テストステロンとコレステロールの関係は?論文を基に解説
2024年7月16日更新

執筆者

NSCA-CPT、調理師免許

大里 亮太(筋肉料理研究家Ryota)

激太り&うつで入院するも入院中にTeststerone氏の「筋トレが最強のソリューションである」に出会い、退院後に筋トレとお料理で体重-25kgに成功。精神的にも立ち直り、パーソナルトレーナー資格のNSCA-CPTを取得。元々所有していた調理師免許を生かし、筋肉料理研究家として活動するように。昔の自分のように心身ともに悩んでいる方のサポートになればと、日々簡単ダイエットレシピを発信している。

コレステロールはテストステロンの材料

「コレステロール」と聞くと、未だに悪い物質のように思われている方もいらっしゃるかも知れません。

そもそも、コレステロールとは人間の体内に存在する脂質の1つ。

テストステロンをはじめとするホルモンや細胞膜、脂肪の消化吸収をサポートする胆汁酸などの材料になる重要な物質なんです。

そのため、コレステロールの摂取量を減らすと、テストステロンも減少してしまうことに。

実際に、1984年にフィンランドのヘルシンキ国立公衆衛生研究所から発表された論文では、実験で中年男性のコレステロールの摂取量を6週間で1日633mgから1日342mgに減らしたところ、血液中のテストステロンが15%ほども低下してしまったというデータがあります出典[1]

そんなコレステロールには「悪玉」とも呼ばれるLDLと、「善玉」とも呼ばれるHDLの2種類があります。

LDLの方は肝臓のコレステロールを全身に運び、また増え過ぎると動脈硬化を引き起こすことも。

一方、HDLの方は体内に溜まったコレステロールを回収してくれる働きを持っています。

この2つのバランスが崩れて血液中のコレステロールが増え過ぎると、脂質異常症を引き起こして心筋梗塞や脳梗塞の原因に。

また、不足してしまうと免疫力が低下したり、かえって血管が弱くなってしまって脳出血のリスクを高めてしまったりもします。

従って、コレステロールは多過ぎても少な過ぎてもダメで、一定量を維持することが大切なんです。
 

テストステロンを高めるためのコレステロールとの付き合い方

ここからは、テストステロンを高めるためのコレステロールとの付き合い方を、論文を交えながら5つご紹介します。

500~800mgを目安に摂取する

つい先ほど、コレステロールは一定量を維持することが大切だと紹介しました。

しかし現在のところ、テストステロンを高めるためのコレステロールの摂取量については、明確な数字が定まっていません

そこでこの項目では、いくつかの研究結果から、目安となる量を計算してみましょう。

先ほども紹介したヘルシンキ国立公衆衛生研究所の論文では、コレステロールの摂取量を6週間で1日あたり633mgから1日あたり342mgに減らした結果、血液中のテストステロンは大きく低下してしまいました出典[1]

また、2021年にイランのエスファハーン大学から発表された論文では、トレーニング経験のある男性に対する全卵と卵白の摂取が体組成や筋力に与える影響を調査しています出典[4]

被験者たちはランダムに以下のグループに分けられ、12週間の筋力トレーニングを実施。

  • トレーニング直後に全卵3個を食べてコレステロールを平均842.7mg摂取
  • トレーニング直後に卵白6個を食べてコレステロールを平均285.2mg摂取

実験後の分析の結果、全卵を食べたグループは卵白を食べたグループに比べ、テストステロンが約3.5倍も増加していました

以上のデータから考えると、コレステロールの摂取量は500~800mgほどを目安にするのが良さそうです

と言っても、最初に解説した通り、コレステロールの過剰摂取は動脈硬化を引き起こす原因にもなります。

従って、健康診断でコレステロール値が高かったり、すでに血管系の疾患を抱えている方は、摂り過ぎないようにご注意ください。

 

全体の摂取カロリーや体脂肪は減らしすぎない

ここまでは主に、コレステロールを食べ物から摂取することについて解説してきました。

ところが、じつは食事から摂取できるコレステロールは、人間の体内で合成されるコレステロールの1/7~1/3ほど

体内のコレステロール量は食べ物うんぬんよりも、全体の摂取カロリーの方が大きく影響する可能性があるんです

また、コレステロールは糖質や脂質、アミノ酸が代謝されて生じるアセチルCoAという物質を基に肝臓で合成されます。

そのため、特に正常体重の方は糖質・脂質の摂取量や、体脂肪を減らしすぎないことも重要。

一方、肥満の方はカロリー制限をしても、体脂肪内に脂質やコレステロールが十分に存在しています。

従って、カロリー制限を行っても問題はありません。

実際に2022年にオーストラリアのマードック大学から発表された論文では、カロリー制限を行うと肥満男性ではテストステロンが増加し、正常体重の男性ではテストステロンが下がってしまうということが分かっています出典[3]

ちなみに、体脂肪はテストステロンを女性ホルモンに変換してしまう働きを持っています。

さらに、体脂肪の減少はテストステロン低下の一因となる可能性のある「レプチン」というホルモンを減らすことにもつながります。

そのため肥満の方は、むしろカロリー制限を行って体脂肪を減らすことの方が、得られる効果が大きいようです

 

おすすめのコレステロール源は卵

コレステロールが豊富な食べ物にはいろいろありますが、どんな物でも食べて良いのかというとそういう訳ではありません。

例えば、ベーコンなどの加工肉、チーズなど乳脂肪の多い乳製品、カップ麺などもコレステロールが豊富。

しかし、これらの食品には悪玉コレステロールを増やす飽和脂肪酸が多く含まれているので、食べ過ぎには注意が必要。

そこで、おすすめのコレステロール源として挙げたいのが「卵」

卵はコレステロールだけでなく、テストステロンの合成に必要なビタミンDなども豊富。

ビタミンCや食物繊維以外の栄養がすべて含まれていて、「完全栄養食」と呼ばれるほどの食べ物なんです。

ちなみに、コレステロールは卵黄に多く含まれているので、必ず全卵で食べるようにしましょう

実際に、先ほども紹介したイランのエスファハーン大学から発表された論文では、トレーニング後に全卵を食べたグループは、トレーニング後に卵白を食べたグループより約3.5倍もテストステロンが増加していました出典[2]

また、卵は加熱時間によって栄養の吸収率が変わると言われ、特にタンパク質はその影響が大きいと言われています。

とある有名映画にはトレーニングに励むボクサーが生卵を飲むシーンが出てきますが、じつは生卵は吸収率が悪いそう。

半熟卵が最も効率よく栄養を吸収できると言われているので、吸収率にまでこだわる方は、ぜひ食生活に取り入れてみてください。

 

ケトジェニックダイエットを試すのもアリ

ケトジェニックダイエットとは、糖質を最低限に抑えることにより、体内でケトン体を生み出し、脂質の利用効率を高める食事法

YouTubeなどでインフルエンサーが紹介しているのを、見たことがある方もいらっしゃるかも知れません。

じつは、ケトジェニックダイエットでは脂質、つまりコレステロールを大量に摂取する必要があります

そのため、上手く行うことができれば、テストステロンを高められる可能性があるんです。

ここで、2020年に米国の応用科学&パフォーマンス研究所から発表された論文をご紹介しましょう出典[5]

研究では、ケトジェニックダイエットが筋力トレーニングを行う若年男性の体組成やホルモンに与える影響を調査。

被験者たちは、以下のグループに分けられて12週間のトレーニングを実施しています。

  • 1日に総脂肪約220g(うち飽和脂肪酸約110g)を摂取するケトン食
  • 1日に総脂肪約84g(うち飽和脂肪酸約約37g)を摂取する低脂質な西洋食

実験後の分析の結果、ケトン食のグループは西洋食のグループに比べ、テストステロンが約120ng/dlも上昇していました

このことから、厳しい糖質管理を行って筋トレできるような方は、ケトジェニックダイエットを試してみるのもおすすめです。

 

コレステロールを下げる薬には要注意

記事内でも何度か紹介していますが、コレステロールが高い状態が続くと脂質異常症を招き、心筋梗塞や脳卒中の原因にもなります。

そのため、健康診断などで「コレステロール値が高い」と言われて、薬を飲んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、コレステロールを下げるということは、同時にテストステロンを減少させる可能性もあるということ。

中でも「スタチン」という薬の服用は、2013年にニューヨーク市立大学から発表された論文で、テストステロンを低下させる可能性があるというデータが紹介されています出典[6]

テストステロンの低下は筋量や筋力の低下に加え、性欲の減退や生活習慣病などを引き起こす原因に。

さらに、気力の低下や自律神経の乱れなど、男性更年期の症状を招く可能性もあります。

従って、現在スタチン系の薬を服用している方は、医師や薬剤師と相談しながら減薬を目指してみましょう。

コレステロールのバランスを改善するためには、健康的な食生活や、適度な運動習慣を身に付けることも重要。

自身の体調と相談しつつ、取り組みやすいところから始めてみてください。

関連記事:【テストステロン2.0】男性ホルモンを増やす最新戦略
 

コレステロールと上手く付き合ってテストステロンを高めよう!

コレステロールとテストステロンの関係についてお分かりいただけたかと思います。

テストステロンを高めるためにはコレステロールの摂取量だけでなく、全体の摂取カロリーも重要なカギを握っています。

また、栄養豊富な卵を食事に取り入れれば、より効果的にコレステロールを摂取することが可能。

ぜひ、紹介した情報を参考にコレステロールのバランスを整えて、上手にテストステロンを高めてくださいね。

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