糖質制限はテストステロンにNG?適切な炭水化物の摂り方とは
2024年7月5日更新

執筆者

NSCA-CPT、調理師免許

大里 亮太(筋肉料理研究家Ryota)

激太り&うつで入院するも入院中にTeststerone氏の「筋トレが最強のソリューションである」に出会い、退院後に筋トレとお料理で体重-25kgに成功。精神的にも立ち直り、パーソナルトレーナー資格のNSCA-CPTを取得。元々所有していた調理師免許を生かし、筋肉料理研究家として活動するように。昔の自分のように心身ともに悩んでいる方のサポートになればと、日々簡単ダイエットレシピを発信している。

炭水化物とテストステロンの関係3つ

この項目では、炭水化物とテストステロンが持つ関係を、エビデンスを交えながら3つご紹介します。

ちなみに、炭水化物とはタンパク質・脂質と並ぶ「三大栄養素」の1つ。

体内でエネルギー源になる「糖質」と、消化されない「食物繊維」を合わせたもののことです。

急激な血糖値の上昇はテストステロンを下げる

読者の方の中には、健康診断などで「血糖値が高い」と言われたことのある方もいらっしゃるかも知れません。

そもそも血糖値とは、血液中のブドウ糖濃度を示す値

どんな方でも食事をすると上昇し、健康な方なら食後2時間ほどで元の値に戻ります。

また、ごはんやパンなどの糖質を多く含む食べ物や飲み物を摂取すると、より上昇しやすくなります。

血糖値が高い状態が続くと血管が傷つきやすくなり、糖尿病や心筋梗塞などにかかるリスクも高まることに

さらに、急激な血糖値の上昇は、テストステロンを減らしてしまう可能性もあるんです。

2013年にマサチューセッツ総合病院から発表された論文では、ブドウ糖がテストステロンに与える影響を調査出典[1]

実験で75gのブドウ糖を男性被験者らに経口摂取させたところ、テストステロンは平均で25%も低下してしまいました

また、テストステロンの値は一般的に20代ごろをピークを迎えるので、若いときは高いレベルにあるはずです。

しかし、米国の若年男性を対象にした研究において、血糖値を急上昇させるような砂糖入りのジュースの摂取量が1日に442kcal以上の人は、1日に137kcal以下の人に比べて約2.3倍もテストステロンが低くなる可能性があることが分かっています出典[2]

従って、テストステロンを維持したいなら、急激な血糖値上昇を招くような食べ物や飲み物は控えておくのがおすすめです。

 

低糖質高たんぱく質な食事はテストステロンに悪影響を及ぼす可能性がある

最近はコンビニなどでも「低糖質」や「ロカボ」と表示された商品が多く販売されていて、手に取ったことのある方も多いはず。

しかし、低糖質高タンパクな食事を続けるとテストステロンが減少したり、ストレスホルモンのコルチゾールが増える可能性も。

実際に2022年に英国のウスター大学から発表された論文では、総摂取カロリーの35%以上がタンパク質となる低炭水化物高タンパク食は、テストステロンを大幅に減少させることが分かっています出典[3]

また、1987年にロックフェラー大学病院から発表された論文では、食事におけるタンパク質と炭水化物の比率がテストステロンに与える影響を分析出典[4]

被験者たちは、以下の条件の食事をそれぞれ10日間摂取したのちに血液検査を実施。

  • 総カロリーの44%がタンパク質、21%が脂質、35%が炭水化物の高タンパク食
  • 総カロリーの10%がタンパク質、20%が脂質、70%が炭水化物の高炭水化物食

結果として、高炭水化物食を摂取した方がテストステロンが高く、コルチゾールも低くなったというデータが示されています。

じつは現時点では、炭水化物の摂取量だけがテストステロンに悪影響を与えるという明確なデータは存在しません

しかし、以上のデータから、テストステロンを高めるためには食事全体における炭水化物の割合は高くしておいた方が良さそうです。

 

太り気味の人は低炭水化物ダイエットでテストステロンが増える

じつは、体脂肪はテストステロンを女性ホルモンに変換してしまうという働きを持っています。

そのため、体脂肪率が高いほどテストステロンは低くなることが分かっているんです出典[5]

このことから、肥満の方は炭水化物を減らす低炭水化物ダイエットをすることで、テストステロンを増やすことができる可能性も。

実際に2023年にブラジルのモイニョス・デ・ヴェント病院から発表された論文では、1日あたり20~30gの炭水化物を目標とする低炭水化物食を3ヶ月摂取したことにより、メタボ男性のテストステロンが増加したというデータが紹介されています出典[6]

ただし、これは炭水化物うんぬんよりも、全体の摂取カロリーが減ったことの効果が大きいと言えるかもしれません。

極端に炭水化物をカットすることは、低血糖や筋肉量の減少を招くこともあります。

ダイエット目的であっても、体調不良に陥るほどにはやり過ぎないように注意しましょう。
 

テストステロンを最適化するための炭水化物の摂り方

この項目では、炭水化物の摂り方によって、テストステロンを最適化する方法について解説します。

他の栄養素とのバランスを考えて適度な量を摂る

ここまで紹介してきた通り、炭水化物の摂取量のみをコントロールすることで、テストステロンに影響が出ることはなさそうです。

しかし、食事全体におけるタンパク質や脂質の割合は、テストステロンの増減に大きく関わっています。

実際に近年の分析により、1日に体重1kgあたり3.4gを超えるタンパク質を摂取すると、テストステロンは減少してしまうことが分かっています出典[7]

また、ホルモンの材料となる脂質の減らし過ぎにも要注意。

2021年に英国のウスター大学から発表された論文では、低脂質食は高脂質食に比べてテストステロンが40%ほど減少してしまうというデータが紹介されています出典[8]

従って、テストステロンを最適化するためには、タンパク質や脂質が過不足しないように炭水化物を摂取することが重要。

目安としては、タンパク質+脂質を総摂取カロリーの50~60%程度にし、残りを炭水化物で摂るような割合がおすすめです。

 

太り気味の人は糖質を極限まで減らすのもアリ

一方、肥満気味の方の場合はケトン食、いわゆる「ケトジェニックダイエット」を用いるのもおすすめ。

ケトジェニックダイエットとは、糖質の摂取量を極限まで減らして脂肪が燃えやすい状態を作るダイエット方法。

体内の糖質を枯渇させてケトン体というエネルギー源の生成を促し、脂質の利用効率を高めることができると言われています。

実際に2021年にセルビアのベオグラード大学から発表された論文では、ケトジェニックダイエットを用いてトレーニングを行った中年男性の体脂肪率が減少、テストステロンが増加したというデータが紹介されています出典[9]

ただし、ケトジェニックダイエットは単なる糖質制限とは違い、タンパク質・脂質・炭水化物のPFCバランスの管理が重要。

炭水化物の1日の摂取量は1日50gほどと厳しい数字で、脂質も質の良いものを摂取する必要があります

また、正しい方法で行っていても長期間続ければ、筋肉量や代謝が落ちてしまうことも。

従って、効果的なダイエット方法ではあるものの管理や制限が多く、あまり気軽に取り組めるものではありません。

気になる方は、専門のクリニックやパーソナルトレーナーに頼ってみるのもおすすめです。

 

色の濃い炭水化物を中心に食べる

「色の濃い炭水化物とはなんぞや」と思われた方もいらっしゃるかも知れません。

じつは、ごはんやパン、うどんなどの精製された白い炭水化物は、食後の血糖値が上がりやすいという特徴があります。

始めの項目でも解説したように、急激な血糖値の上昇はテストステロンの減少を招く原因に

そのため、炭水化物は食物繊維が豊富な色の濃いものを中心に食べるのがおすすめなんです。

具体的には、ごはんの代わりに玄米や発芽玄米、パンの代わりに玄米パンやライ麦パンといった具合。

ただし、玄米や玄米パンなどは食物繊維が豊富に含まれてるため、それだけ消化に時間がかかります。

急にたくさん食べるとお腹を壊してしまうこともあるので、まずは1食だけを置き換えてみるのもおすすめ。

消化機能には個人差がありますし、食べているうちに慣れてくるということもあります。

ぜひいろいろな食材を食べ比べて、自分の口やお腹に合う炭水化物を見つけてみてください。
 

まとめ

炭水化物とテストステロンの関係についてお分かりいただけたかと思います。

炭水化物は摂り方や他の栄養素とのバランス、種類によっては、テストステロンを減らしてしまうことも。

また、肥満の方は摂取量を減らしてダイエットをすれば、テストステロンを高めることができる可能性も。

ぜひ紹介した情報を参考にして上手に炭水化物を摂取し、効率よくテストステロンを最適化してください。

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