執筆者
NSCA-CPT、調理師免許
大里 亮太(筋肉料理研究家Ryota)
激太り&うつで入院するも入院中にTeststerone氏の「筋トレが最強のソリューションである」に出会い、退院後に筋トレとお料理で体重-25kgに成功。精神的にも立ち直り、パーソナルトレーナー資格のNSCA-CPTを取得。元々所有していた調理師免許を生かし、筋肉料理研究家として活動するように。昔の自分のように心身ともに悩んでいる方のサポートになればと、日々簡単ダイエットレシピを発信している。
そもそもテストステロンとは?
まずは、そもそもテストステロンとは一体どんなホルモンなのかを簡単に解説しておきましょう。
テストステロンは男性ホルモンの代表的な存在で、男らしい筋肉質な体を作るために重要。
他にも生殖機能の向上や脳・精神へも影響を与えるなど、さまざまな働きを持っています。
テストステロンのレベルには個人差があるものの、通常は10~20代をピークに急増し、加齢とともに減少。
加えて、肥満やストレスによっても分泌されにくくなることが分かっています。
テストステロンの減少は性欲の減退や筋力の衰え、やる気や集中力の低下など、いわゆる男性更年期の症状を引き起こす原因に。
さらに、筋肉量が減って体脂肪が増えやすくなるため、生活習慣病のリスクを高めてしまうことにもつながります。
従って、筋トレをする、十分なタンパク質を摂取する、良質な睡眠を取るなどして、テストステロンの低下を防ぐ必要があるんです。
テストステロンと豆腐の関係4つ
この項目では、気になるテストステロンと豆腐の関係を、論文を交えながら4つご紹介します。
イソフラボンがテストステロンを減らす?
豆腐は大豆の優れた栄養をバランスよく摂取でき、体作りや健康のためにも優秀な食材です。
しかし一方、「豆腐を食べると体が女性化する」などという話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
じつは、豆腐などの大豆加工食品には、イソフラボンという成分が含まれています。
イソフラボンは摂取すると体内で女性ホルモンと似たような働きをし、男性ホルモンの分泌を抑制。
さらには、テストステロンまでも減らしてしまう作用があると言われているんです。
しかし、イソフラボンが持つ力は実際の女性ホルモンに比べても弱いもの。
豆腐を食べたからといって直ちにテストステロンが減ってしまったり、ましてや体が女性化してまうということはありません。
むしろ、イソフラボンを摂取することは、男性にも嬉しい効果がありそうです。
テストステロンは体内で「5αリダクターゼ」という酵素と結びつくと、「ジヒドロテストステロン」という物質に変化します。
ジヒドロテストステロンはいわば悪玉の男性ホルモンで、男性型脱毛症や前立腺肥大などの原因になる物質。
なんとイソフラボンは、このジヒドロテストステロンの生成を抑制する働きがあると言われているんです。
従って、男性でもイソフラボンはもちろん、豆腐を避ける必要はありません。
最新研究でもイソフラボン摂取によるテストステロン減少は否定されている
「本当に豆腐を食べても大丈夫?」と疑り深い方に、信頼のおけるエビデンスをご紹介しましょう。
2020年のエセックス大学から発表された論文では、大豆やイソフラボンの摂取がホルモンに与える影響を調査しています出典[1]。
41件の研究を分析した結果、大豆タンパク質やイソフラボンの摂取はテストステロンには影響しないということが判明。
加えて、このデータはイソフラボンの用量や研究期間を変更しても変わりがありませんでした。
ただし、詳細を確認してみると、41件の研究のうち2件の研究ではテストステロンの減少が確認できたという記述があります。
ちなみに、これらの研究ではイソフラボンを1日あたり100mg以上と多めに摂取していました。
従って、気になる方は1日のイソフラボン摂取量が100mgを超えないように注意しましょう。
大豆食品に含まれるイソフラボン量は、以下に表にしているので参考にしてみてください。
【食品中100gあたりのイソフラボン含有量(厚生科学研究(生活安全総合研究事業)食品中の植物エストロゲンに関する調査研究(1998)より】
食品名 | 平均含有量 |
きな粉 | 266.2 |
大豆 | 140.4 |
納豆 | 73.5 |
煮大豆 | 72.1 |
味噌 | 49.7 |
油揚げ | 39.2 |
豆乳 | 20.3 |
豆腐 | 20.3 |
おから | 10.5 |
しょうゆ | 0.9 |
流行りの代替肉はテストステロン生成効率が悪いかも…
人口増加に伴う食糧問題や、環境負荷などに対する解決策として注目されているプラントベースフード「代替肉」。
最近ではファーストフード店やスーパーなどでも見かける機会が増え、食べたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、テストステロンを増やすという観点から見ると、代替肉は良い選択肢とは言えなさそうです。
2000年にディーキン大学から発表された論文では、食事中のタンパク質を豆腐に置き換えたことによるホルモンバランスへの影響を分析出典[2]。
被験者である成人男性42名は、以下のグループに分けられました。
- 赤身肉を150g食べるグループ
- 豆腐を290g食べるグループ
ちなみに、グループ間で異なるのはタンパク源のみで、その他の食事は同じカロリーが摂取できるように調節されています。
4週間の実験後に血液を分析したところ、肉食のグループの方がテストステロン:エストラジオール値が10%高いという結果に。
※エストラジオールは女性ホルモンの一種。
肉の中でも赤身肉には、亜鉛や飽和脂肪酸などテストステロンの合成に必要な栄養素が豊富。
そのため、赤身肉の代わりとして豆腐や代替肉を食べると、テストステロンは低下してしまうのかもしれません。
豆腐の摂取でテストステロンが上がる可能性も...!
ここまでの解説で、「テストステロンを増やしたいから豆腐は避けておこうかな」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、じつは動物実験では、イソフラボンの摂取によりテストステロンが増える可能性が示唆されています。
2017年に四川農業大学から発表された論文では、肥満ラットを用いてイソフラボン摂取がテストステロン合成に与える影響を分析出典[3]。
肥満ラットは、ランダムに以下の4つのグループに分けられています。
- イソフラボンを投与しないグループ
- 1日あたり50mg/kgのイソフラボンを投与するグループ
- 1日あたり250mg/kgのイソフラボンを投与するグループ
- 1日あたり500mg/kgのイソフラボンを投与するグループ
4週間の実験の結果、イソフラボンを多く投与された肥満ラットほど体重が減少した上、テストステロン値も上昇していたんです。
イソフラボンは肥満ラットの体内で抗女性ホルモンの効果を発揮し、テストステロン生成に関わるホルモンの分泌を促進。
その結果、肥満ラットのテストステロンを増加させたのではないか、と論文では述べられています。
つまり、肥満の方は豆腐を食べることで、テストステロンを増やすことができる可能性があるんです。
適度な豆腐の摂取でテストステロンを高めよう!
豆腐とテストステロンの関係についてお分かりいただけたかと思います。
紹介した通り、イソフラボンがテストステロンを減少させるという説は、信頼のおける研究において否定されています。
しかし、テストステロンを増やすという観点から見ると、代替肉や豆腐は良い選択肢とは言えなさそうです。
いずれにせよ、大豆の栄養が効率よく摂取できる豆腐は体作りだけでなく、健康のためにも優秀な食材です。
過剰に避けることなく、目的に応じて適度に食生活に取り入れてみてくださいね。
出典
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