寝る前の梅干しで疲れ知らず!食べ方のポイントを解説
2023年11月13日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

梅干しってどんな食べ物?

梅干しは日本古来の保存食。基本の材料は梅と塩のみの、非常にシンプルな食品です。

梅干しは高い塩分濃度とクエン酸やリグナンの殺菌作用により、長期の保存が可能となっています。

リグナンは梅由来のポリフェノールの一種。グラム陽性菌などの細菌、あるいはウイルスに対する抗菌活性を持つことが判明しています出典[1]

こうした有機酸やポリフェノールなどによる健康効果を期待して、梅干しを日常的に食べる方も少なくないようです。

 

寝る前の梅干しは疲労回復に効果的!注目の成分5選

梅干しの健康効果といえば、やはり疲労回復の面が大きいでしょう。とくに寝る前の摂取により、疲労回復効率が高まる効果が期待できます。

ほかにも梅干しにはいくつかの健康効果が期待できます。寝る前の梅干し摂取により得られる効果について、梅干しの成分に注目しつつ解説しましょう。

クエン酸やビタミンB1がエネルギー生成を促進

梅干しといえば強い酸味が印象的ではないでしょうか。酸味の由来であるクエン酸は体内でエネルギー生成を促すため、疲労回復効果に役立つと考えられています。

同じくエネルギー生成をサポートする栄養素としてビタミンB群が挙げられます。梅干しにはさまざまなビタミンが含まれていますが、中でもビタミンB1の量が多めです。

ビタミンB1は糖質のエネルギーへの変換をサポートするため、効率的なエネルギー補給においては欠かせません。

クエン酸やビタミンB1の効果によりエネルギー生成が促進され、疲労回復効率を高める効果が期待できるでしょう。

 

梅由来のポリフェノールが活性酸素を除去

梅にはさまざまなポリフェノールが確認されています。中でもリグナンと呼ばれる成分は、天然の抗酸化物質の中でも、とくに高い抗酸化作用を示すことで知られています出典[2]

私たちの体内にも、活性酸素の働きを抑えるための抗酸化物質が存在します。グルタチオンは内因性の抗酸化物質のひとつ。リグナンにはグルタチオンの量を増やす効果が確認されているのです出典[3]

また、疲労回復に効果を発揮するクエン酸も、間接的に酸化ストレスの低減に役立つ可能性があります。というのもクエン酸には、体内の血中脂質のバランスやインスリン感受性を改善する効果が確認されているのです出典[4]

食べ過ぎや肥満によりインスリン感受性が下がると血糖値が下がりにくくなります。高血糖状態は酸化ストレスを増やしやすくなります。

インスリン感受性を改善する働きがあるクエン酸の摂取により、体内での活性酸素の発生を抑える効果が期待できるでしょう。

 

ムメフラールで血行促進

梅干しを加熱すると、梅干し中の糖とクエン酸の反応により「ムメフラール」という成分が生成されます。ムメフラールには強力な血流改善作用があるとして、近年注目が集まっています。

ムメフラールは血小板の過剰な活性を阻害し、炎症を抑制する効果が確認されています。

2020年に韓国東洋医学研究所から発表された論文においては、血栓症を引き起こしやすいラットにムメフラールを投与することで血流が改善され、血管の損傷の回復効率が2倍以上に上昇したと報告されています出典[5]

ムメフラールは副作用の生じない成分であるため、血流障害を予防するための栄養補助食品の候補となるのではとも議論されています。

このように、ムメフラールには強力な血流改善作用や炎症抑制作用が確認されています。

一方で、梅干しの成分にはほかにもクエン酸やリンゴ酸、フリフリルアルコールといった、血流を改善する作用のあるものが存在します出典[6]。ムメフラールとあわせて摂取すれば、さらなる血流改善効果が期待できるでしょう。

良好な血流を保つことは、冷えや肩こりの改善に加え、効率的に疲労を回復するために非常に重要です。栄養素や酸素を速やかに体中に届けるためにも、寝る前の梅干しを活用してみましょう。

 

有機酸により腸内環境を整える効果あり

梅干し由来のクエン酸やリンゴ酸には、ヘリコバクターピロリ菌や腸炎ビブリオといった細菌の増殖を抑える働きが確認されています出典[7]出典[8]。有機酸の抗菌作用により、胃腸を健康に保つ効果が期待できるでしょう。

加えて、梅干しの有機酸には腸内の悪玉菌の増殖を抑えたり、腸を刺激して排便を促したりする作用も確認されています。

梅干しの継続摂取により腸内環境を良好に保ちやすくなるため、便秘の解消や生活習慣病の予防にも役立つ可能性があります。

また、腸内環境と睡眠との関係が近年注目を集めています。

リラックス作用のある幸せホルモン「セロトニン」は、大半が腸内で合成されることが判明しています。

セロトニンは、入眠をスムーズにするためのホルモン「メラトニン」の合成材料としても使われます。腸内環境を整えることで、より上質な睡眠を確保できる可能性も高まるでしょう。

 

食べ過ぎはNG!寝る前の梅干しの危険性について解説

梅干しのクエン酸やポリフェノールにはさまざまな健康効果が期待できます。とくに就寝前の摂取により、高い疲労回復効果や快眠効果が得られる可能性がありそうですね。

一方で、梅干しといえば高い塩分濃度を持つ食品であり、1日にそう何個も食べるものではありません。疲労回復や快眠のためとして食べ過ぎると、思わぬ悪影響が生じる可能性もあります。

梅干しの食べ過ぎがもたらす危険性についても、メリットと同様に把握しておきましょう。

水分の摂りすぎにより睡眠の質が低下

梅干しを思い浮かべるだけで唾液が出てくる方も多いことでしょう。梅干しは高塩分であるため、多量に摂取すると体に塩分が蓄積され、強い口渇感を覚えることに・・・

就寝前にコップ2杯も3杯もの水を飲んでしまうと、就寝中に多量の尿が生成されます。尿意を感じるタイミングも早まるため、深夜や早朝の覚醒を引き起こしやすくなるでしょう。

また、梅には利尿作用のあるカリウムも含まれているため、さらに中途覚醒を起こしやすくなる可能性があります。

睡眠時間を確保できないと、梅干しがもたらすはずの疲労回復効果や快眠効果の恩恵を十分に得られません。梅干しの食べ過ぎは逆効果となるため、量が増えすぎないよう数を守ることが重要です。

 

高塩分による夜間高血圧やむくみに注意

通常、就寝中は副交感神経が働いているため、血管は拡張した状態にあり、血圧も起床時よりやや低下しています。しかし高塩分食を続けていると、夜にも血圧が下がらず高いままになる場合があります。

夜の血圧が高い「夜間高血圧」は脳や心臓などの各臓器に大きな負担をかけ、さまざまな疾病のリスクに繋がると考えられています。

また、高塩分食により水分を多量に摂取すると深夜や早朝に目覚めやすくなります。睡眠時間の減少は夜間高血圧をさらに悪化させ、心血管疾患のリスクをより高めてしまいます。

さらに塩分の摂取量が増えると、体内のナトリウム濃度を一定に保つために体は水分を多めに溜め込もうとします。その結果、手足に強いむくみが生じる場合があり、体の怠さを感じやすくなるかもしれません。

疲労回復や快眠のためにと食べた梅干しが、不眠や体調不良、倦怠感を招くように働いては本末転倒です。梅干しの摂取は、塩分や水分摂取が過剰にならない程度に留めておくべきでしょう。

 

寝る前にはどう食べる?梅干しのおすすめ活用法

梅干しは寝る前に食べることでさまざまな健康効果が期待できるものの、過剰な摂取は禁物であることが分かりました。

そこで今回は、寝る前の食べ方としておすすめしたい方法をいくつか紹介します。どのくらいの量の梅干しを、どのように食べればよいか迷っている場合には、ぜひ以下を参考に食べ方を工夫してみましょう。

白湯やだし汁に混ぜて体を温める

梅干しは本来、おにぎりの具やおかゆの味付けとして使用されるもの。味が濃すぎることからそのまま食べるにはやや不向きです。

そのため白湯に混ぜて味を薄め、少しずつ飲むと摂取しやすくなるでしょう。昆布やカツオ節のだし汁に混ぜてもおいしくいただけます。

白湯を用意する際、梅干しもあわせて加熱しておくことで、ムメフラールを生成できます。血流改善効果をより多く得たい場合には、加熱した梅干しを白湯に混ぜるようにしましょう

それでも強い酸味が気になる場合には、スプーン1杯のはちみつを混ぜることがおすすめ。スプーン1杯であればカロリーの過剰摂取を起こしにくいため、体脂肪合成のリスクを過剰に心配する必要もありません。

また、はちみつ由来のビタミンB群や有機酸も疲労を回復するように働くため、梅干しの成分と合わせてより高い効果が得られるでしょう。

 

調味漬け梅干しを1個まで

梅干しには、塩漬け梅干しと調味付け梅干しがあります。商品にもよりますが、1粒10gの梅干しを食べる場合、塩漬け梅干しでは約2gの塩分摂取に繋がると考えられます。

厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」における目標量として、男性は1日7.5g未満、女性は1日6.5未満が設定されています出典[9]

目標量は、高血圧のような生活習慣病のリスクを防ぐために有効であるとして設定されているものです。できるだけ目標量の範囲に収めたいところですが、1粒あたり2gの梅干しの摂取が習慣化していては、塩分摂取量を抑えることは非常に難しくなるでしょう。

一方、調味付け梅干しであれば、1粒あたりの塩分量は約0.8gであり、塩漬け梅干しの半分以下に抑えられています。もちろん食べ過ぎは塩分の過剰摂取に繋がるため、毎日の習慣として摂取する場合には、1日1粒までに制限しておきましょう。

また、味の関係で塩漬け梅干しを好む場合には、1日の摂取量を1粒の半分以下に抑えましょう。食べる際にも白湯やだし汁に混ぜるなどの方法を取り、梅干しの濃い味に慣れてしまわないよう工夫することをおすすめします。

 

虫歯予防のため歯磨きを忘れずに

調味付け梅干しには糖類が多めに含まれているため、食べてそのまま眠ると虫歯のリスクがあります。はちみつを加えて同時に摂取している場合には益々リスクが高まるでしょう。

また、塩漬け梅干しにも梅由来の糖が含まれるため、虫歯のリスクはゼロではない点に注意が必要。

梅干しに含まれるクエン酸などには抗菌作用が確認されていますが、残念ながら虫歯を予防する効果はありません。

疲労回復や快眠の代償として虫歯に苦しむことのないよう、梅干しを食べた後は歯磨きを欠かさないようにしましょう。

 

まとめ

梅干し由来のクエン酸やポリフェノールには高い疲労回復効果や快眠効果があります。

寝る前の摂取を習慣化することで、質の高い睡眠が確保でき、スッキリと目覚めやすくなるでしょう。

一方で、梅干しは高塩分食品であるため、食べ過ぎによる塩分の過剰摂取には十分な注意が必要です。

塩分濃度の低い梅干しを選んだり、1粒をさらに分けて食べたりするなどの工夫で、夜間の塩分摂取量が増えないよう調整しましょう。

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