テストステロンを増やす!?ブルガリアンスクワットの効果、やり方
2024年5月31日更新

執筆者

NSCA-CPT/調理師

舟橋位於

東京大学理学部卒、東京大学大学院総合文化研究科修士課程終了。大学入学後に筋肉に興味を持ち、自分の体で学んだ理論を体現してきた。日本の筋肉研究で有名な石井直方教授のもとで学び、ティーチングアシスタントとして、学生へのトレーニング指導を行った経験も。自分が学んだ知識を伝えることで、一人でも多くの方の健康をサポートしたいと考えている。

ブルガリアンスクワットとは?

ブルガリアンスクワットは、通常のスクワットと異なり、片足で動作するスタイルのトレーニング種目です。片足で負荷を支えることになるため、自重のトレーニングでも、比重に高い効果を得ることができます。

また、片足で動作するがゆえに、両足で行うトレーニングでは得られない特別な効果を得ることもできます。

ターゲットの筋肉

ブルガリアンスクワットは下半身全体に強い刺激を与えられる種目ですが、特に以下の3種類の筋肉(筋群)に負荷がかかります。

・大臀筋
お尻の大部分を形成する筋肉です。大臀筋の筋量が増えると、全体的にお尻が上方向に持ち上がった形状になるため、ヒップアップの効果が狙えます。ブルガリアンスクワットでは、しゃがんだ状態から立ち上がる際に強く収縮します。

・大腿四頭筋
太ももの前側に位置する4種類の筋肉の総称です。歩く動作に深い関係のある筋肉ですので、大腿四頭筋をしっかりと鍛えることで、歩行障害を防止することができます。ブルガリアンスクワットの動作の中では、しゃがむ際に引き伸ばされ、立ち上がる際に収縮します。

・ハムストリングス
太ももの裏側に位置する3種類の筋肉の総称です。地面を蹴り出す際に活動する筋肉であり、大腿四頭筋と協調して歩行に関与します。ブルガリアンスクワットの中では動作のバランスを取るために常に緊張した状態を維持しています。

 

効果

続いて、ブルガリアンスクワットに期待できる効果を紹介します。

・自重でも強い負荷をかけられる
ブルガリアンスクワットは片足で動作する種目なので、単純に計算すると、両足の時にかかる負荷の倍の負荷が片足にかかることになります。そのため、特別な器具がない場合でも、ブルガリアンスクワットを取り入れることで、高いトレーニング効果を得ることができます。

・体幹を固定する力がつく
片足で安定して動作するためには、体幹がぶれないように常に力を入れることが大切になります。このことは、スポーツの補強でトレーニングを行う方には朗報なのではないでしょうか。また、トレーニングをメインで行っている方にも、ブルガリアンスクワットで体幹が強化されることで、それ以外の種目の使用重量が伸びるという副次的効果があります。ブルガリアンスクワットを行う場合は、腹圧をかけて、上半身を固める意識を持つと良いでしょう。

・体の左右差に気づくことができる
人間の体は左右が完全に対称にできている訳ではないので、トレーニング中に歪みやねじれが生じることがあります。ブルガリアンスクワットは片足ずつ行う種目なので、これを続けることで、体の左右差に気づくことができます。片足はスムーズにしゃがめるもののもう一方は難しいという場合は、何がその原因なのかを探ることで、両足で行う種目のクオリティを上げられる可能性があります。

・テストステロンを効率よく分泌することができる
ブルガリアンスクワットは、両足で行うスクワットと比べて、効率よくテストステロンの分泌を促すとする研究があります。アメリカの研究者が行った実験では、10回実行できる負荷でブルガリアンスクワットと通常のスクワットを行った後に、血液中のテストステロンの値が調べられました。その結果、全体の運動量としてはブルガリアンスクワットの方が少なかったにも関わらず、テストステロンの分泌量には差がないことが分かりました出典[1]。このことは、ブルガリアンスクワットには効率よくテストステロンの分泌を促す作用があることを示す可能性があるでしょう。

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やり方

ここからはブルガリアンスクワットのやり方の解説です。まずは、一番基本となる自重で行うブルガリアンスクワットの解説です。

<やり方>

  1. 背の低いテーブルやソファーなどの、片足を乗せることのできる台を用意します。
  2. 台から半歩ほど離れた位置に立ちます。体型や年齢によって適切な足幅は変わるので、微調整していただいても構いません。
  3. 足の甲が触れるようなイメージで、片方の足を台に乗せます。
  4. 視線を前に保った状態を維持して、上半身が丸まらないように注意しながらしゃがみます。
  5. 前足が90度になるまでしゃがんだら、元の位置へ立ち上がります。
  6. 8回を終えたら、左右の足を入れ替えて同様に動作します。

<注意点>
片足で行う運動なので、バランスを崩しやすいです。壁に手を添えながら実施すると、比較的安全に動作することができます。

 

ブルガリアンスクワットのよくある誤り

続いてブルガリアンスクワットを行う中で生じやすい誤りについて解説します。エラー動作が積み重なると、大きな怪我につながることもありますので、毎回正しく動作できているかを確認しながらトレーニングするようにしましょう。

上半身が前傾しすぎている

動作中に上半身が前傾しすぎるエラーはたまに見られます。ブルガリアンスクワットを上手に行うためには、重心を安定させることが大切です。上半身が前傾すると重心が前方に移動し、バランスを維持することが難しくなります。重心をうまく感じ取って動作できないと、ブルガリアンスクワット以外の立位で行う動作全てにも悪影響が生じます。多少の前傾が起こることはありますが、あまりにも上半身が前にのめり出すようなフォームはミステイクだと知っておきましょう。

 

後ろ足の位置が近すぎる/遠すぎる

台の上に乗せる後ろ足の位置が近すぎたり遠すぎたりすることも問題になります。トレーニングに習熟すると、特別な目的を持ってあえて後ろ足の位置を変更することがありますが、そうでない場合は、極端な配置にはしない方が良いです。足の位置が近すぎると、足が台に接触する面が小さくなるため、その分バランスを取ることが難しくなります。逆に足が遠すぎる場合は、すねなども台の上に乗ることになります。そうすると、負荷の大部分を後ろ足で支えることになってしまい、前足に対するトレーニング効果が低減することになります。まずは、足の甲が台に触れることを指標にしましょう。

 

後ろ足の位置が高すぎる

続いては、後ろ足を置く台の高さについてです。台の高さが高ければ、それだけ後ろ足の位置も高くなります。このようなポジションでは、しゃがんでいく際にバランスを取ることが非常に難しくなります。また、開始姿勢を取ることも難しくなるでしょう。足を置く台の高さは、30cmから40cm程度が良いです。ジムでトレーニングする場合は、ベンチ台を利用すると正しい動作が行いやすくなります。

 

後ろ足に力を入れすぎている

ブルガリアンスクワットは、主に前側の足に強い負荷をかけるトレーニングです。そのため、後ろ足で重量を支える状態になっている場合は、トレーニング効果が最大限に得られていないことになります。このような状態は、後ろ足の大部分が台に乗っている場合に生じやすいです。後ろ足の甲が台に触れる状態を維持することで、後ろ足の負担を減らし。自然と前側の足に集中できます。

 

前足のかかとが上がっている

かかとが上がるミステイクは、スクワット系の種目で生じやすいです。この原因としては、上半身が前方に移動してしまっていることと、足関節が固いことの2点が考えられます。前者であるならば、動作中はできるだけ上半身を立てた状態を意識すると改善できることがあります。後者の場合はすぐには改善は難しいので、かかとの下に薄いプレート等を置いて段差を設けることが対策になります。いずれにしても、かかとが浮いた状態で動作を継続すると、転倒の危険がありますので、注意するようにしましょう。
 

ブルガリアンスクワットのバリエーション

最後に、ブルガリアンスクワットのバリエーションを4種類紹介します。トレーニング環境や持っている用具に合わせて、自分に適したブルガリアンスクワットを選んでみてください。

バーベルブルガリアンスクワット

バーベルブルガリアンスクワットは、バーベルを用いて行うタイプのブルガリアンスクワットです。主にジムで行うことが多い種目ですが、家庭に簡易的なタイプのバーベルがある場合は、代用して実施することができます。

<やり方>

  1. パワーラックを用いて、鎖骨の高さにバーベルをセットします。
  2. ベンチ台を用意して、後ろに引いた足を乗せられるようにします。
  3. バーベルを担いだら、片方の足をベンチ台に乗せます。
  4. 目線を前に保ち、上半身が丸まらないように気をつけながらしゃがんでいきます。
  5. 前足が90度になるまでしゃがんだら元の位置へ立ち上がります。
  6. 8回を終えたら、左右の足を入れ替えて同様に動作します。

<注意点>
バーベルを担ぐと重心が上方に移動するため、バランスを崩しやすくなります。まずはウエイトを追加せずに、バーベルのみで実施すると良いです。
片方の足が終わった際に息切れしている場合は、1分程度のインターバルを取ってからもう一方の足に移行すると、トレーニングの質を高く保つことができます。

 

ダンベルブルガリアンスクワット

最も一般的に行われるタイプのブルガリアンスクワットがダンベルを用いたものです。この種目のメリットは、重心が常に下方に位置するので、バランスを崩しにくい点です。ダンベルを持ち替えることで、負荷を容易に変更することが可能です。

<やり方>

  1. ダンベルを1セット用意します。自重から初めてステップアップする方は、10kg程度から始めると良いです。
  2. ベンチ台を用意して、後ろに引いた足を乗せられるようにします。
  3. ダンベルを左右それぞれの手で保持したら、片方の足をベンチ台に乗せます。
  4. 目線を前に保ち、上半身が丸まらないように気をつけながらしゃがんでいきます。
  5. 前足が90度になるまでしゃがんだら元の位置へ立ち上がります。
  6. 8回を終えたら、左右の足を入れ替えて同様に動作します。

<注意点>
重量が上がってくると、バランスを崩して転倒しやすくなります。特にセットの後半で疲労している場合は注意が必要です。
重量が上がってダンベルを保持することが難しくなった場合は、リストストラップを使用すると手にかかる負担を軽減できます。

 

チューブブルガリアンスクワット

安価に手に入れることのできるチューブもブルガリアンスクワットに活用することができます。負荷のレベルはバーベルやダンベルに比べると小さいですが、それでも自重のみで行う場合よりは高い負荷を得ることができます。

<やり方>

  1. チューブの中央部を両足で踏んだら、握る位置で負荷を調節します。
  2. ベンチ台を用意して、後ろに引いた足を乗せられるようにします。
  3. チューブを左右それぞれの手で保持したら、片方の足をベンチ台に乗せます。
  4. 目線を前に保ち、上半身が丸まらないように気をつけながらしゃがんでいきます。チューブの特性上、しゃがむ際には負荷はかかりません。
  5. 前足が90度になるまでしゃがんだら元の位置へ立ち上がります。この時、チューブが伸びる抵抗を感じられれば正しく動作できています。
  6. 8回を終えたら、左右の足を入れ替えて同様に動作します。

<注意点>

チューブが伸びる際に負荷がかかるため、立ち上がる際に強い力が必要になります。うまく動作できない場合は、チューブの握る位置を変えることで、負荷を調節してください。

 

ブルガリアンジャンプスクワット

自重のブルガリアンスクワットにジャンプ動作を組み合わせた種目です。しゃがんだ状態から反動で上方へジャンプするように動作します。筋力強化の他に、バランス感覚の向上や、瞬間的な力発揮能力の獲得などの効果が狙えます。

<やり方>

  1. ベンチ台を用意して、後ろに引いた足を乗せられるようにします。
  2. ベンチから半歩ほど離れたら、片方の足をベンチ台に乗せます。
  3. 目線を前に保ち、上半身が丸まらないように気をつけながらしゃがんでいきます。
  4. 前足が90度になるまでしゃがんだら、反動を利用して上方へジャンプします。
  5. バランスを取りながらしっかりと着地したら、次のジャンプ動作に移行します。
  6. 8回を終えたら、左右の足を入れ替えて同様に動作します。

<注意点>

強度の高いエクササイズです。特に、膝関節や足関節に瞬間的に強い負荷がかかるため、ある程度トレーニング経験を積んでから取り組むことをおすすめします。
ジャンプする高さを調節することで、負荷の量も上げ下げできます。
 

まとめ

ブルガリアンスクワットの解説はいかがだったでしょうか。

通常のスクワットと比べると、強度が非常に高いトレーニングではありますが、その分効果も高いことがお分かりいただけたかと思います。左右差の改善はスクワットでは得られない効果なので、スクワットの記録が停滞している方は、ブルガリアンスクワットで体の調子を調べてみても良いでしょう。

ブルガリアンスクワットのさまざまなバリエーションについても紹介しました。バーベルやダンベルを使えば負荷を上げられますし、ジャンプ動作を取り入れれば、よりスポーツに近い能力の獲得に繋げられます。

ぜひ普段のトレーニングにブルガリアンスクワットを取り入れて、トレーニングの質を高めてみてくださいね。

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