バナナはテストステロンの減少を食い止める!?栄養素や効果的な食べ方
2024年3月25日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

バナナってどんな果実?

バナナという果物の優秀さ、とりわけその栄養価の高さは広く知られているところではないでしょうか。バナナは糖質に加え、ビタミンやミネラル、食物繊維など、様々な栄養素が含まれており、特に運動時のエネルギー補給に適していると言われています。

日本の温暖な地域でも栽培されることがあるようですが、日本で売られているバナナのほとんどはフィリピンなど東南アジアの熱帯地域です。しかしこの海外のバナナ、輸入時には黄色をしておらず、緑色の未熟な状態で積み込まれています。完熟したバナナに付く害虫が日本に入るのを防ぐため、熟したバナナを輸入することは、植物防疫法という法律で禁止されているのです。

緑色の未熟な状態で輸入したバナナが、黄色くなって店頭に並べられているという変化には、エチレンという植物ホルモンが関係しています。このエチレンは果実の成熟を促すホルモンであり、収穫後のバナナであってもこのエチレンのおかげで熟成を進めることができるのです。

 

バナナに含まれる栄養素

栄養価の高いバナナですが、具体的にはどのような成分が豊富なのでしょうか。以下ではバナナに含まれる栄養素とその特徴について簡単に説明します。

糖質

バナナの糖度は約20%ほどと、果物の中でもかなり甘い部類に相当しますが、その糖の構成成分に特徴があります。

一般的な果物の糖質はブドウ糖(グルコース)や果糖(フルクトース)で構成されているのに対し、バナナはでんぷんやショ糖(スクロース)など、多糖類や二糖類と呼ばれる分子の大きな糖も含んでいます出典[1]

分子の大きな糖は消化・吸収に時間がかかり、分子の小さな糖は速やかに吸収されます。バナナには様々な大きさの分子の糖が含まれているため、速やかにエネルギー補給を行えるだけでなく、そのエネルギーを持続させる働きにも長けているのです。

 

レジスタントスターチ

レジスタントスターチとは、食物繊維のような性質を持つ「難消化性でんぷん」のことです。胃や小腸で消化吸収されず大腸の奥まで届き、腸内細菌の栄養源になることで知られています。レジスタントスターチは水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方の性質を併せ持つことから、LDLコレステロール値を下げる効果や、血糖値の上昇を緩やかにする効果、腸内環境を整え便通を改善する効果、病原性の微生物や大腸がん細胞の発生リスクを下げる効果、などが期待されています出典[1]

ご飯や焼き芋などのでんぷんを多く含む食品は、一度冷やすことでその一部がこのレジスタントスターチに変わることが近年明らかになっています。しかしバナナにはそれ自体にレジスタントスターチが含まれているため、加工不要でそのまま手軽に食べられる、安定したレジスタントスターチの供給源として注目されています。

 

ビタミン・ミネラル類

 

バナナに含まれるビタミン類で特筆すべきはビタミンB群です。ビタミンB1、B2、B6など、栄養素の代謝に欠かせないビタミン類をバナナは豊富に含んでいるのです。

私たちが摂取した糖質をエネルギーに変えるには、ビタミンB群の働きが欠かせません。バナナを食べることで、エネルギー源となる糖質と、その糖質をエネルギーに変えるためのビタミンB群を同時に摂取することができます。即座にエネルギー補給を行いたい場合の食品として適していると言えるでしょう。

また、ミネラル類では生の果物に豊富であるカリウムはもちろんのこと、マグネシウムの含有量が高いことも特徴として挙げられます。マグネシウムもまたエネルギーを産生するために必要な栄養素であるほか、「補酵素」という、代謝に欠かせない酵素の働きをサポートする役割を持っています。

マグネシウムは不足すると骨や神経にも影響が出る場合があり、生体において非常に重要なミネラルのひとつです。欠食や偏食などで日頃の食事が不規則である場合には不足が起こりやすいため、手軽に摂取できるバナナはマグネシウムの補給手段としても役立ちますね。

 

トリプトファン

バナナには必須アミノ酸の一種であるトリプトファンが含まれています。体のたんぱく質を合成するために必要不可欠なアミノ酸であるほか、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの材料としても活躍します。

トリプトファンの豊富な食品はバナナの他にも、肉類や卵などの動物性食品、大豆やナッツ類などがありますが、バナナはトリプトファンだけでなく、セロトニンの合成に必要なビタミンB6や糖質も豊富に含んでいます。バナナはそれ単体でセロトニンを合成する能力に優れているため、セロトニンの供給手段としても期待できるでしょう。

 

ブロメライン

ブロメラインとは、バナナやパイナップルに含まれているたんぱく質分解酵素です。このブロメラインには炎症を鎮める効果、血小板凝集を抑制し血液をサラサラにする効果、創傷治癒を促進する効果などが確認されており、高い機能性があるとして評価されています出典[2]

 

 

バナナはテストステロンの減少を食い止める!?

このように、バナナに含まれる栄養素は様々な健康効果をもたらしますが、テストステロンとの関係において注目したいのは、高い機能性を持つブロメラインです。ブロメラインは抗炎症作用を持つため、激しい運動により筋肉で生じる炎症反応を抑え、疲労や筋肉の損傷を軽減する効果があると考えられています。

テストステロンを減少させる運動として、休みなく行われる毎日の筋力トレーニングや、長距離を走るフルマラソンなどが挙げられます出典[3]。筋肉の合成を促進する働きを持つテストステロンを失うことで、筋力トレーニングの効率が悪くなるという可能性も指摘されていました。

そこで、持久力を必要とする競争サイクルレースにおいて、運動時にブロメラインを供給することにより、筋肉の損傷・疲労度合いと血清テストステロン濃度がどう変化するかを調べる試験が行われました。

通常であれば筋肉損傷を示す血清クレアチニンやミオグロビン濃度が上昇し、テストステロン濃度が低下します。しかしこの試験においてブロメラインを供給したところ、血清クレアチニンやミオグロビン濃度の低下は確認できなかったものの、参加者の主観的な疲労度の改善と、テストステロン濃度を維持する傾向が確認できました出典[4]

このように、ブロメラインの補給は長時間の運動によるテストステロンの喪失を防ぎ、疲労感を軽減することで運動のパフォーマンス向上に繋がる可能性があります。ブロメラインを含むバナナを運動時に摂取することは、エネルギー補給の観点のみならず、テストステロンの維持にも役立つと言えそうです。

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バナナのその他の健康効果

運動時のテストステロン濃度の維持、および疲労軽減効果が大いに期待できるバナナですが、得られる健康効果は他にも数多くあります。以下ではバナナの摂取により期待できる体への良い影響について解説します。

エネルギーを供給する

バナナはブドウ糖や果糖に加え、でんぷんやショ糖など、様々な種類の糖質を含むという特徴を持ちます。

バナナはすぐエネルギーになるにもかかわらず、腹持ちが良いことでも知られています。その理由がこの、形状や性質の異なる糖を多数含んでいるという特徴にあります。すぐにエネルギーとなるブドウ糖から時間をかけてエネルギーになるでんぷんなど、消化や吸収にかかる時間がそれぞれ異なるため、そのためバナナの糖質は体の中で長持ちするのです。

スポーツ時のように、即座にエネルギーを供給し、その後のエネルギー量も維持したいという場面において、バナナの摂取は効果的であると言えそうですね。

 

血糖値の改善

バナナの、様々な糖質を含むという特徴は、血糖値の急降下を抑えるという効果にも繋がります。摂取直後はブドウ糖など分子の小さな糖が速やかに吸収され血糖値を上げ、しばらくするとデンプンやショ糖などが分解を受けて吸収されていきます。糖質が豊富なバナナではありますが、摂取した糖質が一気に吸収されるわけではないため、血糖値を緩やかに上昇させる食品であると言えるでしょう。

バナナに含まれる豊富な食物繊維や、レジスタントスターチの存在も、血糖値の上昇を緩やかにする効果を発揮してくれるため%%%出典1%%%、血液や血管に負荷のかからない、良質な果物として食べることができますね。

 

セカンドミール効果

バナナの摂取で注目される考え方に「セカンドミール効果」というものがあります。二番目の食事後の血糖値に、一番目の食事内容が影響を及ぼすという考え方を、一般に「セカンドミール効果」と呼びます。朝食を摂取することで、二番目に摂った食事(セカンドミール)である昼食の血糖値を低く抑えられることが分かっており、血糖コントロールにおける朝食の重要性を考える際に、このセカンドミール効果が取り上げられることがあります。

基本的に、朝起きてから1回目の食事は、長く食べ物を体に入れていないため、血糖値が大きく上がりやすいことが分かっています。朝食を抜いた後に昼食を摂取したり、おにぎりやパンといった炭水化物の含有量が高い食品を単体で摂取したりした場合には、特に血糖値が大きく上がりやすいため注意が必要です出典[5]

一日を通しての血糖管理において重要なのは朝食の質です。朝食として食物繊維やレジスタントスターチが豊富なバナナを摂取しておくことで、朝食の血糖値の上昇を緩やかにする効果が得られるだけでなく、その後の昼食における血糖値も低く抑えることができます。手軽にエネルギー補給ができ、食物繊維とレジスタントスターチの供給により血糖値の急上昇を抑えられるバナナを利用することで、血糖コントロールを良好にする効果が期待できるでしょう。

 

睡眠の質のサポート

バナナには「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンが含まれています。メラトニンには自然な入眠をサポートする働きがあるため、睡眠の質の向上に役立つと考えられています。

また、バナナに含まれるトリプトファンやビタミンB6、糖質などを材料として作られる「幸せホルモン」であるセロトニンですが、これが夜になるとメラトニンに変化することが分かっています。夜のメラトニンを十分に確保するためには、朝のセロトニン合成が十分に行われる必要がある、ということですね。

バナナを食べることによる睡眠の変化を調べた臨床試験において、130g/日および260g/日のバナナの摂取を2週間続けたところ、睡眠障害に悩む高齢者の症状が改善したという結果が得られています。症状の改善は260g/日のバナナを摂取した群で最も多かったことから、1日2本程度のバナナを摂取することで睡眠障害を軽減する効果が期待できると考えられています出典[6]

 

リカバリーを促進する

バナナに含まれるブロメラインによる抗炎症作用が、運動後の筋肉の損傷や、運動に伴う身体の炎症を軽減する可能性があることが分かっています。

75kmのサイクリングを行う22~50歳の男女を対象に、バナナを摂取した際の身体の炎症反応について調べるランダム化比較試験が行われました。その結果、バナナを摂取した群は、水のみ、あるいは砂糖飲料を摂取した群と比較して、炎症反応を促進するシクロオキシゲナーゼ(COX-2)を産生するために必要なmRNAの発現量が減少していたことが明らかになりました出典[7]。このように、バナナの摂取により、身体の炎症を引き起こす物質の産生を軽減する効果が期待できるようです。

また、激しい運動による疲労や炎症から回復するためにはエネルギーを供給する必要があります。バナナに含まれる豊富な糖質により、炎症を抑えると同時に速やかなエネルギー補給も可能となるため、運動痔に摂取する食品として適していると言うことができるでしょう。

 

ストレスレベルの軽減

バナナに含まれるトリプトファンやビタミンB6、糖質はセロトニンの材料として機能するため、気持ちを落ち着かせたり気分を安定させたりする効果が期待できます。また、バナナの摂取により、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの体内濃度が減少する可能性があることが分かっています。

健康な男女を対象に、毎日2本のバナナを2週間継続して摂取することによるストレス軽減効果を調べたランダム化比較試験によると、バナナ摂取群の約半数で、唾液中のコルチゾール濃度や、ストレスマーカーとして機能するクロモグラニンAなどが減少していました。同研究ではバナナの継続的な摂取により、腸内環境が改善されたことがストレス軽減の理由となっているのではと考察されています出典[8]

セロトニンのほとんどは腸で合成されていることが分かっています。腸内環境を整えてセロトニンの合成効率が上がることにより、気分の安定やストレスの軽減がもたらされると考えられます。バナナに含まれる食物繊維やレジスタントスターチを継続して摂取することで、腸内環境が改善し、ストレスを低減する効果が期待できるでしょう。

 

バナナの効果的な食べ方

テストステロン濃度の維持のみならず、様々な健康効果を有するバナナですが、どのようにして摂取するのが効果的なのでしょうか。以下ではバナナを摂取する際に加えたい工夫や、摂取上の注意点について説明します。

色による栄養素の違いを知る

店頭で購入できるバナナのほとんどは成熟した黄色いものですが、熟する前の緑色のバナナが売られていることもあります。

バナナは熟することでレジスタントスターチが減少し、ブドウ糖や果糖が増加します。皮が黄色くなるにつれて、レジスタントスターチの量は8%から2%に減少することが分かっています出典[1]

緑色の未熟バナナは、エネルギーの供給源には向かないものの、血糖をコントロールしたり腸内環境を整えたりする効果は、黄色のバナナよりも多く期待できると考えられます。しかし皮全体が未熟であるバナナは甘味がほとんどないため、常食には向きません。

そこで、レジスタントスターチの含有量が多いバナナを選ぶ方法として、バナナの茎の部分だけに緑色が残っている「グリーンチップバナナ」を探してみることをオススメします。グリーンチップバナナは甘みがありながらもレジスタントスターチを豊富に含むため、食べやすいレジスタントスターチの供給源として期待できるでしょう。

 

効果的な保存方法

バナナは熱帯で栽培される果物であるため、冷蔵庫で保存すると冷風により傷んでしまいます。15~20℃での常温保存が好ましいでしょう。また熟したバナナをテーブルに置いておくと、テーブルと接触した面が傷みやすくなるため、山型に置くか、バナナスタンドなどを活用して吊るすようにしてみましょう。

夏場の気温が高い頃に常温保存すると、追熟が早く起きてしまい、購入したバナナが一斉に食べ頃を迎えてしまいます。追熟を防ぎ長く保存したい場合は、バナナの房から一本ずつ分離し、新聞紙に包んで冷蔵庫の野菜室に入れてみましょう。新聞紙に包むことで直接の冷気からバナナを守りつつ、追熟に適した温度帯である15~20℃を避けることでバナナを長持ちさせることができますよ。

 

調理上の注意点

そのまま食べることの多いバナナですが、料理に使用すれば自然な甘みを引き出すことができます。パンケーキやマフィンなどと相性が良く、バナナを使った焼き菓子を好んで食べている方もいらっしゃるかもしれませんね。

加熱により増加する栄養素として、フラクトオリゴ糖が挙げられます。一方、ブロメラインはたんぱく質分解酵素であるため熱に弱く、加熱調理によって失活してしまいます。腸内環境を整えたい場合には加熱調理が効果的ですが、ブロメラインの抗炎症作用を期待するのであれば加熱は控えるべきでしょう。求める健康効果によって、加熱の是非を判断する必要がありそうですね。

 

皮ごと食べるのもアリ

果物には皮や皮の付近にポリフェノール類などの機能性成分が豊富である、という話を聞いたことはありませんか? 実はバナナの皮にも同じことが言えます。

バナナに含まれるルテインなどのカロテノイド類は、果肉よりも緑のバナナの皮に多く含まれていることが分かっています。抗酸化作用や抗炎症作用が期待できるため、皮ごと食べられるバナナを利用することで、更なる運動パフォーマンスの向上効果やテストステロンの維持効果が得られる可能性があります。

また、バナナの皮に含まれるエタノール抽出物が、テストステロンに関わる酵素である5α-リダクターゼを阻害するよう働く可能性が、マウスを用いた動物実験により示されています。実験では、去勢済みのマウスにバナナの皮のエタノール抽出物を与えた結果、前立腺の再肥大が抑制されたことが確認されました出典[9]

5α-リダクターゼは体内のテストステロンと結合することでジヒドロテストステロンというホルモンに変化します。ジヒドロテストステロンは男性ホルモンの一種ではありますが、男性の薄毛やニキビ、前立腺肥大などのリスクを高めるため、積極的には増やしたくないホルモンでもあります。

テストステロンと5α-リダクターゼが結合することによる悪影響を避けるため、バナナの皮を食べることが有効に働く可能性があります。毎日の食事にバナナを取り入れる際には、皮ごと食べられるバナナを選び、スムージーなどに利用してみるのもいいかもしれません。

 

まとめ

手軽なエネルギー補給ができ、スポーツと非常に相性の良いバナナですが、テストステロンの維持や5α-リダクターゼの活性阻害など、男性ホルモンのバランスを整える働きも期待できます。その他、腸内環境を整えたり血糖値を良好に保ったりストレスを緩和したりと、体調を良好に保つための様々な効果が得られることも分かっています。元気に毎日を過ごすためにも、まずは朝食に1本のバナナを食べるところから始めてみるのもいいかもしれませんね。


 

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