亜鉛に確認されている7つの効果と推奨量
2023年11月21日更新

執筆者

管理栄養士

西村 俊司

給食施設や食品メーカーなどを経て、現在は老人福祉施設で栄養士として勤務。専門学校卒業後18年のブランクを経て、管理栄養士国家試験に初挑戦し、一発合格。食のプロフェッショナルとしての知識と経験を生かしながら、心も体も喜ぶ「食の提案」を多くの人に届けたいと思っている。家では妻と2人の子供との4人暮らし。食べることや料理を作ることが大好き。趣味は自転車とキャンプとDIYなオジサン。

​​そもそも亜鉛とは何か知っていますか?

ここでは亜鉛の基本情報についてご紹介します。

どんな栄養素?

亜鉛は、身体の成長や健康維持に欠かせないミネラルの1つです。ヒトの体では合成できないため、食事やサプリメントで継続的に摂取することが必要な必須微量元素にあたります。

成人の体内に約2g含まれており、全身の筋肉や骨、皮膚、肝臓、腎臓、脳などに幅広く分布しています。男性の場合はこれらの臓器に加えて、前立腺や精巣にも亜鉛が含まれています。そのため精子の生成などの生殖に欠かせない栄養素の1つとして有名です。

 

体の中でどんな働きをする?

亜鉛は体内で、酵素の一部として利用されています。特に細胞分裂やタンパク質合成、代謝に関わる酵素には亜鉛が含まれていて、ヒトの生理機能の維持に重要な役割を果たしています

また、免疫機能維持、疾病の治癒、正常な味覚の維持等にも重要な栄養素とされているため、ヒトが生活をしていく上で非常に大切なミネラルなのです出典[1]

 

不足するとどんなリスクがある?

亜鉛が欠乏するとどのようなことが起こるのでしょうか。

亜鉛はヒトの全身で必要なミネラルなので、欠乏するとさまざまな症状が現れます。よく知られているのが味覚障害ですが、そのほかにも皮膚炎や口内炎、また免疫力低下による感染症感染、慢性疾患につながることも指摘されています出典[2]

令和元年に厚生労働省によって行われた調査では、20歳以上の亜鉛摂取量の中央値は男性で8.6mg、女性で7.2mgと報告されています出典[3]。つまり、日本人の半分以上の成人は亜鉛の推奨量を摂取できていないという結果が出ているのです。

亜鉛は日々の食事では十分な量を摂取しづらく、不足しがちなミネラルと言えるでしょう。亜鉛不足だと感じる方はサプリメントなどを使って不足分を補うことが大切です。

 

どんな食材に含まれている?

亜鉛が多く含まれている食品は以下の通りです。(いずれも可食部100gあたり)出典[4]

  • 牡蠣 14.0mg
  • 牛肉(かた) 6.4mg
  • 豚レバー 6.9mg
  • アーモンド 3.7mg
  • くるみ 2.6mg
  • 油揚げ 2.1mg
  • 納豆 1.9mg
  • 玄米 1.8mg
  • 鶏卵 1.3mg

動物性食品では、貝類や赤身の肉、レバーなどに多く含まれています。また、植物性食品では大豆製品に多く含まれます。米などの穀物にも含まれますが、ヌカや胚芽などに多く含まれていますので、米であれば玄米、小麦であれば全粒粉を使うと、効率的に亜鉛を摂取できます。

 

亜鉛に確認されている6つの効果

ヒトの体内でさまざまな働きに関わっている亜鉛。どのような働きがあるのでしょうか?ひとつずつ確かめていきたいと思います。

1.テストステロン量を正常に戻す

亜鉛はテストステロンの生成に携わっており、テストステロン量を正常に保つ機能があります。つまり、普段不足している人が亜鉛を摂取することにより、テストステロンが正常に戻る可能性があるのです。

テストステロンはコレステロールから合成される男性ホルモンの一つ。性機能の働きや筋肉の増大、骨格の形成などを促進します。思春期から分泌が活発になり、おおよそ25歳ぐらいをピークに分泌量が減少していくことが分かっています。

年齢とともに筋肉が衰え太りやすくなったり、男性機能に問題が出たりする原因の一つは、テストステロンの分泌量が減少するからとされていますね。

しかし、亜鉛が欠乏すると、男性ホルモンであるテストステロンの合成・分泌が低下すると言われています。

実際にアメリカのウェイン州立大学が行った研究では、4人の健康な男性が亜鉛の摂取量を20週間制限して血中のテストステロン濃度を計測したところ、有意に低下していましたまた、同研究で亜鉛不足の高齢男性に6ヶ月間亜鉛を補給させたところ、血中テストステロン濃度が正常値の範囲で増加したのです。この結果から論文では、亜鉛が血中テストステロンの調節に重要な役割を果たす可能性があると結論付けられています出典[5]

いつまでも若々しくありたい男性にとって、亜鉛は大切なミネラルなのです。

 

2.精子数の改善

亜鉛は精子の形成に使用される事が分かっています。詳細なメカニズムは不明ですが、研究でも亜鉛欠乏により精子の減少や男性不妊に繋がる等、関連性が述べられているのです出典[6]

逆に亜鉛を摂取する事で、精子の量を増やす事ができるかもしれません。オランダの病院で行われた研究では、血中亜鉛濃度が正常な不妊症の男性103人に亜鉛と葉酸を同時摂取させたところ、正常な精子の総数が74%増加しました出典[7]

妊娠を望む夫婦にとって、亜鉛は必要不可欠なミネラルなのですね。

 

3.風邪の治りを早める

亜鉛は免疫機能の維持にも重要な役割を担っています。免疫機能というのは細菌やウイルスなどの外敵を排除する機能のこと。免疫機能が低下すると風邪をひきやすくなったり感染症に罹りやすくなったりします。

亜鉛摂取により免疫機能を正常に維持することで、風邪の治りを早めることができるのです。

海外で風邪をひいた患者575人を対象に亜鉛入りトローチを使用したところ、偽薬を与えた対象者に比べて亜鉛入りトローチを与えた患者は風邪の発症期間が平均して2/3程度まで短くなったという研究結果も出ています出典[8]

忙しいビジネスパーソンにとって風邪は大敵。亜鉛をしっかり摂取して免疫力の高め、ハイパフォーマンスな体を目指しましょう。

 

4.うつ病の改善

忙しいビジネスパーソンは、毎日多くのストレスに向き合っています。そのストレスを処理する脳にとっても亜鉛は非常に大切な栄養素です。

心の病である「うつ病」。実は血液中の亜鉛濃度が低いと、うつ病を発症するリスクや重症化するリスクが高くなると海外の研究で明らかになっています出典[9]

何かとストレスがかかる現代社会、だれがうつ病になってもおかしくない時代です。しっかりと亜鉛を補給して、うつ病の予防と改善に努めましょう。

 

5.皮膚トラブルの改善

亜鉛は細胞分裂タンパク質合成に必要なミネラルです。

ヒトの皮膚も細胞でありタンパク質。そのため、皮膚トラブルの回避に、亜鉛はとても大切な役割を果たしています。皮膚と毛髪には体内の亜鉛の約8%が存在すると言われており、皮膚の再生や新陳代謝を担っています出典[10]

亜鉛が不足すると皮膚の新陳代謝がうまく行かないため、痒みや炎症を伴う皮膚炎などに繋がりやすいのです。若々しさは健康な皮膚が重要です。十分に亜鉛を摂取して、いつまでも若々しくいたいですね。

 

6.貧血の改善

貧血といえば、真っ先に鉄分の不足を思い浮かべるのではないでしょうか。実は亜鉛が不足した場合も貧血になるのです。

亜鉛は全身に酸素を運ぶ役割をもつ赤血球を作るのに必要なミネラルであり、亜鉛不足により赤血球がうまく作られなくなるため、貧血状態になってしまいます出典[10]

特に日頃からスポーツをしている方は、汗などから亜鉛が排出されるほか、運動によって壊れてしまう赤血球を補充するため、より多くの亜鉛が必要となります。日々のスポーツを日課にされている方は、貧血にならないためにも、しっかりと亜鉛を補充しましょう。

 

7.骨を健康的に保つ

ヒトの体を支えている大事な骨。骨は体を支える芯としての役割以外に、機能的に必要なカルシウムの貯蔵庫としての役割があります。

そのため、常に骨への貯蔵と骨からの分解を繰り返しているわけですが、年齢とともに貯蔵と分解のバランスが崩れ、骨が脆くなっていきます。これが骨粗鬆症の原因となります。

亜鉛は骨へカルシウムを貯蔵する機能に必要なミネラルなので、亜鉛不足により貯蔵と分解のバランスが崩れ、骨粗鬆症になりやすくなってしまうのです出典[11]

いつまでも健康的な骨を維持するために、十分な亜鉛の摂取が必要です。

 

過剰摂取のリスクと推奨摂取量

次に過剰摂取のリスクと薬との飲み合わせについてご紹介します。

過剰摂取のリスクについて

亜鉛は不足しやすい栄養素ですが、過剰摂取による副作用もあることも忘れてはいけません。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、亜鉛の耐容上限量(健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限)成人男性で40mg/日、成人女性で35mg/日と設定されています出典[12]

海外の研究では、習慣的に50〜150mgの亜鉛を摂取した被験者に、胃腸障害が確認されました出典[13]また、亜鉛は鉄や銅など他の微量ミネラルと相互に影響し合うため、亜鉛の過剰摂取により鉄や銅などの吸収障害が起こるとされています。

日本人が平均的、日常的に摂取する食品により過剰摂取が起こることはありませんが、サプリメントなどの亜鉛強化食品を使用する場合は、含まれている亜鉛の量と、普段摂取している量に注意が必要です。

亜鉛は日々のメニューの中で摂取量が増減しやすいミネラルのため、厚生労働省も1〜2週間の範囲の中で十分な摂取を目指すべきとしています出典[12]。不足しやすいミネラルであることは間違いないため、普段の食事を見つめ直し、不足しないよう適宜サプリで補うのがおすすめです。

 

薬との飲み合わせ

持病があり、薬を服用している方は、亜鉛の摂取により薬の効果を弱めてしまう恐れがあります。まずはかかりつけの医師、もしくは薬剤師に相談しましょう。特に、以下の薬を服薬されている方は注意が必要です出典[1]

  • 抗生物質
  • 抗リウマチ剤

一部の抗生物質は、亜鉛と反応して腸からの吸収が阻害され、体内での働きに支障をきたすと言われています。また、リウマチに処方される薬として一般的な「ペニシラミン製剤」は、亜鉛により体内への吸収および作用が阻害されることがわかっています。

 

まとめ

亜鉛はヒトの体の新陳代謝をはじめ、全身でとても大事な機能を担っている、大切な栄養素の一つです。不足しがちな栄養素なだけに、普段どれぐらいの亜鉛が摂取できているのか、見つめ直してみることをお勧めします。また、食事で取りにくいミネラルですので、不足する分はサプリメントなどで摂取してみてください。

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