圧倒的な栄養価!筋トレ民が好むブロッコリーの真価を解説
2023年11月7日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

なぜトレーニーはブロッコリーを食べるのか?

筋力トレーニングで体を鍛えている方が食べる野菜として、トップクラスの人気を誇るのがブロッコリーです。近年ではより栄養価の高いブロッコリースプラウトも、効率的な栄養源として注目を集めているようです。

確かにブロッコリーは強い苦みやクセがなく食べやすい野菜ですが、なぜトレーニーの間で人気を博しているのでしょう。

実はブロッコリーには、トレーニーに嬉しいさまざまな栄養素や機能性成分が含まれているのです。筋力トレーニングとの相性がよい点について、ブロッコリーの成分に注目する形でそれぞれ解説しましょう。

野菜の中でもトップクラスのたんぱく質量

ブロッコリーはたんぱく質量が高く、ほかの野菜と比較してもトップクラスの含有量を誇ります。生のブロッコリーに含まれるたんぱく質は、100gあたりなんと5.4g。食事のたんぱく質を強化しつつ、食事全体のかさを増やして満足感を高めたい方にとって、ブロッコリーは最適な食材であると言えるでしょう。

【野菜類100gに含まれるたんぱく質量(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より)】出典[1]

食品たんぱく質量(g)
ブロッコリー5.4
アスパラガス2.6
ほうれんそう2.2
キャベツ1.2
たまねぎ1.0
ピーマン0.9
トマト0.7
にんじん0.7

なお、筋肉のような体のたんぱく質を合成するためには、食品中の必須アミノ酸がバランスよく揃っていることが重要です。必須アミノ酸のバランスを示す「アミノ酸スコア」は、肉や魚、卵などの動物性食品において高く、小麦や米などの植物性食品では低めです。

しかし植物性食品も、肉や魚などの動物性食品と組み合わせると、不足している必須アミノ酸を動物性食品由来の必須アミノ酸で補うことができます。例外として大豆は動物性食品に匹敵するアミノ酸スコアを誇るため、大豆との組み合わせもおすすめです。

 

エネルギー代謝に関わるビタミンB群の供給源

緑黄色野菜であるブロッコリーには、さまざまなビタミンやミネラルが含まれています。栄養価が高く、トレーニングの質を高める栄養素が充実しているため、トレーニーに長く愛されているのです。

筋力トレーニングにおいては、エネルギー代謝に欠かせないビタミンB群がバランスよく含まれていることに注目すべきでしょう。糖質代謝をサポートするビタミンB1や、脂質代謝に関わるビタミンB2、たんぱく質代謝に関わるビタミンB6や葉酸などが多めに含まれており、エネルギー代謝を効率化する効果が期待できます。

ビタミンB群は効率的なエネルギー補給のサポートに欠かせないことに加え、余分な糖質や脂質をエネルギーとして燃やしやすくする働きもあります。体脂肪合成を抑えつつトレーニングのパフォーマンスを高めるために、ビタミンB群の摂取は欠かせません。

なお、ブロッコリーからはビタミンB群のほか、ビタミンEやビタミンK、ビタミンC、カリウムに鉄など、さまざまな微量栄養素を効率よく摂取できます。野菜の摂取量が少ない方は、ブロッコリーを意識的に活用すると不足を補いやすくなるでしょう。

 

豊富な抗酸化物質で筋疲労を効率よく回復

激しいトレーニングでは多量の酸素が必要となるため、酸素の生成に伴い活性酸素も大量に発生します。過剰に蓄積した活性酸素は筋肉にもダメージを与え、筋肉の合成効率を落としたり、筋疲労からの回復を遅らせたりしてしまいます。

トレーニングの質を大きく下げることになるため、活性酸素の発生や活性化を抑えるための抗酸化能力は非常に重要です。

ブロッコリーからはβカロテン、ビタミンE、ビタミンCといった「抗酸化ビタミン」と呼ばれるビタミンを摂取できます。

さらにブロッコリーに含まれる、ケルセチンやスルフォラファンといった機能性成分の効果も見逃せません。ケルセチンには血流を改善する作用が確認されており、エネルギーの供給や疲労回復を速やかにおこなう効果が期待できます。

またスルフォラファンには自身の抗酸化作用に加え、酸化ストレス応答因子に作用して体内の抗酸化酵素を活性化させ、抗酸化能力をより増大させる働きも確認されています出典[2]

筋損傷による筋肉痛を速やかに回復し、次のトレーニングに良好な状態で挑むため、ブロッコリーから効率的に抗酸化物質を摂取しましょう。

 

インドールー3-カルビノールがテストステロンを保護

ブロッコリーに特徴的な機能性成分のひとつに、インドール‐3‐カルビノール(I3C)があります。I3Cには抗炎症作用や抗酸化酵素の誘導作用、免疫の強化や血栓防止作用、発がん抑制作用など、様々な健康効果が期待されています。

筋力トレーニングにおいてI3Cに期待できるのは、男性ホルモンであるテストステロンの保護作用です。I3Cには、体内のテストステロンをエストロゲンに変換する酵素、アロマターゼの発生を抑制する働きが確認されています出典[3]

エストロゲンへの変換が滞ればその分テストステロンの減少も抑えられます。直接的にテストステロンを上昇させるような効果は確認されていませんが、ブロッコリーの摂取が体内のテストステロン量の維持に役立つ可能性があります。

テストステロンは活力や意欲の向上に関わることに加え、筋肉の合成効率を高めるホルモンでもあります。筋力トレーニングの質を高めたい方にとっては、テストステロンを高濃度に維持したいところ。テストステロンを維持する効果を期待して、ブロッコリーを活用するのもよいかもしれません。

 

どう食べる?おすすめの摂取法について解説

ブロッコリーからは豊富なたんぱく質に加え、ビタミン類や機能性成分など、トレーニーに嬉しいさまざまな成分を摂取できます。トレーニングの効率化のためにはできるだけ多く頻繁に摂取したいと考える方も多いかもしれませんね。

そこで、ブロッコリーによる効果を高めるためにできる、摂取上の工夫について紹介します。ブロッコリーをどのように食べればよいか迷っている方、摂取上のポイントを知りたい方は、ぜひ以下を参考に調理してみましょう。

1日100g前後を目安に、ほかの野菜とも組み合わせて

ブロッコリーは緑黄色野菜であり、非常に栄養価が高く、トレーニーを含めた多くの方におすすめしたい食品です。しかし健康維持に必要なすべての微量栄養素を考えた場合、ブロッコリーのみでの摂取はやや非効率と言えるでしょう。

厚生労働省が発表している「健康日本21」では、生活習慣病予防のため、野菜類を1日350g以上摂取することが目標として設定されています。また、そのうちβカロテンを豊富に含む緑黄色野菜は、摂取推奨量が120g以上と示されています出典[4]

トレーニングのための体調管理においては、ブロッコリー1種類に限らず、さまざまな野菜から微量栄養素や機能性成分を摂取すべきです。

たとえばβカロテンはブロッコリーにも含まれますが、ニンジンの方が含有量が多く、効率的な摂取が可能です。機能性成分については、トマトのリコピンやニンニクの硫化アリルなど、ブロッコリーからは摂取が困難なものも数多く存在します。

ブロッコリーは栄養面において非常に優秀な野菜ですが、偏った摂取は厳禁です。ほかの野菜から優れた栄養素や機能性成分を摂取する余地を残すため、ブロッコリーの摂取は1日100g前後にしておきましょう。

 

蒸し調理か電子レンジ調理がおすすめ

ブロッコリーに豊富なビタミン類の中には、調理により失われやすいものがいくつか存在します。

たとえばビタミンB群は水溶性ビタミンであるため、茹で調理により一部が茹で汁に溶け出してしまいます。ブロッコリーの栄養価を下げることになるため、ブロッコリーの茹で調理は避けるべきでしょう。あるいは茹で汁ごと摂取できるよう、スープの具材として取り入れるのもよいかもしれません。

ただし、同じく水溶性ビタミンであるビタミンCは茹で汁への溶出があることに加え、長時間の加熱で壊れやすい性質があります。

そのため長時間煮込むスープでは、損失がより大きくなるでしょう。ビタミンB群とビタミンCを同時に効率よく摂取するためには、短時間で加熱調理ができて水への溶出が少ない、蒸し調理や電子レンジ調理をおすすめします。

 

ドレッシングの質に注意

ブロッコリーを温野菜サラダとして食べる方は多いのではないでしょうか。そのままの摂取では味気ないものの、味付けのためのドレッシング選びには注意が必要です。

ブロッコリー100gのカロリーは37kcalですが、これにマヨネーズを大さじ1杯(12g)かけて食べた場合、計117kcalとなります。胡麻ドレッシングやサウザンアイランドドレッシングを大さじ1杯かけても約100kcalとなり、ドレッシングのカロリーの方がかさむ結果になりがちです。

油分を豊富に含むマヨネーズやドレッシングの多用が習慣化すると、低エネルギーであるはずのブロッコリーのカロリーを押し上げてしまいます

また和風ドレッシングのようなノンオイルのものは、カロリーや脂質量が低い代わりに高塩分であるため、こちらも使いすぎには注意が必要です。

高脂質や高塩分を避け、かつトレーニングの質を高めるためのドレッシングとして、疲労回復効果の高いお酢をメインにした味付けをおすすめします。

お酢と良質な油、少量の塩やスパイス、レモン果汁などを混ぜて、手作りのドレッシングを作ってみましょう。油は抗酸化作用を持つω‐3系脂肪酸が豊富なアマニ油やえごま油、もしくは酸化しづらいオリーブオイルがおすすめです。

 

ブロッコリースプラウトの活用でより高い栄養価を

ブロッコリーの新芽である「ブロッコリースプラウト」の栄養価の高さが、近年注目を集めています。

ブロッコリースプラウトはビタミンCやスルフォラファンがブロッコリーよりも豊富に含まれており出典[2]、抗酸化物質の効率的な摂取を期待する場合にはとくに優秀な食品です。

ブロッコリースプラウトのもう一つの利点として、生食が可能であることが挙げられます。ビタミンCは加熱による喪失が大きい栄養素であるため、ブロッコリースプラウトを活用したサラダでの摂取がより効率的です。

また、スルフォラファンの摂取のためにも生食は適しています。スルフォラファンはすり潰したり砕いたりといった刺激で「ミロシナーゼ」という酵素が活性化することにより生成されます。しかし加熱調理ではミロシナーゼが失活するため、スルフォラファンを十分に摂取できない可能性があるのです。

ブロッコリースプラウトは見た目こそかいわれ大根に似ていますが、辛味や味のクセがないためさまざまな料理へ気軽に使用できます。肉料理の付け合わせやサラダの具材として、積極的に活用してみましょう。

 

大豆と合わせてテストステロンの保護効果を倍増

ブロッコリーに含まれるI3Cからは、テストステロンを保護する効果が得られる可能性があります。また、大豆に含まれる機能性成分である「ゲニステイン」にも同様に、アロマターゼを阻害してテストステロンからエストロゲンへの変換を抑制する効果が確認されています。

2003年にアメリカから発表された論文では、I3Cとゲニステインをあわせて摂取することで、より強いテストステロン保護効果が発揮されたと述べられています出典[5]

ゲニステイン以外にも、大豆には良質なたんぱく質や抗酸化物質であるイソフラボンなど、トレーニーに嬉しい成分が含まれています。ブロッコリーとの組み合わせで、よりトレーニングの質を高める効果が期待できるでしょう。

 

トレーニーにおすすめ!ブロッコリーのレシピ2選

ブロッコリーは加熱と簡単な味付けのみで比較的おいしく食べられる便利な食品ですが、料理への活用でよりおいしく継続できます。またほかの食品との組み合わせにより、ブロッコリーの成分をより効率よくトレーニングの質の向上に活かせるようにもなるでしょう。

トレーニーにおすすめしたい、ブロッコリーを用いたレシピを2つ紹介します。ブロッコリーの成分をより活かした調理法で味わいたいという方は、ぜひご活用ください。

ブロッコリーと鶏むね肉の和風マヨ炒め

<主な材料(二人分)>

  • ブロッコリー 200g
  • 鶏むね肉  1枚(200~300g)
  • 酒   大さじ2
  • 塩コショウ  少々
  • 小麦粉  大さじ1
  • マヨネーズ  大さじ2
  • 醤油   小さじ1

<作り方>

  1. 一口大に切ったブロッコリーを耐熱容器に入れ、酒を大さじ1だけ回しかける
  2. 耐熱容器に蓋をして600Wの電子レンジで2分ほど加熱する
  3. 鶏むね肉を一口大に切り、残りの酒大さじ1とマヨネーズ大さじ1と小麦粉で揉み込む(ポリ袋の活用がおすすめ)
  4. フライパンに残りのマヨネーズ大さじ1を熱して鶏肉を入れて炒める
  5. 鶏肉の両面に焼き色が付いたらブロッコリーを加えて炒める
  6. 全体に火が通ったところで醤油を馴染ませて火を止め、盛り付ける

ブロッコリーの豊富なたんぱく質を活かすため、アミノ酸スコアの高い動物性食品と組み合わせたメイン料理です。

マヨネーズの使用により鶏むね肉が柔らかく仕上がるため、鶏むね肉のパサつきが気になる方にもおすすめです。より柔らかくしたい場合には、3の揉み込む工程を先におこない、冷蔵庫で漬けおきしておきましょう。

ブロッコリースプラウトとキュウリのおかか和え

<主な材料(二人分)>

  • ブロッコリースプラウト 1パック
  • キュウリ   1本
  • かつおぶし   小分け1パック
  • すりごま   小さじ1
  • 醤油    小さじ1
  • 酢    小さじ2
  • お好みの油   大さじ1
  • その他、お好みの具材

<作り方>

  1. ブロッコリースプラウトの根本を切り落としてほぐす
  2. キュウリを細切りにする
  3. ブロッコリースプラウトとキュウリ、かつおぶしを混ぜ合わせる
  4. 食べる直前に、すりごまと醤油、酢、お好みの油を混ぜたものを和える

生での摂取が適しているブロッコリースプラウトをさっぱりと食べられるレシピです。味付けに用いる油はお好きなものを選びましょう。風味をよくするためにはごま油が、より高い抗酸化作用を期待する場合にはアマニ油やえごま油がおすすめです。

ブロッコリースプラウトとキュウリを基本の具材としていますが、和風の味付けはほかにもさまざまな野菜と好相性です。シャキシャキ感の強いレタスや、食べ応えのある枝豆や蒸し大豆を組み合わせることで、飽きずに続けられるでしょう。

大豆や枝豆は蒸し豆のミックスとして袋詰めされたものがスーパーなどで手に入ります。作り置きとして多めに作っておくと、毎日の調理の手間を省略できるため、おすすめです。

 

まとめ

豊富なたんぱく質と多彩な微量栄養素、機能性成分を摂取できることから、ブロッコリーと筋力トレーニングとの相性は非常によいといえます。さらに栄養価の高いブロッコリースプラウトを活用したり、ビタミンを逃さない蒸し調理や電子レンジ調理を心掛けたりして、ブロッコリーの成分を効率的に摂取しましょう。

トレーニングの質を高めるためには、ブロッコリーと組み合わせる食品も重要です。たんぱく質の強化には動物性食品との組み合わせが役立ちます。テストステロンの保護にはゲニステインを含む大豆との組み合わせが有効である可能性があります。さまざまな組み合わせを楽しみながら、ブロッコリーを筋力トレーニングの味方につけましょう。

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