監修者
上級睡眠健康指導士 /NR・サプリメントアドバイザー
関川裕大
睡眠と運動と栄養の3つ面から皆様の健康的なライフスタイルをサポートします。睡眠と運動は特に男性のQoLにおいて非常に重要な役割を果たします。睡眠が不足すると筋肉が付きにくく太りやすくなりますし、運動が十分でない男性は睡眠の質も低下し易いと言われております。そして栄養が不足すると運動効率も睡眠の質も悪化してしまいます。医療に頼らない心と体の健康促進を目指します。
執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
睡眠不足はダイエットの大敵!?
ダイエットといえば食事と運動。そうお考えの方も多いことでしょう。しかし睡眠も運動や食事に負けないくらいダイエットの成功には大切です。ここでは睡眠とダイエットの意外な関係についてご紹介します。
睡眠不足は満腹感を低下させる
短時間睡眠が当たり前の現代社会。睡眠不足は様々なデメリットが知られていますが、食事の満足感にも影響します。
実際に睡眠時間が十分でないと、空腹を促すホルモンのグレリンを増加し、満腹を促すホルモンのレプチンが少なくなると言われております出典[1]。つまり人間の身体は満たせていない睡眠欲を食欲によってカバーしようとはたらくのです。
実際に2019年に中国・上海交通大学が発表した研究では、睡眠不足は通常の睡眠時間と比べて、1日のエネルギー摂取量が252.8kcal増えることが示されました出典[2]。252.8kcalは小さなハンバーガー1個分くらいで少ない量に思えます。しかし1か月続くと、約7,500kcalとなり、これは脂肪約1kg分に相当します。
ダイエットにおける睡眠不足の恐ろしさをご理解いただけたかと思います。しっかり寝て食欲をコントロールし、正しい食生活をキープしましょう。
睡眠不足は嗜好性の食欲を増加させる
深夜にジャンクフードが食べたくなった経験がある人は少なくないのではないでしょうか。実は睡眠不足だと不健康でダイエットによくない食習慣に陥ってしまいます。
実際に、睡眠不足と食事内容の関係を調査した研究では、短時間睡眠の人は砂糖入り飲料やスナックなど高カロリーで不健康な食事を摂っていました。一方でダイエットに重要なたんぱく質、食物繊維、野菜などの摂取量が減少していました出典[3]。
また他の研究では、睡眠不足で肥満の若者に、8.5時間眠るように指示したところ、食欲が14%低下し、お菓子や塩辛い食べ物に対する嗜好性の食欲は62%低下したことがわかりました出典[4]。
ジャンクフードについつい手が伸びてしまう時は、もしかしたら睡眠が足りていないのかもしれません。食習慣とともに睡眠習慣も見直してみてください。
睡眠不足はダイエットの意志を消失させる
ダイエットを続けるには意志の力が不可欠ですね。今年こそはダイエットを成功させる!と意気込んでもうまくいかないのは睡眠が原因かもしれません。
なぜなら睡眠不足は実行機能を含む認知機能の低下を招くことがわかっているからです。実行機能とは、目標に向け計画を立て物事を最後までやり抜くための力のことです。
2017年にカナダ ウォータールー大学が睡眠と脳機能を調査した研究では、睡眠不足だと認知機能機能の中の実行機能、持続的注意、長期記憶が低下することが明らかになっています出典[5]。当然、実行機能が低下すれば物事をやり抜く力も低下します。
いつも途中でダイエットを諦めてしまう人は睡眠時間を十分に確保することで、理想の体型に近づく事ができるかもしれません。
ダイエット中に睡眠で気を付けること8つ
短時間睡眠が肥満につながる可能性についておわかりいただけましたか。ここからは実際にダイエット中に睡眠で気を付けるべきことをご紹介します。
7時間以上の睡眠時間の確保
先に述べた通り、睡眠時間が足りないと、空腹ホルモンのグレリンが増加し、食欲が増し、食べすぎにつながります。また短時間睡眠はダイエットをやり抜く意志力が低下します。すると、自制心が効かなくなり、また食べすぎてしまうという負のループに陥ります。
そのため、まずは十分な睡眠時間を確保するように努めましょう。ダイエットに限らず一般的な健康には7時間以上の睡眠が望ましいとされています。
「運動や食事制限を頑張っているはずなのに痩せない」という悩みを持つひとは睡眠時間を十分にとることから始めてみてください。
早寝早起きを心がける
小学生の頃から口酸っぱく言われている「早寝早起き」がダイエット攻略の鍵になるかもしれません。実際に長期間のダイエットに成功する人は朝方が多いことが研究で報告されています出典[6]。
明るい時の方が人間は身体を動かすため、早寝早起きは必然的に活動量が増えます。また食事で消費されるエネルギーも朝の方が高いことがわかっています。よって日が昇ってる時間に活動し、月が現れたら休息する、という活動がダイエットにもよさそうです。
生活リズムがついつい夜に傾きがちな人は一度ガラッと替えてみるのもよいでしょう。生活リズムを整えて、食習慣も整えましょう。
毎食たんぱく質食品を取り入れる
ぐっすり寝てダイエット効果を得るために、毎食たんぱく質食品を取り入れることが重要です。
たんぱく質はトリプトファンという必須アミノ酸の供給源になります。トリプトファンは眠りを誘うホルモンであるメラトニンの材料になります。メラトニンが生成されるには時間がかかりますので、夜だけでなく積極的にたんぱく質を摂ることをおすすめします。また、たんぱく質は満腹感を高め代謝を促進するため、その点でもダイエットに有効です。
トリプトファンを含む食品は、牛乳、卵、鶏肉、魚類、豆類、ピーナッツ、チーズなど。ダイエット中は食事量が減りがちですが、必要な栄養をしっかり摂りましょう。
寝る前のアルコールにも要注意
寝付きが良くなるからと、飲んでしまいがちなお酒。確かにアルコールの効果で脳の活動が低下し入眠は改善されます。ただアルコールが代謝される過程で脳が活性化するため、睡眠全体としての質は低下すると言われております。またアルコールには利尿作用があり、途中で起きてしまう要因にもなります。さらに翌朝にアルコールが残れば、目覚めが悪くなります。
またビールや缶チューハイはそれ自体のカロリーが高い上に、おつまみを食べることで余分なエネルギーを摂取する恐れがあります。よってアルコールは睡眠の質の低下とカロリー過剰の両面からダイエットを妨げると言えます。
とはいえ、お酒が好きな人がいきなり完全にアルコールを絶つことは難しいでしょう。厚生労働省によると、1日約20gのアルコール摂取は許容範囲とされています。これはビールでは500ml、日本酒やワインでは180mlにあたる量です出典[7]。
ダイエット中はお酒を飲まないに越したことはありませんが、まずは缶ビール1本程度に抑えることから始めてみてはいかがでしょうか。
適度な運動をする
運動がダイエットに大切なことは言うまでもありませんが、実は睡眠の質の向上にも有効です。運動をすることで体温が睡眠に適した温度になるように調節されることで眠りが深くなると言われています。
実際に、ランニング出典[8]、筋トレ出典[9]、HIIT出典[10]、ヨガ出典[11]など様々な運動にて睡眠の質を高める効果が確認されています。睡眠を改善するにはとにかく身体を動かすのが重要なようです。
一回の運動でも、身体がほどよく疲れ、ストレス解消につながることで寝つきが良くなる可能性があります。ただ、ダイエットの成功を考えると定期的に運動を続けるのがよいでしょう。
しかし夜間の激しい運動は脳を興奮させ、逆に睡眠の質を低下させる可能性があるため注意が必要です。運動は夕方までに終わらせるよう心掛けましょう。楽しみながら続けられる運動を習慣にできればベストです。
ストレスを取り除く
ストレスは睡眠の質を低下させます。ストレスが溜まっている時は、うまく寝付けないはずです。またストレスは自律神経を乱し、眠りを浅くする可能性があります。よってストレスによる睡眠不足が続くと、食欲が増加し、肥満に繋がります。
またストレスはそれ自体だけでもダイエットの大敵となり得ます。慢性的なストレスが続くと基礎代謝が低下し、エネルギー効率が悪くなり脂肪を溜め込んでしまいます。中にはストレスで瘦せてしまう人もいますが、どちらにしても健康的とはいえません。
したがってストレスケアがとても大切です。趣味や親しいひととの会話など、ご自身にあったストレス解消方法を見つけてみてください。ただしやけ食いやアルコールなど、健康に悪影響を及ぼすような方法は禁物です。
寝る時は灯りやテレビを消す
就寝中の人工の光を浴びると肥満を引き起こすといわれています。光は、睡眠を促すホルモンのメラトニンの生成を妨げる可能性があります。そのため睡眠の質が低下し、肥満につながります。実際に2019年にアメリカのグループが行った研究では、就寝中テレビをつけていた人は肥満のリスクが増加したことが研究で報告されています出典[12]。
目を閉じていても瞼を通過した光を感じるので、寝る時は灯りやテレビを消してください。外からの光が部屋に入る場合はカーテンを閉めて眠ることをおすすめします。暗闇に不安を感じる場合は、薄暗い光の常夜灯を。これならば睡眠への影響は小さいでしょう。
ダイエットを成功させるにはまずは睡眠から!
睡眠と肥満の関係、おわかりいただけましたか。 寝不足は太る!のです。睡眠時間が短いだけで身体が勝手に脂肪を溜め込もうとしたり、食欲をコントロールできなくなるのは驚きですね。ダイエットを成功させたいひとは、ご紹介した方法を試してみてください。無理な食事制限や運動の前に睡眠を見直すことをおすすめします。しっかり睡眠をとって健康で太りづらい身体を手に入れましょう。
出典
- 1.
Taheri S, Lin L, Austin D, Young T, Mignot E. Short sleep duration is associated with reduced leptin, elevated ghrelin, and increased body mass index. PLoS Med. 2004 Dec;1(3):e62.
- 2.
Zhu B, Shi C, Park CG, Zhao X, Reutrakul S. Effects of sleep restriction on metabolism-related parameters in healthy adults: A comprehensive review and meta-analysis of randomized controlled trials. Sleep Med Rev. 2019 Jun;45:18-30.
- 3.
Dashti HS, Scheer FA, Jacques PF, Lamon-Fava S, Ordovás JM. Short sleep duration and dietary intake: epidemiologic evidence, mechanisms, and health implications. Adv Nutr. 2015 Nov 13;6(6):648-59.
- 4.
Tasali E, Chapotot F, Wroblewski K, Schoeller D. The effects of extended bedtimes on sleep duration and food desire in overweight young adults: a home-based intervention. Appetite. 2014 Sep;80:220-4.
- 5.
Lowe CJ, Safati A, Hall PA. The neurocognitive consequences of sleep restriction: A meta-analytic review. Neurosci Biobehav Rev. 2017 Sep;80:586-604.
- 6.
Ross KM, Graham Thomas J, Wing RR. Successful weight loss maintenance associated with morning chronotype and better sleep quality. J Behav Med. 2016 Jun;39(3):465-71.
- 7.
厚生労働省(e-ヘルスネット)|飲酒のガイドライン
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-003.html
- 8.
Ezati M, Keshavarz M, Barandouzi ZA, Montazeri A. The effect of regular aerobic exercise on sleep quality and fatigue among female student dormitory residents. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2020 Aug 5;12:44.
- 9.
Kovacevic A, Mavros Y, Heisz JJ, Fiatarone Singh MA. The effect of resistance exercise on sleep: A systematic review of randomized controlled trials. Sleep Med Rev. 2018 Jun;39:52-68.
- 10.
Jurado-Fasoli L, De-la-O A, Molina-Hidalgo C, Migueles JH, Castillo MJ, Amaro-Gahete FJ. Exercise training improves sleep quality: A randomized controlled trial. Eur J Clin Invest. 2020 Mar;50(3):e13202.
- 11.
Bankar MA, Chaudhari SK, Chaudhari KD. Impact of long term Yoga practice on sleep quality and quality of life in the elderly. J Ayurveda Integr Med. 2013 Jan;4(1):28-32.
- 12.
Park YM, White AJ, Jackson CL, Weinberg CR, Sandler DP. Association of Exposure to Artificial Light at Night While Sleeping With Risk of Obesity in Women. JAMA Intern Med. 2019 Aug 1;179(8):1061-1071.
参考文献
- 日本睡眠教育機構 宮崎総一郎 林光雄 田中秀樹/健康・医療・福祉のための睡眠検定ハンドブック|全日本病院出版会|2022
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