の学生を対象とした調査で「問題があるスマートフォン使用(PSU)」と、睡眠の質および日中疲労との関係について調査した報告があります。PSU(Problematic smartphone use )とはスマートフォンに費やす時間をコントロールできず、日常生活に長期的な悪影響を及ぼすことです。この調査の結果PSUは、睡眠障害および日中の疲労との関連が認められました出典[5]。
さらにスマホなどの画面から発するブルーライトの強い光は、睡眠ホルモンであるメラトニンを減少させます。そのため睡眠の質が低下して疲労が回復せず加速させることに。特に就寝前のスマホ使用は、入眠の妨げになるため避けましょう。
マインドフルネス瞑想を実施する
マインドフルネスとは今この瞬間に集中している状態のことを指します。よく瞑想や禅、ヨガなどが挙げられますが、これらは呼吸や筋肉の動きに集中することで精神を落ち着かせています。そしてうつ病や不安障害の治療法やストレスを和らげる方法として世界的に研究が進められており、睡眠への良い効果も期待されています。
脳が無意識に不安や後悔などをくり返し考えすぎてしまうことでストレスを感じているとき、マインドフルネスを行うことで脳活動をリセットしてリラックスすることができます。
実際のがん生存者がヨガを実践した研究で、睡眠の質が改善したとの報告があります出典[6]。またストレスの多い起業家を対象とした実験で、睡眠とマインドフルネスエクササイズがどのような効果をもたらすかを検証した結果、疲労回復への効果が示されました出典[7]。
悩みが頭から離れないなど負の思考サイクルから抜け出せず眠れないときは、マインドフルネス瞑想を試してみてください。
週末に寝だめもアリ?
寝だめは身体によくない、という話を聞いたことがある人は少なくないのではないでしょうか。ただ、考え方によっては寝だめもアリです。
30名の男女を対象に6時間以下の睡眠を6日間続けた後、3日連続で10時間以上寝だめしてもらった研究では、寝だめすることで体内の炎症物質やコルチゾールが減少し、疲労感が低下し、眠気が解消されました出典[8]。
ただし上記の研究では脳の認知機能だけは元に戻りませんでした。1日6時間以下の睡眠が続くと脳機能が低下し、数日多く寝たくらいではもどらないのです。
寝だめで身体の疲れは取れても脳疲労は回復しないので、平日のスケジュールを見直して睡眠時間を確保しましょう。
暑い夜はエアコンを点ける
日本の夏は高温多湿で寝苦しく、寝不足になりがちですよね。
入眠には深部体温が下がることが重要です。深部体温とは脳や臓器などの体の内部の温度で、もちろん外気温や室温に影響を受けます。体温が十分下がり切らないと寝付くことができず、睡眠の途中で目が覚めてしまうこともあります。
実際の調査で高温多湿状態での睡眠についての対象者の自己評価量は、量と質が低下したとのことでした出典[9]。このように、よく眠れていないと感じている状態は、睡眠の本来の目的である疲労の回復が十分ではないことを示唆しています。
気持ちよく眠れる室温は25℃程度が最適で、夏の寝室の許容範囲の上限は室温28℃、湿度50〜60%とのことです。また夏に最適な寝床内の温度は33℃、湿度55%といわれています。寝不足が続くと疲労がたまってしまいます。暑さを我慢せずにエアコンで部屋をしっかり冷やしてください。
就寝2時間前に入浴する
就寝の2時間前までに入浴を済ませるようにしましょう。入浴には疲労回復や身体を温める効果がありますが、温まった身体のままではうまく寝付くことができません。
入浴で一時的に上がった深部体温は徐々に下がっていきますが、就寝直前に入浴してしまうと就寝までに体温が下がりきりません。 体温が0.5℃上がった場合、もとに戻るまでの時間は90分といわれています。気温が高い時などは熱放熱に扇風機も有効です。冬も入浴直後に着込みすぎないなど工夫しましょう。
ベッドに入った時点でに元に戻りつつある体温が、さらに下がり始めるタイミングが入眠にはベスト。リラックスして眠りにつくことができます。
入眠前に1部位30秒ストレッチ
疲労回復のためにぐっすり眠るには、就寝就寝前のストレッチがおすすめ。
ストレッチは血流を促し、心身の緊張を解放してくれます。むくみやコリをほぐし、さらに副交感神経が優位になりリラックスすることができます。リラックスすることで睡眠の質の向上も期待できます。
足首やふくらはぎ、太もも、腰、背中、腕、肩、首など気になる部位をそれぞれ30秒程度丁寧に伸ばしてください。ベッドの上で行い、そのまま眠りについてしまうのもおすすめ。
頑張りすぎるストレッチは逆効果なので、力を抜いて無理せず行ってください。ストレッチで翌日に疲れをもち越さないようにしましょう。
まとめ
睡眠不足が続くと疲れが取れない、すっきり起きれないと感じるだけでなく、見えないところでも疲労は蓄積していきます。体だけでなく脳やメンタルも気づかぬうちに疲れているかもしれません。睡眠は心身の疲労回復に不可欠です!週末に寝だめをするだけでは回復しない機能もありますので、毎日の睡眠を十分にとることを心がけてください。
出典
- 1.
林 光緖 居眠り運転発生の生理的メカニズム IATSS Review Vol.38, No.1
https://www.iatss.or.jp/common/pdf/publication/iatss-review/38-1-06.pdf
- 2.
de Sousa Nogueira Freitas L, da Silva FR, Andrade HA, Guerreiro RC, Paulo FV, de Mello MT, Silva A. Sleep debt induces skeletal muscle injuries in athletes: A promising hypothesis. Med Hypotheses. 2020 Sep;142:109836.
- 3.
佐野 真莉奈、北原 祐理、河合 啓太朗、下山 晴彦 睡眠がメンタルヘルスに与える影響に関する研究動向と今後の展望――交替制勤務者に着目して――
https://www.p.u-tokyo.ac.jp/shimoyama/08kaken/pdfs/2019/2019-23-30.pdf
- 4.
Ikehara S, Iso H, Date C, Kikuchi S, Watanabe Y, Wada Y, Inaba Y, Tamakoshi A; JACC Study Group. Association of sleep duration with mortality from cardiovascular disease and other causes for Japanese men and women: the JACC study. Sleep. 2009 Mar;32(3):295-301.
- 5.
Zhang C, Zeng P, Tan J, Sun S, Zhao M, Cui J, Zhang G, Jia J, Liu D. Relationship of Problematic Smartphone Use, Sleep Quality, and Daytime Fatigue Among Quarantined Medical Students During the COVID-19 Pandemic. Front Psychiatry. 2021 Nov 10;12:755059.
- 6.
Lin PJ, Kleckner IR, Loh KP, Inglis JE, Peppone LJ, Janelsins MC, Kamen CS, Heckler CE, Culakova E, Pigeon WR, Reddy PS, Messino MJ, Gaur R, Mustian KM. Influence of Yoga on Cancer-Related Fatigue and on Mediational Relationships Between Changes in Sleep and Cancer-Related Fatigue: A Nationwide, Multicenter Randomized Controlled Trial of Yoga in Cancer Survivors. Integr Cancer Ther. 2019 Jan-Dec;18:1534735419855134.
- 7.
Charles Y. Murnieks, Jonathan D. Arthurs, Melissa S. Cardon, Nusrat Farah, Jason Stornelli, J. Michael Haynie,Close your eyes or open your mind: Effects of sleep and mindfulness exercises on entrepreneurs' exhaustion,Journal of Business Venturing,
Volume 35, Issue 2,2020https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0883902617305281?via%3Dihub
- 8.
Pejovic S, Basta M, Vgontzas AN, Kritikou I, Shaffer ML, Tsaoussoglou M, Stiffler D, Stefanakis Z, Bixler EO, Chrousos GP. Effects of recovery sleep after one work week of mild sleep restriction on interleukin-6 and cortisol secretion and daytime sleepiness and performance. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2013 Oct 1;305(7):E890-6.
- 9.
松本一弥、松井知子、肝付邦憲、古見耕一 夏季の睡眠環境が夜間睡眠とその後の疲労回復に及ぼす影響 労働科学 61巻 8号(375)一(384), 1985 J. Science of LabouγVol.61, No. 8
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