筋トレにコーラは厳禁?注意点と正しい飲み方を解説
2023年11月22日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

筋トレ中にコーラを飲んでもいい?

体を引き締めるために筋力トレーニングをしている方は、菓子パンやスナック菓子などを意識して控えているのではないでしょうか。スナック菓子のお供としてよく飲まれるコーラのような清涼飲料水も、同様に避けられる傾向にあるようです。

しかしコーラは筋力トレーニングに活用できる飲み物であるため、タイミングを工夫すれば我慢することなく飲むことができるでしょう。まずはコーラが筋力トレーニング中の飲み物として向いている点について解説します。

運動前後の糖質補給として優れている

コーラのような甘い液体は消化の必要がほぼありません。そのため体内へ速やかに吸収され、血糖値を急激に上昇させます。

血糖値が急上昇するとインスリンというホルモンの分泌量が増え、血中の糖を筋肉へ貯蔵する働きがより強まるのです。

筋肉へ向かった糖は「筋グリコーゲン」に代わり、筋肉の活動のためのエネルギー源として機能します。運動前に摂取することで、効率的に筋グリコーゲンを蓄積でき、長時間のトレーニングでも高いパフォーマンスが維持できます。

また、運動後の疲労回復や筋肉の損傷防止にも、速やかに糖質補給を行えるコーラが活躍するでしょう。

ちなみにコーラ100mLあたりの砂糖含有量は約11g。500mLのペットボトル1本には約55gの砂糖が入っている計算になります。

一般的なスポーツドリンクの砂糖の量は500mLペットボトル1本につき20~30gであることを考えると、その多さも際立つでしょう。

このようにコーラは糖質量がジュース類の中でもトップクラスであるものの、炭酸ガスの刺激により甘さが緩和されています。

つまり甘すぎない味わいでありながら、高濃度の糖液をしっかり摂取できるのです。糖質補給をより効率的に、かつおいしく行うための手段としても、適していると考えられますね。

 

炭酸ガスの存在は運動パフォーマンスを低下させない

爽やかな甘さを楽しみながら速やかなエネルギー補給ができるコーラですが、炭酸ガスによる体の負担はないのでしょうか。

清涼飲料水の飲みすぎにより、胃の膨満感を感じてパフォーマンスが低下することを心配される方もいるかもしれませんね。

これに関しては1992年にアメリカのワシントン大学による調査が行われています。

炭酸飲料と運動パフォーマンスの関係について調べた研究では、糖濃度10%の炭酸飲料と非炭酸飲料の間に、胃の快適さや消化機能、運動パフォーマンスに差が見られなかったことが明らかになりました出典[1]

コーラ100mLあたりの砂糖含有量は約11gであるため、この論文で使用された糖濃度10%の炭酸飲料とほぼ条件は同じです。

コーラにおいても胃の不快感やパフォーマンスの低下に悩まされることなく、エネルギー補給として役立てられるでしょう。
 

筋トレには悪影響?コーラの注意点を解説

高濃度の糖液をおいしく摂取でき、速やかなエネルギー補給や疲労回復に役立つコーラは、適度な活用によりトレーニングに役立てられそうです。一方で、一般に言われているコーラのリスクには十分注意する必要があります。

コーラを活用する際に気を付けたい点について、2つ解説しましょう。

コーラのカフェインにパフォーマンス向上効果は期待できない

コーラにはカフェインが含まれています。カフェインといえば覚醒作用があり、集中力を向上させたり、疲労や眠気を軽減したりする効果が期待される成分ですよね。そのためコーラを飲む際、糖質補給と同時にパフォーマンスの向上効果を期待する方も多いのではないでしょうか。

しかし残念ながら、コーラのカフェインは運動パフォーマンスを上げるには不十分です。2009年にアメリカのコカチネット大学から発表された論文には、様々な研究から判断された「パフォーマンスの向上効果が確認されやすいカフェインの摂取量」が、体重1kgあたり3~6mgと示されています出典[2]

体重60kgの方の場合、運動前の摂取でパフォーマンスの向上効果が期待できる量は180mg~360mgです。一方、コーラ500mLに含まれるカフェイン量は約50gであるため、十分な効果が期待できないのです。

カフェインを180mg摂取するために必要なコーラの量は1.8L。500mLのペットボトルで3本半ほど飲まなければなりません。運動前にこれほどの量のコーラを飲むのはやはり現実的ではありませんよね。

パフォーマンスの向上効果を期待したい場合には、よりカフェインを豊富に含む別の飲料やサプリメントを活用しましょう。

 

清涼飲料水の習慣摂取による体重増加も

コーラは高濃度の糖液をおいしく摂取できる飲み物です。しかし高糖質かつ血糖値を急激に上げる飲料は、当然ながら太りやすいというリスクがあります。

血糖値の急上昇に伴い分泌量が増えるインスリンは、筋肉のみならず脂肪へもエネルギーを蓄えるように働きます。中性脂肪の合成が促されて体重が増加しすぎると、ボディメイクの妨げとなってしまうでしょう。

また、コーラを高頻度で摂取していると、コーラ以外の甘いものが欲しくなりやすいことが分かっています。

2018年にアメリカのカリフォルニア大学から発表された論文では、砂糖入り飲料を習慣的に摂取する10代の若者が一時的に砂糖入り飲料断ちを行った場合、1日の砂糖の総摂取量が80g低下したと報告されています出典[3]

さらに同じ研究では、砂糖入り飲料断ちの期間において、参加者はモチベーションや満足感、集中力、全体的な幸福度などが低下したことも明らかになりました。砂糖入り飲料には依存性があり、継続摂取により砂糖への欲求も高まると考えられるでしょう。

コーラを頻繁に摂取していると、砂糖や甘いものへの依存が生じやすくなるようです。コーラやほかの砂糖入り食品の摂取により体重増加が起こりやすくなるため、運動前や運動直後以外での摂取はやめておきましょう。
 

トレーニーのコーラ活用法

コーラには体重増加のリスクがありながらも、適切な摂取により筋力トレーニングに役立つ効果を得られることが分かりました。ではコーラを筋力トレーニングに活用するには、どのような点に注意して飲めばよいのでしょう。

トレーニーがコーラを飲む際、とくに気を付けたい点を3つ解説します。体重増加を避けつつ効果的に糖質補給を行うため、ぜひ参考にしてください。

筋トレ1時間前や筋トレ直後に摂取

トレーニーがコーラを飲む目的はやはり速やかなエネルギー補給にあります。筋トレ前の摂取にはトレーニングのパフォーマンスを高める効果が期待できます。

また、筋トレ後に摂取すればエネルギーの再補充や疲労回復を効率化するために役立つでしょう。

筋トレ前の摂取においては、1時間前を目安としましょう。筋トレ30分前の摂取では、トレーニング中の低血糖が生じる可能性があります。

2017年に早稲田大学らが発表した論文においては、糖質補給から30分後にサイクリング運動を始めた参加者において、低血糖が生じるリスクが高まったと報告されています出典[4]

低血糖状態はめまいや集中力の低下を引き起こすため、パフォーマンスを著しく下げます。ふらつきによる転倒のリスクもあり非常に危険であるため、直前の摂取は控えましょう。

一方、筋トレ後の摂取は、終了直後から30分以内に行うのが理想です。なるべく速やかに糖質補給を行うことで、筋肉の損傷を防ぎ、筋肉痛を軽減する効果も得やすくなるでしょう。

 

500mL1本を目安に

運動前や運動後に飲む量として、500mLのペットボトル1本程度を目安としましょう。1本あたり約55gの糖質補給につながることも覚えておくと、糖質計算がしやすくなります。

アメリカスポーツ医学会では、運動の1~4時間前に、体重1kgあたり1~4gの糖質を摂取することで、筋肉や肝臓のグリコーゲンを効率的に増やすことができると説明しています出典[5]

体重60kgの方であれば、60~240gが運動前の糖質摂取の目安となるでしょう。コーラ1本を飲めば、最低必要量である60gをおおよそ満たせる計算になります。

運動強度が強い場合やバルクアップに力を入れる期間中には、コーラに加えて別の糖質食品を摂取して糖質量を増やす必要があります。餅のような、糖質密度が高く血糖値を素早く上げやすい食品がおすすめです。

運動前の過剰な水分補給はパフォーマンスの低下に繋がるため、糖質の確保のために1Lも2Lもコーラを飲むのはやめておきましょう。

 

カロリーゼロのコーラは厳禁

コーラには様々な種類が展開されています。カロリーを抑えたダイエットコーラも、スーパーでは通常のコーラと同じ区画に販売されていることが多いでしょう。

しかし当然ながら、ダイエットコーラにはエネルギー源となる砂糖が含まれていません。血糖値の上昇に繋がらず、筋グリコーゲンの貯蔵には使えないため、購入時には十分注意しましょう。

なお、頻繁にコーラを飲みたい場合に、トレーニング前後以外のタイミングでダイエットコーラを飲むことを考えるかもしれません。しかしダイエットコーラに含まれる人工甘味料は、習慣的な摂取による様々な健康上のリスクが指摘されているのです。

2014年にアメリカのシカゴ大学から発表された論文においては、人工甘味料の習慣的な摂取が腸内環境を悪化させて耐糖能異常を引き起こし、肥満や糖尿病のリスクを高める可能性があると述べられています出典[5]

耐糖能異常が生じるとインスリンが効きにくくなり、筋グリコーゲンへのエネルギー補給効率も落ちてしまいます。健康への悪影響はもちろん、筋力トレーニングのパフォーマンス低下にも繋がるため、ダイエットコーラの摂取は厳禁と考えましょう。
 

コーラに替わるおすすめの食べ物や飲み物

コーラは運動前後の糖質補給として活用することで、パフォーマンスを高めたり疲労回復を促したりする効果が期待できます。

しかしもちろん、筋力トレーニングに役立つ飲み物はコーラだけではありません。より筋力トレーニングへの効果が期待でき、より健康上のリスクが少ないものはいくつか存在します。

コーラに替わるものを探している方は、ぜひ以下の食べ物や飲み物を試してみましょう。

筋グリコーゲンの貯蔵には餅がおすすめ

運動前後の糖質補給には、砂糖入り飲料のような速やかに血糖値を上げられるものが適しています。白米やうどんなどの糖質食品を活用すれば、十分なエネルギー補給を無理なく行えるでしょう。

とくにおすすめしたいのが、白米よりも素早く消化され、血糖値を速やかに上げやすい餅です。食物繊維や脂質がほぼ含まれていないため消化にも負担がかかりにくく、エネルギー密度も高いため効率的なエネルギー補給が可能です。

丸餅1個には17.5g、角餅1個には25g程度の糖質が含まれています。必要な糖質量に応じて数を調節し、砂糖醤油や大根おろしなどと組み合わせておいしく食べましょう。

 

運動前にはコーヒーで集中力UP

カフェインの効率的な供給源となるのはやはりコーヒーです。100mLあたり60mgのカフェインを摂取でき、そのカフェイン密度はコーラの5倍以上です。

パフォーマンスを高めるために必要と考えられている、体重1kgあたり3~6gの摂取も、コーヒーであれば無理なく行えるでしょう。

なお、カフェインは摂取後30~2時間で血中濃度がピークになり、半減期(効果が半分になる時間)は2~8時間と幅があることが分かっています出典[6]。カフェインの覚醒作用が強く残った状態で寝つきが悪くなり、睡眠時間が減少するおそれがあります。

良質な睡眠は、疲労回復や筋肉の効率的な合成に欠かせません。睡眠に影響を与えないよう、夜間のトレーニング時にはコーヒーを控えましょう。

 

運動後には牛乳

運動後には糖質に加え、筋肉の合成に欠かせないたんぱく質の摂取も重要です。良質なたんぱく質を補給でき、さらに筋肉の合成効率やグリコーゲンの貯蔵効率を高める可能性がある飲料として、トレーニング後の牛乳がおすすめです。

2006年にアメリカのテキサス大学が発表した論文では、運動1時間の牛乳摂取により、体のたんぱく質合成の指標となる、フェニルアラニンとスレオニンというアミノ酸の取り込み量が増加したことが報告されています出典[7]

また、糖質の摂取に牛乳を合わせることで、インスリンの分泌量や筋グリコーゲン貯蔵量が増大したという結果も、2018年に東京大学から発表された論文において得られています出典[8]。糖質との摂取でエネルギー貯蔵の効率を高めるように働くため、トレーニングとの相性がとくによい飲み物と言えそうです。

たんぱく質補給に役立ち、糖質補給のサポートも行える牛乳を、ぜひ運動後に取り入れてみましょう。
 

まとめ:コーラを飲むなら筋トレの1時間前か直後に!

コーラに含まれる多量の糖類は速やかに血糖値を上げるため、運動前後の糖質補給の手段として活用できます。一方で頻繁な摂取により甘いものへの欲求が増し、体重増加に繋がりやすい点には注意しなければいけません。

コーラを筋力トレーニング中に飲みたい場合には、運動1時間前と運動直後のタイミングがおすすめです。爽やかな甘さでおいしく飲めるコーラを活用して、おいしくエネルギー補給を行いましょう。

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