マグネシウムはテストステロンを増やす?効果的な摂り方とは
2024年3月19日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

マグネシウムの働きとは?

マグネシウムとテストステロンの関係について触れる前に、まずはマグネシウムの主な働きについて理解しておきましょう。

マグネシウムはタンパク質の合成やエネルギーの生産、生殖機能などに関わるミネラルです。細胞の成長や筋肉の機能をサポートする役割も確認されています出典[1]

また、マグネシウムは抗酸化作用・抗炎症作用を持つミネラルでもあります。過剰な活性酸素の生成を防ぐ効果や、炎症性サイトカインの増加を抑える効果などが確認されています。

過剰な活性酸素は血管を硬くして動脈硬化を悪化させ、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。活性酸素の働きがマグネシウムにより抑えられることで、血流の改善と心血管疾患のリスク低下の効果が期待できるでしょう。

実際、2012年に上海交通大学が行った53万人以上を対象とする調査では、血中マグネシウム濃度が高いほど心血管疾患のリスクが低下したと報告されています出典[2]

このように、マグネシウムには代謝や筋肉機能の補助、血流の改善など、様々な働きが確認されています。
 

マグネシウムとテストステロンの関係とは?

テストステロンは男性ホルモンの一種です。やる気や活力、筋肉の合成効率を高めるほか、男性機能を維持する効果も期待できます。

テストステロンは40代を超えると急速に減少し、勃起不全や性欲の低下が起こりやすくなります。たくましく元気な体の維持が加齢とともに難しくなる理由のひとつに、テストステロンの減少があると考えられています出典[12]

テストステロンの増加や維持に役立つ栄養素はいくつか判明しています。今回はマグネシウムとテストステロンの関係について注目しましょう。

マグネシウムとテストステロンの量は相関する

マグネシウムとテストステロンの関係について、主に次のようなことが判明しています。

  • マグネシウムとテストステロンの量に相関関係がある
  • マグネシウムの補給によりテストステロンが増加する

まずは相関関係について確認しましょう。2015年にイタリアのパルマ大学から発表された論文では、399人の65歳以上を対象とした調査において、マグネシウム状態とテストステロン濃度との間に正の相関関係があることが報告されています出典[3]

マグネシウムの不足を防ぐことで、テストステロン量を維持する効果が期待できるでしょう。

次にテストステロンを増やしたケースについて紹介します。2011年にトルコのセルチュク大学から発表された論文では、若い男性が持久力トレーニングとマグネシウム補給の組み合わせを4週間継続すると、総テストステロンが12%、遊離テストステロンが13%増加したと報告されています出典[4]

十分な量のマグネシウム補給は、とくに運動との組み合わせでテストステロン増加に高い効果を発揮する可能性があるようです。

 

マグネシウムはテストステロンを酸化や炎症から守る

テストステロンの約95%は精巣のライディッヒ細胞内で合成されます。精巣は酸化ストレスや炎症に非常に弱く、活性酸素の影響を受けやすい組織です出典[5]

抗酸化・抗炎症作用を持つマグネシウムを不足なく摂取することで、テストステロンの合成機能を守る効果が期待できるでしょう。

マグネシウムの抗酸化作用に関する研究を確認しましょう。1992年にアメリカのジョージワシントン大学から発表された論文では、マグネシウムの不足と酸化ストレスとの関係が調べられました。マグネシウムが不足した細胞では不足のない細胞よりも、酸化ストレスの原因となる活性酸素が2~3倍高く生成されたのです出典[1]

またマグネシウムと炎症の関連を調べた研究も存在します。体内の炎症性物質とマグネシウム量との関係を調べた複数の研究を分析した論文では、マグネシウムの摂取量が増えると、炎症性サイトカインのIL-6やTNF-α、炎症性マーカーのCRPが減少すると述べられています。マグネシウムの投与により炎症性物質の減少が確認できることからも、マグネシウムの抗炎症作用の強さが確認できるでしょう出典[6]

マグネシウムはテストステロンの合成機能を守る重要な栄養素です。食事やサプリメントから不足を防ぎ、テストステロンが活躍しやすい体を作りましょう。


マグネシウムは遊離テストステロンの量を増やす

マグネシウムは、体内で活躍できる「遊離型」のテストステロンの割合を増やすように働く可能性があります。

テストステロンには、たんぱく質と結びついた不活性型の「結合テストステロン」と、血中にそのまま存在する活性型の「遊離テストステロン」があります出典[7]。体内のテストステロンのほとんどは結合テストステロンであり、遊離テストステロンはわずか1~2%ほどしかありません。

しかしこの遊離型こそが、やる気や活力を高め、性機能や筋肥大の向上をサポートする重要物質。たくましく元気な体を維持するには、遊離テストステロンの量を守る必要があるのです。

テストステロンの一部は性ホルモン結合グロブリン(SHBG)と結合しています。マグネシウムにもSHBGと結合する能力があり、テストステロンとSHBGの結合をブロックするように働くのです出典[7]

結果、結合していない遊離テストステロンの割合が高まり、体内でのテストステロンが高い効果を発揮できるようになると考えられています。

マグネシウムを不足なく摂ることで、活性のあるテストステロンの量を維持する効果が得られるかもしれません。

 

効果的なマグネシウムの摂り方

マグネシウムが持つ抗酸化作用や抗炎症作用、SHBGへの結合などの様々な能力は、テストステロン量の維持や増加に関わる可能性があります。

ではテストステロンを増やしたり維持したりするため、私たちはどのようにマグネシウムを摂取すればよいのでしょう。

現代におけるマグネシウムの摂取状況や、食事からマグネシウムを効率よく摂る方法、サプリメント活用時の注意点などについて解説します。

1日にどれくらい摂ればいい?

まずは一般的な日本人の食生活において、マグネシウムが足りているかどうか確認しましょう。

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」において、マグネシウムの推奨量(ほとんどの人口が必要量を満たせる量)は18~29歳の男性で340mg、30~64歳の男性で370mgと設定されています出典[8]

では令和元年の国民健康・栄養調査における、マグネシウム摂取状況の一部を確認しましょう。

【年齢別のマグネシウム摂取状況(令和元年度 国民健康・栄養調査より)出典[9]

年齢(男性)

平均摂取量

推奨量との比較

18~29歳

227mg

ー113mg

30~39歳

236mg

ー144mg

40~49歳

251mg

ー119mg

50~59歳

265mg

ー105mg

このように、マグネシウムの平均摂取量は推奨量を大きく下回っており、とくに若い世代で摂取が少ない傾向にあることが分かります。

推奨量を満たすには、通常の食事に加えていずれの世代でも100mg以上のマグネシウム摂取が必要です。マグネシウム含有量の多い食品を意識して選んだり、サプリメントを活用したりして不足を防ぎましょう。

 

マグネシウムを効率よく摂れる食品は?

マグネシウムは海藻類や魚介類、豆類に加え、穀類や野菜類からも摂取できます。

含有量の多い食品を種類別に確認してみましょう。

【各食品におけるマグネシウム含有量(日本標準食品成分表(八訂)増補2023年より)出典[10]

食品群

食品

マグネシウム量(mg)

海藻類

カットわかめ(感想)

460

あまのり(焼きのり)

300

めかぶ

61

魚介類

しらす(半乾燥品)

130

あさり

92

つぶ貝

92

穀類

玄米(炊飯前)

110

オートミール

100

ポップコーン

95

豆類

きな粉(黄大豆)

260

ひきわり納豆

88

木綿豆腐

57

野菜類

ほうれんそう(通年平均)

69

えだまめ

62

ごぼう

54

 


 海藻類の含有量の高さが目立つものの、カットわかめやあまのりは乾燥品であり、実際にはあまり多くの量を摂取できません。

毎日の摂取量を手軽に増やしたい場合には、多くの量を食べる穀類や、様々な加工食品に使用される豆類からの摂取がおすすめです。白米を玄米に変更する、手軽に用意できる納豆や豆腐、豆乳などを活用する、などの方法でマグネシウムを強化しましょう。

主菜として活用しやすい魚介類、加熱でかさを減らして多くの量を食べられる野菜類なども摂取源となります。

なお、マグネシウムは飲酒により尿中への排泄量が増加するミネラルです出典[11]。多量のアルコール飲料はマグネシウム量を減らすリスクがあることを踏まえ、休肝日の設定や飲酒量の調節を心掛けましょう。

 

サプリメント活用時の注意点

日本人の食生活ではマグネシウムが推奨量を満たしにくいため、サプリメントの活用も選択肢に入るでしょう。

サプリメントを使用する際には、パッケージに記載された摂取目安量を守り、必要以上に摂りすぎないことが重要です。

「日本人の食事摂取基準」において、通常の食事からの摂取における耐用上限量は設定されていません。一方、サプリメントのような通常の食事以外からの摂取では、1日350mgを耐用上限量としています。

マグネシウムの摂りすぎにより下痢を生じることもあるため、摂りすぎには十分注意しましょう。

また、マグネシウムの吸収率は摂取量に影響を受けます。摂取量が少なく体内で不足の状態が続けば吸収率も増えますが、1日の平均摂取量が約300~350mgの場合、吸収率は30~50%まで低下します出典[8]

必要以上の摂取でより高い健康効果を発揮するものではないため、サプリメントの過剰な利用には意味がないことも覚えておきましょう。
 

マグネシウムを摂れるおすすめレシピ

今回は食事からより多くのマグネシウムを摂ることを想定し、マグネシウムを多めに取れるレシピを2つ紹介します。

それぞれのレシピで摂取できるマグネシウム量の目安もまとめてあるため、マグネシウム強化の手段としてぜひ参考にしてください。

あさりとほうれん草の和風パスタ

<材料(二人分)>

  • パスタ   2束
  • ほうれん草  100g
  • あさり   100g
  • オリーブオイル 大さじ1
  • 酒   大さじ1
  • 醤油   大さじ1
  • 顆粒だし  小さじ1
  • 生姜チューブ  小さじ1
  • 塩コショウ  適量

<作り方>

  1. ほうれん草は3~4cm幅を目安に切る
  2. 鍋に水と1%の塩を入れて沸騰させ、パスタ2束を入れて、指定の茹で時間より1分少なめに茹でる
  3. 茹で汁にほうれん草を加えて軽く茹で、アク抜きをする
  4. フライパンにオリーブオイルとあさり、酒を加えて炒める
  5. 茹でたパスタとほうれん草を加えて軽く炒める
  6. 醤油、顆粒だし、生姜チューブ、塩コショウを加えて混ぜ、味を調える

主な食品のマグネシウム含有量は次のとおりです。

食品

マグネシウム量(mg)

パスタ100g

55

ほうれんそう50g

35

あさり50g

46

136

あさりのような貝類やほうれん草のような葉物野菜はマグネシウムの供給源として活用しやすいでしょう。パスタのような主食にもマグネシウムは含まれています。主食の過度な制限はマグネシウム不足を招きやすくなるため、食べ過ぎに注意しつつ適度に摂取しましょう。

あさりの含有量には及びませんが、ほたてやイカからもマグネシウムを摂取できます。シーフードパスタとして具材を増やせばよりおいしくマグネシウムを強化できるでしょう。

 

ひじきと大豆の煮物

<主な材料(二人分)>

  • 乾燥大豆  50g
  • 乾燥ひじき  10g
  • 顆粒だし  小さじ1
  • 砂糖   大さじ1
  • 醤油   大さじ1
  • みりん   大さじ1

<作り方>

  1. 大豆は水に浸して一晩、ひじきは水に浸し10分ほど置いて戻す
  2. 大豆とひじきの水気を切り、鍋に入れる
  3. 顆粒だしを加え、水を全体が浸る程度まで注ぎ加熱する
  4. 煮立ったら砂糖、みりん、醤油を加えて汁気が少なくなるまで煮る

主な食品のマグネシウム含有量は次のとおりです。

食品

マグネシウム量(mg)

乾燥大豆25g

55mg

乾燥ひじき5g

32mg

87mg

海藻と大豆を用いた煮物は、マグネシウムを簡単に取れる副菜としておすすめです。作り置きが可能で3~4日は持つため、多めに作成すればマグネシウムの供給源として役立ちます。

糸こんぶも煮物と相性がよいため、海藻類の比重を増やしたい場合には加えてもよいでしょう。
 

まとめ

マグネシウムは筋肉の機能やエネルギー代謝を調節することに加え、抗酸化・抗炎症作用を持つことでも知られるミネラルです。テストステロンの合成機能を守り、遊離テストステロンを増やす効果が期待できるため、食事やサプリメントから意識的に摂取しましょう。

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