監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
クルミと勃起力との関係とは?
加齢にともなう勃起力の落ち込みが気になっていませんか? 勃起力の改善には食事や睡眠など、生活習慣に気を配ることが重要です。とくに勃起力を高める食品として、ナッツ類の人気が高まりつつありますね。
ナッツのなかでも、クルミはとくに勃起力アップに効果的な食品です。クルミと勃起力との関係について、考えられるメリットを5つ解説しましょう。
豊富な抗酸化物質が精巣を保護する
クルミには多様な抗酸化物質が含まれています。体内の活性酸素の働きを抑え、酸化ストレスを減らす効果が期待できるでしょう。
勃起力を高める要素のひとつに、男性ホルモンの「テストステロン」があります。
テストステロンは主に精巣から分泌されるホルモン。精巣は酸素消費が多いため活性酸素が増えやすく、また酸化されやすい不飽和脂肪酸の量も多いため酸化ストレスにとくに敏感です出典[1]。
酸化ストレスによる精巣のダメージが増えるとテストステロンの分泌能力も下がり、勃起力の落ち込みにつながりやすいのです。
そこで活躍するのが、抗酸化物質を多様かつ豊富に含むクルミ。ω‐3系脂肪酸であるα-リノレン酸をはじめ、ビタミンE、セレン、マグネシウム、ポリフェノールなどが、身体の酸化ストレスや炎症を抑えるように働きます。
成分 | 効果 |
α-リノレン酸 | 経口投与によりマウスの精巣炎症を改善 炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-αなど)の増加を抑制出典[2] |
ビタミンE | LDLコレステロールの酸化を防ぐ出典[3] |
マグネシウム | 摂取量の増加により炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α)が減少出典[4] マグネシウムが不足した細胞では活性酸素の発生量が2~3倍に出典[5] |
セレン | 米由来のセレンたんぱく質によりマウスの抗酸化能力が向上出典[6] |
ポリフェノール | クルミ摂取により血中ポリフェノール濃度と抗酸化能力、脂質過酸化の抑制能力が増加出典[7] |
このように、クルミの成分は体内の抗酸化作用や抗炎症作用において重要な役割を持つことが、動物実験や臨床試験で確認されています。
とくにクルミのω‐3系脂肪酸の含有量はナッツのなかでもトップクラス。アーモンドやピスタチオのようなほかのナッツは100gあたりのω‐3系脂肪酸が1g以下であるのに対し、クルミからは8g以上も摂取できるのです出典[8]。
豊富かつ多様な抗酸化物質でテストステロンを守り、勃起力の落ち込みを防ぎましょう。
血流改善により勃起力をサポート
勃起力を高めるためには、テストステロンの増加に加えて血流の改善も重要です。陰茎に血流を集める働きは血流に左右されるため、血管や血液の状態が悪いと勃起時に十分な硬さを保てません。
クルミの血管や血液の状態を改善する効果を2つの論文で確認しましょう。
まず血管についての研究です。
平均年齢57.4歳の肥満の男女が1日56gのクルミを8週間摂ったところ、クルミなしの食事と比較して、血管拡張能力を示す血管内皮機能(FMD)検査が約1.1%多く改善したと報告されています。クルミの継続摂取による体重増加も見られなかったことから、クルミは体重増加なしで血管の機能を改善できる可能性がありますね出典[9]。
次に血液についての研究です。65歳以上の男性20名が1日15gのクルミ摂取とトレーニングを6週間続けたところ、トレーニングのみの場合と比較して血中脂質が次のように改善したと述べられています。
【クルミ摂取における血中脂質の変化出典[10]】
筋トレのみ | 筋トレ+クルミ | |
総コレステロール | -0.20mmol/L | -0.64mmol/L |
HLCコレステロール | +0.11mmol/L | +0.22mmol/L |
LDLコレステロール | -0.12mmol/L | -0.53mmol/L |
中性脂肪 | -0.12mmol/L | -0.30mmol/L |
同研究ではクルミ摂取とトレーニングの組み合わせにより、テストステロンが約12%増加したことも確認されています出典[10]。
このように、クルミには血管をやわらかく保つ効果と、血液をサラサラにする効果の両方が期待できます。血流の改善により勃起力をサポートする効果が得られそうですね。
マグネシウムが遊離テストステロンを増やす
クルミから摂取できるミネラルのひとつに、マグネシウムがあります。
まずマグネシウムには抗酸化作用と抗炎症作用があり、精巣へのダメージを抑える効果が期待できます。マグネシウムとテストステロンの体内量には相関関係があることが確認されており出典[11]、マグネシウム不足の解消はテストステロンを増やすために重要であることがわかるでしょう。
加えてマグネシウムには、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)とテストステロンの結びつきをブロックする作用が確認されています出典[12]。
私たちの体内にあるテストステロンの98~99%は、たんぱく質をはじめとする他の物質と結合した「結合テストステロン」です。
血中にそのままの状態でいる「遊離テストステロン」は全体の1~2%。しかしこのわずかな遊離テストステロンこそが、私たちが期待する性欲や性機能の向上に高い効果を発揮するのです。勃起力の改善には、テストステロンのなかでもとくに「遊離テストステロン」を増やす必要があることがわかるでしょう。
性ホルモン結合グロブリンは、テストステロンに結合する性質を持つたんぱく質です。マグネシウムにより結合をブロックできればその分、遊離テストステロンの割合が増え、勃起力を高めやすくなる可能性がありそうですね。
マグネシウム不足をクルミで解消し、テストステロンの量と活性を高めましょう。
亜鉛やセレンがテストステロンの分泌を促す
クルミに含まれる亜鉛やセレンは、テストステロンを分泌させるためのシグナルを支えるように働きます。テストステロンの分泌を促す効果が期待できるため、加齢による勃起力や性欲の落ち込みを防ぐ効果が期待できそうですね。
私たちの体がテストステロンの減少を感知すると、脳の視床下部から下垂体へ、下垂体から精巣へと、テストステロン分泌の指示が出されます。
亜鉛やセレンはこれらの指示のうち、下垂体から分泌される「黄体形成ホルモン」の合成をサポートするように働くのです出典[11]。黄体形成ホルモンの量が増えれば精巣へのテストステロンの合成の指示も強化されるため、テストステロンを増やす効果がより期待できそうですね。
実際に、12人の不妊男性が3か月間にわたり1日50μgのセレンを摂取したところ、黄体形成ホルモンが32.9%、テストステロンが23.5%増加したとの結果が得られています出典[13]。
また亜鉛不足が見られる男性の透析患者100名が、硫酸亜鉛を1日250mg摂取する形で、6週間の亜鉛補給をおこなったところ、血中亜鉛濃度の改善とともに、黄体形成ホルモンが約3.25倍、テストステロンが約1.89倍に増加したとのデータも確認できました出典[14]。
亜鉛とセレンを効率的に摂れるクルミは、テストステロンの分泌を増やす指示を出すためにうってつけの食品と言えそうですね。
豊富な食物繊維による腸活効果も
腸内環境を整える「腸活」は、勃起力の改善にも役立つ可能性があります。
腸内環境の悪化は、勃起不全(ED)のリスク因子として知られる肥満や炎症を生じやすくすることが分かっています出典[15]。勃起力を維持するためにも、腸内細菌のバランスを整えることは非常に重要です。
腸内環境を整えるためには、善玉菌を増やして悪玉菌の増殖を抑える必要があります。そこで活躍するのが、クルミに豊富な食物繊維。食物繊維は腸内で善玉菌のエサになり、善玉菌を増やすように働くのです。
実際に96名の女性が1日43gのクルミ摂取を8週間続けたところ、酪酸産生細菌が有意に増加したことが確認されました出典[16]。腸内の酪酸は腸内の炎症を抑え、肥満のリスクを下げるように働くため、腸活のサポートに役立つでしょう。
クルミに豊富なω‐3系脂肪酸にも抗炎症作用があるため、腸内の炎症を抑える効果がさらに期待できそうですね。
合わせて読みたい:フル勃起しない原因4つとペニスを硬くする方法15選
勃起力UPに効果的なクルミの食べ方は?
クルミからは勃起力に役立つ成分を多数摂取できます。クルミを食べることで、テストステロンを増やす効果や血流を改善する効果が得られ、勃起力を高めやすくなるでしょう。
ここからはクルミを食べる際のポイントについて解説します。
15~30gを毎日食べる
クルミは脂質の多い食品であり、100gあたり713kcalと非常に高カロリーです。クルミに豊富な不飽和脂肪酸は体重増加との関連が低く、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸よりも太るリスクの少ないものですが出典[17]、やはりカロリーの摂りすぎは禁物。
毎日クルミを食べる場合には、カロリーを摂りすぎないよう、1日30gまでを目安にするとよいでしょう。クルミ1粒を3~4gとすると、1日に約7~10粒が適切と言えそうですね。
クルミの1日の摂取量は論文により異なりますが、最低量として1日15gは摂りたいところです。
高齢男性が血中脂質を大幅に改善させたデータにおいて、1日15gのクルミ摂取が6週間続けられていました出典[10]。4~5粒のクルミを毎日食べれば、クルミによる血液をサラサラにする効果を十分に受けられるでしょう。
本記事で紹介したいずれの論文においても、クルミの摂取は数週間から数か月にかけて、継続しておこなわれています。クルミの効果を得たい場合には、毎日少量ずつ食べることを心掛けましょう。
無塩・素炒りのものを選ぼう
勃起力を高めるためにクルミを食べる際には、過度な味付けがされていないシンプルなものを選びましょう。
クルミをはじめとするナッツは、近年の健康志向の高まりとともに人気を集めており、国内での消費量も大きく増加しています。より多くの人に購入してもらうため、チョコやはちみつを絡めたり、油で上げて塩で味付けしたりした商品も数を増やしつつあるようです。
このような味付けされたクルミはおいしく食べやすいものの、余分な脂質やカロリーの摂りすぎにつながるためおすすめできません。
とくにフライされたクルミや塩辛く味付けされたクルミは食欲を刺激しやすいため、やめどきがわからず食べ過ぎてしまいがち。
肥満のリスクを抑えて毎日適量のクルミを食べるためにも、無塩かつ素炒りのものを選びましょう。
おすすめのタイミングは間食や食前
クルミを食べるタイミングは、小腹が空いたときや食事の前がおすすめです。
よく噛んで食べられるクルミは、噛む刺激により満腹中枢を刺激しやすい食品です。少量を間食として取り入れることで空腹を軽減する効果が期待できるでしょう。また食前にクルミを食べてあらかじめ空腹を和らげておけば、食事の食べ過ぎを防ぐ効果も期待できそうですね。
また、食前にクルミを食べると、野菜から先に食べる「ベジファースト」に似た効果も得られます。クルミに豊富な食物繊維は、食事のご飯やパンによる血糖値の上昇を緩やかにするように働くため、血糖値スパイクの防止に役立つでしょう。
高血糖状態が続きやすい糖尿病患者にEDのリスクが高いように、一時的な高血糖である血糖値スパイクが日常的に繰り返されることでも、性欲低下やEDのリスクが高まる可能性があります。
実際、19~74歳の男性74名による75g経口ブドウ糖負荷試験においては、血糖値の急上昇にともない平均テストステロン値が25%低下したと報告されており出典[18]、血糖値スパイクの影響がいかに大きいかがわかるでしょう。
クルミ自体の糖質量はナッツのなかでも非常に少ないため、クルミの摂取で血糖値が大きく上がることはありません。血糖値スパイクを防ぐため、ぜひ間食や食前にクルミを取り入れましょう。
発酵食品をプラスして腸活をサポート
クルミによる腸活効果をより発揮するためには、発酵食品を意識して摂ることも重要です。
クルミは食物繊維により善玉菌を増やしたり、ω‐3系脂肪酸により腸内の炎症を抑えたりする効果を発揮しますが、善玉菌自体はクルミには含まれていません。
ビフィズス菌をはじめとする善玉菌を取り入れることで、クルミの善玉菌を増やす効果をより得やすくなるでしょう。
発酵食品には納豆やキムチ、ヨーグルトなどがありますが、いずれかひとつに絞らずさまざまな食品を取り入れることをおすすめします。
腸内環境を保つためのカギは、腸内細菌の多様性を高めること。ED患者では腸内細菌の多様性が少ないとのデータや出典[19]、オスのラットの腸内細菌の多様性を高めることで血清テストステロンが増加したとのデータも存在します出典[20]。
EDのリスクを下げるためには、食物繊維やω‐3系脂肪酸の摂取に加え、多様な善玉菌の摂取も重要。さまざまな発酵食品を毎日少量ずつ取り入れて、腸活効果をより高めましょう。
ほかのナッツと組み合わせて効果アップ
勃起力を高めるために役立つナッツは、クルミのほかにも複数あります。ナッツの合計が1日30gを超えないよう注意しつつ、ほかのナッツを取り入れる方法もおすすめです。
たとえばブラジルナッツには非常に多くのセレンが含まれています。1日1粒のブラジルナッツを加えることで、テストステロンの分泌を促す効果をより得られるでしょう。
またアーモンドにはビタミンEが豊富です。抗酸化ビタミンとして機能するビタミンEには、脂質の酸化を防いで血管の柔軟性を保つ働きが期待できます。マグネシウムや亜鉛の供給源としても役立つため、クルミにプラスする形で取り入れてもよいでしょう。
ただしω‐3系脂肪酸の含有量はクルミがトップクラスです。ほかのナッツを取り入れる場合でも、クルミを1日15gは摂れるよう調整することをおすすめします。
間食にクルミを取り入れて男性機能を高めよう!
クルミに含まれるさまざまな栄養素は、勃起力を高めるために役立ちます。
勃起力の向上にはテストステロンの増加が重要。クルミ由来の抗酸化物質は酸化ストレスを減らすように働くため、精巣を保護してテストステロンの分泌能力を維持する効果が期待できるでしょう。
また、血流も勃起力と深い関係があります。クルミには血管を柔らかく保ち、かつ血液をサラサラにする効果があるため、血流を改善しやすく、勃起をサポートする力が強いと言えるでしょう。
一方でクルミは高脂質かつ高カロリーであるため、食べ過ぎは禁物。1日15~30gを目安に、味付けのないシンプルな素炒りのものを食べましょう。発酵食品を食事に取り入れたり、ほかのナッツを少量プラスしたりすることでも、勃起力を高める効果がより期待できますよ。
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