【タイプ別】テストステロンを増やす19の運動と減らす3つの運動
2023年11月21日更新

執筆者

FTA-CPS/介護予防運動指導員

尾田千尋

トレーナー歴25年。大手スポーツクラブに7年間勤務後、2010年独立。「パーソナルトレーニングをもっと身近に!」との想いのもと、札幌で月謝制パーソナルジムを運営。玉石混交のネット情報のなか、イメージやファッションではないエビデンスに基づいており、でも、面白いネタを提供していきたいと考えている。趣味は柔術(青帯)。反抗期真っ盛りの高校生(双子)の父としての顔ももつ。

そもそもテストステロンとは

「テストステロン」は、主に男性の精巣(女性は卵巣)で作られる男性ホルモンのこと。

主な働きは、

  • 男性機能の改善
  • 筋肉や骨量の増加
  • 糖尿病の予防
  • 記憶力の改善や認知症予防

などです。

男性ホルモンが、臓器だけでなく脳にも影響を与えるというのは興味深いですね。しかし、30歳以降、何もしないと加齢とともに年1、2%程度ずつ分泌量は低下していくと言われています。

 

テストステロンが低下すると...

先ほど、年齢と共にテストステロンは低下すると述べましたが、低下すると下記のような症状(疾病)が出る可能性があります。

  • 男性更年期障害(疲れやすい、イライラ、性欲低下など)出典[1]
  • 体脂肪・内蔵脂肪の増加
  • 骨粗鬆症
  • II型糖尿病

しかし、高齢になっても平均的な30代と同程度の分泌量を維持している人も多いなど、テストステロンは個人差が大きいホルモンであることも同時に知られています。ただ多くの男性は加齢によりテストステロンが低下するため、性欲や筋力の低下を感じる人はテストステロンの向上に有効な生活習慣を意識するとよいでしょう。
 

運動とテストステロンの関係

運動時、筋肉が骨を動かしていることはよく知られていますが、実は、筋肉自体が性ホルモンを作り、分泌する分泌器官であることが近年わかってきています出典[2]

ピッツバーグ大学の研究によれば、運動直後から血中のテストステロン量は増え、運動終了と共に低下します。また、この影響は高齢者の方が若者より大きいとされています出典[3]

これらのことから、加齢により活力低下を痛感している方は、意図的に運動量を増やすことで筋肉を刺激し、テストステロン量が増える可能性がありますね。体力もつくので一石二鳥です。

では、具体的にどんな運動をすると効果的にテストステロン量が増えるのかを説明していきます。

 

【タイプ別】テストステロンを上げる運動19個

テストステロン濃度を高めるための、具体的な筋トレ方法について説明していきましょう。

今回はジムに通っている人も、通っていない人もできる内容となっています。ぜひ、今日から試して下さいね。

更なる強化を求める人は筋トレ

まずはおすすめの筋トレをあげていきますね。

なお、多くの研究が「70%負荷注釈[1]×10回×3セット」以上の負荷の筋トレ方法が、テストステロン量を最も上昇させ維持させることができた、としています。

自宅で行うトレーニングでは、主となる負荷が体重のため、70%のような負荷をかけることができません。

その代わり、「10回目がなんとかできる」位のゆっくりとした動作(スロートレーニングと言います)でやると、効かせることができるのでお勧めです。

さて、今回は「コンパウンド・セット法」という方法をご紹介致しますね。

この方法は、1部位(体の部分のことを部位といいます。例:ももの前、胸など)に対して2つの異なる種目を行う方法です。

1種目で終わるよりも2種目行った方が、多くの筋肉を使うことになるため、筋トレ効果は高まります。1つの種目を3セットやってから次の種目をするのが効果的。

自宅トレーニングの方は、2種目目をやって下さいね。


【足のトレーニング:レッグエクステンション→スクワット】

1.レッグエクステンション

膝の曲げ伸ばしで、ももの前側(大腿四頭筋)を鍛えます。

2.スクワット 

股関節の曲げ伸ばし運動です。ももの前側だけでなく裏側(大臀筋、ハムストリングス)。姿勢を保持するため、体幹(腹横筋、多裂筋、内腹斜筋など)にも刺激が入ります。胸をはり、膝が前に出過ぎないようにします。ももが床と平行になるまで下げられたらベスト。


【背中のトレーニング:デッドリフト→グッドモーニング】

3.デッドリフト

背中〜ももの裏側(脊柱起立筋群、体幹、大臀筋、ハムストリングス)にかけて刺激を入れます。膝は若干曲げる程度で胸を張った状態をキープしたまま股関節から上体を曲げます。バーは足をそわせるようにおろし、膝下まで来たらゆっくり元の立った状態に戻ります。

4.グッドモーニング

背中〜ももの裏側(脊柱起立筋、体幹、大臀筋、ハムストリングス)にかけて刺激を入れます。頭の後ろに手をおき(組む必要はありません)、胸を貼った状態で股関節から上体を曲げます。膝は若干曲げておいて下さい。背中が曲がる直前まで行ったら、ゆっくり元の立った状態に戻ります。背中が床と平行まで倒せるのが理想。


【胸のトレーニング:ベンチプレス→腕立て伏せ】

5.ベンチプレス

胸(大胸筋)と肩(三角筋前部)に刺激を入れます。バーを持ち肩の真上からスタート。乳首の真上ギリギリまでおろし、肩の真上に戻る動作です。

6.腕立て伏せ

同じく胸と肩に刺激を入れます。頭からお尻まで一直線の姿勢。肘を伸ばした状態からスタート。手の幅は最低で肩幅、少し余裕が出てきたら、それ以上に広げます。きつくなったら、膝をついて構いません。

【お腹のトレーニング:ペルビックチルト→ツイストクランチ】

7.ペルビックチルト

腰のスキマを埋める体幹トレーニング。仰向けに寝て、両膝を立てた状態から腰の隙間に両手の指を少し入れ、その指を押しつぶすようにお腹に力を入れます。慣れたら指を入れずにやってみましょう。

8.ツイストクランチ

お腹の真ん中と脇腹の体幹トレーニング。仰向けに寝ます。片膝を立て、もう片方の足の足首を引っ掛けます。膝を立てている方の腕は肘を曲げ、手のひらは頭の後ろにおきます。そのまま、肘を対角の膝に近づけるイメージで体幹を斜め上に曲げたり、戻したりする動作です。足首を引っ掛けている同側の手はお腹の上に置いて腹筋がしっかり使われているかを意識しましょう。この時、ペルビックチルトしながら一連の動作ができるのが理想です。

 

多忙な人にはHIIT

HIIT(ヒット)とは、「High Intensity Interval Training(高強度インターバルトレーニング)」​​​​​の略称で、短時間で心肺機能と筋トレ効果の両方を高めることができるトレーニング方法です。非常にハードなトレーニング法のため、主にトレーニングの中上級者向けですね。

HIITと有酸素運動のテストステロン量を比較した研究によると、血中テストステロン量は共に増加。特にHIITが有酸素運動より増加したという研究結果が出ました出典[4]

テストステロン分泌量を含め、HIITは短時間でより高い運動効果が期待できるため、アメリカでは忙しいビジネスマンを中心に人気のトレーニングとなっています。

具体的には、下記のようなトレーニング法がありますよ。

9.インターバル走

呼吸できない早いスピードで90秒間走った後、次の90秒間はジョギングをして呼吸を整える組み合わせを1セットとして、3セット以上繰り返します。※方法は多々あります。

10.バトルロープ(ダブルウェーブ)

小学校時代の綱引きに使ったような太いロープを20秒間全力でふって、できるだけ大きな立波を20秒間行います。10秒間の休憩後、再び全力で20秒間ロープを降る繰り返しを3〜5セット行います。※方法は多々あります。

11.ボックスジャンプ

ボックス(台)へ両足ジャンプで上ったり、降りたりを20秒間繰り返し、10秒間の休憩後、再び行い、トータル3〜5セット行います。※方法は多々あります。

 

太り気味な人や衰えを感じる人は適度な有酸素

若い男性であっても、肥満はテストステロンの低下をもたらすとの研究結果もあることから考えると、出典[5]加齢とともに太りやすくなる30代以降は、テストステロン量が減ることは容易に想像できます。

これだけ読むと夢も希望もありませんが、ご安心下さい。嬉しい研究結果もちゃんとあります。

66歳〜76歳までの高齢者を対象としたピッツバーグ大学の研究によれば、(筋トレと比べるとテストステロンの分泌量は減る傾向がありますが)有酸素運動後にテストステロン値が上昇したことが明らかになっています出典[6]

加齢や、それに伴う肥満により分泌量が落ちがちのテストステロンは、自転車や散歩などの有酸素運動をすることで意図的に上昇を促すことはできそうです。有酸素運動は脂肪を燃焼させる最も効果的な運動ですしね。

下記、代表的な有酸素運動です。自分に合うものが1つ見つかったら、まずは3ヶ月、継続してやってみて下さい。

12.エアロバイク

スポーツクラブで見かけるその場でこぐ自転車です。動かしているのは足だけなので、運動初心者でも楽に行うことができます。

13.ウォーキング

腕をふったり、姿勢を保持するなど上半身の筋肉も使うので、エアロバイクより運動強度はやや高くなります。跳ねたりはしないので、膝への負担は少なく続けることができます。

14.ランニング

跳ねながら前に進む分、足への負荷がかかるため、ウォーキングより運動強度は高くなります。その分、消費カロリーは高くなり、テストステロン量も増えることが考えられます。

 

座りがちな人はまずNEATを増やそう

ここまで様々な運動を紹介してきましたが「運動は苦手だからやりたくない...」、「仕事で疲れて帰宅して、そこから筋トレするモチベーションがわかない...」という方もいらっしゃるでしょう。

そういう方には「NEAT(ニート)」を多くすることをお勧めします。

NEATとは「​​Non-Exercise-Activity Thermogenesis(非運動性熱産生)」の略称で、掃除や洗濯、買い物、犬の散歩といった日常の生活活動全般のことを指します出典[7]

実は、NEATとテストステロンの関係はまだよくわかっていません。

一方で、活動量の少ない太り気味の男性の場合、カロリー制限より身体活動量を増やした方がテストステロン値は上昇した、との研究結果があります。

そのため、生活活動量を多くすることでテストステロンを上昇させることは可能かもしれません出典[8]
 

以下、日常生活の中で運動効果が高いNEATを3つ挙げてみました。


15.雑巾掛け

最近はあまり見かけなくなりましたが、雑巾掛けは、体幹をを保持したまま股関節を動かすので、非常に良いトレーニングになります。

16.モップがけ

中腰になって床にモップをかけることで足のトレーニング。引く動作で背中のトレーニングになります。

17.窓ふき

単に腕を動かすのではなく、腕のつけ根の肩甲骨から動かす意識で行うと、肩甲骨周りの筋肉が使われます。ついでに、背伸びをするとふくらはぎを使うので、むくみの解消や血液の流れが良くなります。


負けず嫌いな人は格闘技

筋トレのようにコツコツやるのは苦手という方は、思い切って格闘技はいかがでしょうか?

2020年にポーランドで行われた研究では、空手や柔道、レスリング、相撲などの格闘技をした後にテストステロン濃度が上昇したことが報告されています出典[9]どうやらテストステロンは、格闘技のような闘争心を煽る競走の後に上昇するようです。そして競争に勝った後に大きく増加し、負けた後は低下すると言われていま出典[10]

負けず嫌いで対人競技の方がやる気が出る人には、格闘技はおすすめの運動の1つなんです。

18.キックボクシング(立ち技)

最近では、那須川天心vs武尊の試合が話題になりましたね。実は、キック、パンチ1つとっても全身運動です。1つのパンチ、1つのキックであっても、無意識ですが全身の筋肉を使っているのです。ストレス発散になり、パンチ、キックの衝撃で骨も丈夫になりますよ。


19.柔術(寝業)

柔道の寝業の部分にフォーカスした競技です。芸能人の木村拓也さんがやっていたり、お笑い芸人のガリットチュウ福島さんが大会で優勝して話題になりましたね。練習中、寝たり起きたりを何度も繰り返すので、1時間の練習の消費カロリーが700kcal程度になると一説には言われています。
 

やってはいけない運動

テストステロンと運動が密接に関係することはご理解頂けたと思いますが、運動ならなんでも良い、という訳ではありません。

間違ったフルマラソンへの取り組みやオーバーワークの筋トレ、過度な減量などは、テストステロン量を逆に低下させる可能性があります。何ごともほどほどに、が重要ですね。

フルマラソン

「よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック」の奥井院長によると、フルマラソンの完走後、テストステロンの分泌量は急激に落ち、元のレベルに戻るには約3ヶ月後とのこと。

また、フルマラソンに向けた練習でも月間走行距離が200kmを超えてくると、テストステロン量が減ることがわかっています。出典[11]

フルマラソンが悪いわけではなく、それらのことを考慮した上で取り組み方を考えるのが重要ですね。​​​​

 

毎日の筋トレ

「運動や筋トレがテストステロンの分泌には有効」という研究結果を述べてきました。しかし、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」という諺は、ここでも当てはまるようです。

スポーツ選手が練習のやり過ぎ(オーバーワーク)でパフォーマンスが下がることがあるように、筋トレもやりすぎはアウトの可能性があります。

筋トレは週2、3回の頻度が推奨されています。逆に言えば、それ以上の回数を筋トレしても、筋肉は成長しない≒テストステロンの分泌量は減る可能性があるためです。

「休むのもトレーニングのうち」と考え、焦らずコツコツトレーニングしていきましょう!


過酷な減量を伴う階級制競技

ボクサーや柔道選手など階級別の競技のスポーツ選手でなくても、月2,3kg以上の急激なダイエットで体重を落とすことを続けていると、テストステロン量を低下させてしまう可能性があります。減量する際は、予定日に向けて計画的に減量しましょう。

スポーツ選手の場合は、いつでも大会に出場できるよう、日頃から暴飲暴食を避け、3kg以下の減量で済む程度の体重に普段からしておくのが良いですね。
 

適度な運動で男を上げよう

本記事では「テストステロン量を増やすにはどのようなトレーニングが効果的か?」というテーマで書きました。まとめると、

  1. テストステロンは男性機能の改善、筋肉や骨の増加、男性更年期の改善など男性にとって必要不可欠なホルモンである。
  2. テストステロンは筋トレ、HIIt(ヒット)、NEAT(ニート)、有酸素運動、格闘技などで分泌量は増える。どれを選ぶかは読者の好みや性格で決めると良い。

以上のことを踏まえて、有意義なテストステロンライフを送りましょう!

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