

執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
はじめに
子供がなかなか授からない時、多くの場合、産婦人科の門を叩いて不妊治療の第一歩を踏み出すのは女性です。けれども不妊の原因の約50%は男性にあることが分かっており、精子の質や量や形態、精子を生成する機能、などに問題が見られることがあります。男性不妊の改善において最も重要なのは、医療機関で検査や不妊治療を受けることです。この記事ではそうした治療を受けながら自身でも取り組めることとして、最も身近な「食生活」について解説します。妊活の手助けとなる有益な食事や、逆に治療の妨げとなるため避けた方がよい食事について、ご紹介します。
男性不妊と食べ物の関係
男性不妊とされる場合、その原因の多くは造精機能障害という「質の良い精子を十分な量、生成することができないこと」にあります。この造精機能障害によって、精液中の精子量が少ない、精子の形態に異常がある、精子の運動率が低い……といった問題が生じ、受精能力が低下するのです。造精機能障害の大半は原因不明ですが、食生活がこの機能に及ぼす影響についてはいくつか明らかになっています。以下では造精機能障害と食事の関わりについて説明します。
精液は様々な栄養素からできている

精子の運動性や受精能力を正常に保つため、精液には様々な栄養素が含まれています。たとえば精液中のナトリウムとカリウムは、精子の運動性と受精能力に関わっていることが分かっています。マンガンもまた精子の運動性を高める因子です。セレンや銅には抗酸化作用があり、精子を酸化ストレスから守る役目を持ちます。
精子無力症という、精子の運動性が損なわれた状態にある96人の男性とそうでない96人の男性から収集した精液サンプルの調査において、精子無力症群ではそうでない群と比較して、マグネシウム、銅、鉄の濃度が低下していました出典[1]。これらの栄養素を不足なく摂取することが、男性妊活の助けとなることは間違いないと言えるでしょう。
また精子の能力を高めるためだけではなく、精子を生成する過程でも様々なミネラルのサポートが必要であることが分かっています。重要となるのが亜鉛やセレンといった微量ミネラルであり、特に亜鉛不足によって精子の生成量が下がる可能性が指摘されています。
これら栄養素の不足が精液および精子の質を低下させてしまう可能性があるため、食事にはより一層気を配る必要があるでしょう。
抗酸化物質が精子を酸化ストレスから守る

加齢により女性の卵巣機能が低下する、とはよく言われますが、実は男性の造精機能もまた、加齢の影響を強く受けていることが分かっています。
私達の体内においては呼吸や代謝によって活性酸素が発生しており、この活性酸素が体へ与えるダメージを酸化ストレスと呼びます。自然な生命活動によっても活性酸素は発生するため、加齢と共に酸化ストレスは増加します。ここに疲労や食習慣の乱れといった要素が加わることで活性酸素の発生量が増え、身体へより多くのダメージを与えてしまうのです。
特に精子はこの酸化ストレスの影響を強く受けやすい可能性があります。酸化ストレスと精子の関連を調べた研究において、多量の酸化ストレスは精子のDNAやRNA転写物といった重要な遺伝子情報にダメージを与え、機能を損なわせることが分かっています出典[2]。
精子の質を保つには酸化ストレスを低減させることが重要であり、このために活躍するのが活性酸素を無害化する抗酸化物質です。抗酸化物質は体内で一定量合成されていますが、食事からも摂取が可能です。抗酸化物質を豊富に含む食品を活用することで、精子へのダメージを防ぐ効果が期待できるでしょう。
精子の質を妨げる栄養素も…

精子の質は精液中のミネラルバランスが崩れることで悪くなってしまいます。マグネシウムやセレンの不足は精子の運動性などを損ないますが、逆に過剰にあることで精子の質を悪くする栄養素や食品もまた判明しています。
食習慣と男性の生殖能力についてのレビューによると、野菜や魚を中心とした和食や地中海食を食べていた男性は、肉類や精製穀物を中心とした西洋食を食べていた男性と比較して精液や精子の質が良いことが分かっています出典[3]。西洋食に含まれる過度な脂質、血糖値を上げやすい精製された穀類などが、精液や精子の質に影響を及ぼしている可能性があります。
これを食べなければ不妊を回避できる、というような食材は基本的にありませんが、食事全体のバランスを調整するため、脂質や糖質の過剰摂取は避けるべきでしょう。
男性不妊に取り入れたい食べ物10選
以下では日々の食事に取り入れることで男性妊活の助けとなるような食品について紹介します。精液を構成する栄養素を効率よく補充するため、また抗酸化物質を摂取し酸化ストレスの低減をはかるため、これらの食品を意識して摂取してみましょう。
脂ののった魚
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魚類を中心とした食生活は肉類を中心とした食生活よりも精子や精液の質を上げる可能性があり、その理由は魚油に含まれるω-3系脂肪酸にあると考えられています。
ω-3系脂肪酸であるDHAやEPAは強力な抗酸化作用を持ちます。疲労やストレスによって発生した活性酸素を無害化する力があるため、酸化ストレスの低減に役立ち、精子へのダメージを軽減できます。
ω-3系脂肪酸の摂取量と、精子の運動性が損なわれる疾病である精子無力症との関連を調べた介入研究において、ω-3系脂肪酸の摂取量が多いほど、精子無力症の発症率が低いことが明らかになっています出典[4]。日々の食事の主菜を魚類に意識して変えることで、精子の運動性を保つ効果が期待できるでしょう。
ラム肉

ラム肉にはカルニチンと呼ばれるアミノ酸が豊富です。カルミチンは精子に限らず、あらゆる細胞においてエネルギー補給をサポートすると言われています。
細胞が活動するためにはエネルギーであるATPが必要です。これは細胞のミトコンドリア部分で産生されますが、精子の尻尾部分にもミトコンドリアが存在していることが分かっています。カルニチンの十分な供給によってこのミトコンドリアが活性化し、より多くのATPを産生できるようになると考えられています。
食事と精液の質との関係を調査した研究において、カルニチンサプリメントの摂取量を増加させた場合、精子の運動性が向上したという結果が得られています出典[5]。カルニチンの摂取により精子がより多くのエネルギーを得られるようになる可能性があり、成分としての意義が注目されています。
カルニチンは体内でも合成できるアミノ酸ではありますが、食事やサプリメントから摂取することでより多くの効果が得られる可能性があります。カルニチンの供給源として、外食の際にはラム肉を使った料理を注文の候補に入れてみてください。
鶏肉

脂身の多い牛肉や豚肉、あるいはこれらを用いた加工肉を食べる機会が増えていませんか? 牛肉や豚肉にもビタミンやミネラルが豊富に含まれていますが、それ以上に脂質の含有量が多く過剰摂取を招きかねないため、低脂質高たんぱくな鶏肉の摂取に切り替えることをオススメします。
高度生殖医療を受けている男性を対象に、食習慣と治療成績との関連について調べた前向きコホート研究によると、鶏肉の摂取量が多いほど体外受精の成功率が高く、一方で牛肉や豚肉の加工肉の摂取量が多いほど成功率が低いことが明らかになっています出典[6]。体外受精は顕微授精と異なり、精子の運動性が高いほど成功率が上がることから、鶏肉の摂取により精子の運動性が向上しているのではと考えられます。
鶏肉は皮部分に多くの脂質を有しているため、モモ肉やむね肉を調理する場合には皮を取り除きましょう。低脂質な鶏肉のメリットを最大限得るためにも、唐揚げなど油をたっぷり使った料理ばかりに偏らず、焼き調理や蒸し調理を活用してみてください。
色鮮やかな野菜

緑黄色野菜にはフラボノイドが豊富です。ニンジンのβカロテン、トマトのリコピン、ブロッコリーのスルフォラファンなど、強い抗酸化物質を持つものが多くあることが特徴です。その他の野菜にもビタミンCやビタミンEなど、抗酸化物質として機能する成分が豊富であるため、酸化ストレスによる精子へのダメージを軽減する効果が期待できます。
また、ほうれん草や小松菜などの葉物野菜にはビタミンの一種である葉酸が豊富です。女性の妊活における葉酸の重要性はよく知られていますが、男性にも役立つ栄養素である可能性が近年指摘されています。
葉酸は赤血球の生産をサポートする栄養素であるほか、DNAやRNAなどの遺伝子情報の生成を促進する役目も担っています。精子におけるDNAの損傷や異常を防ぐため、不足なく摂取する必要がありそうです。
通常の食事では不足しにくい葉酸ですが、ファーストフードや外食などを中心とした食生活では野菜の摂取が足りず、必要量に満たない場合もあります。1食につき野菜の小鉢が最低1品ある状態を目安として、日頃から意識して野菜を摂取するようにしましょう。
果物

果物はビタミンCの供給源として優秀です。ビタミンCは抗酸化物質として働くため、酸化ストレスによるダメージを軽減するためにも積極的に摂取したいところです。
ビタミンCは水溶性であり、食品の切り口を水にさらすだけでも溶出してしまいます。また熱に弱く、火を使った調理では壊れやすいため、野菜だけでは必要量の供給が難しい栄養素でもあります。
果物であればほとんどの種類において生で食べることができるため、ビタミンCの効率的な摂取が可能です。食事のデザートに取り入れたり、スナック菓子などの間食の代替品として活用したりして、毎日果物を食べるタイミングを一度は作るようにしてみてください。
全粒穀物

健康志向として白米ではなく玄米を食べる方が増えてきています。このように白い穀物ではなく茶色い穀物を選んで食べる理由は、肥満予防のため、疲労回復のためなど様々ですが、男性妊活においても効果を及ぼす可能性があるとして注目されています。
白米や精製された小麦のような白い穀物は、体内で素早く消化・吸収されて急速に血糖値を上げます。この血糖値スパイクと呼ばれる高血糖状態によって身体は様々なダメージを受けます。高血糖時には精子の運動性が低下するため妊娠率の低下に繋がるほか、高血糖状態により生殖器の血管がダメージを受けることで血流が阻害され、射精自体が難しくなるといったトラブルも生じてきます。妊活をスムーズに進めるため、血糖値スパイクを招かないような食事を心掛けるべきでしょう。
血糖値の上がりやすさを示した値を「グリセミック指数(GI値)」と呼びます。精製された米や小麦ではこの値が高く、全粒と呼ばれる未精製の穀類ではこの値が低い傾向にあります。GI値の低い玄米や全粒小麦パン、蕎麦などを意識して選ぶようにしてみましょう。血糖値の上昇が緩やかになり、血管など身体に掛かる負荷を軽減できます。
低脂肪乳製品

牛乳を使った乳製品にはミネラルが豊富です。カルシウムはもちろんですが、精子の量や質に関わるカリウムやマグネシウム、亜鉛などの栄養素も含まれているため、男性妊活時のミネラル補給に適していると言えるでしょう。
乳製品にはヨーグルトやチーズ、生クリームなどがありますが、飽和脂肪酸の過剰摂取を避けるため、生クリームや脂肪分の多いチーズは避け、低脂肪乳製品を選ぶようにするとよいでしょう。低脂肪乳や低脂肪のヨーグルト、カッテージチーズやリコッタチーズなどがオススメです。
牡蠣

牡蠣は「海のミルク」と称されるほど栄養豊富な食品として有名ですが、男性妊活においてはその亜鉛含有量の多さに注目したいところです。
亜鉛は生殖機能の維持・改善に役立ち、特に精子の形成において重要な栄養素となります。男性ホルモンであるテストステロンの分泌が亜鉛によってコントロールされているため、精子量や精液量は特に亜鉛の影響を受けやすくなっています。
男性の健康や生殖力について調査したレビューにおいて、亜鉛の欠乏状態は精子の形成を不十分にし、これにより精子の運動性が足りない精子無力症や、精子の形が歪でDNA情報に問題が見つかりやすい奇形精子症などのリスクが上がること、またテストステロン濃度を低下させること、などが明らかになっています出典[7]。このことからも、亜鉛の不足は精子量や精液量に影響を与えると言うことができるでしょう。
また、亜鉛は抗酸化物質としても機能する栄養素です。精子へのダメージを軽減してくれる効果もあるため、積極的に摂取したい食品です。
クルミ
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クルミなどのナッツ類にはω-3系脂肪酸が豊富であり、強い抗酸化作用を持つ食品として人気が高まっています。
西洋型の食事にクルミを加えた際の精液の質を調査したランダム化比較試験において、クルミを加えた食事を12週間にわたり摂取した群では精子の形態や運動性が改善し、更に精子の数も増加したという結果が出ています出典[8]。クルミに含まれるω-3系脂肪酸が酸化ストレスを低減するため、精子を保護する効果が期待できます。
クルミはナッツ類の中でもω-3系脂肪酸の量がトップクラスに高い食品です。ミックスナッツとして販売されているものではなく、単品のものを選んで購入するとω-3系脂肪酸の恩恵をより多く受けることができます。毎日手のひら一杯、20~30gほどを目安に食べるようにするとよいでしょう。
アボカド

果物はビタミンCの供給源として優秀ですが、アボカドはビタミンC以上に、ビタミンEを効率的に摂取できる食品です。
ビタミンEも強力な抗酸化物質ではありますが、ビタミンCとの違いは脂溶性であることです。水に溶出するビタミンCとは異なり、ビタミンEは脂質に溶け、脂質と一緒に摂取することで吸収効率が増すという特徴を持っています。
アボカドは「森のバター」と呼ばれるほどに良質な脂質が豊富であるため、調理せず生のまま食べるだけでも効率よくビタミンEを摂取することができます。他の果物と比較すると高エネルギーであるため、毎日食べる場合には1日半分を摂取量の目安にするとよいでしょう。
精子の質によくない5つの食事
精子の質や量を向上させたり、体へのダメージから精子を保護したりする食品が明らかになりつつある一方で、逆に精子の質や量を落としたりダメージを与えたりする食生活もまた判明しています。精子の質の向上に役立つ食品を選んで食べていても、その他の食事への注意が疎かでは十分な効果を得られません。以下の食事に心当たりがある場合には、できるだけ早く食習慣を正していく必要があるでしょう。
肥満を招くほどの過食

西洋型の食生活が、地中海食や和食よりも精子のトラブルを招きやすいことが明らかになっていますが、これは西洋型の食事に脂質が過剰であることに加え、エネルギー過剰で肥満を招きやすい食事であることに由来すると考えられています。
肥満は男性ホルモンであるテストステロンに影響を与えます。BMIと性機能の関連を調べた研究によると、BMIが30kg/m²より高い肥満の男性において、テストステロンの分泌低下とエストロゲン濃度の上昇が確認されています。肥満からの体重減少により正常なBMIを保つことで、テストステロン濃度を正常に保つことができ、性機能が損なわれることを防げる可能性が指摘されています出典[9]。
脂質が多く使われる西洋型の食事やファーストフード、スナック菓子などは過剰摂取を招きやすく、カロリー過多からの肥満を誘発するリスクが高い食事であると言えます。過食のトリガーとなりやすい西洋型の食事は避け、和食や地中海食に代表されるような、野菜や果物、魚類や全粒穀類を食事の中心に取り入れるようにするとよいでしょう。
加工肉や赤身肉の食べすぎ

西洋型の食事やファーストフードには加工肉や牛肉、豚肉などが多く使われています。これらはいずれも飽和脂肪酸を豊富に含むため、摂取が過剰になりがちです。
健康な男性を対象とした横断研究では、飽和脂肪酸の摂取量が多い男性ほど精液中の精子濃度が低く、逆にω-3系脂肪酸の摂取量が多い男性ほど精子濃度が高いことが明らかになっています出典[10]。肉類中心の食生活よりも魚類中心の食生活の方が、精液の質を保ちやすいと言えるでしょう。
ただし牛肉や豚肉にはビタミンやミネラルが豊富であり、たんぱく質も良質であるため、やみくもに避けるには惜しい食品であるとも言えます。そのため食事に取り入れる場合には脂身の少ないモモ肉やヒレ肉を選び、エネルギー過多となりがちな揚げ物での調理は控えましょう。また日々の主菜が肉類ばかりに偏らないよう、魚類や卵料理など、他のたんぱく質食品もバランスよく取り入れることが重要です。
甘い食べ物や飲み物の摂りすぎ

甘い食べ物や飲み物は血糖値を急激に上げるため、体内で活性酸素が発生しやすくなります。酸化ストレスにより精子がダメージを受けるのを防ぐため、甘い菓子類や清涼飲料水の摂取は控えるべきでしょう。
また、ビスケットやクリーム、スナック菓子などに含まれる脂質にはトランス脂肪酸が含まれていることが多く、この摂取によってテストステロンの濃度が低下し、精液や精子の量が減少する可能性が指摘されています。
現在は企業努力により、こうした菓子類に使われるトランス脂肪酸の量は減少傾向にありますが、食べ過ぎにより影響を受ける可能性は否定できないため、習慣的な摂取は避けるべきでしょう。
甘いものが食べたい場合にはお腹に溜まりやすい餅やお米を使った和菓子、あるいはバナナなどの糖度の高い果物を選びましょう。砂糖の添加された清涼飲料水は広く血糖値を上げやすいため、常飲は控えるのが理想です。
過度な飲酒

お酒を目の敵にする必要はありませんが、過剰飲酒には注意が必要です。アルコールを大量に摂取することで、黄体形成ホルモンという、テストステロンを増加させるシグナルとなるホルモンの分泌が低下してしまいます。
テストステロンの慢性的な不足は精子の量や形態、運動性に影響を与えるため、男性妊活の妨げとなります。休肝日を設けず毎日飲酒したり、2合以上を一気に飲んだりする習慣のある人は、これを期に飲酒の頻度と量を見直してみてください。
ただ、アルコールの消費量と精液の質との関連を調べた横断研究によると、時折飲酒する人と飲酒しない人との間に精液の質の差異はなく、適量の飲酒が精液の質を著しく害するものではないことを明らかにしています出典[11]。そのため妊活のために断酒をする必要はありません。休肝日を設ける、1日1合程度で楽しむ、など、ルールを決めて飲酒するよう心掛けることで性機能への影響を防ぐことができるでしょう。
プラスティック製品の利用

現在日本では、食品の容器包装について、安全性が評価された物質のみ使用可能とする制度が導入されています。フードパックやペットボトルなどはこの規定に準じており、安全性は保障されているように見えますが、想定とは異なる利用方法をしないよう注意する必要があります。
特に注意すべきは電子レンジでの再加熱です。フードパックに入った総菜を電子レンジで温めた際、容器が大きく曲がったり縮れたりしたことはありませんか? 電子レンジでの調理に対応していないプラスチック容器を加熱すると、容器の成分が溶け出し食品を汚染し、化学物質ごと摂取することになりかねません。
特に生殖能力への影響が懸念される物質としてフタル酸エステルが挙げられます。精液の質と尿中のフタル酸エステル濃度との関連を評価した研究において、尿中のフタル酸エステル濃度が高い人ほど、精子の運動性が低下しており、形態に異常が見つかりやすいという結果が出ています出典[12]。最近では耐熱プラスチックで作られた容器も出回っていますが、ペットボトルやフードパックの中身を温めたい場合には、中身を陶器など耐熱に優れたものへ入れ替える癖を付けることをオススメします。
まとめ
性機能の維持・改善のため、摂取すべき栄養素や避けるべき食習慣について説明してきました。早速日頃の食事へ取り入れようと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこれらの取り組みには多少の根気が必要です。
というのも、精子が体内で形成され、成長し、受精できる能力を備えるには3か月程度かかることが分かっています。そのため改善させた食事の影響が精子に出てくるまでにも同じだけの期間を要するのです。このように、食生活の改善による効果が精子に現れるまでには時間がかかりますが、その分長く続ければ続けるほどよい影響が出やすくなります。今後の妊活に役立てられるよう、まずは3ヵ月の継続から初めてみましょう。
出典
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参考文献
- 上代淑人, 清水孝雄 | イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書28版 | 丸善出版 | 2011
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