監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
あなたが太りたいのに太れない理由
筋力トレーニングを続けているけれど、増量につながらない。食事量が思うように増やせず、痩せていってしまう。そんな悩みを抱えていませんか?
体重増加を困難にしている理由として、次のようなものが挙げられます。食事量や摂取カロリーを効率的に増やすためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
消化吸収能力が低い
たんぱく質と糖質は4kcal/g、脂質は9kcal/gのエネルギー密度を持っています。しかし、栄養素の消化吸収能力には個人差があります。
摂取した糖質量を反映するものとして、血糖値の上昇が挙げられます。同じ量の糖質を吸収できていれば血糖値は同じだけ上昇しますが、2015年にアメリカから発表された論文においては、同じ食事を摂取したにもかかわらず、血糖値の上昇幅に個人差が見られていました。
腸内環境やほかの因子が吸収率に差を生じさせ、血糖値の上昇幅の差につながっていると考えられています出典[1]。
たんぱく質と脂質も同様に消化吸収に個人差がある可能性が考えられます。十分な量を食べているにもかかわらず体重が増えない場合には、消化吸収能力の低下を疑う必要があるかもしれません。
胃の容量が小さい
胃の容量が小さいと、1回の食事で摂取できるカロリーを思うように増やせません。すぐお腹いっぱいになってしまう場合には、物理的に食事量を増やせない可能性があります。
胃の容量の小ささが、摂取する食事量を制限していることが、2001年にニューヨーク肥満研究センターから発表された論文にて述べられています。この研究において、肥満のグループは正常なグループよりも胃の容量が平均して約1.2倍大きく、摂取エネルギーが増えやすい傾向にあることが分かりました出典[2]。
一度に必要量を摂取できない場合には、食事の回数を増やして摂取カロリーの増加につなげるのも効果的です。食事と食事の間に補食を設け、体重増加に必要なカロリーを補いましょう。
日常の消費カロリーが大きい
激しいトレーニングをしていると消費カロリーが大きく、いっぱい食べても十分な摂取カロリーに到達していないケースがあります。
また、運動以外の、仕事や日常的な動作により消費するカロリー「非運動活動性熱産生(NEAT)」も、体重に大きな影響を与えます。
2005年にアメリカで発表された論文において、体の姿勢や動きと体重との関連が調査されました。この研究では、肥満の人は痩せた人よりも平均して1日あたり2時間長く座っており、このNEATの差は1日あたり350kcalに及ぶと言及されています出典[3]。
外仕事の方や、通勤時間が長い人はNEATが消費カロリーを底上げしている可能性があります。
消費カロリーを今よりも多めに見積もり、摂取カロリーをより増やす必要があるでしょう。
遺伝的に基礎代謝が高い
たくさん食べているのに太らない、という場合には、遺伝的要因が関与している可能性もあります。
全身のエネルギー消費を調節する役割を担う組織として、褐色脂肪細胞が挙げられます。褐色脂肪細胞は主に寒冷環境下において活性化し、体温の維持に貢献します。褐色脂肪細胞が多いと基礎代謝が上がり、消費カロリーも増加しやすくなると考えられています。
褐色脂肪細胞は成長や加齢により減少しますが、この量や減少幅には大きな個人差があります。2022年に北海道大学から発表された論文においては、寒冷刺激を加えても褐色脂肪が検出されない例が、20代で約40%、50歳以上では90%以上に確認されており、遺伝的要因や過ごす場所の気温などが関係している可能性がある、と述べられています出典[4]。
褐色脂肪細胞は食事や運動の影響を受けるとも言われています。しかし狙って増やしたり減らしたりすることは難しく、ヒトにおいては依然として遺伝的要因が強いと考えられているようです。家族が概ね瘦せ型である、寒冷地に住んでいる、などの場合には、褐色脂肪細胞が多くエネルギー消費が高い可能性があります。
体重を増やすための食事のポイント6選
体重が増えないそもそもの原因は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回っていないためです。「上回らない」理由は胃の物理的な容量によるもの、遺伝的なもの、などさまざまですが、いずれも食事量を適切に増やすことで体重増加につなげることができるでしょう。
そのため、この章では体脂肪の増加を最小限に、筋肉を効率的に増やすための食事について紹介します。理想的なエネルギーや栄養素の量について、ぜひ参考にしてください。
1.摂取エネルギーは消費エネルギー+1,000kcalが目安
消費エネルギーが摂取エネルギーと等しい状態であれば体重は変化せず、消費エネルギーが摂取エネルギーより少ないと体重は減少します。ただし、むやみに体重を増やすと脂肪が増え、トレーニングやスポーツのパフォーマンスを落としかねません。
日本人のアスリートにおいては、消費エネルギーよりも摂取エネルギーの方が約1000kcal高い状態を3か月続けることで、体脂肪の増加を最小限に効率よく体重を増やせたという結果が得られています。
よって日本臨床スポーツ医学会誌では、体重1kgあたり16~18kcalのエネルギー付加を、除脂肪体重の効率的な増加のための食事として推奨しています出典[5]。
たとえば体重55㎏の場合、エネルギー収支が880~1045kcalプラスになるような食事が必要です。
なお、激しい運動をする大型のアスリートにおいても、過食によるやみくもな体重増加をおこなうと、肥満やインスリン抵抗性といった、トレーニングのパフォーマンスを著しく低下させる状態に陥ることが分かっています。食事量の強化は1日+1000kcalまでとし、肥満や体調不良のリスクを抑えることも重要です。
2.たんぱく質は体重1kgあたり1.6g確保
体脂肪ではなく筋肉の増加を狙うにおいて、たんぱく質の摂取は欠かせません。しかしたんぱく質は満腹中枢を刺激するホルモンの分泌を促進するため、摂りすぎると食事量の減少に繋がります。
2005年にアメリカから発表された論文において、食事におけるたんぱく質のエネルギー比を、全体の15%から30%に増やした食事を14週間続けたところ、食欲が低下し、1日の摂取カロリーが平均で441kcal、体重も4.9kg減少したと報告されています出典[6]。
体重増加のために、満腹感を得やすいたんぱく質の摂りすぎに注意し、無理なく必要なカロリーを工夫して摂ることが大切です。
2020年にカナダから発表された論文においては、体重1kgあたり1.6g以上にたんぱく質を摂取しても、除脂肪体重の増加効率に差は見られないことが報告されています出典[7]。
過剰なたんぱく質摂取は全体の食事量を落とすことになりかねないため、体重1kgあたり1.6gのたんぱく質を1日の目安量としておきましょう。体重55㎏の男性であれば1日に88gのたんぱく質を摂取できるよう、肉や魚、大豆製品などを取り入れるのが効果的です。
3.糖質不足は筋肉の合成効率を下げるためNG
除脂肪体重を増やすため、たんぱく質は十分に確保しながらも、量を増やしすぎないよう注意する必要があります。そのため、なかなか体重を増やせない人のたんぱく質摂取量は、除脂肪体重を増やすための条件としてギリギリの状態になりがちです。
摂取したたんぱく質が、筋肉合成へと効率よく使われるよう、ほかの栄養バランスにも十分注意する必要があるでしょう。
たんぱく質が正しく筋肉の合成に使われるためには、十分な糖質の摂取が欠かせません。エネルギー源として真っ先に用いられるはずの糖質が不足すると、体は摂取したたんぱく質を分解してエネルギーとして利用しようとするのです。これでは折角のたんぱく質が筋肉の合成に使われず、除脂肪体重を効率的に増やせません。
摂取したたんぱく質の利用効率を維持するためにも、糖質は各食事において不足なく摂るようにしましょう。
4.脂質は総摂取カロリーの30%以下に
脂質は1gあたり9kcalと最大のエネルギー密度を誇ります。てっとり早く摂取カロリーを増やすには効率的に思えるかもしれませんが、過剰な脂質は体脂肪増加のリスクを高めてしまいます。
日本臨床スポーツ医学会誌にて述べられている、アスリートの増量を目的とした食事においては、消費エネルギーを1000kcal上回る量の摂取に加え、脂質のエネルギー比を全体の30%に抑えることが推奨されています出典[5]。
たとえば1日に2100kcalを消費し、体重増加のために3100kcalを摂取したい方の場合、脂質に割けるエネルギー量は930kcalであり、1日約103g以下に摂取を抑えるべきと考えられます。
エネルギーを増やすために食事量を増やす場合、自然と脂質量も増える傾向にあります。スナック菓子やインスタント食品のようなてっとり早くカロリーを摂取できるものに偏ると、脂質の過剰摂取を招きやすくなります。肉や魚、卵などの生鮮食品から良質な脂質を摂ることを心掛けましょう。
5.食事の回数を徐々に増やす
胃の容量が小さく、一度に多くのカロリー摂取が困難である場合には、食事回数を増やして対応するのもよい方法です。朝、昼、夕の3食に加え、間食や補食を取り入れてエネルギー量を増やしてみましょう。
2022年にアメリカから発表された論文において、食事頻度やエネルギー摂取量が体重に与える影響が調べられています。22件の研究を解析した結果、1日6食以上食べるグループは、1日3食で済ませていたグループと比較して、総エネルギー摂取量が76~330kcalほど増加したことが分かっています出典[8]。
食事回数を増やすと1回の食事量は少なくなりますが、1日の総摂取カロリーは増えます。
体重増加を目指すなら、無理なくカロリーを増やすために間食や補食を考えましょう。
6.腸内環境を整えて食欲や栄養素の利用効率UP
血糖値の上昇しやすさには腸内細菌のバランスが関係しています。腸内環境を良好に保つことでエネルギー産生栄養素の吸収効率を上げる効果が期待できるでしょう。
また、腸内環境が乱れることで、便秘や食欲不振など、さまざまな不調が引き起こされます。十分なカロリー摂取が難しい場合には、腸内環境を整えて食欲を回復させることも重要です。
腸内環境を良好に保つには、善玉菌そのものの摂取と善玉菌のエサになる成分の摂取が必要です。善玉菌を含むものとして納豆やヨーグルトといった発酵食品を、善玉菌のエサになるものとして、食物繊維やオリゴ糖を含む野菜や果物などを摂取しましょう。
体重を増やす食べ物とは?
摂取カロリーを増やして体重増加につなげるため、摂取する食品にも注意する必要があります。やみくもに高カロリーの食品ばかり食べていては、急激な体脂肪増加によりトレーニングのパフォーマンスが低下し、体調を崩すことにもなりかねません。
体重を増やすための食べ物として、とくにおすすめしたいものや、摂取に気を付けたいものについて次に紹介します。
脂質を適度に含んだたんぱく質食品がおすすめ
たんぱく質食品は体重1kgあたり1.6gの摂取が推奨されており、体重50kgの方であれば摂取の目安は80g、60kgの方であれば96gが目安となります。
肉や魚の場合、手のひらの大きさ(約100g)で20gほどのたんぱく質を摂取できます。80gの摂取であれば手のひら4つ分、96gであれば5つ分を目安にするとよいでしょう。
なお、体重増加のためには、たんぱく質量を適度に保ちつつ、全体の摂取カロリーを増やす必要があります。肉や魚、卵に大豆製品といった、適度に脂質を含んだ食品を選んで摂取カロリーを増やせるよう心掛けてみましょう。
脂質を適度に含んだ食品として、肉であれば牛ロースや豚ロース、魚であればブリやサバ、サーモンなどが挙げられます。卵や大豆の脂質も良質なものであるため、あと少したんぱく質を増やしたい場合には、ゆで卵や冷奴を取り入れるのもおすすめです。
糖質源は消化されやすいシンプルなものを
糖質源の摂取量を増やすための工夫として、満腹中枢を刺激しにくい食品を選ぶ方法があります。
1995年にオーストラリアから発表された論文において、あらゆる食品を食べたときの満足度を調べたところ、茹でたじゃがいもは白パンの約3.2倍、クロワッサンの約7倍もの満腹指数を持つことが分かりました出典[9]。
じゃがいもやオートミールといった食品は食物繊維が豊富であり、またよく噛んで食べる必要があるため満腹感を高めやすい食品です。一方、白米やうどん、パンなどは比較的消化されやすく、腹持ちがあまりよくない傾向にあります。
摂取カロリーを増やしたい場合には、じゃがいもやオートミールではなく、白米やパンを糖質源に用いるようにしましょう。
ただし、パンの中には生クリームやチョコレートクリーム、バターなどが大量に使われたものもあります。これらの大量摂取は体脂肪の増加に繋がりやすいため、白パンなどのシンプルなものがおすすめです。
プロテインの活用も
現体重と食事内容とを比較して、たんぱく質の摂取が足りない場合には、手軽な補給方法としてプロテインの活用もおすすめです。
このとき、糖質が追加されている増量用のプロテインを選ぶようにしましょう。筋肉のエネルギー源として糖質を使えるのはもちろんのこと、カロリー強化もおこなえるため体重増加のサポートにも役立ちます。
トレーニング後の摂取はもちろんのこと、夜間、寝る1時間ほど前の摂取も筋肉の維持に効果的です。食事を摂らない夜間はたんぱく質が不足しやすく、筋肉の分解が起こりやすい時間帯です。夕食から就寝まで時間が空いている方は、夜間に向けてのたんぱく質補給としてプロテインを活用するのもよいでしょう。
体重増加におすすめのメニュー4選
体重を増やすための食事として、どのようなものを食べればよいか迷っている方も多いのではないでしょうか。
今回は、一般的なバランスのよい3食のメニューを紹介しながら、カロリーを増やすためにどのような調整をおこなえばよいかを解説します。カロリーを増やしかねている、おすすめのメニューやカロリーの調整方法を知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。
朝食
- チーズオムレツ
- トースト
- トマトと水菜の豆腐サラダ
- ヨーグルト
朝は卵や乳製品、豆腐など、消化によいたんぱく質をさまざまな料理から多めに摂取するのがポイントです。朝にたんぱく質を強化することで筋肉量が維持されやすく、効率的な除脂肪体重の増加につながることが、2021年に早稲田大学から発表された論文において明らかになっています出典[10]。
カロリーを増やしたい場合には、トーストを6枚切りから4枚切りにすると、約80kcalの増加につながります。もう少し多く食べられる場合は、バナナ(1本約90kcal)などの果物を取り入れてもよいでしょう。
昼食
- 親子丼
- ほうれん草のツナマヨ和え
- 油揚げときのこの味噌汁
柔らかく煮た鶏肉と卵でたんぱく質と脂質をバランスよく摂取し、副菜と汁物で野菜やきのこ類を補いましょう。親子丼のだしにお米を絡めることで、食べやすくなるでしょう。
満腹感を高めないため、食物繊維の摂りすぎは避けたいところですが、腸内環境を良好に保つため、最低限の摂取は欠かせません。ごぼうやモロヘイヤ、玄米にオートミールなど、食物繊維の豊富な食品を多めに使うのは避けて、さまざまな野菜や果物などを少しずつ取り入れ、腸内環境の悪化を防ぎましょう。
夕食
- 米飯
- 牛肉と葉物野菜のキムチ鍋
さまざまな食品を手軽に食べる方法として、鍋料理がおすすめです。牛肉の代わりにサーモンを入れた石狩鍋風や、ブリを加えたあごだし鍋風にしてもおいしくいただけます。キムチに含まれるカプサイシンの効果で食欲が増しやすくなるため、食事量を増やす工夫としてもキムチの味付けはおすすめです。
食べ終わった鍋に、消化のよいうどんやお米を入れて食べると簡単にカロリー増加が見込めます。さまざまな食品のだしが効いた煮込みうどんや雑炊は美味しいため、食べ過ぎてしまわないよう注意しましょう。
間食・補食など
- バナナ1本(90kcal)
- 餅(50gで約120kcal)
- 焼きおにぎり(1個約150kcal)
- あんぱん(1個100gで約270kcal)と牛乳(200mLで約120kcal)
間食においても、トレーニング前後の補食においても、糖質食品を中心とした摂取を心掛けましょう。
トレーニング前には素早く消化・吸収できる、焼きおにぎりや餅などがおすすめです。長時間のトレーニングをおこなう場合には、さまざまな大きさの糖類を含んでおり持続的な糖質供給が可能なバナナを選ぶことで、エネルギー切れを防ぐ効果が期待できます。
トレーニング後にはインスリン分泌を促す効果のあるたんぱく質や脂質を適度に含んだ食品として、牛乳の摂取もおすすめです。あんぱんのような糖質食品と組み合わせて食べることで、筋肉へのエネルギー取り込みが効率化でき、素早い筋肉の回復につながります。
まとめ
体重増加を困難にしている理由はさまざまですが、食事の内容や量、回数を工夫することで食事量および摂取カロリーを増やすことが可能です。体脂肪が増えすぎないよう、筋力トレーニングと並行して食事量を増やし、除脂肪体重の増加につなげましょう。
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