有酸素よりも効果あり!?テストステロンを高めるHIITとは?
2022年12月29日更新

執筆者

NSCA-CPT/調理師

舟橋位於

東京大学理学部卒、東京大学大学院総合文化研究科修士課程終了。大学入学後に筋肉に興味を持ち、自分の体で学んだ理論を体現してきた。日本の筋肉研究で有名な石井直方教授のもとで学び、ティーチングアシスタントとして、学生へのトレーニング指導を行った経験も。自分が学んだ知識を伝えることで、一人でも多くの方の健康をサポートしたいと考えている。

HIITとは

HIITは”High Intensity Interval Training”の略語で、日本語では「高強度インターバルトレーニング」などと呼ばれます。

HIITのセッションは、1分程度の高強度運動を、間に1分から2分のインターバルを取りながら複数回実施することからなります。ウォーキングやジョギングでは、基本的には最初から最後まで負荷は一定であるのに対し、HIITでは強度に波が生じる点が特徴です。

心肺機能を強化するための運動としては、一定の心拍数を保ちながら比較的長い時間の運動を継続する様式が一般的ですが、HIITにも優れた心肺機能向上効果があることが分かっています。また、短時間で1回のセッションが終了するため、時間や体力などの制約により長時間の有酸素運動が実施できない場合でも実施できるというメリットがあります。

心肺機能向上以外では、ダイエット効果が高いことも特徴として挙げられます。一般的に、体に蓄えられている脂肪は、中強度の運動を長時間実施することで消費されると言われています。HIITは高強度の運動なので、運動の実施中には、主に体に蓄えらえた糖質がエネルギー源として消費されます。そのため、運動中にはそれほど脂肪は消費されないです。一方で、高強度の運動を行うと、運動後も代謝が高い状態が続くため、1日全体として消費カロリーが増加することになります。これにより、短時間の運動であるにも関わらず、エネルギー消費量を増加させて、ダイエットにつなげることが可能となります。

メリットがある一方で、非常に強度の高い運動なので、完璧に実行するためにはある程度の練習が必要となります。場合によっては、習熟したトレーナーによる指導を受ける必要もあるでしょう。また、安全面を考慮すると、広いスペースを確保したり、目的に合った有酸素運動マシンを用意したりする必要もあります。

 

テストステロンから読み解くHIITの特徴3つ

続いては、男性ホルモンであるテストステロンの分泌とHIITの関係を解説します。

テストステロンは精巣から分泌されるホルモンで、筋肉や骨といった体組織の発達に関わっています。また、やる気や意欲といった精神面にも作用することが分かっています。テストステロンの分泌量は加齢とともに低下していくため、場合によっては男性更年期障害の症状の原因になることもあります。

筋トレでテストステロンの分泌量が高まることは有名ですが、実はHIITにもテストステロンの値を高める効果があることが報告されています。

有酸素運動よりも高い効果

ジョギングやサイクリングのような有酸素運動でもテストステロンの値は高まりますが、HIITはそれらよりも高い効果を持つ可能性が示されています。

アメリカの研究者は、HIITと有酸素運動のそれぞれで、運動後のホルモン分泌量がどのように変化するかを調べる実験を行いました。HIITのセッションでは、90秒の高強度運動と90秒の低強度運動を交互に行う形式のHIITを42分から47分実施しました。一方の有酸素運動セッションでは、ややきついと感じる強度で45分間運動を継続しました。運動終了後に血液サンプルを集めて分析したところ、2つのグループでテストステロンの値の上昇が見られましたが、その上昇幅はHIITの方が高いことが分かりました出典[1]

テストステロンを効率よく高めたいと考える方は、有酸素運動に替えてHIITを実施する日を設けてみると良いでしょう。

 

筋肉への負荷が大きいほどテストステロンも増える

テストステロンを効率よく高めるためには、筋肉への負荷を高めることが重要です。筋力トレーニングに高いテストステロン値上昇効果があるのは、筋肉に集中的に強い負荷を与えられるからです。

筋力トレーニングほどではないですが、HIITでも、負荷の設定を高めることで筋肉に強い刺激を与えることが可能です。エルゴメータ(自転車運動を模した有酸素運動マシン)を用いる場合であれば、ペダルの抵抗を増やすことで、脚の筋肉にかかる負荷を増加させることができます。

ニュージーランドの研究者は、エルゴメータを用いて、強い負荷をかけたHIITと低強度のHIITを比較し、両者のテストステロン上昇効果を調べました。その結果、ペダルを回すための負荷が大きい高強度グループでは、運動後にテストステロン値が97%上昇することが分かりました。一方の低強度グループでは、テストステロンの上昇率は62%にとどまりました出典[2]

この研究結果を踏まえると、テストステロン値の上昇を狙ってHIITを実施する場合は、強度を高めることが有効だと言えるでしょう。注意したいのは、負荷を上げることばかりを意識するがゆえに、フォームが乱れたり、安全性が確保できなくなったりすることです。設定した時間を完遂できるような負荷設定を工夫してみましょう。

 

テストステロンの大敵・コルチゾールを減らす

テストステロンが筋肉や骨の発達を促すアナボリックホルモンであるのに対し、組織の分解を促すストレスホルモンであるコルチゾールという物質も存在します。

コルチゾールは、一般的に「ストレス」という言葉が用いられる精神的なストレスに反応して分泌されるほか、強度の高い運動を長時間行うことによる身体的なストレスによっても分泌されます。筋トレの適切な継続時間は60分から90分程度という意見は、コルチゾールの分泌量という観点でも説明されることがあります。

ストレスホルモンであるコルチゾールは、男性ホルモンであるテストステロンをはじめとするステロイドホルモンの合成を抑制することが知られています。男らしい生活を送るためには、テストステロンの分泌量を高めることと同時に、コルチゾールの分泌を抑えることにも目を向ける必要があります。そしてHIITには、コルチゾールを減少させる可能性があるとの報告があります。

アメリカの研究者をはじめとするグループは、活動的でない男性を対象に、HIITや筋トレとテストステロンやコルチゾールの関係を調べる実験を行いました。その結果、HIITを行ったグループでは、運動後のコルチゾールレベルが低下することが分かりました。またそれに伴い、コルチゾールに対するテストステロンの割合も大きく上昇したことも分かりました。一方で、筋力トレーニングのみを行ったグループや、HIITと筋トレを組み合わせて実施したグループでは、コルチゾールの減少は見られませんでした。出典[3]

1回のHIITでもコルチゾールレベルが低下する可能性が示されたことは、忙しくて定期的に運動できない方には朗報でしょう。HIITは短時間で終わる運動であるため、仕事が遅くなった日は、ジムでHIITをするだけでも良いでしょう。

 

HIITのやり方

最後に、HIITを実施する際のポイントをいくつか紹介します。

ぜひここで紹介する内容を押さえて、より効果の高いHIITを普段の運動に取り入れてみてください。


週3回の頻度で

1回のHIITでもコルチゾールレベルが低下したという研究結果を報告しましたが、より効果を得ることを考えるならば、定期的に運動を実施することが勧められます。

HIITは強度の高い運動であるため、週3回の頻度を今回は推奨します。例えば、月、水、金と1日おきに実施し、土日は完全な休養に充てるという感じです。

HIITを継続して実施することの効果については、ポーランドの研究者が研究結果を報告しています。この実験では、被験者はHIITとコントロールの2つのグループに分けられました。HIITグループは、週3回のHIITを8週間継続し、コントロールは同じ期間、特別な指示なく生活することを続けました。実験の結果、HIITグループでは、テストステロン値の上昇とコルチゾールレベルの低下が認められました出典[4]

テストステロンを効率よく高めたいならば、ある程度の頻度で実施することが重要だと言えそうですね。

 

中長期的に継続することも重要

頻度の次は運動の継続期間についてです。1回の運動効果が永遠に続くとは考えにくいので、できればHIITも長期間継続して実施したいです。

HIITは強度の高い運動なので、開始後2週間程度は身体的に負担を感じることが多いですが、次第に体が順応するため、最初を乗り越えて習慣化することが重要だと言えます。そのためには、意識して運動を継続しつつも、無理はせずに、休養が必要な場合はしっかり休むようにすることも大切です。

実際に、継続してHIITを行った場合に体に起こる変化を調べた研究もあります。被験者となった高齢男性たちは、基礎体力向上のための運動を6週間行い、その後、6週間のHIITを実施しました。その結果、6週間のHIITの実施後に、総テストステロン値が高くなったことが分かりました出典[5]

単発のHIITにもテストステロン値を高めることがあることはすでに解説しましたが、継続して運動を実施することで、よりその恩恵を受けられると言うことができるでしょう。

 

おすすめのメニュー

HIITにメリットがあることが分かったけれども、何から実行したら良いか分からないという方のために、3種類のおすすめHIITメニューを紹介します。異なる運動タイプからなる3種類ですので、ご自身の興味や環境で選び分けていただければと思います。

・運動場やトラックが使える方向け
走ることが好きでかつ広い運動場やトラックが使える方向けのHIITメニューとしては以下のようなものがあります。

1 スロージョギングやダイナミックストレッチを10分行って体を温める
2 全力のダッシュを30秒行う
3 休息のフェイズとして、90秒のスロージョギングを行う
4 2が5回終了するまで2と3を繰り返す
5 全身のスタティックストレッチを10分程度行う

このプログラムは、走る運動の経験がある方には馴染みやすいものと思われます。一方で、これまでに全力で走った経験が少なく、安全なフォームでの走行が確実にできない方には不向きです。

・運動習慣が少ない方向け
運動習慣が少ない方は、バランスを取って運動することが苦手な場合が多いです。そのような方は、ジムにあるエルゴメータを使ってHIITを実施すると、比較的安全にメニューを実行することができます。

1 楽に運動できる負荷にペダル強度を設定し、10分間のウォーミングアップを行う
2 ある程度力を加えないとペダルを踏めない強度に設定し、全力での運動を60秒行う
3 楽に運動できる負荷に戻して、120秒運動を続ける
4 2が5回終了するまで2と3を繰り返す
5 全身のスタティックストレッチを10分程度行う

エルゴメータでは、両手、臀部、両足の5点が固定されているため、バランスを崩して倒れることは少ないです。しかしながら、強度の高い運動を続けることにより、体が疲労してバランスが取れなくなることもあります。そのような場合は、運動の途中であっても無理はせずに中断して、一定の休息を取るようにすると良いでしょう。

・筋トレの要素を取り入れたい方向け
最後に紹介するのは、自重を使った筋トレを取り入れたHIITです。複数の筋トレを順番に行う運動様式にはサーキットトレーニングというものがあり、それに近い考え方の運動となります。

1 ダイナミックストレッチを10分間行って体を温める
2 スクワットを正確なフォームで15回実施する
3 腕立て伏せをできるだけ早いテンポで15回実施する
4 ニートゥーチェストを15回実施する
5 バーピージャンプを15回実施する
6 90秒のインターバル(完全な休憩)を取る
7 2から5までを1セットとし、合計で4セット終わるまで、2から6を繰り返す
8 全身のスタティックストレッチを10分程度行う

このHIITは、全身運動を取り入れたものになるため、負荷はそれなりに高くなります。自宅で運動をしていて特別な道具がない場合にもおすすめできるHIITです。

 

まとめ

今回は、HIITとテストステロンの関係について解説しました。

HIITは非常に強度が高い運動ですが、その分、たくさんのメリットがあることがお分かりいただけたのではないでしょうか。テストステロンの分泌を高めるといったホルモンの面でのメリットや、短い時間でも高い効果が得られるメリットがありました。

普段はHIITを行っていない方でも、たまにご自身の運動に変化を加える意味で、HIITを取り入れてみるのも良いかもしれませんね。HIITの導入により身体機能が改善し、元々行っていたスポーツやトレーニングに良い影響が出る可能性もあるでしょう。

ぜひ、今回の内容を参考にして、HIITに取り組んでみてくださいね。

 

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