【難易度別】ダイエットに有効な食事法と5つの誤ったダイエット
2023年11月21日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

ダイエットを始める前に知っておきたいこと

「痩せなければ」とあなたが考えるとき、真っ先に「食事管理」と「運動」の二つが思い浮かぶのではないでしょうか。どちらも健康的な減量のためには欠かせない取り組みであり、この両方への取り組みによってダイエットの成功率は格段に上昇します。

では、なぜこの二つについて取り組むことがダイエットに有効なのか、この二つに取り組むことで体の中では何が起きているのか、についてこれから説明します。

ダイエットの原則は摂取カロリー<消費カロリー

食事を適切に管理する。運動習慣を付ける。この二つの取り組みのポイントは、エネルギー収支をマイナスの方向に向けることにあります。

私たちが食事により得る「摂取エネルギー」と、呼吸や代謝、運動などにより失われる「消費エネルギー」、この二つのバランスが体重の増減に大きく関わります。

摂取エネルギー > 消費エネルギー

この状態になれば体重は増加します。摂取したエネルギーに対して消費が追いついていない状態ですから、余ったエネルギーは脂肪組織の形で体の各所に蓄えられることになり、これが続けば体脂肪増加、体重増加を招くことになるのです。

摂取エネルギー < 消費エネルギー

逆にこの状態になれば体重は減少します。摂取したエネルギー以上の消費が体内で起これば、体は脂肪組織などを分解して不足分のエネルギーを補おうとします。脂肪組織の分解が効率的に行われることで、健康的な体重減少に繋げることができるのです。

 

「痩せやすさ」と「続けやすさ」は両立しない

減量のためには「摂取エネルギー < 消費エネルギー」の構図を保つ必要があります。しかし早く痩せたいがために、無理な運動や厳しい食事制限をすることはオススメできません。なぜならそうした極端なダイエットは「長続きしない」からです。

白米をずっと抜きにした生活、おやつやお酒に全く手を付けない生活、毎日3時間のジョギングを行う生活……これらを何年、何十年と続けることはほぼ不可能です。必ず中断の時が訪れ、その先にはほぼ確実にリバウンドという悲しみが待っています。

一度リバウンドしておいて、また痩せたくなったときに食事制限や運動を再開すればいいのでは、と考えるかもしれません。しかし一般に、こういったリバウンド後の体重減少は前回よりも困難になりやすいのです。これは過度な食事制限により体が栄養不足に陥ることで、呼吸や代謝など生活の中で消費される「基礎代謝」が低下するためであると考えられています。

栄養不足で基礎代謝が下がった状態からのリバウンド、そこから再び体重を落とすためには前回以上の過剰な食事制限が必要となります。ダイエットとリバウンドを繰り返す度に、痩せることが困難になっていくメカニズムはここにあります。

 

ダイエットのコツは「ゆっくり痩せて長く続ける」こと

過剰な食事制限は「痩せやすい」ものですが「続けにくい」。一時のダイエット成功体験のために行うにはリスクの高い方法です。健康的に体重を落とし、かつその状態を維持するには、無理のない食事量の調整を行い、なるべくストレスのかからない方法を続ける必要があります。

すぐに効果が現れるような大きなエネルギーの削減は行わないため、この方法は「痩せにくい」と感じるかもしれません。しかし一度習慣化すれば「続けやすい」ものになるため、落とした体重を無理なく数年、数十年と維持することができるでしょう。

では、この「摂取エネルギー < 消費エネルギー」を守りつつ無理なく減量するには、毎日の食事をどのように変えていけばいいのでしょうか。以下ではその食事法について、用意に取り組めるものから細かくエネルギーや栄養素を管理する方法まで、それぞれ順番に解説します。

 

難易度:低 置き換えダイエット

比較的容易に取り組める食事法として「置き換えダイエット」が挙げられます。この「置き換え」は定期的にメディアでも話題になりますが、市販のスムージーや栄養ドリンクで1食分を丸ごと置き換えてしまう、というやり方はオススメできません

確かに、朝食や夕食などを栄養バランスの整えられたスムージーやドリンクに置き換えることで摂取エネルギーは格段に減り、いち早い減量効果を得ることができます。しかしその体重を維持するためには同じスムージーやドリンクでの食事を続けなければならず、継続にコストがかかるほか、同じ味ばかりで飽きがちになり中断しやすくなってしまいます。

ストレスなく摂取エネルギー量を減らし、ダイエットの成功率を上げるためには、普段の「食事」の形を保ちつつ、その献立の中身をより低エネルギーで満足感の得られるものへと置き換える必要があります。以下ではこの考えに基づいた「置き換えダイエット」の例について紹介します。

 

おやつやお酒など、嗜好品の置き換え

最も簡単な方法は、おやつやお酒など、嗜好品に当たるものを低エネルギーのものへと置き換えてしまうことです。菓子類や酒類は元々、余剰のエネルギー摂取にあたり、これらは必須栄養素の供給源として食べられているものではありません。そのため他のどんなものに置き換えても体調に影響を及ぼすことがないため、健康的に痩せることを考えるならまずこの嗜好品の置き換えを考えてみるべきでしょう。

毎晩缶ビール500mlを2缶飲んでいるのであれば、そのうちの1缶を炭酸水に置き換えてみましょう。これだけで200kcal程度のエネルギー削減に繋がります。またアルコール代謝を担う肝臓の負担も軽減するためスッキリと目覚めることができ、運動しやすさや睡眠の質など、ダイエットに関わる生活の要素の改善にも繋がります。

間食のスナック菓子やスイーツが習慣化している場合は、より低エネルギーかつ満足感を得られるものに置き換えてみましょう。ナッツ類や果物など、ビタミンやミネラルが豊富であり、かつよく噛んで食べることで満足感を得やすいものをオススメします。チーズなどのたんぱく質食品も、満腹感を高めるコレシストキニン(CCK)といったホルモンの分泌を促すため、置き換えの候補に入れてみてもいいでしょう。

 

主食の置き換え

おそらく皆さんが毎日必ず口にしているであろう、パンやご飯、麺類などの「主食」を置き換えることも、効果的な減量法のひとつです。

白米よりも玄米が、精製小麦よりも全粒小麦がダイエットに適している、という話を聞いたことはありませんか? しかし実は白米と玄米のカロリーはほぼ同じであり、置き換えたところで摂取エネルギーにはそれほど違いは生じていないのです。

白米や精製小麦と玄米や全粒小麦との違いは、消化・吸収の早さ、そして血糖値の上がりやすさにあります。白米や精製小麦は体への吸収が早く、血糖値を急激に上げてしまいます。血糖値の急上昇はインスリンというホルモンの分泌を促し、筋肉や脂肪組織に血糖、グルコースを蓄える指令を出します。

このように血糖値の急上昇は、より多くのインスリン分泌を招き、より多くの脂肪を蓄えることに繋がります。そのため血糖値をより緩やかに上げ、インスリンの分泌を抑えられる玄米や全粒小麦の主食の方が、脂肪組織の蓄積を防ぐことができるとして、ダイエットに効果的であるとされているのです。

日本人を対象に、精製小麦パンを全粒小麦パンに置き換えた食事介入試験において、体重および内臓脂肪面積が有意に減少していたという結果が得られています出典[1]。また同じく日本人において白米と玄米・雑穀米の摂取と体重変動を調査した研究においては、白米の摂取量が増えるほど3kg以上の体重増加リスクが高くなったのに対し、玄米・雑穀米では摂取量が増大しても体重増加リスクに有意差が生じなかったことが明らかになっています出典[2]

これらの結果により、全粒小麦パン、玄米・雑穀米の摂取が日本人の体重管理に有効であることが示されています。精製小麦パンや白米から置き換えを行うことで減量に役立つ効果が期待できるでしょう。

 

揚げ物など、高エネルギーな主菜の置き換え

天ぷらやとんかつなど、揚げ物が高エネルギーであることは想像しやすいのではないでしょうか。これら高エネルギーな主菜を低エネルギーのものに置き換えるだけでも、十分な摂取エネルギーの低減に繋がります。

置き換えのコツは「揚げ」や「炒め」から「焼き」や「蒸し」へ変えることです。

豚肉であれば、揚げ物である「とんかつ」を、焼き物である「豚の生姜焼き」に変更してみましょう。鶏肉であれば「唐揚げ」を「サラダチキン」や「グリルチキン」に置き換えられそうですね。魚料理の場合は「あじフライ」を「焼き鮭」や「さばの味噌煮」に置き換えることでエネルギーの削減が狙えます。

注意点として、とんかつを野菜サラダに置き換える、といったことはしないようにしましょう。肉類や魚類を豊富に使った主菜は、たんぱく質の摂取源として重要です。主菜をカットしてしまうと筋肉量の減少に繋がり、基礎代謝の低下からリバウンドを招きかねません。あくまでも肉類や魚類の摂取はそのままに、調理法を見直して効率的なエネルギー削減をはかりましょう。

 

難易度:中 食品の数と質にこだわる

自身が食べている毎日の献立が、体重管理に適したものであるかどうか知りたい場合の参考として、厚生労働省が発表している「食事バランスガイド」をオススメします。

食事バランスガイドは「何をどれだけ食べたらいいか」について、具体的な食材や料理とその品数、分量を示しています出典[3]。主食、副菜、主菜、乳製品、果物について、それぞれ「〇つ(SV)」という単位を用いて分量を示しています。炭水化物であれば1日に5~7つ、副菜であれば3~5つ、というように、量的な目安を示しつつ、日常の中で簡便に計算ができるように作られています。

食事バランスガイドでは厳密な摂取量の規定を行わず、5~7つ、3~5つといったように、食品の分類ごとにある程度の幅を持たせてあります。この幅からはみ出ない量を意識すれば体重を適正範囲内でコントロールしやすくなるでしょう。

以下ではこの食事バランスガイドを参考に、1日当たりのおおよその摂取量について考えてみることとします。

なお、食事バランスガイドでは、1日の摂取エネルギーを2200±200kcalとしてそれぞれの「〇つ(SV)」をカウントしています。これは成人男性の活動量「ふつう」の摂取エネルギーとほぼ同じであるため、活動量が低い場合や女性の場合には200kcalほど減らした値で計算してみてください。

 

炭水化物は5~7SV/日

主食である炭水化物は「炭水化物約40g」を「1SV」としてカウントしています。米飯100gが1SV相当であるため、3食全て米飯の食事にする場合には、500~700gほどが1日の摂取量として適切である、ということになります。

  • 1SV :おにぎり1個、食パン6枚切り1枚
  • 1.5SV :ご飯中盛150g
  • 2SV :うどん1杯、スパゲティ1皿、丼もの1杯、カレーライス1皿

麺類や丼もの、などは2SVとなり、カウントが高めです。丼ものやカレーライス、チャーハンなどは「大盛」を頼むと3SVとなることもあるでしょう。こうした炭水化物の一品料理を頻繁に頼んでいる場合には、頻度を調節したり、「大盛」をやめたりなど、SVの調整を行うことでエネルギーの過剰摂取を防ぐことができます。

 

野菜は5~6SV/日

副菜は「主材料の重量約70g」を「1SV」としてカウントしています。副菜の主材料となるのは野菜や海藻、きのこ類などであり、これらは食物繊維やビタミン・ミネラルの供給源として重要です。1食の料理に小鉢や汁物を1~2品付けるようにすれば、1日の目標量は満たせるでしょう。

  • 1SV :野菜サラダ、わかめの酢の物、味噌汁、ひじきの煮物、きのこのソテー
  • 2SV :野菜の煮物、野菜炒め

副菜の中でも、重量が多いものは2SVとしてカウントします。

注意点としては、副菜の主材料がイモ類やトウモロコシなどに偏らないようにすべきでしょう。これらは炭水化物を豊富に含むため主食の意味合いが強く、摂りすぎると体重増加を招いてしまいます。

副菜として使用する食品は、食物繊維が豊富であり、炭水化物の含有量が少ないものを選ぶようにしましょう。米国の男女を調査した前向きコホート研究においては、食物繊維が豊富で炭水化物の少ない野菜類の摂取が多いほど、体重減少が大きく確認されていました。

体重減少効果が最も大きく見られたのはカリフラワーやブロッコリーなどのアブラナ科の野菜であり、芽キャベツやほうれん草などの葉物野菜も効果を発揮したことが分かっています。逆にジャガイモやサツマイモ、トウモロコシなどの摂取が多いほど、体重は増加していたため出典[4]、これらの野菜を副菜に用いる場合には頻度と分量が増えすぎないよう注意すべきでしょう。

 

たんぱく質食品は3~5SV/日

主菜は「たんぱく質約6g」を「1SV」としてカウントしています。主菜の主材料となるのは肉や魚、卵、大豆などであり、1食につき最低1SVは確保しておきたい食材です。

  • 1SV :納豆、冷奴、ゆで卵
  • 2SV :焼き鮭、サバの味噌煮
  • 3SV :豚肉の生姜焼き、唐揚げ、ハンバーグ

たんぱく質食品を毎回の食事で確保しておくことは、筋肉量を維持し基礎代謝量を保ちながら痩せるために特に重要です。

十分なたんぱく質を摂取しながら行うダイエットでは、筋肉量を維持しながら体脂肪を落とせること、また基礎代謝も維持できるため減量後のリバウンドを防ぎやすいことが分かっています出典[5]

また、たんぱく質食品の摂取は食事に対する満足感を高めるためにも重要です。たんぱく質を摂取することで腸管内のコレシストキニン(CCK)やGLP-1といった食欲を低下させるホルモンの分泌が増大します。これにより食事に対する満足感、満腹感が得やすくなるため、食べ過ぎ、およびリバウンドを防ぐ効果を発揮することも分かっています出典[6]

なお、主菜を選ぶ際には調理法にも目を向けてみましょう。肉類ばかり、揚げ物ばかりの食生活ではエネルギーの摂りすぎを招くため、魚や大豆製品なども取り入れ、様々な種類のたんぱく質食品を楽しめるようにするのが長続きかつ減量成功のコツとなります。

 

乳製品は2SV/日

カルシウムの供給源である乳製品は「カルシウム約100mg」を「1SV」としてカウントします。牛乳やヨーグルト、チーズなどがこの項目に該当します。

  • 1SV :スライスチーズ1枚、ヨーグルト1パック
  • 2SV :牛乳コップ1杯(200cc)

乳製品をダイエット中の食事へと適度に取り入れることは、たんぱく質摂取の強化に繋がり、ダイエットのサポートとしても役立ちます。18~50歳を対象としたランダム化比較試験においては、減量食に乳製品の摂取を取り入れた群にて、乳製品の摂取が少ない群よりも体重と体脂肪が大きく減少し、筋肉など徐脂肪体重の減少を小さく抑えられたという結果が得られています出典[7]

この研究において、体重減少効果は乳製品を2~4SV摂取した群に確認されています。乳製品や牛乳を摂取する習慣がない人は、毎日手軽に続けられるコップ1杯の牛乳で初めてみるとよいでしょう、チーズも長期保存が可能なため続けやすい食品ですが、クリームチーズなど、脂肪分の多いものに偏らないよう注意してください。

 

果物は2SV/日

果物は「重量約100g」を「1SV」としてカウントします。ビタミンやミネラルはもちろんですが、火を通して食べることの多い野菜と異なり、生食が基本である果物からは、調理によって失われがちなビタミンCやカリウムを豊富に摂取できます。

  • 1SV :みかん1個、かき1個、もも1個
  • 2SV :リンゴ1個、ブドウ1房

ビタミンやミネラルの供給源であることに加えて、果物には抗酸化物質として機能する成分、フラボノールが豊富に含まれている点も見逃せません。これらフラボノールの摂取と体重との関係を調べた前向きコホート研究においては、フラボノールの消費量が多いほど、体重の減少が大きく確認されたことが分かっています出典[8]

フラボノールは多くの果物において、皮や皮付近に多く含まれています。そのため果物をジュースの形で摂取するとフラボノールが減少してしまうほか、食物繊維を摂取する機会を失うことにもなってします。果物をよく噛んで食べることによる満腹感を刺激する効果も同図に得るため、果物は生の状態で食べるようにした方がよいでしょう。

 

複合料理の数え方、調整方法など

カレーライスなどの「複合料理」は、材料に注目して以下のようにカウントします。

  • 主食 :米飯200gの場合、2SV
  • 主菜 :牛肉60gの場合、2SV
  • 副菜 :野菜類の合計が150g程度の場合、2SV

牛丼やサンドイッチなども、具材と穀類とを分けてカウントすることでより正確なSV計算ができるでしょう。

ダイエットにおいては主食の摂りすぎと主菜の質に注意が必要です。外食などでラーメンにチャーハンをプラスして、あるいはうどんにおにぎりをプラスして食べている場合、牛丼の注文において「大盛」が習慣化している場合には、一度で4SVほどを摂取している可能性があります。主食の皿が献立の中にひとつで収まるよう、注文内容を調整するところから始めてみましょう。

主菜の質については「揚げ物は週に2回まで」をまず目標にしてみましょう。低エネルギーかつ高たんぱくな料理を味方につけて、筋肉量を維持しながら体重を減らしていきましょう。

 

難易度:高 マクロ管理法でカロリー計算

マクロ管理法とは 個々人の性別や体重などの情報から1日に必要な三大栄養素を計算し、この分量に沿って食事を続けるという方法です。この三大栄養素が「マクロ栄養素」とも呼ばれるため、マクロ管理法という名前で知られています。

性別、年齢、身長、体重、活動レベルなどによって基礎代謝量および消費エネルギー量を計算し、摂取すべき三大栄養素であるたんぱく質、脂質、炭水化物の分量を求めます。食材や総菜、外食先での料理などで栄養成分表を確認しながら三大栄養素の摂取量を管理するため開始してすぐの難易度はかなり高めですが、炭水化物やたんぱく質の1回量に慣れ、脂質をカットするコツを身に付ければ負担なく継続が可能です。

以下では個人のマクロ管理法について、必要エネルギー量の算出方法を解説します。男性と女性、2つの例を設けていますので計算の参考にしてください。

なお、以下の計算では小数第2位以下を四捨五入しています。

ステップ①基礎代謝の計算

基礎代謝量は一般に「ハリス・ベネディクト方程式」を用いて算出されます。これは身長や体重、年齢に性別といった要素を数値化し、個人の基礎代謝量を計算するためのものであり、以下のようになっています。

  • 男性:10×体重(kg)+6.25×身長(cm)-5×年齢(歳)+5=基礎代謝
  • 女性:10×体重(kg)+6.25×身長(cm)-5×年齢(歳)+5=基礎代謝

(例1)男性、40歳、身長170cm、体重60㎏の場合
10×60(kg)+6.25×170(cm)-5×40(歳)+5=1467.5(kcal)

(例2)女性、35歳、身長155cm、体重50kgの場合
10×50(kg)+6.25×150(cm)-5×35(歳)+5=1267.5(kcal)

この基礎代謝量は、日々の呼吸や代謝により消費されるエネルギーです。1日中ベッドの上で横になっていても消費されていくエネルギー量、と考えると分かりやすいかもしれません。


ステップ②消費カロリーを計算

ステップ①で求めた基礎代謝量だけでなく、私達は活動によってもエネルギーを消費します。そのため1日の消費エネルギーを計算するには、基礎代謝に活動量を乗じる必要があります。

活動量は人によって異なるため、何段階かに分けて計算します。一般には3段階ですが、もう少し細かく区分する場合もあります。

  1. 活動量が「低い」人  :基礎代謝×1.2
    座り仕事が多く、運動習慣がない場合
  2. 活動量が「ふつう」の人 :基礎代謝×1.55
    立ち仕事や重労働を含み、家事やスポーツでの活動を行う場合
  3. 活動量が「多い」人  :基礎代謝×1.725
    立ち仕事や重労働が多く、トレーニングや運動を習慣的に行う場合

(例1)男性、40歳、身長170cm、体重60㎏、活動量「ふつう」の場合
1467.5(kcal)×1.55=2274.6(kcal)

(例2)女性、35歳、身長155cm、体重50kgの場合、活動量「少ない」の場合
1267.5(kcal)×1.2=1521(kcal)

 

ステップ③摂取カロリーを設定

ステップ②にて1日の消費エネルギーが計算できました。ここで減量の原点に立ち帰ってみましょう。
体重の変動は、摂取エネルギーと消費エネルギーとのバランスによって決定されます。

  • 体重減少:摂取エネルギー < 消費エネルギー
  • 体重維持:摂取エネルギー = 消費エネルギー
  • 体重増加:摂取エネルギー > 消費エネルギー

すなわち、先程の消費エネルギーよりも摂取エネルギーを増やすか、減らすか、あるいは同程度摂取するか、によって体重の変動方向が決まるということです。

マクロ計算法では、それぞれの目標に応じた数値を乗じて1日の摂取エネルギーを算出しています。

  • 減量:消費エネルギー×0.8
  • 維持:消費エネルギー×1
  • 増量:消費エネルギー×1.2

(例1)男性、40歳、身長170cm、体重60㎏、活動量「ふつう」、減量希望の場合
2274.6(kcal)×0.8=1819.7(kcal)

(例2)女性、35歳、身長155cm、体重50kgの場合、活動量「少ない」、維持希望の場合
1521(kcal)×1=1521(kcal)

 

ステップ④マクロ栄養素の割合を計算

1日の摂取エネルギーが決まったところで、ではそのエネルギーをどの栄養素に分配してどの程度ずつ食べればよいかを考えていきましょう。

総摂取エネルギーのうち、たんぱく質は全体の10~35%、脂質は20~35%、炭水化物はその残り、40~65%ほど、というように計算していきます。
たんぱく質の摂取量にかなり幅がありますが、より簡単な目安として「体重の数値の2倍(g)」と考えてもよいでしょう。
三大栄養素の1g当たりのエネルギーはそれぞれ以下のようになっているため、重量もしくはエネルギーを計算する際にはこの値を乗じたり割ったりする必要があります。

  • たんぱく質 :1g当たり4kcal
  • 脂質  :1g当たり9kcal
  • 炭水化物 :1g当たり4kcal

(例1)男性、40歳、身長170cm、体重60㎏、活動量「ふつう」、減量希望の場合

  • たんぱく質 :60×2=120(g)×4=480(kcal)
  • 脂質  :1819.7×25(%)=454.9(kcal)÷9=50(g)
  • 炭水化物 :1819,7-(480+454.9)=884.8(kcal)÷4=221.2(g)

マクロ管理法による結論:体重減少のためには1日当たり、たんぱく質120g、脂質50g、炭水化物221.2g程度を摂取することが望ましい

(例2)女性、35歳、身長155cm、体重50kgの場合、活動量「少ない」、維持希望の場合

  • たんぱく質 :50×2=100(g)×4=400(kcal)
  • 脂質  :1521×25(%)=380.3(kcal)÷9=42.2(g)
  • 炭水化物 :1521-(400+380.3)=740.7(kcal)÷4=185.2(g)

マクロ管理法による結論:体重維持のためにはたんぱく質100g、脂質42.2g、炭水化物185.2g程度を摂取することが望ましい

 

ステップ⑤実際に食事を摂ってみよう

あなたのためだけのマクロバランスがこれで完成しました。あとはこの栄養素配分を満たすような食事を続けるだけです。

ポイントは、三大栄養素を3食に均等に分けることです。朝など準備が忙しかったり食欲がなかったりする場合には多少減らしても問題ありませんが、たんぱく質はなるべく朝にも摂取するようにしましょう。

  • たんぱく質
    たんぱく質の摂取は新陳代謝を高めるために重要であり、エネルギーの消費を高める効果を発揮します。減量や維持を行いたい場合はもちろん、筋肉量を増やす目的での増量においても、たんぱく質はいつの食事においても不足しないようにしましょう。                                
  • 脂質
    脂質の摂取は調味料の工夫だけでなく、調理に使用する肉の部位によっても大きく変わります。バターの味付けではなくお酢や香辛料による風味付けを、バラ肉よりもも肉やヒレ肉を、それぞれ選ぶようにすることでエネルギーカットが狙えます。魚や豆類、卵に含まれる脂質は良質であることが多いため、これらから十分に摂取できるよう、揚げ物やスナック菓子などは控えてみましょう。      
  • 炭水化物
    分量の調節がしやすい米飯から始めるのがオススメです。1食あたり70gの炭水化物が必要である場合、60g程度を米飯で摂取できるようにしてみましょう。70g全てを米飯で摂取すると、野菜のイモ類などからの摂取で炭水化物量がオーバーしてしまうため注意が必要です。


外食の利用や総菜の購入で食事を済ませることがほとんどである場合には、注文や購入の際に「成分表」を見る癖を付けるようにしましょう。たんぱく質、脂質、炭水化物の表記を見て、1食あたりの分量の過不足を判断しながら食べるようにするだけでも、理想の摂取エネルギーにぐっと近づけることができます。

たんぱく質と炭水化物の1回量を把握し、脂質のカットのコツを掴むことができれば、あとは野菜の摂取や油を使った料理の頻度に気を付けるだけで、必要エネルギー量に対してほぼ過不足のない、バランスの取れた食事を続けることができるでしょう。

マクロ管理法はダイエットのみならず、健康的な食生活の維持にも役立つ方法です。減量達成後は消費エネルギーに乗じる係数を維持の「1.0」に変えて、体に負担のかからない食事を続けていきましょう。

 

【注意!】誤ったダイエット方法5つ

ところで、この記事に辿り着いた方であれば、これまでダイエットに関する情報を集め、自身で何種類か挑戦したこともあるのではないでしょうか。世の中にはあらゆるダイエット法が情報として溢れており、減量成功体験者も出ていることから、どのダイエット法もある程度効果的なように見えます。

しかしそれらの中には、継続が極めて難しいものや、継続することで健康を害してしまうようなものも含まれています。以下ではそうした注意すべきダイエット法について解説します。

極端な炭水化物ダイエット

低炭水化物ダイエットや糖質制限ダイエットという名前は、取り組みが手軽にできることや比較的早くに効果が出やすいことから人気のある方法です。しかし長期的に体重変動を見た場合、その維持効果は他のダイエットと変わらないことが分かっています。

特定の栄養素を制限する形でのダイエット法については、その効果がいくつかの研究により調べられてきました。肥満の成人を対象としたランダム化比較試験においては、低炭水化物食とエネルギーバランスの取れた減量食との効果が比較されましたが、減量効果とその速度に違いがなかったことが明らかになっています。更に最大2年間の追跡調査においても、減量効果に差が生じていませんでした出典[9]

炭水化物ダイエットを行うことで体重が減少した、という経験がある方もおそらくいらっしゃるでしょう。しかしこの減量効果は「炭水化物を制限したこと」によるものではなく「炭水化物の制限により総摂取エネルギーが減少した」ことによるものである、ということが研究によって示唆されています。

炭水化物や脂質、たんぱく質など特定の栄養素を制限する方法は、肝炎、膵炎、糖尿病や慢性腎臓病など疾患を抱えた方の体重管理においては有効ですが、健康な人が選ぶダイエット法としては殊更に効果的である、というわけでもないのです。

加えてこの特定の栄養素を制限する方法は長続きせず、炭水化物を過度に制限することで、食物繊維の不足による腸管の不調や、エネルギー不足による体力の消耗、グリコーゲンの枯渇による筋たんぱく質の分解など、体へのデメリットも懸念されます。

健康的かつ持続可能なダイエットのためには、三大栄養素の摂取バランスを大きく崩すことなく、総摂取エネルギーでのコントロールを目指すことが重要です。

 

食事を完全に抜く

極端な欠食を行って摂取エネルギーを減らす方法も、長期にわたり続けることのできないものであることは明らかでしょう。

体への負担が大きいことはもちろんですが、欠食という形を取ることで体からは脂肪だけでなく筋肉も減少します。筋肉量の減少は基礎代謝量の低下を招くため、短期間で体重を落とせたことの代償として太りやすい体質になってしまうのです。

様々なダイエット法を調査したシステマティックレビューにおいては、安全な減量を達成するには、男性で1日1500 kcal、女性で1日1200 kcal のエネルギーが最低でも必要である、と述べられています出典[10]。この値を下回らないように食事を続けることで、基礎代謝量を維持しやすくなるでしょう。

 

特定の食品だけを摂る

サラダチキンダイエットやトマトダイエットのような、特定の食品ばかりを食べるダイエットは定期的にメディアで話題となります。その分かりやすさと手軽さからつい手を出しがちではありますが、食品をひとつに限定し、そればかりを大量に食べるというやり方はやめておきましょう。

たとえばサラダチキンを主菜として摂取し続けるやり方では、魚に含まれており脂肪燃焼効果やコレステロール調整効果があるとされるω‐3系脂肪酸を摂ることができません。また鶏肉にはプリン体が多く含まれているため、たんぱく源の全てをサラダチキンにしてしまうと、プリン体の摂りすぎから高尿酸血症のリスクが上がってしまいます。

トマトはビタミン・ミネラルともに豊富な栄養素ではありますが、葉酸など含有量が少ないビタミンも幾つかあります。どんなに優秀な栄養価を持つ食品でも、それだけでビタミンやミネラルの必要量を全て満たせる「完全食品」には成り得ないのです。

また、このような特定の食品だけのダイエット法では「これさえ食べていれば大丈夫」という慢心を招きかねません。「今日はトマトを沢山食べたから夜にケーキを食べても大丈夫」として、高エネルギーの夜食が習慣化するようでは本末転倒です。

健康的なダイエットのためには毎日毎食のバランスに気を配る必要があります。「これだけ食べればあとは何をしてもOK!」というダイエットは残念ながら存在せず、慢心と失敗を生むだけであることを覚えておいてください。

 

サプリメントに過度な期待を抱く

体脂肪の燃焼をサポートする、体に脂肪が付きにくくする、といった効果を持つ栄養補助食品およびサプリメントは多数販売されており、使用した方もいるのではないでしょうか。このような優れた健康効果を持つサプリメントは、既に世に多く出回っており、手頃な価格で継続的に摂取できるものも増えてきたように思います。

しかしこれらは「サプリメントさえ摂取していれば痩せられる」「これさえ飲んでいれば生活習慣病を予防できる」といったものではありません。サプリメントはあくまで私達の健康をサポートするための「食品」であり、疾病や不調からの回復効果を発揮する「医薬品」とは別物であると考えてください。

特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品のパッケージに「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」という表示があることを知っている方も多いのではないでしょうか。いかに優れた健康食品といえど、食生活の基本が成立していなければ効果を発揮できません。「良質なサプリメントを摂取しているから大丈夫」と、暴飲暴食や欠食を繰り返すようなことがないようにしましょう。

 

食事だけしか意識していない

健康の保持増進、および体重管理のためには、食生活だけでなく、運動や睡眠の質にも気を配る必要があります。

いくら食事で十分な量のたんぱく質を摂取していても、運動により筋肉が使われなければ筋肉量を増やす、あるいは維持することができません。運動不足は基礎代謝の低下を招き、痩せにくく太りやすい体を作ってしまいます。

更に休養の観点から十分な睡眠を取ることも重要です。休養不足では活動による疲労が回復できず、十分な運動が継続できなくなってしまいます。更に睡眠不足では食事の満腹感を刺激するホルモンであるレプチンの分泌が減少し、逆に空腹感を刺激するグレリンの分泌量が増えてしまいます。これにより食事を適量で終わらせることが難しくなるため、ダイエットの難易度も上がってしまうでしょう。

また、適度な運動と十分な休息に加え、現在の体重や食事量を測定し記録する「モニタリング」もダイエットの効果を上げる重要な要素です。目標を達成できているか、余分なものを食べていないか、といった振り返りの時間を設けることで、モチベーションの向上にも繋がります。

減量に関するシステマティックレビューにおいては、体重減少の原則である「摂取エネルギー < 消費エネルギー」を守りつつ、減量達成とその後の体重維持を安全に行うための方法として、以下の4点が推奨されるとしています出典[10]

  1. エネルギーと脂肪の摂取量の削減
    (脂肪はエネルギー比率30%以下に留めることが望ましいとされています)
  2. 食物繊維の摂取量の増加
    (空腹の緩和により食事管理を続けやすくなります)
  3. 定期的な身体活動
    (少なくとも週150時間の有酸素運動を続けることが効果的です)
  4. セルフモニタリング
    (定期的な体重測定と、運動時間や食事量のチェックを行いましょう)

食事のバランスを整え、運動とモニタリングを継続し、しっかり休養すること。これらの地道な取り組みの積み重ねこそが、リバウンドリスクの少ない健康的なダイエットの近道となるのです。

 

まとめ

ダイエットの食事法について、そのコツと具体的な方法を解説してきました。取り組み方を複数紹介しましたが、ポイントは以下の3点です。

  1. 「摂取エネルギー < 消費エネルギー」の原則を守ること
  2. 食事法は「ゆっくり痩せて長く続けられる」ものを選ぶこと
  3. 運動、睡眠、モニタリングを効果的に取り入れること

毎日のビールの2杯目を炭酸水に置き換える、スナック菓子を果物に置き換える、といった簡単な試みだけであったとしても、その調整で「摂取エネルギー < 消費エネルギー」の条件を満たせていれば、続けることで確実に体重は落ちていきます。理想の体重、体型を長く維持できるよう、ストレスのない食事管理でゆっくり減量していきましょう。
 

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