監修者
上級睡眠健康指導士 /NR・サプリメントアドバイザー
関川裕大
睡眠と運動と栄養の3つ面から皆様の健康的なライフスタイルをサポートします。睡眠と運動は特に男性のQoLにおいて非常に重要な役割を果たします。睡眠が不足すると筋肉が付きにくく太りやすくなりますし、運動が十分でない男性は睡眠の質も低下し易いと言われております。そして栄養が不足すると運動効率も睡眠の質も悪化してしまいます。医療に頼らない心と体の健康促進を目指します。
執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
精子の質が悪い原因は睡眠?眠りとの関係性3つ
近年の男性不妊研究から、精子の質と睡眠は大きな関わりがあることがわかっています。ここでは眠りと精子の関係性についてご紹介します。
睡眠は短すぎても長すぎても精子の質に悪影響
妊活と聞くとみなさんは何を思い浮かべるでしょう。亜鉛の摂取や禁煙、禁酒などが真っ先に思いつくかもしれませんが、十分に眠ることも妊活です。そして精子の質に最適な睡眠時間もわかってきています。
2016年に発表された研究では、中国の男子学生の精子パラメーター(精液量、総精子数)と睡眠時間の関係を調査したところ、睡眠時間が7~7.5時間の時、精子パラメーターは最も高い値を示しました。この研究では6.5時間以下でも9時間以上でも数値は減少する結果がでています。眠れば眠るほどいいわけではないようですね。出典[1]
妊活中の男性は働き盛りで多忙かもしれませんが、日々の睡眠時間は十分にとるとよいでしょう。
睡眠不足はテストステロンの低下に繋がる
子供を授かるためには卵子と受精可能な良い精子を作ることが重要です。そして男性ホルモンの1種であるテストステロンは精子の成熟に深く関わっています。テストステロンは睡眠中に多く分泌されるため、睡眠不足はテストステロンの低下につながってしまいます。
2007年に64~74歳の男性を対象とした研究では、前日の睡眠時間が長いほど朝のテストステロン値が高いことがわかっています。睡眠時間が5時間の人は8時間の人よりも2倍近くテストステロンが低かったようです。出典[2]
よって、必要な睡眠時間をしっかりとって、テストステロンを低下させないことが大切です。
睡眠不足は炎症を増加させる
そして身体の中の炎症も精子の質を低下させるといわれています。出典[3]
炎症は酸化ストレスとの関連がわかっています。酸化ストレスとは体内で活性酸素が過剰になり、抗酸化の防御が崩れた状態のことで、健康に様々な悪影響を及ぼします。そして睡眠不足になると酸化ストレスが進み炎症を増加させます。出典[4]
酸化ストレスを軽減させるひとつの例が、入眠や睡眠中に分泌されるホルモンのメラトニンです。メラトニンは強力な抗酸化作用を持っているためです。
炎症を抑え、精子の質の低下を防ぐために、質の良い睡眠を目指しましょう。
精子の質のために睡眠で気を付けるべき5つのこと
眠ることは心と身体を休めホルモンバランスを整えるなど、健康な生活にとって欠かせないものです。妊活においても重要なことはご理解いただけましたでしょうか。ここからは精子の質を保つために睡眠で気を付ける具体的な方法をご紹介します。
最適な睡眠時間は7時間
前述の通り、睡眠時間は長すぎても短すぎても精子にとって最適とは言えません。どれだけ忙しくても、あるいはどれほど時間があっても、1日7~7.5時間の睡眠時間をとるように心がけましょう。出典[1]
精子の産生に深く関わっているテストステロンのレベルを維持する上でも短すぎる睡眠は悪影響です。テストステロンと睡眠の関係を調査した有名な研究では、5時間睡眠を1習慣続けただけでもテストステロン値が15%低下した事が報告されています。出典[5]15%の低下は15年分の加齢に匹敵する量です。
したがって理想は7時間続けて寝ることです。妊活中はできるだけ睡眠時間を確保するように心がけてください。
日中に適度な運動をする
日中の運動が睡眠の質を高めることはよく知られています。質の高い睡眠が精子に良い影響を及ぼすことは前述しましたが、運動自体も精子の質に良い影響を及ぼす可能性があります。どうやら運動は安静時の酸化ストレスを低下させ、精子へのダメージを小さくするようです。
おすすめは有酸素運動、筋トレ、HIITといわれる高強度インターバルトレーニング、ヨガなどのマインドフルネスエクササイズです。さらに筋トレなどの運動はテストステロンの増加に繋がります。
運動を習慣化して健康的な生活をめざしましょう。ただし夜間の激しい運動は睡眠の質を低下させる可能性がありますので注意が必要です。
日々のストレスを解消する
ストレスを受けるとストレスホルモンのコルチゾールが増加します。コルチゾールはストレスと闘うために交感神経を活性化させ、心拍数の増加を促進するホルモンのため、入眠前に放出されると睡眠の質が低下します。
2010年に1125人の学生の睡眠習慣を調査した研究では、睡眠の質が悪い学生は睡眠の質の良い学生と比べて、感情的ストレスや学問上のストレスに悩んでいることがわかっています。出典[6]
さらに心理的なストレスは体内で炎症を引き起こすため、精子の質を下げる直接的な要因にもなるといわれています。出典[7]その他、ストレスはテストステロンの低下にもつながります。
日々のストレスを解消し、ぐっすり眠ることが妊活への近道です。思うような結果が出ず、妊活そのものがストレスと感じることもあるかもしれません。頑張りすぎないことも時には大切です。
就寝前のブルーライトは控える
スマートフォンやタブレットなど、つい夜遅くまで見ていませんか。ブルーライトの強い光は睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を抑制して覚醒させ、睡眠の質を低下させてしまいます。
また夕方以降のブルーライトの照射は精子の質も低下させることがわかっています。
21歳から59歳の成人男性の精液を採取し精子濃度、運動率などを測定した調査で、夕方から夜間のデジタル機器の使用に伴い、精液の測定数値が低下したとの報告があります。出典[8]
男性の出生力の低下が取り沙汰される現代において、ブルーライトの精子への影響は見過ごせませんね。就寝前はデジタルメディアの使用を控えて、ゆっくり眠ることが大切です。
睡眠導入剤に頼らない
入眠を改善するために睡眠導入剤を利用しているひともいるかもしれません。ただし、妊活中はメラトニン受容体作動薬といわれる睡眠導入剤にはできるだけ頼らないほうがよい可能性が示唆されています。
2002年にメラトニンと精子の質を調べた研究では、6か月の間1日3mgのメラトニンを取り続けると、精子のパラメーター(濃度、運動率)が低下する可能性が示唆されました。研究者らは今後の更なる調査が必要とする一方で、メラトニンの長期摂取は精液の質を低下させると述べています。出典[9]
眠れないことはつらいですが、生活習慣やストレスケアなどに重点をおいて自然に眠れるように工夫してみてください。睡眠導入剤の長期の服用は避けたほうがよいでしょう。
毎日の睡眠が妊活を成功に導く!
妊活には様々な方法がありますが、まずは睡眠などの基本的な生活習慣を整えておきましょう。精子が作られて受精可能な状態になるまでに約70日かかりますので、普段から精子の質を高めておくことが重要です。未来の自分と家族のために、まずはしっかり眠りましょう。
出典
- 1.
Chen Q, Yang H, Zhou N, Sun L, Bao H, Tan L, Chen H, Ling X, Zhang G, Huang L, Li L, Ma M, Yang H, Wang X, Zou P, Peng K, Liu T, Cui Z, Ao L, Roenneberg T, Zhou Z, Cao J. Inverse U-shaped Association between Sleep Duration and Semen Quality: Longitudinal Observational Study (MARHCS) in Chongqing, China. Sleep. 2016 Jan 1;39(1):79-86.
- 2.
Penev PD. Association between sleep and morning testosterone levels in older men. Sleep. 2007 Apr;30(4):427-32.
- 3.
Azenabor A, Ekun AO, Akinloye O. Impact of Inflammation on Male Reproductive Tract. J Reprod Infertil. 2015 Jul-Sep;16(3):123-9.
- 4.
Manzar MD, Rajput MM, Zannat W, Hameed UA, Al-Jarrah MD, Spence DW, Pandi-Perumal SR, BaHammam AS, Hussain ME. Association between sleep quality and inflammatory complement components in collegiate males. Sleep Breath. 2016 May;20(2):867-72.
- 5.
Leproult R, Van Cauter E. Effect of 1 week of sleep restriction on testosterone levels in young healthy men. JAMA. 2011 Jun 1;305(21):2173-4.
- 6.
Lund HG, Reider BD, Whiting AB, Prichard JR. Sleep patterns and predictors of disturbed sleep in a large population of college students. J Adolesc Health. 2010 Feb;46(2):124-32.
- 7.
Jurewicz J, Hanke W, Sobala W, Merecz D, Radwan M. Wpływ stresu zawodowego na jakość nasienia [The effect of stress on the semen quality]. Med Pr. 2010;61(6):607-13.
- 8.
Green A, Barak S, Shine L, Kahane A, Dagan Y. Exposure by males to light emitted from media devices at night is linked with decline of sperm quality and correlated with sleep quality measures. Chronobiol Int. 2020 Mar;37(3):414-424.
- 9.
Luboshitzky R, Shen-Orr Z, Nave R, Lavi S, Lavie P. Melatonin administration alters semen quality in healthy men. J Androl. 2002 Jul-Aug;23(4):572-8.
LINEで専門家に無料相談
365日専門家が男性の気になる疑問解決します