監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
コーラはテストステロンを高める?
たくましい体づくりや性機能の向上に欠かせないテストステロン。普段食べたり飲んだりしている嗜好品で手軽にテストステロンを増やせたなら、と考える方も多いのではないでしょうか。
2022年、中国の西北民族大学から興味深い論文が発表されました。なんとコーラの摂取でテストステロンが増える可能性があるというのです。
30匹のマウスがコカコーラやペプシコーラを15日間摂取したところ、血中のテストステロンが約1.3倍に増加し、また精巣も大きくなった例が確認されました。男性ホルモンの受容体の活性も、コカコーラでは60.18〜67.26%、ペプシコーラでは65.93〜78.76%増加しています出典[1]。
同研究では、コーラの摂取が精巣の発達を促し、精巣で分泌されるテストステロンを増やすように働いたと考察されています。
体にあまりよくないイメージのあるコーラ類ですが、もし積極的に飲むことで精巣の調子が上がりテストステロンを増やせるなら、これほど嬉しいことはありませんよね。
ヒトがコーラを飲んだ場合もテストステロンは上がるのか?
では、同様にコーラを私たちヒトが飲んだ場合、同じ効果は期待できるのでしょうか?
残念ながら、私たちヒトに対する効果は確かめられておらず、コーラの摂取を推奨するものとはなりませんでした。
同論文でも炭酸飲料の過剰摂取による肥満や糖尿病のリスク増加、精子の減少などへの懸念が述べられています。
ここからは、コーラの摂取が男性のテストステロンに与える影響について詳しく確認しましょう。
血糖値スパイクはテストステロンを下げる
コーラやサイダー、エナジードリンクのような炭酸飲料のパッケージを見て、カロリーと炭水化物(糖質)の多さに驚かれた方も多いのではないでしょうか。
コーラをはじめとする清涼飲料水には多量の糖類が含まれています。とくに炭酸飲料は炭酸ガスの強い刺激ゆえに甘さを感じにくいため、私たちが舌で「おいしい」と感じる以上の砂糖が添加されているのです。
清涼飲料水の砂糖はほとんど消化を必要としません。速やかに吸収されるため、血糖値を一気に上げる「血糖値スパイク」を引き起こしやすい特徴があります。血糖値の急上昇や高血糖状態は多量の活性酸素を発生させ、酸化ストレスとして体のあらゆる細胞にダメージを与えてしまいます。
テストステロンの合成場所である精巣は酸化ストレスに非常に弱い組織です。「血糖値スパイク」によりテストステロンの濃度が平均で25%低下するという報告もあるほど出典[2]、酸化ストレスがテストステロンに与える影響は大きいのです。
血糖値スパイクを避けるため、コーラの飲みすぎには十分注意しましょう。
肥満はテストステロンを下げる
商品にもよりますが、コーラのような炭酸飲料は非常に高カロリーです。500mLペットボトル1本を飲み切るとカロリーは200kcalを超えるため、1日に3本も4本も飲む方では当然ながら太るリスクも高まるでしょう。
また血糖値スパイクを引き起こす飲料は、体脂肪を増やしやすい点にも注目すべきです。
血糖値が急激に上昇すると、血糖値を下げるホルモン「インスリン」が大量に分泌されます。インスリンは血中の余った糖を、肝臓や筋肉、脂肪組織に蓄えるように促すため、インスリンの分泌量が多いと体脂肪も合成されやすくなります。
ダイエットによく糖質制限が用いられるのは、インスリンの分泌量を抑えて体脂肪合成のリスクを下げるためでもあるのです。
肥満はテストステロンを低下させる大きな原因のひとつです。またテストステロンが少ないと肥満のリスクが高まるという悪循環が生まれてしまいます出典[3]。
肥満のリスクを下げてテストステロンを維持するためにも、高カロリーかつインスリンの分泌を増やしやすいコーラの摂取は控えた方がよさそうです。
テストステロンを下げないためのコーラの飲み方
ヒトのテストステロンにおけるコーラの有効性はまだ確認されておらず、むしろ血糖値スパイクや肥満によりテストステロンを低下させる可能性があることが分かりました。
そこでここからはテストステロンへの影響を抑えつつコーラを飲む方法について解説します。コーラのような清涼飲料水を日頃から好んで飲む方は、ぜひ以下を参考にコーラを飲む量やタイミングを調整してみましょう。
1日350mL1本を目安に
コーラは成分のほとんどが砂糖で構成された「嗜好飲料」です。厚生労働省と農林水産省による「食事バランスガイド」では、お菓子やジュースのような嗜好品の目安量は1日200kcalと示されています。
コーラであれば500mLの摂取で200kcalをやや上回るため、毎日コーラを飲む場合には500mLはやや過剰になるかもしれません。
最近では炭酸ガスが抜けないうちに飲み切れるよう、350mLのボトルサイズも展開されています。摂取カロリーの調整にも役立つため、コーラを毎日飲みたい場合には350mLのボトルを選びましょう。
500mLのコーラを飲む際には、ほかの高カロリーなお菓子を控えたり、食事の主食をやや減らしたりして総摂取カロリーを調整する工夫が必要です。
運動後の摂取で血糖値スパイクのリスクを小さく
コーラを太る原因にしないよう、摂取するタイミングを調整することも重要です。たとえば運動後には筋肉内の糖質が消費されているため、筋肉へ糖が蓄えられやすくなります。体脂肪が増えるリスクを抑え、かつ運動後のエネルギーチャージも行えるため、運動後の摂取は理想的と言えるでしょう。
なお、運動前にもエネルギーチャージのため、高糖質な食品の摂取は重要ですが、コーラの活用はおすすめできません。
コーラによる血糖値スパイクは、インスリンの大量分泌によりその後の血糖値を大きく下げてしまいます。コーラにより血糖値が下がるタイミングと、運動により血中の糖が消費されるタイミングが重なると、運動中に極端な低血糖を生じる可能性があります出典[4]。
運動中の低血糖はパフォーマンスを落とすことに加え、強いふらつきや転倒の原因にもなりたいへん危険です。運動前には血糖値のコントロールがしやすく、かつ高糖質な白米やうどんを選びましょう。
空腹時や夜間の摂取を避ける
コーラによる血糖値スパイクは酸化ストレスを増やします。テストステロンの合成場所である精巣へのダメージを防ぐため、血糖値を急激に上げないような飲み方を心掛けましょう。
空腹時や寝る前など、胃に何も入っていない状態でのコーラの単独摂取は血糖値をより大きく上げてしまいます。食事や間食とあわせて飲むことを心掛けましょう。
食物繊維を含む食品は、食べ物全体の腸内での移動を緩やかにし、糖の吸収スピードを落とすように働きます。野菜や果物、海藻類などをたっぷり用いた食事を摂り、コーラの血糖値への影響を抑えましょう。
カロリーゼロよりも砂糖入りのものを
コーラを飲むことによるテストステロンへの影響は、すべてコーラに豊富な糖類によるものでした。そのためカロリーゼロのコーラであれば問題ないのでは、と考える方がいるかもしれません。ダイエットのためにカロリーゼロのコーラを好んで飲む方もいることでしょう。
しかし人工甘味料の摂取により食欲を増加させたり、体重増加や糖尿病のリスクを高めたりする可能性も指摘されています出典[5]。カロリーゼロのコーラの方がよい選択肢とは言い切れないのです。
また、2020年にイランのテヘラン大学で行われたマウスでの実験では、人工甘味料の一種、アスパルテームの継続摂取による精子量やテストステロン濃度の減少が確認されています。
人工甘味料の摂取により酸化ストレスが増大した可能性が指摘されており出典[6]、ヒトにおいても人工甘味料がホルモンバランスを乱すように働くかもしれません。
人工甘味料の長期摂取による安全性は検証途中の段階にあり、「いくら飲んでも安全」とは言い切れません。制限なくカロリーゼロのコーラを飲むようなやり方は避け、砂糖入りのコーラを、適量を守って飲むようにしましょう。
まとめ
コーラがテストステロンを高めるというデータはマウスを対象にしたものであり、ヒトにおいての効果は確認されていません。清涼飲料水には、糖類の過剰摂取による肥満や血糖値スパイクのリスクがあります。
テストステロンを減らすことがないよう、コーラのような清涼飲料水とは適度に付き合いたいものですね。
出典
LINEで専門家に無料相談
365日専門家が男性の気になる疑問解決します