監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
NSCA-CPT、調理師免許
大里 亮太(筋肉料理研究家Ryota)
激太り&うつで入院するも入院中にTeststerone氏の「筋トレが最強のソリューションである」に出会い、退院後に筋トレとお料理で体重-25kgに成功。精神的にも立ち直り、パーソナルトレーナー資格のNSCA-CPTを取得。元々所有していた調理師免許を生かし、筋肉料理研究家として活動するように。昔の自分のように心身ともに悩んでいる方のサポートになればと、日々簡単ダイエットレシピを発信している。
トレーニーがサウナに期待できる効果4つ
じつは、サウナは筋トレをする上でさまざまなメリットをもたらしてくれます。
この項目では、トレーニーがサウナに期待できる4つの効果をご紹介しましょう。
ボディメイクの効率が高まる
サウナに入るとたくさん汗をかくため、体が絞れたような気がしませんか?
もちろん、汗による体重減少は一時的なもの。
サウナ後に十分に水分補給をすれば、体は元の状態に戻ってしまいます。
しかし、近年の研究ではサウナに継続的に入ることで、汗とは異なるメカニズムで体型が変わる可能性が示されているのです。
2021年にエストレマドゥーラ大学から発表された論文では、4週間のサウナ浴が体組成に与える影響を調査しています出典[1]。
被験者である若年男性23名は、サウナに入るグループと何も行わないグループに分けられています。
サウナに入るグループは、100℃のサウナ浴(10分×5セット)を週3回の頻度で4週間実施。
実験終了時に両グループの体組成を測定したところ、サウナに入るグループの右脚の筋肉量が約11%増加したことが明らかに。
サウナに入ると体が温まって血流が良くなり、筋肉に栄養やテストステロンを効率的に送ることができます。
※テストステロンは男性ホルモンの代表で筋肉質な体を作るための性ホルモン。
その結果、筋肥大の反応を促して筋肉が大きくなるのではないかと考えられているのです。
もちろん、筋トレの基本はトレーニングと食事。
しかし、以上のエビデンスから見ても、ボディメイクのサポートにサウナを活用することはおすすめの方法です。
筋力が向上する
トレーニーがサウナに期待できる2つ目の効果は、筋力向上に効果があるということ。
「そんな都合の良い話があるのか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
それでは、以下に筋力向上効果を裏付けるようなエビデンスをご紹介しましょう。
2022年にイザベル大学から発表された論文では、1回12分のドライサウナ浴がレッグプレスの1RMに及ぼす効果を分析しています出典[2]。
※RMとは最大反復回数のことで、1RMは1回挙上できる限界の重量のこと。
実験に参加したのは、トレーニング経験者と未経験者からなる計30名の若年男性。
被験者たちは1回目は通常通りに、2回目は直前にドライサウナ浴を行ってからレッグプレスの1RMテストを実施。
その結果、なんと経験者・未経験者ともにレッグプレスの1RMが30〜40kgほどアップしたのです。
論文では、熱刺激がアドレナリンを増加させ、それが筋力向上につながった可能性があると述べています。
※アドレナリンは分泌されると心拍数や血圧が上昇し、体のパフォーマンスを高めたり覚醒作用のあるホルモン。
また、2013年にチュラロンコーンメディカルジャーナルに発表された論文では、6週間に渡るサウナ浴が筋力アップに効果的であったというデータが示されています出典[3]。
つまり、サウナは短期的・長期的に見ても、筋力向上に効果があると言えるのです。
入るだけで筋力が上がってしまうとなれば「サウナ欲」も高まってしまいますね。
筋肉痛が軽減される
サウナに入ると血行が良くなるので疲労感が取れて、体が楽になったように感じませんか?
じつは、サウナは筋肉痛の軽減にも効果があるんです。
2015年にチェンマイ大学から発表された論文では、手の筋肉痛に対するサウナの予防効果を分析しています出典[4]。
被験者28名は、サウナに入ってから運動をするグループと何もせずに運動するグループに分けられました。
実験後の分析の結果、サウナに入ったグループは関節可動域や握力、筋力などの減少が抑えられていました。
論文では、運動前のサウナ浴は手の筋機能の回復に有効であることが示されたと結論付けています。
ただし、詳しくは後述しますが、トレーニング前の長時間のサウナ浴は筋トレのパフォーマンス低下につながる可能性があります。
そのため、筋トレ前にサウナに入る場合は時間を短めに設定するのがおすすめ。
また、筋肉痛に効果があるとは言え、激しいトレーニング後や関節に痛みがある場合はサウナを控えるようにしましょう。
なぜなら、サウナによって疲労感が増してしまったり、炎症が酷くなってしまう可能性があるからです。
筋トレと同じく、サウナも無理は禁物ですよ。
パンプ感の増加に繋がる可能性がある
ケーブル種目などで高レップのトレーニングを行うと、筋肉がパンパンに張って気持ちが良いですよね。
じつは、サウナはそんなパンプ感の向上につながる可能性もあります。
それを裏付けるような、2020年にクラクフ体育大学から発表された論文をご紹介しましょう出典[5]。
研究では、若年男性における一酸化窒素代謝物などの濃度に対するサウナ浴の効果を分析しています。
※一酸化窒素はNO(エヌオー)とも呼ばれ、血管拡張機能を持つ物質。
被験者たちは、トレーニングするグループとトレーニングをしないグループに分けられ、3週間10回のサウナ浴を実施。
その後に血液を分析したところ、両グループともに一酸化窒素代謝物の濃度が大きく上昇していました。
論文では、継続的なサウナ浴は一酸化窒素の生成を増加させ、血流の改善につながる可能性があると述べています。
つまり、サウナにはこの一酸化窒素を増やす効果があり、トレーニング時のパンプ感の増加につながる可能性があるという訳なんです。
筋トレの効率を高めるサウナの入り方7選
この項目では、筋トレの効率を高めるためのサウナの入り方を7つご紹介します。
サウナの種類は何でもOK
サウナにはドライサウナやスチームサウナ、フィンランド式サウナなどいろいろな種類があります。
しかし、サウナの効果は基本的に体を温めることで得られるものなので、種類はあまり気にする必要はありません。
ただし、筋トレ直後は血流が筋肉に集中しているため、すぐにサウナに入ってしまうと効果が薄まったり脱水症状を起こすことも。
従って、トレーニング後は十分に水分補給を行い、30分~1時間ほど休憩を取ってからサウナに入るのがおすすめです。
また、筋トレでかいた汗をそのままにしてサウナに入るのもNG。
トレーニング後は、シャワーで頭や体を洗って体を清潔にしてからサウナに入りましょう。
他の利用者に対する配慮としてはもちろん、皮膚が汚れていては汗もかきづらくなってしまい、効果も半減してしまいます。
80~100℃で1セット10~15分を1~5セット繰り返す
80~100℃で1セット10~15分を1~5セットというのが、多くの研究で用いられているサウナの入り方。
ただし、筋トレ後は自分が思っている以上に体が疲労しています。
そのため、まずは短めの時間・少なめのセット数を設定して様子を見てみましょう。
体調に応じて時間を伸ばしたりセット数を増やせば、無理なくサウナを楽しむことができます。
また、サウナは低い位置ほど温度も低くなります。
始めは低い位置からスタートし、体が暑さに慣れてきたところで徐々に高い位置に移動するというのも良いでしょう。
サウナ後は水風呂に入る→外気浴で休憩→サウナに入る…という流れを数セット繰り返します。
体に温冷の刺激を交互に与えることで血流が促されれば、いわゆる「ととのう」と呼ばれる感覚も得やすくなるでしょう。
筋トレ前に入る場合は短めに
筋トレ前に長時間サウナに入ると、脱水を引き起こしてかえって筋トレのパフォーマンスが低下してしまう可能性があります。
それを裏付けるような、2001年にオールド・ドミニオン大学から発表された論文をご紹介しましょう出典[6]。
研究では、長時間のサウナ浴と水分補給がベンチプレスの1RMに与える影響を調査。
10名のトレーニング経験のある男性を対象に実験を行ったところ、2時間のサウナ浴後、ベンチプレスび1RMは大きく低下するという結果に。
このことから論文では、約1.5%の体重減少を伴う脱水は、ベンチプレスの1RMに悪影響を与えると結論付けています。
また、脱水による悪影響は、2時間の休息と水分補給によって克服されるとも述べています。
従って、筋トレ前にサウナに入る場合は短めにし、その後は十分な休憩と水分補給を行ってからトレーニングに臨みましょう。
水風呂の時間は短めに
水風呂にはリカバリーを促してくれるというメリットがあります。
しかし、一方で長時間のサウナは筋肥大反応を抑制したり、テストステロンを低下させたりする可能性があるのです。
2015年にクイーンズランド大学が発表した論文では、トレーニング後の冷水浴は筋肥大の増加を抑える可能性があるということが分かっています出典[7]。
また、1991年に兵庫医科大学が発表した論文では、自転車による運動と冷水刺激がテストステロンに与える影響を分析出典[8]。
実験の結果、自転車による運動中のテストステロンは運動前に比べて約20%増加。
しかし、冷水刺激を与えたときには、テストステロンは10%も減少してしまいました。
以上のデータから、筋トレの効率を高めるためにも、水風呂の利用は短時間に留めておくのがおすすめです。
週3~4回の頻度で入る
サウナによる体組成の改善はトレーニングと同様、長期的に継続することで効果が得られるもの。
継続してサウナに入ることで血流が回りやすくなり、体調の変化も感じやすくなるでしょう。
また、頻度は多くの研究で週3~4回が用いられているので目安にしてみてください。
とは言え、暑さに慣れていないうちから週3~4回サウナに入るというのは、なかなか大変です。
そこで、サウナ初心者はまずは週1~2回を目安に継続してみましょう。
サウナの暑さに順応してきたところで回数を増やしていけば、体への負担も少なく済みます。
サウナの効果を最大限に得るためには、自分の体の状態を見極めることも重要なポイントになるのです。
プロテインはサウナに入る前に
筋トレ後の体は水分を失っていて、脱水症状を引き起こしやすくなっています。
そのため、水分補給の意味も込めて、プロテインはサウナ前に飲むのがおすすめ。
トレーニング後30分~1時間の間に飲めば、損傷した筋肉の回復にも効果的です。
ただし、サウナ浴中は血流が促されるために、胃や腸などの消化器官に血液が送られにくくなります。
そのため、サウナ直前にプロテインを飲んでしまうと、消化不良を引き起こしてしまうことも。
スムーズに消化・吸収するためにも、プロテインはサウナに入る30~1時間ほど前に摂取しておくのがおすすめです。
サウナ中の水分・電解質の補給も忘れずに
筋トレ後の体は代謝が上がっていて、サウナによる発汗も多くなります。
脱水を防ぐためにも給水器やウォーターサーバーを利用するなどして、サウナ中も水分補給を欠かさないようにしましょう。
また、人間の汗には水分だけでなく、ミネラルも含まれています。
特に、ナトリウムやマグネシウムなどの電解質の不足は脱水症状を招きやすく、筋肉のけいれんを引き起こしてしまうことも。
そのため、長時間サウナにはいる場合はスポーツドリンクなどを摂取し、水分だけでなく電解質も補給するようにしましょう。
サウナに入って筋トレを効率化しよう!
筋トレとサウナは相性のいい組み合わせで、上手く活用すればボディメイクの効率を高めることができます。
しかし、トレーニング後の体は大きなダメージを受けている状態。
サウナによる脱水症状などの体調不良を防ぐためには、時間管理や水分補給など、普段よりも入り方に注意を払う必要があります。
ぜひ、記事で紹介したポイントやエビデンスを参考に、サウナの効果を最大限に引き出してください。
出典
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