レスト時間は?負荷は?テストステロンを増やす5つの筋トレ方法
2022年12月11日更新

執筆者

NSCA-CPT/調理師

舟橋位於

東京大学理学部卒、東京大学大学院総合文化研究科修士課程終了。大学入学後に筋肉に興味を持ち、自分の体で学んだ理論を体現してきた。日本の筋肉研究で有名な石井直方教授のもとで学び、ティーチングアシスタントとして、学生へのトレーニング指導を行った経験も。自分が学んだ知識を伝えることで、一人でも多くの方の健康をサポートしたいと考えている。

そもそもテストステロンとは?

テストステロンは、男性ホルモンと呼ばれる物質の一種です。その名称の通り、男性の体の中に多く存在し、筋肉質の男らしい体つきを作ることに深く関わっています。テストステロンが作用することで、筋肉や骨などの組織が発達し、がっしりとした体格となります。筋肉や骨の成長を促進するという働き以外では、性機能の維持や、精神面を整えて活動的な気持ちを生じさせる役割などもあります。

テストステロンは、主に精巣に存在するライディッヒ細胞で作られます。脂質の一種であるコレステロールを元に作られる化学物質で、その構造から、ステロイドホルモンと呼ばれます。精巣で作られたテストステロンは、血液の流れに乗って全身に運ばれ、標的の器官に作用します。また、生殖器そのものに作用して、正常な精子の形成を促す働きもあります。

テストステロンの分泌量は、加齢によって低下することが分かっています。イスラエルの研究者が報告した論文では、テストステロンの値は20代前半でピークとなり、その後は、年齢を重ねるにつれて緩やかに減少していくとされています出典[1]。女性の更年期障害は有名ですが、実は男性ホルモンが減少することが原因となる男性更年期障害も存在します。テストステロンの値が低下することで、体の機能が低下するとともに、気分が落ち込み、やる気や意欲が低下する症状が現れることがあります。

テストステロンは、肉体面での健康と、精神面での健康の双方に深く関わるホルモンだといえるでしょう。
 

テストステロンと筋肉は相互に関わっている!

ここからは、テストステロンが筋肉と深い関わりを持つ点について、さらに詳しく説明します。

前述の通り、テストステロンに代表される男性ホルモンは、筋肉や骨の成長を促し、それによって男性に特有の体つきを作る働きを持ちます。精巣で作られたテストステロンは、血液の流れに乗って標的器官である筋肉まで運ばれます。テストステロンが筋肉に作用すると、筋肉を構成するたんぱく質の合成が進んだり、筋線維の元となる筋サテライト細胞の増殖が促されたりします。その結果として、筋肉が元の状態よりも発達していきます。

従来、筋肉はテストステロンを受け取る器官だと考えられていましたが、近年では、筋肉自体が、テストステロンの合成や分泌に関わっている可能性も示されるようになりました。テストステロンは、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)と呼ばれる物質から作られます。そして、この過程を制御するいくつかのホルモン合成酵素が、筋肉の中にも存在することが分かってきています出典[2]さらにこれらのホルモン合成酵素は、運動の刺激によって筋肉中で増加することも示されています出典[3]

筋肉で作られたテストステロンが実際にどの程度機能するかはまだ分かっていませんが、局所的に作られるため、より高い筋肥大効果を持つ可能性もあります。今後の研究に期待したい分野だと言えるでしょう。
 

テストステロンを増やす筋トレ方法5つ

筋トレによってテストステロンの分泌量を高めることができますが、正しい方法で行わないと、効果を最大限に得ることはできません。意識したいポイントを5つ紹介しますので、ぜひご自身のトレーニングに取り入れてみてください。

①ギリギリ10~12回できる負荷

1つ目のポイントは、筋トレにおける負荷の決め方です。目的に応じて、重量や回数の設定は様々に変えることができますが、テストステロンを増やして効率良く筋肥大を狙うのであれば、ギリギリ10回から12回程度行える重量を選択すると良いです。

ここで、トレーニングでしばしば用いられる用語である1RM(ワンレプティションマキシマム)を紹介します。これは、1回ギリギリ挙上することができる重量のことを指します。そして、この1RMの何%のウエイトを扱うかで、トレーニングの内容を具体的に決めていくことができます。例えば、前述の10回から12回程度動作できる重量であれば、およそ1RMの70%から75%が該当します。ベンチプレスで80kgを1回だけ挙げることができる人であれば、この場合の70%1RMは56kgとなります。

1RMに対してどのように重量を設定するとテストステロンの値が高まるのかについては、数多くの研究があります。アメリカの研究者は、70%1RMと90%1RMでトレーニングを行った直後のテストステロンの値を調べる実験を行いました。その結果、70%1RMでトレーニングを行った場合に、統計的に有意なテストステロン値の上昇が認められることが分かりました出典[4]。また、95%1RMという非常に高強度のトレーニングでは、トレーニング後のテストステロン値の上昇は見られなかったとする別の研究もあります出典[5]

筋肉を増やすことがトレーニングの目的であるならば、10回から12回を目標に重量を設定することを意識してみると良いでしょう。

 

②レスト時間はダラダラ取らずに短めに!

トレーニングを行う際のインターバルも重要です。インターバルの取り方を意識することで、テストステロンの分泌量が変化する可能性があります。

アメリカの研究者は、インターバルの長さと筋トレに関するさまざまな指標の関係を調べる実験を行いました。運動経験のない被験者は2つのグループに分けられ、一方は1分のインターバル、もう一方は2.5分のインターバルで、全身の筋トレプログラムを10週間行いました。また、血液のサンプルが、トレーニング開始後1週間、5週間、10週間のタイミングで採取されました。採取した血液を使ってホルモンレベルを測定したところ、トレーニング開始後1週間では、1分インターバルのグループでテストステロンの値が有意に高くなることが分かりましたが、5週目と10週目では、2つのグループの間には差が認められませんでした出典[6]

別の研究では、1分インターバルと5分インターバルの違いについても調べられています。この研究では、1分インターバルでトレーニングを行った場合の方が、運動後のテストステロン値が高くなることが分かりました。しかしながら、トレーニングによる筋肥大の効果は、5分インターバルの方が高くなる結果にもなりました出典[7]

これらの研究結果を参照すると、テストステロンの値を高めるならば、インターバルは1分程度にすると良いと言えるでしょう。一方で、筋肥大を狙ってトレーニングする場合は、最適なインターバルは一概には決められないとも言えます。テストステロンは筋肉の発達を促すホルモンですが、筋肥大には、それ以外のホルモンやトレーニングの強度などが複雑に関係するためです。目的に応じて、インターバルをうまく管理することを心がけてみてください。

 

③できる限り大きい筋肉を鍛える

テストステロンの値を高めるためには、大きな筋肉を鍛えることも大切です。ここでいう大きな筋肉とは、上半身ならば大胸筋広背筋、下半身ならば、臀筋大腿四頭筋ハムストリングが該当します。逆に小さな筋肉としては、腕などが該当します。

大きな筋肉を使ったトレーニングは使用できる重量が上がるため、体への負担が小さな筋肉の場合よりも大きくなります。そして、強い刺激が加わることで、テストステロンの分泌が促進されます。ドイツの研究者は、ベンチプレスとスクワットのどちらのエクササイズでテストステロンの分泌量が増えるかを調べる実験を行いました。その結果、スクワットを行った場合に、テストステロンの値が有意に上昇することが分かりました出典[8]。ベンチプレスで使う大胸筋も大きな筋肉ですが、スクワットでは下半身全体が動作に関与するため、刺激の量がより大きくなったと考えられます。

別の研究では、腕のトレーニングのみを行った場合と、腕のトレーニングに脚のトレーニングを加えた場合で、ホルモンの分泌量に差が出るか調べられました。その結果、腕のトレーニングと脚のトレーニングの両方を行ったグループでは有意なテストステロン値の上昇が見られました。一方で、腕単体のトレーニングを行ったグループでは、テストステロン量の変化は見られませんでした出典[9]

テストステロンを効率良く分泌するために、ジムでは、大きな筋肉を鍛えることを習慣にできると良いでしょう。下半身のトレーニングは肉体的にも精神的にもハードですが、その分見返りも大きいです。

 

④マシンよりもフリーウエイトで

同じ部位をトレーニングする場合でも、マシンを使うかフリーウエイト(バーベルやダンベル)を使うかで、テストステロンの分泌量に差が出るという研究もあります。

テストステロンを効率良く分泌させるためには、より多くの筋肉を疲労させることが重要になります。多くのマシントレーニングでは、体幹部が固定されて、安定して動作が行えるようになっています。このような特性により、怪我が防止できる点や、狙った筋肉のみに負荷を集中させられる点は優れていますが、デメリットも存在します。自分の力でバランスを取ってウエイトを支える必要がないため、腹筋や固有背筋などの体幹部の筋肉は、フリーウエイトと比べると活動しにくいです。すなわち、同じ部位を狙うトレーニングでも、フリーウエイトではそれ以外の筋肉も活動させることができると言えます。

カナダの研究者が、フリーウエイトトレーニングとマシントレーニングの効果について調べた実験では、フリーウエイトでトレーニングを行ったグループでは、テストステロンの値が有意に上昇することが分かりました。一方で、筋肉量や筋力については、フリーウエイトとマシンの間に差が出なかったことも分かりました出典[10]

普段はマシンを使ったトレーニングしか行っていない人は、メニューにフリーウエイトを組み込んでみると良いでしょう。

 

⑤週3回程度で中長期的に継続する

1回の筋トレでもテストステロンの値は上昇しますが、より長期的にテストステロンの分泌を高めたいのであれば、筋トレを習慣化する必要があります。筋トレを定期的に実施することで、テストステロンの分泌を刺激する回数が増えることに加え、テストステロンの産生を助ける酵素の量が増えることが分かっています。

週3回の頻度で12週間大腿部の筋トレを行い、その前後で筋組織に含まれる成分を分析した実験では、テストステロンの前駆体となる物質や、テストステロンの産生に関わる酵素の量が増えたことが明らかになりました出典[11]。この実験では、平均年齢67.2歳の男性を被験者しており、加齢に伴うテストステロン値の低下を補える可能性も示されました。別の研究では、運動習慣のない男性被験者に週3回の筋トレを4週間実施させたところ、男性ホルモンの値が上昇することが分かりました出典[12]

継続的にテストステロンの分泌量を高めたいと思う方は、週に3回程度は筋トレを行うように意識してみると良いでしょう。
 

合わせて摂りたい効率を高めるサプリメント

テストステロンの分泌量は筋トレによって大きく変化することを解説しました。ここでは、筋トレにプラスすることで、さらにテストステロンの分泌を高める可能性のあるサプリメントについて解説します。

クレアチン

スポーツパフォーマンスの向上に非常に役立つとされるクレアチンには、テストステロンを増やす可能性があることも示唆されています。

クレアチンは、運動の際のエネルギー補給に使われる物質です。サプリメントとして摂取して、体内のクレアチンリン酸と呼ばれる物質量を増やすことで、運動の持続力や瞬間的な力発揮を向上させることができます。イランの研究者たちは、筋トレにクレアチンの摂取を組み合わせた際に、体内のホルモン量がどのように変化するかを調べる実験を行いました。実験では、クレアチンを摂取する期間を3日、5日、7日の3通りに設定した上で、被験者に筋トレを実施させました。その結果、クレアチンを5日または7日摂取したグループでは、テストステロンの値が上昇することが分かりました出典[13]

クレアチンそのものがテストステロン値の上昇に影響するのか、それともクレアチンによって筋トレの質が高まったためにテストステロン値も高まったのかについては、完全には解明されていません。しかしながら、クレアチンを摂取することで、テストステロンの値が上昇する可能性があることはお分かりいただけたのではないでしょうか。まだクレアチンを摂取したことのない方は、ぜひ試してみてくださいね。

 

ホエイプロテイン

プロテインには、牛乳を元にしたホエイプロテインやカゼインプロテイン、大豆を原料にしたソイプロテイン、卵から作られるエッグプロテインなどがあります。その中でも、ホエイプロテインは特に筋肉を大きくする効果が高いとされています。

ホエイプロテインは牛乳を精製することで作られ、豊富にたんぱく質を含みます。その中でも、BCAA(分岐鎖アミノ酸)を多く含むため、トレーニングで壊れた筋肉を回復させるには非常に効果が高いです。

アメリカの研究者は、大豆プロテインとホエイプロテインの両者について、摂取後に体内のホルモン量がどのように変化するかを調べる実験を行いました。実験では、筋トレ経験のある男性被験者に、14日間、大豆プロテイン、ホエイプロテイン、マルトデキストリン(プラセボ)のどれかを毎朝20g摂取させるようにしました。被験者はその後、10回6セットのスクワットを実施し、同時に血中のホルモンの値が測定されました。その結果、ホエイプロテインとマルトデキストリンを摂取したグループと比べて、ソイプロテインを摂取したグループでは、テストステロン値の上昇が少なくなることが分かりました出典[14]

ホエイプロテインとソイプロテインで迷った場合は、ホエイプロテインを選んでおけば、テストステロンという観点では問題がないと言えるでしょう。

 

ビタミンD

ビタミンDは魚類から多く摂取できるほか、日光に当たることで合成することもできる栄養素です。ビタミンDの不足が、テストステロンの値を低くしてしまう可能性があります。

ビタミンDが不足している102名の男性を対象とした2017年の研究では、1年間にわたってビタミンDのサプリメントを摂取させ、その効果が調べられました。実験の結果、ビタミンDを1年間摂取したところ、血中テストステロンの値の平均値が約28%上昇したことが分かりました出典[15]

外出して日光に当たる機会が少ないと、ビタミンDは不足しやすいです。マルチビタミンのサプリメントを活用して、不足分をうまく補うと、テストステロンにも良い影響が得られるでしょう。

 

テスノア

テスノアは、いわゆるテストステロンブースターと呼ばれるタイプのサプリメントです。その名前の通り、テストステロンの値を上昇させる効果のある成分で作られています。原料に含まれるテオブロマカカオとポメグランテは、実際の研究でも効果があることが分かっています。

インドの研究者は、テスノアの効果を調べるために、プラセボ、200mgのテスノア、400mgのテスノアをそれぞれ40名の被験者に、56日間摂取させました。その結果、テスノアを摂取したグループでは、男性更年期障害にみられる症状が緩和されたことに加え、血中のテストステロン値が、プラセボと比べて有意に向上したことが分かりました出典[16]

筋トレによるテストステロン上昇効果にテスノアをプラスすれば、さらに高い効果を得ることが可能になるかもしれないですね。
 

まとめ

今回は、テストステロンを増やす方法について主に解説しました。

テストステロンの値を高く保つことは、筋肉の発達という観点だけでなく、活動的な日常を送るためにも重要です。気分の落ち込みや意欲の低下を感じる場合は、テストステロンの値が下がっている可能性についても考えてみると良いでしょう。

テストステロンを具体的に増やす方法についても解説しました。基本的には、楽なトレーニングよりは、ある程度強度が高いトレーニングでよりテストステロンの値が上昇します。インターバルを短くしたり、10回ギリギリできる重量でトレーニングしたりすることが、その具体例でした。また、いくつかのサプリメントにはテストステロンを高める効果があるので、筋トレと併用するとさらに良い効果が得られるでしょう。

今回の内容を参考にテストステロンの値を改善して、より良い生活を送れるように意識してみてはいかがでしょうか。

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