ビタミンDは勃起力の要!意外な関係と摂取上の注意点
2024年8月30日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

ビタミンDと勃起の関係とは?

ビタミンDにはカルシウムの吸収や骨代謝をサポートする役割があるほか、性機能を維持するように働くことがわかっています。加齢にともない低下しがちな勃起力を維持したい場合にも、ビタミンDの充足がカギとなるかもしれません。

まずはビタミンDと勃起力との関係について解説します。

ビタミンDが多いほど性機能が高まる

勃起をはじめとする性機能に関わるホルモンといえば、男性ホルモンのテストステロン。まずはテストステロンとビタミンDとの関係に注目して解説しましょう。

2010年にオーストリアのグラーツ医科大学が発表した論文では、男性2299人を対象に、ビタミンDの主要な貯蔵形態である25-ヒドロキシビタミン(25(OH)D)とテストステロンの体内量が調べられました。

調査の結果、25(OH)Dが30 microg/L以上の男性は、25(OH)Dが30 microg/L未満の男性と比較してテストステロン濃度が有意に高く、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)濃度が有意に低いことが判明したのです出典[1]

SHBGとはテストステロンが結合しやすいたんぱく質です。私たちのテストステロンの99%以上はほかのたんぱく質と結合した「結合テストステロン」であり、血中にそのままの状態で存在する「遊離テストステロン」は全体の1~2%しかありません。

しかしこの遊離テストステロンこそが、活力や性機能を高める効果を持つ重要物質。ビタミンDの体内量が多い方ほどSHBGが少ないとの研究結果を踏まえると、活性の高い遊離テストステロンを増やすためにも、ビタミンDの充足が重要であると言えそうですね。

またビタミンDは日光を浴びることで合成される栄養素でもあるため、25(OH)Dの季節による増減とともに、テストステロンの濃度も次のように変動したとも報告されています。

【25(OH)Dとテストステロンの体内量出典[1]

 25(OH)Dテストステロン
3月12.2μg/L15.9nmol/L
8月23.4μg/L18.7nmol/L

25(OH)Dとテストステロンの季節による増減は、ともに3月に最低値を、8月に最高値を示していました。体内でのビタミンDの生成量が増えるほど、テストステロン濃度も高くなりやすいことがわかるでしょう。

体内のテストステロンを維持するためには、ビタミンDを充足させることが重要と考えられそうですね。

 

ビタミンDはテストステロンを増やす

では実際にビタミンDがテストステロンを増やすメカニズムや、実際の補給例について解説します。

同じく2014年にグラーツ医科大学が発表した研究では、ビタミンDで処理したヒトの精巣細胞の分析により、精巣でビタミンD受容体が活性化していることや、ビタミンDの投与が精巣細胞でのテストステロンの合成量を増やすことが判明しました出典[2]

ビタミンDにはこのように、テストステロンの合成をサポートする側面があるようです。

実際にヒトを対象とした臨床試験でも、ビタミンDの効果が確認されています。

たとえば性機能障害とビタミンDの不足が見られる60~68歳の患者を対象とした研究では、ビタミンD補充療法により総テストステロンが約15%、遊離テストステロンが約19%増加し、国際勃起機能指数(IIEF)における勃起機能の評価に10%の改善が見られました出典[3]

またメタボリックシンドロームかつビタミンD欠乏が見られる男性を対象とした研究では、12か月間の高用量ビタミンD補給により、ビタミンD濃度やメタボリックシンドロームの改善に加え、血清テストステロン濃度が約28%、国際勃起機能指数 (IIEF)の勃起機能スコアが約46%増加したとの結果が得られています出典[4]

ビタミンDの不足を防ぐことで、テストステロンの減少を防ぎ、勃起機能を改善する効果が期待できそうですね。

 

ビタミンDは血流を改善し勃起力をサポートする

勃起力を高めるためには、活力や性機能を高めるテストステロンの維持に加え、血流を良好に保つことも重要です。勃起は興奮により、陰茎に血液が一気に集まることで起きる現象。血流が滞った状態では勃起をスムーズにおこなえず、勃起不全のリスクも高まるでしょう。

ビタミンDにはテストステロンの合成をサポートすることに加え、血管拡張に必要な一酸化窒素(NO)の合成酵素を活性化する働きがあることが確認されています出典[5]。血管の拡張性を高めることで、血流をよくする効果が期待できそうですね。

さらにビタミンDには抗酸化物質として機能する側面も。活性酸素に弱い血管内皮細胞を保護して、動脈硬化のような血管内皮障害を防ぐように働くのです。

ビタミンD欠乏症により活性酸素が増加し、内皮機能不全や CVD(心血管疾患)のリスクが高まることも報告されており出典[6]、ビタミンDは血管を柔軟に保つための成分として重要視されていることがわかるでしょう。

2014年にイタリアのミラノ大学から発表された論文では、勃起不全状態にある患者の割合が、ビタミンDが正常量ある患者の24%に対し、ビタミンD欠乏症患者では45%と高い割合で見られたと報告されています出典[7]

ビタミンD不足には勃起不全を招くリスクもあるようです。ビタミンDによる血流改善効果により、勃起力をサポートする効果を十分に得たいものですね。

 

ビタミンDが十分にある場合には効果がない

ビタミンDの十分な補給により、テストステロンが増えたり血流が改善したりといった効果が得られ、勃起力の改善につながることがわかりました。

しかしこれらの効果はあくまで、ビタミンD不足を解消した場合に起こる効果。すでに体内のビタミンDが足りている場合、勃起力の改善効果は見込めないと考えた方がよいでしょう。

2012年にハーバード公衆衛生大学院から発表された論文では、血中の25(OH)Dとテストステロンの関係について調べられました。

25(OH)Dの体内量が約75~85nmol/Lと少ない場合、この範囲では25(OH)Dの体内量が増えるほどに総テストステロンや遊離テストステロンも増えるといった相関関係が見られました。

一方で25(OH)Dの体内量がが十分である場合にはテストステロンの増加は頭打ちになり、顕著な増加は見られなかったと報告されているのです出典[8]

勃起力を高める効果は、あくまで不足するビタミンDを補った場合に見られるようですね。

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、18歳以上の男女におけるビタミンDの目安量は8.5μg/日となっています。また、日照により皮膚でビタミンDが産生されることを踏まえ、日光浴も推奨されています出典[9]

なお、令和元年度に実施された「国民健康・栄養調査」によると、男性のビタミンD摂取量の平均は70歳以上を除いて8.5μg/日を下回る状況です。とくに20代では5.9μg/日、30代では5.5μg/日と大きな不足が見られます出典[10]

以上のことから、ビタミンD不足はとくに次のようなケースで起きやすいと言えそうです。

  • 20~39歳の若い男性
  • 緯度が高く日照時間が少ない地域に住んでいる出典[11]
  • 日照時間が減少する冬季や雨の多い雨季
  • デスクワーク中心の業務で日光を浴びる機会が少ない

ビタミンDが不足するリスクの高い方は、意識的にビタミンDを摂るようにすると、勃起力にもよい効果が現れるかもしれません。
 

勃起力の向上に役立つビタミンDの摂り方とは?

ビタミンD不足の解消により、テストステロンを増やしたり、血流を改善したりして勃起力を高める可能性があることがわかりました。比較的若い世代の男性や、日光を浴びる時間が極端に少ない方は、意識的にビタミンDを摂ることで勃起力を高められるかもしれません。

ここからはビタミンDの効果的な摂り方について解説します。

魚類やキノコから効率摂取

ビタミンといえば野菜や果物に含まれているイメージがあるかもしれませんが、ビタミンDの主な摂取源は魚類です。サケ、イワシ、サバ、サワラなどをはじめ、すじこやイクラなどからも効率的に摂取できるでしょう。

【魚介類100g中のビタミンD含有量(日本食品標準成分表(八訂)2023年増補より)出典[12]】 

食品ビタミンD含有量(μg/100g)
しらす干し(半乾燥品)61.0
すじこ(しろさけ)47.0
イクラ(しろさけ)44.0
くろかじき(生)38.0
べにさけ(生)33.0
しろさけ(生)32.0
まいわし(生)32.0

ほかの動物性食品、肉類や乳製品などから摂取できるビタミンDの量はごく僅かです。例外として卵からは1個(50g)あたり約2μgのビタミンDを摂れるため、ビタミンDを手軽に補える「ちょい足し」食品としての活用をおすすめします。

【その他動物性食品100g中のビタミンD含有量(日本食品標準成分表(八訂)2023年増補より)出典[12]】 

食品ビタミンD含有量(μg/100g)
全卵3.8
輸入牛肉(リブロース脂身)2.2
輸入牛肉(ばら)0.4
普通牛乳0.3

また、キノコもビタミンDの供給源として優れるとよくいわれますが、含有量はキノコの種類により大きな差があります。含有量が多いキノコとして、きくらげ、まいたけ、エリンギを覚えておきましょう。しいたけやしめじ、えのきだけのビタミンD含有量は非常に少ないため注意が必要です。

【きのこ100g中のビタミンD含有量(日本食品標準成分表(八訂)2023年増補より)出典[12]

食品ビタミンD含有量(μg/100g)
きくらげ(乾)85.0
きくらげ(ゆで)8.8
まいたけ(生)4.9
エリンギ(生)1.2
しいたけ(生)0.3

ビタミンDは脂溶性であるため、脂質と一緒に摂取すると吸収率が高まります。ビタミンDの多い魚類や卵には良質な脂質も豊富であるため、ビタミンDを効率的に摂れるでしょう。きくらげやまいたけからビタミンDを摂りたい場合には、油を用いた炒め調理で食べることをおすすめします。

 

サプリメントの過剰摂取に注意

自炊の習慣がなく、食事からビタミンDを意識的に摂ることが難しい場合には、サプリメントを活用する方法もあります。

ビタミンDによる勃起力の向上には、ビタミンDの継続的な摂取による不足の解消が重要。そのためサプリメントを活用する場合には、製品に記載された目安量を毎日飲み続けるようにしましょう。

ただし脂溶性ビタミンであるビタミンDは体内に蓄積されやすく、摂りすぎで過剰症を生じる場合があるため注意が必要です

ビタミンDの過剰症は、カルシウムが過剰に吸収されることによる高カルシウム血症の形であらわれます。食欲不振や倦怠感を生じるほか、重症化すると吐き気や脱水、筋力低下、意識障害などを生じる可能性もあるため、目安量以上の摂取は厳禁と覚えておきましょう。

日本人の食事摂取基準(2020年版)においては、ビタミンDの耐容上限量は100μg/日と設定されています出典[9]。通常の食事でこの量を超えた摂取が続くことはまずありませんが、サプリメントの摂りすぎが習慣化すると非常に危険です。

2023年にドイツの病院から発表された論文でも、高カルシウム血症をはじめとする有害な影響は1日あたり80~100μgのビタミンDサプリメントで見られたと報告されています出典[13]

サプリメントの利用目的は、食事や日光浴からのビタミンDの不足を補うこと。必要以上の摂取ではよい効果を発揮しないため、適量を毎日続けることを心掛けましょう。

 

日光浴でもビタミンDは生成可能

ビタミンDは日光を浴びることで皮膚でも生成が可能です。日光浴の習慣を身に付けておくと、ビタミンD不足も解消しやすくなるでしょう。

何分間日光に当たればビタミンDを十分量生成できるのか、気になる方も多いでしょう。しかし日光浴に必要な時間は地域の緯度や季節によって異なるため、一律に「何分の日光浴が必要」とは定めきれないようです。

国立環境研究所と東京家政大学の研究チームがビタミンDの合成にかかる時間を求めた、2013年のデータが公開されています。

この研究では、5.5μg(ヒトが1日に最低限必要とされるビタミンD量として計算されています)のビタミンD合成にかかる時間を、日本の「札幌」「つくば」「那覇」について調べました。

結果、紫外線の弱い冬の12月正午に日光浴を始めたところ、5.5μgの生成までに那覇では8分、つくばでは22分、札幌で76分の時間がかかったのです出典[14]。沖縄と北海道で生成効率に9倍以上の差があるというのは、なかなかに衝撃的なデータではないでしょうか。

ビタミンDの合成量はこのように、緯度の差による日光の強弱や、雨や雪の多い気候などにも影響を受けるようです。日光浴でのビタミンD補給は、生成量が定まりにくいことを念頭に置いた方がよいでしょう。勃起力の低下を防ぐため、日光浴に加えて食事から十分量のビタミンDを摂ることをおすすめします。

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魚やキノコを食べてビタミンDの不足を防ごう!

ビタミンD不足の解消により、テストステロンの合成をサポートする効果や、血管の拡張能力を高めて血流を改善する効果が期待できます。

テストステロンの増加や血流の改善は、勃起力を高めるために非常に重要。魚やキノコ、卵などから積極的にビタミンDを摂ったり、外を出歩き日光を浴びたりといった工夫で、体内のビタミンD量を増やしましょう。

一方で、ビタミンDの不足がない場合、さらにビタミンDを摂取しても勃起力のさらなる向上は見られないようです。ビタミンDの過剰な蓄積を避けるため、サプリメントは目安量を守り使用しましょう。

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