監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
管理栄養士/分子栄養学カウンセラー
岡かな
大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。
ビートルートとは
ビートルートは、鮮やかな赤紫色をしたヒユ科の植物です。健康志向の高まりにより注目を浴びているビートルートの特徴や含まれる栄養素、体内での働きについて見ていきましょう。
1.「奇跡の野菜」や「食べる輸血」とも言われるビートルートとは?
ビートルートとは赤紫色の野菜です。原産地はヨーロッパと北アフリカの地域と言われていますが、現在ではオーストラリアやニュージーランド、オランダが主要な産地となっています。
高栄養価なことで知られ、近年多くの研究で運動パフォーマンスの向上や貧血、高血圧、糖尿病、認知症を改善する効果などが示されています出典[1]出典[2]出典[3]。
ビートルートが鮮やかな赤紫色をしている理由は「ベタレイン」という色素が豊富なため。ベタレインは抗酸化作用がとても高いことから、ビートルートは「抗酸化活性作用」が最も高い野菜のうちの1つとされています出典[4]。
また造血効果もあり、ビートルートを摂取したラットは赤血球、ヘモグロビン、白血球などの値が改善したと報告するデータもあります出典[5]。
このことからビートルートは「奇跡の野菜」や「食べる輸血」とも呼ばれておりアスリートも注目している食材です。
2.ビートルートの栄養素について
ビートルートは、「奇跡の野菜」「食べる輸血」という異名がつけられるほど多くの栄養素を含んでいるスーパーフードです。
ビートルートは、ベタレイン、フラボノイド、ポリフェノール、サポニン、硝酸塩などの優れた健康効果をもつ栄養素の他、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルも含まれています。
【茹でて水気を切ったビートルートに含まれる栄養素の含有量(100gあたり)】出典[6]
栄養素名 | 含有量 | 単位 |
水分 | 87.1 | g |
エネルギー | 44 | kcal |
タンパク質 | 1.68 | g |
脂質 | 0.18 | g |
炭水化物 | 9.96 | g |
食物繊維 | 2 | g |
カルシウム | 16 | m |
鉄 | 0.79 | mg |
マグネシウム | 23 | mg |
リン | 38 | mg |
カリウム | 305 | mg |
ナトリム | 77 | mg |
亜鉛 | 0.35 | mg |
銅 | 0.074 | mg |
マンガン | 0.326 | mg |
ビタミンC | 3.6 | mg |
チアミン | 0.027 | mg |
リボフラビン | 0.04 | mg |
ナイアシン | 0.331 | mg |
パントテン酸 | 0.145 | mg |
ビタミンB6 | 0.067 | mg |
3.ビートルートは血流の上昇とエネルギー合成に作用する
近年ビートルートが注目されている最大の理由は「硝酸塩」が豊富なため。硝酸塩は血流を上昇させる働きがあります。
血流を上昇させるには血管拡張作用のある一酸化窒素(NO)が重要です。硝酸塩は体内で亜硝酸塩に変換され様々な還元を受けて最終的にNOを合成します。そのため、NOの原料とも言える硝酸塩が豊富なビートルートは血流を向上させる効果が期待できるのです。
実際に臨床試験でビートルートジュース500mlを6日間摂取すると、被験者の血中亜硝酸塩濃度が95%上昇したと確認されています出典[7]。
また硝酸塩は、ミトコンドリアを活性化させることでエネルギー(ATP)の産生にも寄与しています。実際に硝酸塩を摂取した被験者のミトコンドリア活性度を示す指標が19%も向上したと報告するデータがあります出典[8]。
他の研究では硝酸塩(310-560mg)の摂取により、2~3時間以内の運動パフォーマンスが向上したと示されています出典[9]。
このことから硝酸塩が豊富なビートルートは、血流の上昇とエネルギー生成の合成に寄与し運動パフォーマンスの向上をはじめとする、さまざまな健康効果が示されているのです。
4.ビートルート(ビーツ)とビート、赤カブの違いは?
ビートルートは、ビートや赤カブとは全く異なる植物。
ビートルートとビートは名前が似ており、さらに両者は同じヒユ科の野菜でもありますが、ビートルートは赤紫色なのに対して、ビートは白い見た目をしています。
ちなみに、ビートルートは鮮やかな色合いからお菓子やデザート、乳製品などの食品に添加される天然色素として利用されています出典[10]。
一方、ビートは「テンサイ」とも言われ、サトウキビとともに砂糖の原材料です出典[11]。また、ビートルートは、カブに似ているため「赤カブ」と呼ばれることがありますが、ビートルートと赤カブは全く別の植物です。
赤カブはアブラナ科に属する野菜ですが、ビートルートは、ホウレンソウと同じヒユ科アカザ亜科に属する植物です。
ビートルートに確認されている効果とは?
ビートルートには、主にベタレインや硝酸塩の作用により、健康に良い効果が期待できる研究結果が多く挙げられています。ここでは調査・研究の結果を踏まえ、ビートルートに期待される具体的な効果について見ていきましょう。
1.有酸素運動の能力向上
ビートルートに豊富な硝酸塩は、運動による酸素消費量を低減することで、高強度の有酸素運動のパフォーマンスを向上させることが報告されています。
平均年齢16歳の肥満の青年10人に、ビートルートジュース(70ml/日)を6日間、摂取してもらい、一定作業速度の運動テストを行う研究が行われました。
研究参加者は5mmolの硝酸塩を含むビートルートジュースを摂取する群とプラセボ群に分けられています。
その結果、高強度の運動中における疲労までの時間は、プラセボ群と比較してビートルートジュース群では22%長くなったことが確認されています出典[12]。
さらに、9人の男性サイクリストに対して500mLのビートルートジュースを補給した後、サイクリングタイムトライアルを実施した研究によると、4kmおよび16.1kmの完走タイムがそれぞれ2.8%、2.7%短縮されました出典[13]。
有酸素運動のパフォーマンスをできるだけ短期的に向上させたい方に、ビートルートはおすすめです。
2.筋力の向上
硝酸塩が豊富なビートルートを摂取することで、筋トレのパフォーマンスを向上させることも証明されています。
普段から筋トレをしている12人の男性(平均年齢21歳)に、6日間、ビートルートジュースを摂取してもらい、その後、最大反復回数の60%の強度でベンチプレスを3セット、さらにセット間に2分間の休憩を挟んで失敗するまで行う筋トレを実施しました。
その結果、ビートルートジュースを摂取した群は、プラセボ群に比べて、失敗までの反復回数が19.4%増加、総挙上重量が18.9%向上しました出典[14]。
筋トレのパフォーマンスを向上させたい方や筋肉を増やしたい方は、日常的に摂取したい成分ですね。
3.運動後の筋疲労を回復
日常的に運動や筋トレを行っている方は、筋疲労を感じることが多いかもしれません。そんな方が期待したい効果を持つのがビートルートです。
ビートルートは、有酸素運動と筋力を向上させる他、筋疲労の回復作用が報告されています。
スポーツをしている大学生20名をビートルートジュース250mlを2回摂取させたグループ、プラセボのグループに分け、運動後の筋疲労を調査した研究です。
運動から24時間後の筋疲労を数値で表した指数がプラセボ群と比較してビートルートジュース群で10.4%低かったことが報告されています出典[15]。
このことから、ビートルートは筋疲労を改善する効果が期待されているのです。
継続的に筋トレやスポーツをしたい方にとって過度な筋疲労はできるだけ避けたいところ。そんな時はビートルートを摂取してみると良いかもしれませんね。
4.関節の炎症を緩和
ビートルートに豊富に含まれているベタレインは、強い抗酸化作用と抗炎症作用により、関節の炎症を緩和する可能性も示されています。
米国カリフォルニア州にあるクリニックは、膝の不快感を申告した40人(45〜65歳)に対して、ビートルートの濃縮物50mgを1日2回摂取してもらう研究を実施しました。
被験者は、ビートルート摂取群とプラセボ群に分けられ、治療前と治療10日後に膝機能の測定と疼痛に関するアンケート調査を受けました。
その結果、ビートルート摂取群はプラセボ群よりも、膝機能のスコアとアンケート調査による疼痛レベルがそれぞれが26%、27%良好でした出典[16]。
ビートルートは、関節に不快感を持つ方にとって有望な成分と言えます。
5.貧血の予防
食べる輸血とも言われていることから、ビートルートは貧血を予防できる効果が認められています。
そもそも、貧血が起きる原因はヘモグロビン不足。
ヘモグロビンの生成には鉄分が必要なのですが、ビートルートには鉄分が豊富なため貧血を改善できるのです。
実際に軽度~中等度の貧血がある30人に、ビートルート抽出物100mlを7日間摂取させ、ヘモグロビンレベルを測定したところ、摂取前と比べてモグロビンレベルが1.68%上昇したと確認できる臨床試験があります出典[17]。
また、貧血を起こしやすいといえば、持久系スポーツ選手。
持久系スポーツは、「スポーツ貧血」と呼ばれる貧血を起こしやすいと言われています出典[18]。
スポーツ貧血とは、運動中に足の裏などで赤血球が圧縮されることによって赤血球が壊され、ヘモグロビンが血球外に放出されてしまうことで発症します。
ビートルートはスポーツをしている方の貧血も予防できることが確認されています。
平均23歳の20人の女子サッカー選手にビートルート200mlを6週間摂取させ血液データを調査するとヘモグロビンレベルが大幅に増加していたことが分かっています。出典[19]。
貧血気味な方はもちろん、ハードなトレーニングをされている方にもビートルートは貧血対策として適しています。
6.血圧の低下
高血圧を含むほとんどの心血管疾患では、血管内皮から放出される一酸化窒素のレベルが減少します。
よって、血管拡張剤である一酸化窒素レベルを回復させることは、高血圧の治療において重要です。
ビートルートに多く含まれる硝酸塩は、体内で一酸化窒素の産生に寄与することにより、高血圧患者の血圧を低下させる作用があるとされています。
68人の高血圧患者を、ビートルートジュースを毎日250mL摂取する群とプラセボジュースを摂取する群に分け、2週間後に血圧を測定する研究が行われました。
その結果、プラセボ群では血圧に変化がありませんでしたが、ビートルートジュース群では血圧が平均7.7/2.4mmHg低下しました出典[20]。
血圧が高い方は、ビートルートジュースを試す価値がありそうですね。
7.コレステロール値の改善
ビートルートは、血圧低下作用だけでなく、コレステロール値を改善する可能性が示されています。
高脂血症のウサギに、ビートルート粉末を500mg/kgおよび1000mg/kgの用量で投与し、2か月後の脂質プロファイルを評価した研究によると、両方の用量で、総コレステロール値、LDLコレステロール値、および中性脂肪値の有意な減少と、HDLコレステロール値の有意な増加が観察されました出典[21]。
この結果から、ビートルートは脂質プロファイルを改善し、アテローム性動脈硬化や肥満による心血管疾患の治療に有益である可能性が期待されています。
コレステロール値が気になる方、将来の動脈硬化を予防したい方は、ビートルートやビートルートジュースを生活に取り入れてみましょう。
8.認知機能の改善
ビートルートに豊富に含まれる硝酸塩が運動パフォーマンスを向上させることは有名ですが、それと同時に認知機能を向上させることも示されています。
チームスポーツの男子選手16人に、ビートルートジュースを7日間摂取してもらい、全力スプリントと認知タスクが同時に実行される試験が実施されました。
プラセボ群と比較して、ビートルート群は、スプリント中に行われた認知タスクの総作業量が大きく、さらに認知課題に対する反応時間が向上したことが明らかとなりました出典[22]。
このことから、ビートルートは有酸素運動や筋力向上の他、筋疲労の回復などの身体的なパフォーマンスを向上させる効果だけでなく、運動中の脳機能も向上させることがわかります。
考えながら動く必要のあるサッカーやバスケ、ラグビー等の球技をされている方は、ビートルートジュースを摂取することでよりパフォーマンスが向上するかもしれません。
9.がん細胞の成長を抑制する可能性
ビートルートに豊富含まれるベタレインには、がん細胞の成長を抑制する効果も期待されています。
肺腫瘍を誘発させたマウスにベタレインを経口摂取した研究によると、腫瘍多重度と腫瘍量が46%と65%減少しました出典[23]。
このことから、ベタレインが豊富なビートルートは肺癌の化学予防薬になりうる可能性があることが期待されています。
10.肝機能障害の改善
ビートルートに豊富に含まれるベタレインの強い抗酸化作用は、肝臓の保護作用があることも示されています。
近年、世界的な肥満の蔓延により、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、先進国および発展途上国で最も蔓延している慢性肝疾患の1つとなっています出典[24]。
しかし、NAFLDに対する有効な治療法は確立されていません出典[25]。
そこで着目されたのが、抗酸化作用の強いベタレインです。
インドのラクナウ医科大学および病院で、NAFLD患者に対してビートルートパウダーを補給し、症状の変化を観察する研究が実施されました。
80人のNAFLD患者に処方薬や生活習慣の改善に加え、試験開始14日間はビートルート5gを1日2回、その後3ヶ月間は1日5gのみ摂取した結果、みぞおちの重さや痛み、消化不良、鼓腸などの症状がほぼゼロにまで改善したことが明らかになっています出典[26]。
脂肪肝が気になる方やNAFLDによる症状を軽減したい方に、ビートルートはとてもおすすめの食材です。
ビートルートの効果的な摂取方法について
ビートルートは鮮やかな赤紫色をしているので、果物のように美味しそうと思う方もいるかもしれませんが、じつはかなり「泥臭い」と言われています。そんなクセのあるビートルートを、美味しくかつ効果的に食べるための方法についてご紹介します。
1.どのように食べれば良い?
ビートルートはどのような形で食べるのが良いでしょうか。
市販されている缶詰タイプのビートルートは、生のビートルートと比べてほとんどの栄養素で栄養価が低くなります出典[27]。
したがって、生のビートルートと食べることが一番です。
しかし、生のままのビートルートは泥臭いと感じる方も多いので、煮込んで料理に使ったり、ジュースやパウダー、もしくは規格化されたビートルートサプリメントから摂取することをおすすめします。
2.効果的な摂取タイミングは?
硝酸塩は摂取後、血中濃度が1〜2時間後に最大になり、約24時間後に徐々に摂取前の状態に戻ることが確認されています出典[28]。
よって、運動する1〜2時間前に摂取することで、パフォーマンスが向上する可能性があります。
3.【要注意】摂取時はマウスウォッシュの使用は控えて
硝酸塩の摂取は、正常血圧者と高血圧者の両方で安静時血圧を低下させることが示されており、このプロセスでは口腔内細菌が重要な役割を果たしていると考えられています。
しかし、強力な抗菌性うがい薬を使用すると口腔内細菌が除去されてしまい、血圧低下作用が見られなくなることが示されています。
平均年齢36歳の12人の男性に8.4mmolの硝酸塩を含むビートルートジュースを140ml を摂取してもらい、15分後にうがい薬でうがいし、血圧を測定する研究が実施されました。
その結果、うがい薬を使用した群と使用しなかった群では、血圧低下作用に違いが見られたことがわかりました出典[29]。
このように、硝酸塩はマウスウォッシュと相性が悪いため、ビートルート摂取後少なくとも15分以上はマウスウォッシュを使用しないようにすると良いでしょう。
まとめ:継続摂取にはビートルートを規格化したサプリメントが便利!
ビートルートは血流の向上やエネルギー生成に寄与する「硝酸塩」が豊富なため、有酸素運動や筋力のパフォーマンス向上だけでなく筋肉疲労の回復、運動中の認知機能の改善などの効果があります。
日常的にスポーツや筋トレをされている方には適した食材と言えるでしょう。しかし、泥臭い味がするため生で食べ続けることは難しい野菜です。そのため、有効成分の硝酸塩を2%以上含有するように規格化された「サビート」からの摂取もおすすめです。
出典
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