執筆者
NSCA-CPT、調理師免許
大里 亮太(筋肉料理研究家Ryota)
激太り&うつで入院するも入院中にTeststerone氏の「筋トレが最強のソリューションである」に出会い、退院後に筋トレとお料理で体重-25kgに成功。精神的にも立ち直り、パーソナルトレーナー資格のNSCA-CPTを取得。元々所有していた調理師免許を生かし、筋肉料理研究家として活動するように。昔の自分のように心身ともに悩んでいる方のサポートになればと、日々簡単ダイエットレシピを発信している。
テストステロンとアルコールの関係
テストステロンとアルコールは深い関係を持つ存在。
この項目では、そんなテストステロンとアルコールの関係性を、4つの項目に分けて解説します。
少量のアルコールは一時的にテストステロンを上げるかも
いきなりですが、お酒好きの方に朗報です!
というのも、少量のアルコール摂取は一時的にテストステロンを高めてくれる可能性があるんです。
2003年にフィンランドのヘルシンキ国立公衆衛生研究所から発表された論文では、アルコール代謝阻害薬を使用し、少量のアルコール摂取が男性のテストステロンに与える影響を調査出典[1]。
被験者の男性13名は、ランダムに以下のグループに分けられています。
- 体重1kgあたり0.5gのアルコールを摂取
- アルコール代謝阻害薬と体重1kgあたり0.5gのアルコールを摂取
- アルコール代謝阻害薬のみを摂取
- プラセボのみを摂取
実験後の血液分析の結果、アルコールだけを摂取したグループのみ、テストステロンの値が約1.3倍ほど上昇。
このことから、少量のアルコール摂取は肝臓に働きかけ、男性ホルモンのバランスに影響を与える可能性があるんです。
テストステロンとアルコールに関してはマイナスな情報が多い中、お酒好きの方には何とも嬉しいエビデンスかもしれません。
少量のアルコールでも飲み続けるとテストステロンは低下する
上げて落とすようなことをするのは忍びないのですが…
とはいえ、たとえ少量のアルコールでも長期的に飲み続ければ、テストステロンは低下してしまう恐れがあります。
2004年にオランダの栄養・食品研究所から発表された論文では、適量のアルコール摂取が血液中のホルモンバランスに与える影響を調査出典[2]。
被験者である中年男性らは3週間ビール、3週間ノンアルコールビールという期間にランダムに振り分けられています。
両期間とも食事は同じメニューで、ビール期間中はアルコール40gにあたるビールを夕食時に摂取。
実験後の血液検査の結果、ビール期間中のテストステロンはノンアルコールビール期間中に比べて6.8%も減少してしまいました。
わずか3週間でこれだけ低下するとなると、普段から飲酒の習慣がある方なら、さらに大きな影響が出てもおかしくありません。
しかも、こちらはオランダの研究なので、恐らく被験者も欧米の方であるはず。
このあとの項目でも解説しますが、日本人は欧米人に比べてお酒に弱い体質の方が多いと言われています。
そのため、アルコールの摂取量に関して、さらなる注意が必要かもしれません。
大量飲酒は短期的にも長期的にもテストステロンにはマイナス
「仕事やプライベートでイヤなことがあって、つい深酒してしまった…」という経験がある方も要注意。
大量の飲酒は短期であっても長期であってもテストステロンを低下させ、マイナスの効果は翌朝まで続いてしまいます。
実際に、1984年にフィンランドのヘルシンキ大学から発表された論文では、体重1kgあたり1.75gにあたる大量のアルコールを男性ボランティアに摂取させたところ、血液中のテストステロンは最大で27%も減少出典[3]。
さらに、テストステロンの低下は24時間後まで続いたということです。
また、2023年にイタリアのモデナ大学から発表された論文では、成人男性のアルコール摂取がテストステロンに与える影響を調査するため、計10,199名に上る大規模データを分析出典[4]。
慢性的にアルコールを摂取している被験者のテストステロンはお酒を飲まない人に比べ、約7.5%も低いことが分かりました。
深酒が続けばテストステロンだけでなく、肝機能障害やアルコール依存症を招く原因にも。
このあとの項目で紹介するようなポイントも参考にして、肉体的・精神的に健康的な飲み方にシフトしてみましょう。
特に顔が赤くなる人はアルコールの悪影響を受けやすいかも
読者の方の中にも、「お酒を飲むと、すぐに顔が赤くなってしまう」という方は意外と多いはず。
しかし、思い当たる方は注意が必要です。
お酒を飲むと、体内でアルコールを吸収する過程で「アセトアルデヒド」という有害物質が発生します。
このアセトアルデヒドが神経に作用し、血管を広げて血流を促すことが顔が赤くなってしまう原因。
ちなみに、顔が赤くなる方はアセトアルデヒドを分解する酵素が弱い、いわゆる「お酒に弱い体質」の方。
酵素が弱い分、毒性に長時間さらされることになり、飲酒による悪影響を受けやすい可能性があるんです。
実際に、2022年に韓国の忠南国立大学病院から発表された論文では、お酒を飲むと顔が赤くなる方で、1週間に8杯以上(アルコール量112g)のお酒を摂取する人のテストステロンが欠乏するリスクは、飲酒しない人に比べて約4.4倍も高くなることが分かっています出典[5]。
先ほども紹介した、「日本人は欧米人に比べてお酒に弱い」というのは、このアセトアルデヒドの分解酵素の弱さのこと。
何と、じつに日本人の約40%がアセトアルデヒドを分解する酵素を持っていないか、働きが弱いと言われています。
しかも、酵素の強さは遺伝で決まっているので、たくさん飲んでも強くなることはありません。
従って、顔が赤くなってしまうという方は、特にアルコールの摂取量に注意が必要なんです。
テストステロンを減らさない飲み方5選
ここからは、テストステロンを減らさないためのお酒との付き合い方を、5つご紹介。
お酒好きの方は、ぜひ1つでも多く取り入れてみてください。
アルコールは1日20gまでに留める
中には「アルコール20gだなんて少な過ぎる!」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ご安心を。
記事内でも何度か登場していますが、この「アルコール量」というのはお酒そのものの量ではありません。
これは、「飲むお酒の量×アルコール度数×アルコール比重0.8」で算出できる「純アルコール量」のことを指します。
例えば、アルコール度数5%のビールを500ml飲んだ場合は、「500×0.05×0.8=20」のように求めることができます。
ちなみに、先ほどの項目では、少量のアルコールでも飲み続ければテストステロンは減少してしまうと紹介しました。
しかし、純アルコール量の摂取が1日20gであれば、テストステロンには悪影響を及ぼさない可能性があるんです。
実際に、2023年にベトナムのフエ医科薬科大学から発表された論文では、週に140gの純アルコール量の摂取なら、テストステロンには影響を与えないという研究データが紹介されています出典[6]。
主な飲料の純アルコール量20gは、以下に表にしているので参考にしてみてください。
【純アルコール20gに相当する酒量(サントリーHP「お酒との正しい付き合い方を考えよう」より】
ビール(5%) | ロング缶1本(500ml) |
日本酒 | 1合(180ml) |
ウイスキー | ダブル1杯(60ml) |
焼酎(25度) | グラス1/2杯(100ml) |
ワイン | グラス2杯弱(200ml) |
チューハイ(7%) | レギュラー缶1本(350ml) |
おすすめのお酒はワイン
お酒にも好き嫌いがあるかと思いますが、テストステロンを減らさないためにおすすめするのは「赤ワイン」。
赤ワインには、「レスベラトロール」という強い抗酸化力を持つ成分が豊富。
このレスベラトロールには、テストステロンが女性ホルモンに変換されるのを防いでくれる可能性があるんです。
2021年にイスラエルのアリエル大学から発表された論文でも、赤ワインには男性ホルモンを女性ホルモンに変換する酵素「アロマターゼ」を阻害する働きがあると報告されている、と紹介されています出典[7]。
また、最も効果的な赤ワインの品種は「カベルネ・ソーヴィニヨン」であるとも述べられているので、ぜひ参考にしてみてください。
ちなみに、レスベラトロールはぶどうの皮や種に多く含まれています。
そのため、皮や種を取り除かれて作られる白ワインには、あまり含まれていません。
白ワイン派の方もテストステロンを減らしたくないなら、いっそのこと赤ワインに鞍替えしてしまいましょう。
できる限り早い時間帯に飲む
就寝前などの遅い時間帯にお酒を飲むと、アルコールが眠りを浅くする可能性があります。
そのため、「毎晩寝酒をしている」という方は注意が必要。
なぜなら、テストステロンは睡眠中に最も多く分泌されるホルモン。
眠りの質が低下すれば、それだけテストステロンも減少してしまう可能性があるんです。
実際に、2019年にフィラデルフィア退役軍人医療センターから発表された論文でも、アルコールの摂取は就寝時間の減少や中途覚醒の増加などの睡眠障害と関連していると述べられています出典[8]。
また、2011年にシカゴ大学から発表された論文では、睡眠制限が若年男性のテストステロンに与える影響を調査出典[9]。
1週間の睡眠時間を5時間に制限したところ、日中のテストステロンは10~15%も減少したというデータが紹介されています。
寝酒はテストステロンに悪影響を与えるだけでなく、依存症やうつの引き金になることもあります。
質の高い睡眠はもちろん、心身の健康のためにも、お酒はできる限り就寝時間から離れた、早い時間帯に楽しむようにしましょう。
おつまみは低カロリーのものを選ぶ
お酒好きの方なら、「これは欠かせない!」という定番のおつまみが1つや2つはあるのではないでしょうか。
じつは、何も食べずにお酒を飲むことは胃や肝臓への負担が大きくなるほか、二日酔いや悪酔いにもつながります。
そのため、おつまみを食べるというのは、理にかなったお酒の楽しみ方なんです。
とはいえ、唐揚げやフライドポテトなど、高カロリーのものばかり食べてしまうと肥満の原因に。
体脂肪には、テストステロンを女性ホルモンに変換する酵素が含まれています。
そのため、太るとテストステロンも減少しやすくなってしまうんです。
実際に、2024年に北京協和医学院病院から発表された論文では、男性においては体脂肪率が高くなるほど、テストステロンが低くなることが分かっています出典[10]。
そこで選びたいのが低カロリー・低糖質だったり、栄養が豊富なおつまみ。
例えば、枝豆は低カロリーで植物性タンパク質のほか、糖質の代謝を促すビタミンB1なども豊富。
また、冷奴も低カロリー・低糖質で、トッピングなどのアレンジもしやすく飽きずに食べることができます。
さらに、あたりめなら咀嚼回数が増えて満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防ぐことが可能。
他にも、素焼きのナッツはビタミンB1が豊富で、少量でお腹持ちが良いという特徴があります。
ただし、どれも高カロリーなマヨネーズや、塩分量の高い調味料と組み合わせると太りやすくなってしまうので注意しましょう。
週に2~3日は休肝日を設ける
記事をご覧の方の中には、「毎日の晩酌が生きがい」という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、例え少量であっても連続してお酒を飲み続ければ、テストステロンが低下してしまう可能性があります。
実際に、先ほど紹介したオランダの栄養・食品研究所から発表された論文では、40gのアルコールを3週間連続して摂取し続けると、中年男性のテストステロンは6.8%も減少してしまっていました出典[2]。
肝臓にとってアルコールの分解というのは、大きな負担のかかる仕事。
毎日お酒を飲み続ければテストステロンが低下するだけでなく、肝機能障害や依存症を招く原因にもなってしまいます。
従って、末永く健康的にお酒を楽しむためにも、週に2~3日は休肝日を設けるようにしましょう。
テストステロンを想うならアルコールは適度に
テストステロンとアルコールの関係についてお分かりいただけたかと思います。
記事内で解説したように、日本人は欧米人に比べてお酒に弱い体質の方が多いと言われています。
その分、肝機能障害や依存症を防ぐためにも、アルコールの摂取量や飲み方には注意が必要。
ぜひ、紹介したポイントやお酒・おつまみの種類を参考にし、テストステロンを減らさず健康的にお酒を楽しんでくださいね。
出典
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