監修者
上級睡眠健康指導士 /NR・サプリメントアドバイザー
関川裕大
睡眠と運動と栄養の3つ面から皆様の健康的なライフスタイルをサポートします。睡眠と運動は特に男性のQoLにおいて非常に重要な役割を果たします。睡眠が不足すると筋肉が付きにくく太りやすくなりますし、運動が十分でない男性は睡眠の質も低下し易いと言われております。そして栄養が不足すると運動効率も睡眠の質も悪化してしまいます。医療に頼らない心と体の健康促進を目指します。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
はじめに
毎日の忙しい生活による疲労やストレス、厳しい暑さや寒さ、スマートフォンなど電子端末の長時間利用など、現代には睡眠を十分に取れなくする要因が数多くあります。限られたオフの時間でしっかりと疲れを取るべく、睡眠の量や質を落とすことがないようにしたいものです。この記事では睡眠の量や質を向上させる生活について、食習慣からのアプローチを考えます。より良い睡眠の助けとなるような具体的な食べ物について、量やタイミング、調理法などにも言及しつつ紹介します。
睡眠と食事は相互に関わっている
空腹でなかなか寝付けず苦しんだ経験はありませんか? というのも、空腹は飢餓の危険を知らせるサインであるため、脳や体の動きを活性化させる交感神経が活性化し、眠気を感じにくくなってしまうのからです。
逆に満腹の状態で眠ったのに疲れが取れず困った、という経験にも覚えがあるのではないでしょうか。食事の後は、食べたものを消化するため副交感神経が活性化します。副交感神経は脳や体を休めるよう働きますが、この時消化のために消化管が活発に動いていると浅い眠りにしかならず、疲れは十分に取れなくなってしまうのです。
また仕事などで忙しく睡眠時間が取れない時期に体重が増えた、という話も聞いたことがあるのではないでしょうか。満腹感や空腹感は体内のホルモンによってもコントロールされており、この分泌量は睡眠不足の影響を受けます。睡眠不足では満腹を促すレプチンというホルモンが減り、空腹を知らせるグレリンというホルモンが増えてしまうのです。そのため睡眠不足の状態では空腹を感じやすくなり、必要以上に食べ過ぎてしまいがちです。
このように、睡眠と食事は相互に影響し合っています。質の良い睡眠を取るためには適量で良質な食事を摂取し、体重や体型をコントロールしたい場合には十分な睡眠を取ることが重要です。
睡眠の質を向上させる食事ガイドライン
睡眠と食事が相互に影響し合っている以上、睡眠の質を向上させるためには食生活を整える必要があります。食べる量やタイミングに注意するのはもちろんのこと、眠る前である夜間には、眠りを妨げるような食品は避け、リラックス効果のある食品を選ぶことも重要です。以下では良質な睡眠のために役立つ食べ物や食べ方について紹介します。
腹八分目で抑える
空腹状態では寝付きも悪くなりますが、お腹いっぱいになるまで食べてしまうと睡眠の質が下がってしまいます。激しく消化管が活動していると、体や脳は十分に休まらず、疲れも取れません。眠る前の夕食では特に「腹八分目」を意識しましょう。
また夕食のみならず、普段から腹八分目の食事を心掛けることも重要です。満腹になるまで食べることが習慣化すると、当然ですが太りやすくなります。このとき増え過ぎた脂肪が喉などの呼吸器を狭めてしまい、睡眠時無呼吸症候群などを引き起こす要因となるのです。良質な睡眠の確保のためには適正体重を維持することもまた重要です。
炭水化物は白より茶色いものを
エネルギーの主な供給源となる炭水化物は不足なく十分に摂取すべきですが、その種類には注意する必要があります。
炭水化物は消化されてグルコースとなり、血糖値を大きく上げます。しかしあまりにも急激に血糖値が上がると、体内で血糖値を下げるホルモン、インスリンが大量に分泌され、血液からグルコースが一気に失われます。この血糖値の乱高下は「血糖値スパイク」と呼ばれ、倦怠感や眠気を生じるだけでなく、眠りを浅くする要因にもなってしまいます。
糖尿病患者の睡眠を調べた研究において、血糖コントロールが不良の状態である糖尿病患者では睡眠の質の低下が起こりやすいことが明らかになっています出典[1]。血糖コントロールの原因となる血糖値スパイクを起こさないような食事を普段から心掛けるべきでしょう。
食品における血糖値の上がりやすさを示す値をグリセミック指数(GI値)と呼び、この値が100に近ければ近いほど血糖値スパイクが起こりやすい食品であると言えます。そのためGI値が低い食品を食べる必要がありますが、その目安として「白いものより茶色いものを」と覚えておくとよいでしょう。白米よりも玄米が、うどんよりも蕎麦が、それぞれGI値の低い食品です。主食を選ぶ際の指標として活用してみてください。
脂質は質にこだわる
炭水化物と同様に、脂質も選び方に少し工夫が必要です。飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸を摂取できるよう意識し、肉類からではなく魚類から脂質を多めに摂れる生活へと変えていきましょう。
飽和脂肪酸は脂身の多い肉類や、バターや生クリームなどの乳製品に豊富です。これらの過剰摂取は体重増加を招きやすいことに加え、睡眠の質を下げることがわかっています。脂身の多い肉類を使ったファストフードや、生クリームを用いた洋菓子などの摂取は、週あたりに食べる回数を決めて楽しむべきでしょう。
不飽和脂肪酸は植物油や魚油に含まれていますが、中でもω-3系脂肪酸の有用性が注目されています。英国の児童における睡眠の時間や質を調べるランダム化プラセボ比較試験によると、DHAサプリメントを摂取した群において、プラセボのサプリメントを摂取した群よりも睡眠時間および質が向上したという結果が出ています出典[2]。ω-3系脂肪酸であるDHAは魚油に豊富であるため、積極的に摂取したいところです。
たんぱく質は適度な量をめざす
自然な睡眠サイクルを作り、眠りやすい体を作るために、たんぱく質の摂取は欠かせません。ポイントは、1日のリズムを整えるホルモンであるメラトニンとセロトニンにあります。
昼間に合成されて夜間に分泌されるメラトニンには1日のリズムを整える働きがあり、覚醒状態と睡眠状態とを切り替えて、自然な眠りに入れるようにする働きがあります。またセロトニンには気分を安定させ脳の働きを活発にする作用があります。快適な目覚めで1日を迎えるため、朝にはセロトニンが、落ち着いた状態で自然な眠りにつくため、夜にはメラトニンが、それぞれ重要になっているのです。
必須アミノ酸であるトリプトファンから、神経伝達物質であるセロトニンが作られ、更にセロトニンを材料としてメラトニンが作られます。トリプトファンは体内で合成ができないため、たんぱく質食品から摂取する必要があります。
睡眠サイクルを作るために重要なたんぱく質ですが、摂りすぎには注意しましょう。たんぱく質は消化や代謝に負担がかかるため、摂りすぎると消化器の過活動を起こし、深い眠りに入ることが難しくなります。1食手のひら1杯分のたんぱく質食品を目安とし、高負荷のトレーニングを行っていない場合は追加での摂取を控えましょう。
果物や野菜はいつもより1皿プラスする
果物や野菜の摂取によって得られる大きな恩恵は、腸内環境の安定にあります。睡眠ホルモンであるメラトニンは、アミノ酸であるトリプトファンからセロトニンを経て合成されます。アミノ酸はたんぱく質に含まれる栄養素ですが、このたんぱく質を吸収しやすいように分解する助けとなるのが腸内細菌です。トリプトファンを効率よく得るためには、善玉菌が多い腸内環境を整えておく必要があり、そのために役立つのが食物繊維や発酵食品です。
乳酸菌などの善玉菌はキムチや漬物などの発酵食品に豊富であるほか、野菜にも一定量含まれています。また野菜全般に含まれる食物繊維は善玉菌のエサとなり、腸内で善玉菌が増えやすいようにしてくれます。果物に含まれるビタミンCやオリゴ糖もまた善玉菌のエサとして活躍し、腸内環境を整える助けとなります。
腸内細菌を整える善玉菌は、継続的に摂取しないと失われてしまいます。野菜や果物を不足なく毎日摂取して、善玉菌が増えやすい環境を常に整えておきましょう。日々の食事に野菜料理を最低一品は加えるよう意識し、デザートとして果物も摂取できるようにしましょう。
お酒やカフェインは控える
眠気覚ましや気分の切り替えを目的に、コーヒーを飲む方も多いのではないでしょうか。交感神経を優位にして脳の活動を活発にしてくれるカフェインがコーヒーには豊富に含まれているため、集中力を高めるための飲み物としては非常に有効です。しかし寝る前に摂取してしまうとカフェインの覚醒作用が入眠の邪魔をしてしまうため、夕方以降はコーヒーを飲まないよう注意しましょう。
また、眠るために「寝酒」をする方もいるかもしれません。確かにアルコールを摂取することで脳の活動は低下するため、寝付きはよくなるでしょう。しかしその後、アルコールを代謝する際に脳は活性化するため、睡眠リズムが乱れ、疲労が取れにくくなってしまいます。またアルコールの代謝によりアセトアルデヒドという物質が生じますが、これには覚醒作用があるため浅い眠りしか得ることができなくなります。就寝前の飲酒は避け、アルコールに頼らず入眠できるようにしましょう。
飲み会などで夜間にお酒を飲む機会がある場合には、適量を守り、食事と一緒に飲むようにしましょう。食べ物とアルコールを同時に摂取することでアルコールの代謝速度が緩やかになり、脳や体への負担を軽減できます。
夕食は就寝の2時間前までに
腹八分目の食事を心掛けることはもちろんですが、適量の食事であっても寝る直前に食べることはオススメしません。副交感神経が優位になっているため寝付きはよいかもしれませんが、眠っている間も消化器は食べたものを消化するため活発に動いています。そのため体や脳は十分に休まらず、疲れが取れにくくなってしまいます。
夜11時に寝る場合、遅くとも夕食は夜8時台で済ませるべきです。仕事などで夕食が遅くなる場合には、消化の良いものを少なめに食べるようにするとよいでしょう。雑炊やお茶漬けなど、油を使わない炭水化物なら胃に負担がかからず、睡眠への影響を少なくできるためオススメです。
睡眠の質を向上させる食べ物10選
睡眠を整えるための食習慣をこれまで紹介してきましたが、この章では睡眠の質の改善に役立つ食べ物や食べ方について説明します。プラス一品する野菜料理にどのような野菜を使えばよいのか、たんぱく質や脂質の供給源として何を選ぶべきか、リラックス効果のある食品はどのタイミングで摂取すればよいかなど、各食品についてより具体的にまとめてあります。是非参考にしてみてください。
鶏肉
鶏肉には低脂肪高たんぱくであり、中でも必須アミノ酸であるトリプトファンが豊富です。トリプトファンからセロトニンを、セロトニンからメラトニンを合成できるため、自然な入眠をサポートするメラトニンを不足させないためにも積極的に摂取したいところですが、食べ方にはひと工夫する必要があります。
鶏肉などの動物性食品にはBCAAと呼ばれるアミノ酸もまた豊富です。このBCAAの脳への通り道と、トリプトファンの脳への通り道が同じであるため、鶏肉などの摂取によりBCAAで脳への通り道がいっぱいになってしまい、トリプトファンが脳へと送られにくくなってしまいます。
これを防ぐためにはBCAAを別の通り道へと向ける必要があります。BCAAは炭水化物と同時に摂取することで、インスリンという血糖をコントロールするホルモンの助けを借り、筋肉のエネルギーや材料として使われるようになります。BCAAが筋肉へ向かうことで脳への通り道が空き、トリプトファンを脳へ送ってメラトニン合成に使うことができるようになります。
豊富なトリプトファンを睡眠の安定に役立てるため、鶏肉は炭水化物が豊富な穀類などの食品と同時に食べるようにしましょう。
キウイ
キウイにはセロトニンが豊富です。メラトニンを合成する材料として使えるほか、セロトニン自体も精神の安定を促し自然な入眠をサポートしてくれます。
24名の成人が毎晩眠る1時間前にキウイを2個摂取し、その後の睡眠状態を4週間にわたり調べたランダム化比較試験において、キウイを2個摂取した群は摂取しない群と比較して、入眠にかかる時間の短縮、一晩中目覚めずに眠る力の向上、総睡眠時間の増加が確認されています出典[3]。睡眠の量と質を向上させる可能性があるため、日常的に食べるフルーツの選択肢に入れてみてください。
キウイなどの生の果物は酵素を含むため、消化も早く胃や腸にあまり負担をかけません。夕食後のデザートや夜食として食べることを習慣化すれば、よい効果が期待できるでしょう。
サーモン
サーモンなどの魚油にはω-3系脂肪酸が多く含まれているほか、ビタミンDも豊富です。ビタミンDは神経伝達物質の生成をサポートする栄養素であり、セロトニンがその恩恵を受けています。ビタミンDを十分に摂取することでセロトニンと、セロトニンを材料とするメラトニンの量を増やすことができるのです。
動物性食品の摂取が睡眠状態に与える影響を調べた介入試験において、1食あたり300gのサーモンを週3回、6か月間継続して食べた男性は、鶏肉、牛肉、豚肉を食べた男性よりも約10分早く入眠できたという結果が得られています。サーモン摂取群においては血中のω-3系脂肪酸とビタミンDの濃度が高く出ていたことも分かっています出典[4]。
DHAやEPAなどのω-3系脂肪酸やビタミンDを豊富に含む魚を選んで食べることで、睡眠へのよい効果が期待できるでしょう。肉類ではなく魚類中心の食生活にすること、魚の選択肢のひとつにサーモンを加えることを心掛けてみてください。
クルミ
ナッツは体によい、と広く言われ始めて久しくなりましたが、睡眠の安定にもよい効果をもたらします。睡眠の質を高める効果が期待できるω-3系脂肪酸が豊富であるほか、メラトニン自体の供給源として非常に有用です。
トリプトファンからセロトニンへ、セロトニンからメラトニンへ、という流れで合成されるメラトニンですが、一部の植物性食品にもメラトニンが含まれていることが明らかになりつつあります。クルミの他にはトマトやイチゴにも含まれているようですが、ω-3系脂肪酸を同時に摂取できるというメリットからクルミを第一選択肢としてオススメします。
ω-3系脂肪酸は入眠を妨げたり体へ悪影響を及ぼしたりする脂質ではありませんが、他の脂質同様、摂りすぎには注意が必要です。クルミなどのナッツ類を毎日摂取する場合は、他の間食も摂ることを考えて1日15g程度を目安にするとよいでしょう。
アーモンド
アーモンドもまた、ω-3系脂肪酸やメラトニンを含む優秀な食品です。加えてアーモンド特有の特徴として、マグネシウムが豊富であることが挙げられます。
神経伝達物質の生成を助ける役割を担うマグネシウムですが、体内でGABAという成分を活性化することが分かっています。過剰な興奮を沈める作用を持つGABAは自然な入眠をサポートしてくれます。GABAには気分を安定させる効果もあるため、アーモンドは不安や緊張から寝付きにくいと感じている方にもオススメの食品です。
アーモンドもクルミと同様に、毎日摂取する場合にはクルミとの合計量で15g程度を目安にしましょう。
葉物野菜
野菜類には食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富であり、乳酸菌などの有益な菌の供給源にもなります。特に葉物野菜はビタミン類、鉄、マグネシウムなどが特に多く含まれていること、フラボノイドという抗酸化作用・抗炎症作用を持つポリフェノールが豊富であること、などが特徴として挙げられます。
マグネシウムはそれ自体が神経伝達物質の働きを持ち、鉄やビタミンB群、ビタミンCはセロトニンなど神経伝達物質の合成を手助けします。ビタミンCやE、フラボノイド類は抗酸化物質として、不眠の原因となる疲労やストレスによって発生する体へのダメージを軽減する効果を持ちます。
腸内環境の改善には食物繊維や乳酸菌が活躍します。腸内環境は腸内に生息する細菌によって保たれており、この細菌は食べたものによって日々入れ替わりを繰り返しています。良好な腸内環境を維持するため、食物繊維や乳酸菌を含む野菜は毎日摂取するようにしましょう。
牡蠣
海のミルクとまで呼ばれるほど、牡蠣は栄養素の面で優秀です。ビタミン類やアミノ酸などの栄養素が豊富であることもさることながら、特筆すべきは亜鉛の含有量です。
動物性食品やナッツ類などに豊富な亜鉛ですが、牡蠣の含有量はその中でも群を抜いています。牡蠣の100gあたりの亜鉛含有量は13.2㎎であり、18~74歳における亜鉛の1日の推奨量は11㎎です。3粒の牡蠣が使用された料理、約60g相当を食べただけで推奨量の大半を満たすことができます。
亜鉛は鉄やマグネシウムと同様に、神経伝達物質を合成するための助けとなる栄養素です。不足により気分の落ち込みや不安を招くほか、メラトニンの合成も滞ってしまうため、供給源として牡蠣を活用するとよいでしょう。
亜鉛は水溶性であり、汗として体外に出やすく、また調理方法によっては溶出し失われてしまいます。焼くなどの水を使わない料理で食べたり、スープに使用して溶出した亜鉛ごと摂取できるようにしましょう。
柑橘類
ビタミンCやオリゴ糖は果物全般に含まれていますが、柑橘類は特にビタミンCが豊富です。トリプトファンからセロトニンを合成する過程で必要になる重要な栄養素であるため、不足なく摂取したいところです。
また、柑橘類の酸味成分にはクエン酸が含まれています。疲労回復に役立つ成分であるため、過度の疲労で夜間の脳が覚醒状態に陥らないようにする効果が期待できます。またクエン酸にはキレート作用というものがあり、小腸におけるミネラル類の吸収をサポートしてくれます。セロトニン合成に必要な鉄やマグネシウム、亜鉛などを効率よく吸収する助けとなるため、デザートとして食べる果物の候補として推奨したい食品です。
牛乳
動物性食品である牛乳にはたんぱく質が豊富であり、トリプトファンの供給源として有用です。更にセロトニンの合成をサポートするビタミンDも多く含んでいるため、摂取することでより効率よくメラトニンを合成できるようになるでしょう。
なお、夜間にホットミルクで飲む場合にはタイミングに注意しましょう。人は体温が下がった頃に眠気を感じるため、就寝直前の摂取では体が温まった状態からなかなか冷めてくれません。就寝の1時間前までを目安として、自然な入眠の助けとするとよいでしょう。
カモミールティー
リラックス効果や睡眠導入効果を期待してカモミールティーを飲んだことのある方もいるのではないでしょうか。カモミールティーの催眠鎮静作用は古くから知られていますが、その効果はフラボノイドの一種であるアピゲニンにあることが分かってきました。
アピゲニンと睡眠行動との関係を調べた研究において、アピゲニンの投与により入眠速度と睡眠時間の両方が改善されたという結果が出ています出典[5]。アピゲニンはGABA受容体に結合することで、精神を安定させ自然な入眠を促していることが分かっています。
カモミールティーは無糖・無脂肪のため消化器に負担をかけることはありませんが、温めたものを飲む場合にはホットミルク同様に、睡眠の直前ではなく1時間ほど前の摂取を目安とするとよいでしょう。
まとめ
より良い睡眠のための食習慣について、具体的な食品を挙げつつ、期待できる効果や食べ方について紹介しました。これらはいずれも睡眠に良い作用をもたらす食品ではありますが、いずれも食べ過ぎたり飲み過ぎたりしてしまうと睡眠の質は上がりません。良い食品だからと全てを多量に摂取するのではなく、日々の食事に盛り込めそうな量と頻度を検討することが重要です。適量かつ適切なタイミングでの摂取を継続し、自然な入眠と睡眠の質の向上に役立てましょう。
出典
- 1.
Marie-Pierre St-Onge, Amy L Roberts, Jinya Chen, Michael Kelleman, Majella O'Keeffe, Arindam RoyChoudhury, and Peter JH Jones. Short sleep duration increases energy intakes but does not change energy expenditure in normal-weight individuals. Am J Clin Nutr. 2011 Aug; 94(2): 410–416. Published online 2011 Jun 29.
- 2.
Paul Montgomery,Jennifer R. Burton,Richard P. Sewell,Thees F. Spreckelsen,Alexandra J. Richardson. Fatty acids and sleep in UK children: subjective and pilot objective sleep results from the DOLAB study – a randomized controlled trial. Journal of Sleep ResearchVolume 23, Issue 4 p. 364-388
- 3.
Marie-Pierre St-Onge, Anja Mikic, and Cara E Pietrolungo. Effects of Diet on Sleep Quality. Adv Nutr. 2016 Sep; 7(5): 938–949. Published online 2016 Sep 7.
- 4.
Anita L. Hansen, Ph.D. Lisbeth Dahl, Ph.D. Gina Olson, B.S. David Thornton, Ph.D. Ingvild E. Graff, Ph.D. Livar Frøyland, Ph.D. Julian F. Thayer, Ph.D. and Staale Pallesen, Ph.D. Fish Consumption, Sleep, Daily Functioning, and Heart Rate Variability. J Clin Sleep Med. 2014 May 15; 10(5): 567–575. Published online 2014 May 15.
- 5.
Jae-Wook Kim, Chung-Soo Kim, Zhenzhen Hu, Jin-Yi Han, Si Kwan Kim, Sung-Kwang Yoo, Yeong Man Yeo, Myong Soo Chong, Kinam Lee, Jin Tae Hong, Ki-Wan Oh. Enhancement of pentobarbital-induced sleep by apigenin through chloride ion channel activation. Arch Pharm Res. 2012 Feb;35(2):367-73.
参考文献
- 上代淑人, 清水孝雄 | イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書28版 | 丸善出版 | 2011
- 加藤保子, 中山勉 | 食品学Ⅰ 食品の化学・物性と機能性 改訂第2版 | 南江堂 | 2012年
- 加藤保子, 中山勉 | 食品学Ⅱ 食品の分類と利用法 改訂第2版 | 南江堂 | 2013年
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