血管拡張のカギは「NO（一酸化窒素）」にあります。

一酸化窒素は、大気汚染物質として排出されるNOx（窒素酸化物）の主成分であるため、体に悪いイメージを持つ方がいるかもしれません。

しかし、体内で生成されるNOは血管の内皮細胞から自然に放出される物質であり、血管内部の細胞をリラックスさせることで血管を広げやすくする効果があります。

血管拡張作用により血流が改善されると、以下のような効果が得られる可能性があるんです。

・動脈硬化の予防、心血管疾患のリスク低下
・疲労回復効率の向上
・冷えや肩こりの解消
・運動パフォーマンスの向上
・勃起力をはじめとする男性機能向上

血流が改善するような食生活とともにNOを増やすサプリメントを摂取することで、血流改善効果を上げ、様々な健康効果を享受することができるでしょう。
 

NOを増やすサプリメントは、成分の原料や作用などから大きく以下の3種類に分類することができます。

・アルギニン系
・フラボノイド系
・ナイトレート系

それぞれの作用機序と代表的なサプリについて、見ていきましょう。

アルギニン系

アルギニン系のNOサプリでは、アルギニンとシトルリンの反応からNOを生成するルートを活性化してNOを増やしています。

アルギニンは血流に乗って体を循環し、肝臓に入ると尿素回路で反応してシトルリンというアミノ酸に変換されます。

その際にNOが産生されるのです。

また、シトルリンは再度アルギニンに変換されます。

1. アルギニンが血管内皮細胞に入り、NO合成酵素と反応
2. NOとシトルリンが生成される
3. シトルリンの一部が、アルギニンの生成へ使用される
4. 生成されたアルギニンが再度反応してNOとシトルリンを生成する

このように、アルギニンとシトルリンの反応が循環することでNOが増加していくのです。

アルギニン系のNOサプリで代表的なものは以下の通り。

＜アルギニン系のNOサプリの代表例＞

・アルギニン
・シトルリン
・ランペップ

ナイトレート系

ナイトレートとは「硝酸塩（NO3）」を意味する言葉で、ビーツやほうれん草などの野菜の葉や根に含まれる物質です。

硝酸塩は、体内で亜硝酸塩に変換され、様々な還元を受けて最終的にNOを合成します。

NOの原料とも言えるNO3が豊富な植物を摂取することでNOを増加させるのが、ナイトレート系のサプリメントなのです。

また、ナイトレート系の成分は、血流の改善に加え、運動パフォーマンスの向上や最大酸素摂取量の増加などの効果も示されているため、トレーニーに特におすすめの成分と言えるでしょう。

＜ナイトレート系のNOサプリの代表例＞

・オキシストーム
・サビート

フラボノイド系

フラボノイドとはポリフェノールの一種で、植物に含まれている自然由来の成分です。

植物由来の成分である点は、ナイトレート系と同様ですね。

フラボノイド系の大きな特徴は、なんといっても強力な抗酸化作用。

じつは、NOは体に溜まった活性酸素を除去する作用があるのですが、活性酸素の除去によりNOが消費されてしまうんです。

そこでNOの消費を防ぐために役立つのがフラボノイド。

フラボノイドの抗酸化作用により、NOの活性酸素を除去する作用を肩代わりすることで、NOの消費を防ぐ効果が期待できるのです。

また、抗酸化作用は老化の防止、シワやシミの改善、認知機能の改善などにも役立つので嬉しいですね。

よって、NOを増やす効果のほか抗酸化作用によるさまざまなメリットを受けたい人に、フラボノイド系がおすすめです。

＜フラボノイド系のNOサプリの代表例＞

・アリウムSAC
・ブラックVキューブ
・レスベラトロール
・ω-3系脂肪酸
・ザクロジュース
・S7
 

ここからは、とくに男性におすすめのNOサプリについて、アルギニン系、ナイトレート系、フラボノイド系の順番に見ていきましょう。

血流改善はもちろん、運動パフォーマンスの向上や男性機能向上にも役立つ成分なので、ぜひ参考にしてください。

アルギニン・シトルリン

まずはアルギニン系の王道、アルギニンとシトルリンについてです。

NOの合成に欠かせないアルギニンとシトルリンの摂取により、効率的にNOを増やすことができるでしょう。

ちなみに、シトルリンからアルギニンも生成されるため、必ず2種類を同時に摂らなければいけないものではなく、どちらもNOを増やす効果が期待できます。

実際に、25人の高齢者に対してシトルリンとプラセボをそれぞれ2週間摂取してもらった研究では、プラセボに比べてシトルリンの摂取では、男性の下肢運動中の大腿部の血流が有意に増加したことがわかりました^出典[3]。

そして、アルギニンとシトルリンの摂取がとくに男性におすすめな理由は、血管拡張効果に加え、成長ホルモンが増加することにもあります。

実際に、13人のサイクリストに対し、運動の2時間前にシトルリンを摂取してもらったところ、運動後の成長ホルモンの増加率がシトルリンを摂取していないグループと比較して有意に高くなったことがわかりました^出典[2]。

アルギニンについても、アルギニンの摂取により成長ホルモンが増加することが示されています^出典[1]。

成長ホルモンは筋肉の成長や修復を促進する働きがあるため、筋肉増強や運動パフォーマンス向上に繋がるでしょう。

血流改善効果及び運動パフォーマンスの向上を狙う男性には、アルギニンとシトルリンの摂取がおすすめですよ。

ランペップ

ランペップは、卵白に含まれるたんぱく質を分解した「卵白ペプチド」と呼ばれる物質で、NOの産生を促進し血流を改善する効果があります。

ランペップを開発した「株式会社ファーマフーズ」によると、ランペップには運動パフォーマンス向上、疲労感軽減、冷え性・肩こりの改善、男性機能改善効果があると発表されています^出典[4]。

ちなみに、ファーマフーズは、ランペップに関して「男性機能の改善」「冷え性改善」の効果において特許を取得しています。

また、ランペップには血圧を上昇させるアンジオテンシン転換酵素（ACE）を阻害する効果や血管拡張効果、抗酸化活性を高める作用も確認されています^{出典[5]出典[6]}。

ランペップの摂取により血流を改善して血圧を調節できれば、動脈硬化から引き起こされる心血管疾患の予防にも役立つでしょう^出典[5]。

ところで、ランペップは同時に摂取すると相乗効果が生まれる成分があるのをご存知でしょうか？

じつは、ランペップをマカと亜鉛と同時に摂取すると、NOの生成量が単体で摂取した時よりも大幅に高まることがわかっています^出典[4]。

ランペップを摂取するときは、マカと亜鉛も一緒に摂取すると良いでしょう。

オキシストーム

ここからはナイトレート系のNOサプリです。

オキシストームは別名「レッドスピナッチエキス」とも呼ばれ、赤ほうれん草から抽出した、NO3を豊富に含有したエキス粉末です。

NOの原料とも言えるNO3が豊富であるため、体内のNO増加及び血流改善効果が期待できるでしょう。

また、NO3の特徴として、使用されなかったNO3は筋肉に貯蔵され、必要に応じてNOの引き出しが可能という点があります^出典[7]。

運動中は血流が加速するため、血管拡張のためにNOの需要が増加します。

よって、オキシストームの摂取により貯蔵されたNOを運動中に活用できると、運動パフォーマンス向上にも役立つ可能性があるんです。

実際に、11人の健康な男性にNO3を豊富に含む赤ほうれん草抽出物（約6mmolのNO3を含む）を15日間してもらったところ、プラセボに比べて収縮期血圧が低下し、高強度運動での強度の高い運動における疲労するまでの時間を約19％延ばせたことがわかりました^出典[8]。

運動パフォーマンスを上げたい人や疲労困憊までの追い込みを追求したい人には、オキシストームがぴったりですね。

サビート

続いてのナイトレート系のサプリは、ビートルートを原料とするサビート。

サビートにもNO3が豊富なため、摂取することでNO増加効果が期待できます。

実際に臨床試験では、ビートルートジュースを摂取すると2.5時間後には血中亜硝酸塩濃度が有意に増加することがわかっています^出典[9]。

サビートを摂取してNOが増加することで、血流改善はもちろん運動パフォーマンス向上も期待できるでしょう。

実際に、9人の男性サイクリストに対して500mLのビートルートジュースを補給した後、サイクリングタイムトライアルを実施した研究によると、4kmおよび16.1kmの完走タイムがそれぞれ2.8%、2.7%短縮されたことがわかりました^出典[9]。

また、心肺機能の向上や認知機能の向上効果も確認されているため、ビートルートは運動パフォーマンスや認知パフォーマンスを上げたい人にうってつけと言えるでしょう。

それだけではないのがビートルートのすごい力。

ビートルートには、血圧低下効果も確認されているんです。

寒冷刺激や精神的ストレスなどの影響で指や足などの末梢の血管がけいれんして血流が悪くなる現象を、レイノー現象と言います。

2019年にイギリスのポーツマス大学において、レイノー現象の患者にビートルートジュースを摂取してもらう研究が行われました。

その結果、ビートルートの摂取により、親指の血流が増加、前腕の血管が拡張、収縮期血圧と拡張期血圧が低下し、レイノー現象が緩和されたことが示されています^出典[10]。

ビートルートは数日の継続摂取で効果が持続するのはもちろん、摂取後1.5～2.5時間でも効果が得られる^{出典[9]出典[10]}ことがわかっているため、ここぞというときのブーストアイテムとしても活用しやすいでしょう。

アリウムSAC

ここからはフラボノイド系のNOサプリについて。

まずは、アリウムSACについて解説しましょう。

アリウムSACは、にんにく由来の「S-アリルシステイン」という成分のことを言います。

古くから、にんにくは活力を高める食材として広く食べられてきましたよね。

近年、にんにくに含まれる様々な成分の中でも、アリウムSACは抗酸化作用が強力で健康効果がずば抜けて高いことがわかってきたんです^出典[11]。

とくに血流改善の面では、アリウムSACはNOの産生能力を間接的に高めるとともに、強い抗酸化作用によりNOを保護し、血管拡張能力を高める効果が期待できます^出典[12]。

ラットを用いた研究では、 S-アリルシステイン (SAC) の摂取により酸化ストレスから引きおこる腎障害の進行を防止したり、心機能低下からの回復を促進させる効果が確認されました^{出典[13]出典[14]}。

このように、アリウムSACの抗酸化力は酸化ストレスを軽減することで、心血管疾患の予防や動脈硬化を抑制する可能性が期待されているんです^出典[15]。

血流改善及び動脈硬化性疾患を予防したい人は、広く健康効果が期待できるアリウムSACを摂取してみてはいかがでしょうか。

ブラックVキューブ

フラボノイド系のNOサプリ2つ目はブラックVキューブです。

ブラックVキューブは「クラチャイダム」という植物が原料になっています。

日本では黒ショウガやブラックジンジャーと呼ばれるショウガ科の植物のことですね。

ブラックVキューブは、NOを産生する能力がありつつ、酸化ストレスからNOを保護する抗酸化作用もあります。

とくに他のNOサプリと違う点は、ブラックVキューブはED改善効果も期待できるという点です。

ED改善薬として有名なバイアグラ（PDE5阻害剤）は、PDE5という酵素の働きを阻害することで勃起を促進しますが、ブラックVキューブも同じメカニズムをもちます。

ブラックVキューブの摂取により精巣への血流が増加するため、勃起機能の改善に特化したサプリメントと言えるでしょう^出典[16]。

実際に、軽度の勃起不全を自覚している50～68歳の健康な男性14人に30日間、毎日100mg のブラックVキューブを含むサプリメントを摂取してもらったところ、勃起に関する満足度スコアや性交満足度が大きく改善したことがわかりました^出典[17]。

また、ブラックVキューブの摂取による、短距離走行のパフォーマンスの改善や心肺機能や身体能力の向上効果も確認されています^{出典[18]出典[19]}。

勃起力の向上や性機能を高めたい人は、”天然のバイアグラ”であるブラックVキューブの摂取がおすすめですよ。

レスベラトロール

レスベラトロールは抗酸化作用を持つポリフェノールの一種。

赤ワインに含まれる成分としてご存知の人も多いかもしれませんね。

レスベラトロールには、NOの生成を促進させる効果が期待できます。

そもそも、血管の拡張に関与するNOの合成には、内皮細胞に存在するNO合成酵素（eNOS）が必要です。

レスベラトロールはeNOSの働きを活性を高めたり、NOの合成を刺激したりなど、いくつかのメカニズムによってeNOSからのNO生成を刺激することがわかっているんです^出典[20]。

また、レスベラトロールは強い抗酸化作用により、酸化ストレスを軽減してNOを保護する働きもあります^出典[21]。

実際に、レスベラトロールについての10の研究のうち9つで、レスベラトロール補給がNOの増加と血圧の低下に効果があると確認できたことが示されました^出典[22]。

赤ワインが心血管疾患の発症リスク低下に繋がる、と言われているだけありますね。

ただし、赤ワインにはアルコールが含まれており、疲労蓄積や肝臓への負担、勃起力・男性機能の低下など、アルコール過多により生じるリスクは看過できません。

アルコール摂取の害なくレスベラトロールのメリットを得るために、レスベラトロールのサプリを選択すると良いでしょう。

ω‐3系脂肪酸

ω‐3系脂肪酸と言えば、青魚に含まれる栄養素として有名ですよね。

ω‐3系脂肪酸は、eNOSを刺激し、血管内皮におけるNO合成を促進する働きがあります。

また、ω‐3系脂肪酸の抗酸化作用によりNOを保護することで、NOの生成量を増やす効果もあるんです。

実際に、2019年にイランで行われた研究では、冠動脈心疾患を伴う2型糖尿病患者90人に対し、魚油1g（EPAを250 mg、DHAを150 mg含む）を1日2回、12週間継続摂取してもらったところ、プラセボ群と比較して、血中NO濃度と総抗酸化能の有意な増加が見られたことがわかりました^出典[23]。

細胞実験においても、EPA処理した細胞のNO放出が18％、DHA処理した細胞で12％増加したことがわかっています^出典[24]。

さらに、ω‐3系脂肪酸はNOの生成量を増やすだけでなく、血圧の低下効果についても多くの研究により実証されているんです。

ω‐3系脂肪酸についての71件の研究をまとめた発表によると、EPAとDHAをあわせて2～3g/日摂取した場合、収縮期血圧が2.61mmHg、拡張期血圧が1.64～1.80mmHg低下することが明らかとなっています^出典[25]。

ω‐3系脂肪酸の降圧効果は、多くの研究をまとめた信頼性の高いレビューでの結果であるため、サプリメントに警戒心がある人も取り入れやすいのではないでしょうか。

サバやイワシ、アジなどの青魚を食べる機会が少ない人や苦手な人は、サプリで摂取してみましょう。

ザクロジュース

ザクロの果肉にはアントシアニンやプニカラギンといったポリフェノール、ビタミンCが豊富に含まれています。

ポリフェノールやビタミンCは抗酸化作用を持つため、NOの保護による血流改善効果が期待できます。

実際にザクロジュースの抗酸化力を調べた実験では、ザクロジュースがNOの分解を阻止し、NOの増加をサポートすることがわかっているんです^出典[26]。

また、合計573人を対象とした14件の研究をまとめた解析では、ザクロジュースの摂取期間が2ヶ月後に、収縮期血圧が4.59mmHg、拡張期血圧が2.94 mmHg低下したことが明らかになりました^出典[27]。

ザクロには血流改善効果が高く、また高すぎる血圧を調節する効果も高いと言えそうですね。

ただし、ザクロの摂取をやめてしまうと効果は失われる^出典[27]ため、継続的に摂取するためにも果肉ではなく手軽なジュースが良いでしょう。

S7

S7とは、抗酸化作用が強い7種類の成分を同時に摂取できるNOサプリです。

＜S7の由来素材はこちら＞

・グリーンコーヒー豆エキス
・グリーンティーエキス
・ウコンエキス
・タートチェリー
・ブルーベリー
・ブロッコリー
・ケール

S7の由来成分は、それぞれ強い抗酸化物質を含んでいます。

そのため、S7のサプリメントは強力かつ多様な抗酸化物質を手軽に摂取できるのが魅力ですね。

実際に、S7にはNOの生成を増強する効果が確認されています。

2017年に米国で行われた研究では、健康な成人8人がS7を50mg摂取したところ、NO濃度が1.7～2.3倍に増加したことがわかりました^出典[28]。

ただし、S7の具体的な血流改善に対する結果はまだ確認できていません。

しかし、S7に含まれる成分の摂取により、疲労回復、睡眠の質の向上、血圧の改善、心血管疾患のリスク低減などの効果が確認されているのは事実。

例えば、コーヒー豆に豊富に含まれているクロロゲン酸の効果を見てみましょう。

日中に働く30～54歳の16人の男性に、300mgのクロロゲン酸を含む飲料を13日間摂取してもらう研究が2018年に日本で行われました。

その結果、プラセボ群に比べてクロロゲン酸摂取群では、起床時の疲労と睡眠の質が有意に改善したことが確認されたんです^出典[29]。

また、ブロッコリーの新芽に豊富なスルフォラファンは、強い抗酸化作用により血管を保護するため、降圧や心血管疾患の発症リスク低下などの効果が期待されています^出典[30]。

このように強い抗酸化作用をもつ成分が集合するS7には、他のNOサプリと同様に様々な健康効果が期待できそうですよ。

NOサプリには血管拡張による血流の改善を通して、動脈硬化の予防や心血管疾患のリスク低下、疲労回復効率の向上、冷えや肩こりの解消、運動パフォーマンスの向上、男性機能の向上など、さまざまな健康効果が期待できます。

しかし、NOサプリはたくさんの種類があるため、自分にあった最適解のサプリを選ぶのはなかなか難しいものです。

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