大気汚染物質が血流を改善する!?一酸化窒素を増やす10の食べ物
2022年11月29日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

一酸化窒素は薬か毒か?

一酸化窒素、という単語を聞いて、多くの方は良いイメージを持たれないのではないかと思います。この一酸化窒素(NO)の発生源は一般に工場や自動車などであり、大気中で酸化することによって二酸化窒素(NO2)を生じます。大気中にはこのNOとNO2が共存する形で存在しており、これら窒素化合物(NOx)が高濃度になることで様々な大気汚染を引き起こします。

窒素化合物は高濃度に蓄積することで酸性雨の原因となるほか、紫外線との反応によりオゾンやアルデヒドを生成して光化学スモッグを発生させ、目や喉などの粘膜を刺激するなどの健康被害を引き起こすこともあります。

このような性質を持つ一酸化窒素は、生体内でも有害物質として作用するとみなされてきました。しかし1998年に「循環器系における信号伝達分子としての一酸化窒素(NO)の発見」という研究成果にノーベル賞が授与されたことをきっかけに、一酸化窒素のもたらす健康効果が大きく注目されることとなったのです。

以下では、一酸化窒素を「NO」として表記し、現在判明している健康効果について解説します。
 

奇跡の分子「NO」の魅力

体内で合成されたNOの主な役割は、血管内皮細胞において平滑筋を弛緩させることです。これによる血管拡張作用によって様々な健康効果がもたらされています。

  • 高血圧や動脈硬化の予防
    血管の弾性が上がることにより血圧調節機能が高まります。更に血小板など、いくつかの接着分子が血管内皮へ接着するのを防ぐ効果もあり、これら血圧調節効果と血管内皮への接着抑制効果により動脈硬化を予防しています出典[1]。血管の状態が良好に保たれることで、脳卒中や心筋梗塞のリスクを下げることにも繋がります。
  • 冷え性、肩こり、むくみ、疲労感の改善
    血管拡張機能により血流が改善するため、手足など末端の血流不全により生じる冷えやむくみの症状緩和に役立ちます。またスムーズな血流により酸素や栄養が全身に行きわたりやすくなるため、肩こりや疲労感の軽減にも繋がります。
  • 肌の状態改善、アンチエイジング効果
    血流改善により新陳代謝が活性化するため、皮膚のターンオーバーが促進され、若々しい肌を保つ効果が期待できます。
  • 肺高血圧症の改善(NO吸入療法)
    NOを吸入することで、血管拡張作用を肺のみに作用させるNO吸入療法が使用されています。このNO吸入療法は肺高血圧症の治療に用いられ、動悸や息切れ、労作時の呼吸困難などの改善が期待できます。
  • 運動パフォーマンスの向上
    血流改善による疲労感の軽減は筋肉においても効果を発揮します。NOの作用により筋疲労が軽減されるため、持久力を要するスポーツのパフォーマンスを向上させる効果が期待できます。
  • 認知機能の改善
    脳血流が改善することにより、集中力や記憶力が向上する効果が期待できるほか、認知機能の改善や、アルツハイマー型認知症の予防にも役立つと考えられています。
  • 男性機能の向上
    加齢に伴う性機能の低下には、体内で生成されるNOが減少していることが原因のひとつとして考えられています。特に勃起機能障害の治療においては、NOの活性化と生成促進の効果をもたらす治療薬が使われることもあるように、NOの量を保つことは男性の性機能に大きく関わっていると言えるでしょう。
     

食事で一酸化窒素が増えるメカニズム

NOはフリーラジカルと呼ばれる分子に分類され、不安定で長くその状態で留まることができず、容易に酸化・還元されてしまいます。そのためNOを安定供給するための合成機構が生体内には備わっており、これが血管機能の保護や動脈硬化の予防のために重要となると考えられています。

NOの体内における入手経路は、「酵素によるNO生成」と「NO3からの還元による生成」に分かれます出典[2]。以下ではそれぞれの仕組みについて解説します。

NOを合成する酵素を刺激する

NOに関連して、体内では一酸化窒素合成酵素(NOS)と呼ばれるものが合成されています。NOSには神経型NOS(nNOS)、誘導型NOS(iNOS)、内皮型NOS(eNOS)の3種類が存在しています。

血管の拡張に関与するNO合成は内皮細胞に存在する内皮型NOS(eNOS)によって行われます。神経型NOS(nNOS)は細胞間の情報伝達を担うためのNO産生に関わっています。誘導型NOS(iNOS)は感染による炎症反応を受けて産生されるものです。NOSそれぞれの発生機構はこのように異なりますが、どれもNO合成に関わり、心血管系の調節を行うために機能していると考えられています。

NOS系によるNO合成にはアルギニンと酸素が必要であり、この反応ではNOと同時にシトルリンが生成されています

NOS系がNOを合成するには酸素とアルギニンが必要であり、この経路では同時にシトルリンが生成されます。シトルリンは単なるNOの副産物というだけでなく、一部がアルギニンの合成に使われ、再びNO合成に役立ちます。そのためこの経路を回して効率的にNOを産生するには、アルギニンとシトルリン、両方の供給が重要であると言えます。

NOの材料となるNO3を供給する

一方で、NOSが関与しないNO合成機構も存在します。これは亜硝酸塩から還元によりNOを合成するルートであり、「亜硝酸依存性NO合成機構」と呼ばれています。

体内で合成されたNOの一部は酸化を受けて亜硝酸塩(NO₂⁻)や硝酸塩(NO₃⁻)へと変化します。これらは様々な形で還元を受けてNOを再合成します。

硝酸還元酵素(NR)反応や、キサンチン酸化還元酵素(XOR)のようなモリブデン酵素群、赤血球デオキシヘモグロビン(Deoxy-Hb)、ミトコンドリアのシトクロム酸化酵素(COX)といったものが亜硝酸塩を還元させ、NOを合成する経路に関わることが分かっています。

この合成経路においては亜硝酸塩が必要です。亜硝酸塩は野菜から摂取した硝酸塩が、口腔や消化管の常在細菌によって亜硝酸塩に変換されることで生成されます。このように、還元的経路からのNO合成もまた、食事から亜硝酸塩を供給することで高まることが判明しています。

ストレスから一酸化窒素を守る

NOは不安定な分子であり、特にスーパーオキシドという活性酸素に弱いことが分かっています。

活性酸素は通常の生命生活によっても一定量発生しますが、過度な疲労やストレス、激しい運動、不規則な食生活などにより発生量が増え、体にダメージを与える「酸化ストレス」となってしまいます。

NOがこの酸化ストレスに弱く、容易に分解されてしまうこと、更にNO自体が抗酸化作用を持つことから、NOが分解されて血管内から失われてしまうことは酸化ストレスの増大を招き、動脈硬化などのリスクを大きく上げてしまいます。

NOの分解を防ぐためには、活性酸素であるスーパーオキシドを減らす必要があります。活性酸素を無害化する「抗酸化物質」を積極的に摂取したり、スーパーオキシドの合成を抑制する成分を摂取したりすることで、食事経由でのNO保護効果が期待できるでしょう。

たとえばスーパーオキシドを合成するための酵素であるNADPHオキシダーゼは「糖転移ヘスペリジン」という物質によりその遺伝子発現が抑制されることが分かっています出典[3]。ヘスペリジンは柑橘系に含まれるポリフェノールであり、これを水に溶けやすくして体内への吸収率を上げたものがこの糖転移ヘスペリジンです。糖転移ヘスペリジンを摂取できる飲料などは機能性表示食品として販売されているため、こうした食品の摂取によってもNOの分解抑制効果、ならびに血圧調節作用が期待できるでしょう出典[4]
 

【メカニズム別】一酸化窒素を増やす10の食べ物

NOが体内で合成される流れと、容易に分解を受けやすいその不安定な性質について説明してきました。この繊細な分子であるNOを体内で十分に活躍させるためには、NOの合成を促し、分解を抑制する食品を摂取することが重要です。以下ではNOを増やすために役立つ食品について紹介します。

NO合成酵素を活性化させる4つの食べ物

一酸化窒素合成酵素(NOS)を受けてNOを合成する経路においては、アルギニンとシトルリンの供給、およびNOS系の活性化がカギとなります。これらに役立つ食べ物について4つ紹介します。

ナッツ

ナッツ類にはアミノ酸の一種であるアルギニンが豊富に含まれており、NO合成を促進する効果を持ちます。アルギニンは鶏肉など動物性食品からも摂取できますが、ナッツ類には抗酸化物質として機能するビタミンEやω-3系脂肪酸も摂取できるため、酸化ストレスの低減に役立ち、NOの分解を抑制する効果も期待できます。

アルギニンの摂取量と血清NOx(窒素酸化物)との関係を調べた研究においては、食事からのアルギニン摂取量が多いほど、血清NOx濃度も高いという結果が得られました。また、アテローム性動脈硬化のリスクがある糖尿病患者において、 1日あたり6gのアルギニンを2か月間経口補給することで、NO濃度が大幅に上昇したことも分かっています出典[5]

また、NO合成による認知機能の改善を調べた前向きコホート研究においては、週に5食分以上のナッツを摂取する習慣があるなど、長期的なナッツの総摂取量が多いほど、認知テストのスコアが高く、認知能力の向上が確認されていました出典[6]

ナッツ類を習慣的に摂取する場合には、無塩のものを選ぶようにすると血圧の管理により効果的です。クルミやカシューナッツ、アーモンドなど、食べやすいものを選び、1日に20~30g程度を目安に食べることをオススメします。ナッツ類に含まれる脂質は良質なものですが、食べ過ぎると体重増加の原因となるため、少量を長期間にわたり続けるようにしましょう。

スイカ

シトルリンもまたアミノ酸の一種です。ウリ科の植物、メロンやキュウリ、冬瓜などに含有量が多いことが分かっており、特にスイカにより効率的に摂取することができます。

アルギニンの体内における利用能(バイオアベイラビリティ)は加齢と共に減少することから、シトルリンの摂取によりNO合成経路をサポートできるのではないかとの期待のもと、研究が進められてきました。

シトルリンの補給とNO合成との関係を調べた研究においては、シトルリンの補給直後からNOの合成を促進させたことが明らかになっています。しかし一時的なシトルリン補給だけでは高齢者の血管内皮機能障害が改善されなかったことから、高齢者の血管の状態を改善させるためには、シトルリンまたはアルギニンの継続的な補給が必要であると考えられています出典[7]

スイカに含まれるシトルリンですが、果実部分はもちろんのこと、特に皮に近い薄緑の部分から豊富に摂取できることが分かっています。スイカを食べる際には赤い果実部分だけでなく、皮付近へ意識を向けて食べてみることをオススメします。

ダークチョコレート

ダークチョコレートに含まれるカカオポリフェノールは強い抗酸化作用を持ちます。血管の状態を柔らかく保つために役立つほか、酸化ストレスによるNOの分解も防ぐことができるため、NOの保護作用が期待できるでしょう。

加えてダークチョコレートには、エピカテキンと呼ばれるカテキンの一種が含まれています。エピカテキンの摂取と血管内皮の柔軟性との関連について調べた研究によると、水にエピカテキンを溶解したものを経口摂取した群では、水のみの摂取群と比較して、2時間後に血管の拡張具合が増加し、血管の柔軟性が増したことが確認できています。このことからエピカテキンが血管内皮細胞におけるNO合成を促進する効果をもたらすとして、その有効性に期待が寄せられています出典[8]

NOの増加を期待してチョコレートを摂取する場合には、カカオポリフェノールが豊富なダークチョコレートを食べるようにしましょう。ミルクチョコレートの摂取では十分なカカオポリフェノールを摂取できないばかりか、糖質や脂質の過剰摂取により血管の状態を損ねて血流を悪化させることになりかねません。またダークチョコレートであっても、摂りすぎは余分なエネルギー摂取を招くため、1日量は30gほどを目安にするとよいでしょう。

サバ

サバに含まれるEPADHAはω-3系脂肪酸に該当し、抗酸化物質として機能するためNOを保護する効果が期待できます。

加えてDHAやEPAには、NOS系であるeNOSを刺激し、血管内皮におけるNO合成を促進する効果があります。かねてよりω-3系脂肪酸の摂取により心血管疾患のリスクが低下することは知られていましたが、そのリスク低下の要因としてNOによる血管内皮細胞の弛緩、および血圧の低下が関わっていることが明らかとなりました出典[9]

心血管疾患に対するω-3系脂肪酸の有益な効果は、抗炎症作用、血栓形成予防、高血圧予防など多岐にわたりますが、その効果の中枢としてこの血管拡張作用による血流改善があると考えられます。血流改善は心血管疾患のみならず、認知機能の改善や運動パフォーマンスの向上、性機能の改善などにも関わるため、血流改善のためにはたんぱく質食品としてサバやイワシ、サケなどの魚類を積極的に食べるようにするとよいでしょう。

 

NO3を供給する2つの食べ物

次に、食品中の硝酸塩が亜硝酸塩に変換され、この亜硝酸塩がNOを合成する経路に注目します。食事性硝酸塩の摂取により血中の亜硝酸塩濃度は増加し、血圧の低下や血管内皮障害の防止に役立つことが分かっており、意識して硝酸塩が豊富な食品を摂取することには、血圧低下、血流改善などの点において意義があると考えられます。以下では硝酸塩を含む食品や、このNO合成経路を活性化するような食品について2つ紹介します。

ビートルート

「ビーツ」の名前で売られているビートルート(赤カブ)ですが、硝酸塩が豊富であるという特徴があり、NO合成経路の活性化に役立つ可能性があります。

ビートルートをジュースの形で摂取した場合の血中硝酸塩や血中亜硝酸塩の変化、および運動パフォーマンスの変化について調べた研究では、70mlのビートルートジュースを摂取した群は対照群と比較して、血中の硝酸塩や亜硝酸塩の濃度が有意に増加していました。サイクリングの運動パフォーマンスも増大したという結果も得られたことから、ビートルートジュースによる食事性硝酸塩の補給は、血流を改善し、特に低酸素状態での運動パフォーマンスの増大に貢献する可能性があるとされています出典[10]

野菜に含まれる硝酸塩は、流水に晒したり茹でたりすることでその量が大きく減ってしまいます。ビートルートは加熱調理で食べることの多い食材ですが、サラダやジュースなど生でも摂取することができるため、硝酸塩の供給源として活用したい場合には火を通さない形で食べるのが効果的でしょう。

ほうれん草

ほうれん草にも硝酸塩は豊富に含まれています。日本人にとって身近な野菜であるため、日常的に硝酸塩を補給したい場合はほうれん草を使った料理が活躍してくれるでしょう。

ほうれん草を始めとする緑の葉物野菜に含まれる硝酸塩を定期的に摂取することで、血中の亜硝酸塩およびNOの濃度が上昇し、体内で合成されるNOの量を補うのに役立つことが分かっています

なお、前述したビートルートは生でも食べられる食品ですが、ほうれん草は火を通して食べる必要があります。硝酸塩を効率よく摂取したい、という目的で生のほうれん草を大量に食べ続けてしまうと、ほうれん草に多く含まれるシュウ酸ナトリウムも同時に大量摂取してしまうことになります。

シュウ酸ナトリウムは尿路でカルシウムと結合し、尿路結石の原因となる物質です。そのためほうれん草は「サラダ用」として生で食べられるもの以外は、茹でる、炒めるなどの調理で食べるようにしましょう。

硝酸塩の摂取は危険か?

硝酸塩の有害性について注意すべきとの声を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。亜硝酸塩や硝酸塩は燻製ハムなどの加工肉にも含まれており、これらの摂取と発がんとの間に僅かながら関連性があるという指摘が過去にはありました。

しかしこれら亜硝酸塩や硝酸塩、加工肉の発がんリスクに関するデータは不十分であり、断定的ではありません。そのため、亜硝酸塩と硝酸塩を食事から摂取することによる健康効果の方がはるかに重要である、という見方が現在では一般的になされています出典[11]。そのため発がんリスクを避けるためとしてビーツやほうれん草などの野菜類を控える必要はないと考えられています。

ただしこうした、特定の健康効果を得るためとして有効とされる食品のみを大量摂取することで、成分の偏りや思わぬ栄養素の不足・過剰を招くリスクも上がります。ほうれん草の摂取による尿路結石のような、健康上の問題を新しく誘発することにもなりかねません。

この記事では「豊富に含む食品」として紹介していますが、これらのみを毎日大量に摂取する、というやり方は避けるべきです。ビートルートやほうれん草の他にも、小松菜やキャベツなどの葉物野菜、しいたけやえのきだけなどのキノコ類からも硝酸塩は摂取できます。ほうれん草に偏らず、こうした葉物野菜やキノコ類を満遍なく摂取することで、安全に体内のNO合成量を増やすことができるでしょう。

 

ストレスから一酸化窒素を守る5つの食べ物

NOは活性酸素である「スーパーオキシド」により容易に分解されるように、酸化ストレスに弱い分子であることが分かっています。以下ではこれら活性酸素を無害化し酸化ストレスを低減することで、NOの保護に役立つような食品について紹介します。

ザクロジュース

果物に豊富なビタミンCやポリフェノールは抗酸化作用を持つことで知られ、NOの保護に役立つと考えられます。特にザクロにはアントシアニンエラグ酸といった強力な抗酸化作用を持つポリフェノール類が豊富であり、NOの分解を抑制する働きがあると考えられています。

ザクロジュースとNOとの関係を調べた研究において、成分分析によりザクロジュースの抗酸化作用はスーパーオキシドへと強力に作用し、NOの分解を阻止するように働いていることが明らかになりました出典[12]

ザクロ果実はオレンジやリンゴのような手軽さで入手できる果物ではないため、継続的に摂取したい場合にはジュースの利用が効率的です。砂糖の添加されていない100%のものを選ぶことで、十分なNOの保護効果が期待できるでしょう。

ブルーベリー

目への健康効果をもたらすことでよく知られるブルーベリーですが、その本質はザクロと同じく、強力な抗酸化作用を持つポリフェノールであるアントシアニンにあります。

目は紫外線や酸素に常に晒されているため酸化ストレスを受けやすいため、抗酸化作用を持つアントシアニンの摂取により目の粘膜や血管への保護効果が期待できるのです。同様に、このアントシアニンがNOの保護に役立ち、血管内皮機能を改善する効果を発揮するとして注目が集まっています。

ブルーベリーの摂取と血管内皮機能との関連を調べた研究によると、ブルーベリー75g6週間にわたる摂取により、NOの活性、血管内皮機能、脂質状態が改善したという結果が得られています出典[13]

ブルーベリーに含まれるアントシアニンを効率的に摂取したい場合には、冷凍ブルーベリーの利用をオススメします。ブルーベリーの果実を冷凍することで細胞が壊れ、中のアントシアニンをより吸収しやすい状態で食べることができます。冷凍のまま間食として食べる、ヨーグルトに混ぜる、などの工夫で長く続けてみましょう。

アセロラジュース

アセロラという果物はビタミンCを非常に豊富に含んでいます。ビタミンCを効率よく摂取するための果物として適しており、100%アセロラジュースの形で手軽に摂取が可能です。

ビタミンCはそれ自体が抗酸化物質として機能するため、NOの分解を抑制する方向に働きますが、より大きな特徴として、「テトラヒドロビオプテリン(BH4)」の酸化を防止する、あるいは還元する効果を持つことが挙げられます。

テトラヒドロビオプテリン(BH4)は血管内皮のNOS系であるeNOSの活性化を助ける分子ですが、不安定であり容易に酸化されて不活性型のジヒドロビオプテリン(BH2)になってしまいます。ビタミンCはこの変化を防ぐ、あるいは還元によりテトラヒドロビオプテリン(BH4)に戻す作用を持つことが分かっており、NO合成経路を強化する形で働くとされています出典[14]

ビタミンCは水溶性であり、過剰に摂取した分は尿中に排泄されます。過剰症を起こすリスクが低いものの、体内に蓄えておけないため継続的な摂取が必要です。そのためビタミンCによるNO保護作用やNO合成経路の強化作用を期待したい場合には、コップ1杯程度のアセロラジュースを毎日摂取することをオススメします。

ワイン

赤ワインにはブドウ由来のポリフェノールが豊富であることはよく知られている通りです。ポリフェノールの持つ抗酸化作用が、動脈硬化や心血管疾患の予防に役立つとして長らく期待が寄せられてきました。NOの保護効果も期待できるため、飲酒の際には赤ワインを意識して選ぶようにするとよいでしょう。

また、このポリフェノールが持つもう一つの効果として「血管内皮においてNOS系であるeNOSの発現と活性を増大させる」という働きが注目されています。

ヒト内皮細胞におけるeNOSの活性に対する赤ワインの効果を調べた研究において、赤ワインで内皮細胞を培養すると、eNOSを発現させるために必要なmRNAとたんぱく質の発現が増大しました。またNOの活性も、対照群と比較して3倍に増加していたことが分かっています出典[15]

当然のことながら赤ワインは酒類であり、毎日多量に飲むと様々な健康障害を引き起こします。休肝日を設けながら、グラスに軽く2杯を1日に飲む程度で楽しむようにすべきでしょう。つまみとしてダークチョコレートを選ぶことで更なるNOの保護効果が期待できます。
 

一酸化窒素を増やすために気を付けるべきこと

このように、NOを増やすために役立つ食品が幾つか判明していますが、これらによる健康効果をより確実に得るために注意すべき点があります。以下ではこれまで話してきた食品についての留意点について説明します。

アルギニン食材とシトルリン食材はバランスよく

一酸化窒素合成酵素(NOS)によりアルギニンと水からNOとシトルリンを生成する経路においては、アルギニンとシトルリン、両方の補給が重要となります。

アルギニンがNO合成に必要であることは明らかですが、この反応の結果生成されるシトルリンも、体内において一部がアルギニンを合成する材料として使われています。シトルリンが潤沢にあることでアルギニンの不足を防ぐことができるため、どちらかのみの補給では十分なNO合成促進効果を発揮できません。

アルギニンとシトルリンの補給の組み合わせとその効果について調べた研究においては、アルギニン2gもしくはシトルリン2gの補給よりも、アルギニン1gとシトルリン1gを組み合わせた補給の方が、血中のアルギニン濃度が効率的に上昇することが判明しています出典[16]

サプリメントを使用しない限り、アルギニンとシトルリンの供給量を一致させることはほぼ不可能ではありますが、食品への意識として、アルギニンのみ、シトルリンのみ、といった選び方をしないよう心掛けてみてください。アルギニンを含むナッツ類や動物性食品、シトルリンを含むウリ科の野菜や果物、どちらにも同等の重要性を向けて食品を選んでみましょう。

 

葉物野菜と抗酸化食材は合わせて摂る

硝酸塩を含む食品として葉物野菜や根菜類を紹介してきましたが、これらは摂取した硝酸塩を口腔内や消化管の細菌により亜硝酸塩へと変換し、NOを合成する経路に使われます。この還元的経路の活性化を期待して葉物野菜などを摂取する場合に、ビタミンCを多く含む果物や、ポリフェノールを多く含む野菜などを合わせることが効果的に働く場合があります。

柑橘類に豊富なビタミンC、色の濃い野菜・果物などに豊富なポリフェノール類は、胃において亜硝酸塩と反応し、NOへと還元させる働きを持つことが分かっています出典[17]。硝酸塩から変換された亜硝酸塩を効率よくNOへ変換するために、ビタミンCやポリフェノールを豊富に含む食品は意識して摂取したいところです。

 

マウスウォッシュを多用しない

葉物野菜や根菜類に含まれる硝酸塩は、口腔内や消化管に存在する細菌によって亜硝酸塩へ変換されます。そのため口臭・虫歯・歯周病防止の目的で殺菌効果のあるマウスウォッシュを日常的に使用していると、口腔内の細菌バランスが崩れ、硝酸塩から亜硝酸塩への変換が難しくなる可能性があります。

マウスウォッシュの使用には1日2~3回までと目安として表示されているものが多いようですが、仕事の休憩の度にマウスウォッシュを使い、1日に何度も爽快感を得ているような場合には注意が必要であるかもしれません。NO合成を円滑に行うためにも、適切な回数、適切な量での使用を心がけるようにしましょう。
 

まとめ

血管拡張作用、血流改善効果を主として、様々な健康効果をもたらすNOを効率よく合成するためには、アルギニンやシトルリン、硝酸塩や抗酸化物質など、あらゆる成分の助けを借りることが重要です。

これらの有効な食品を毎日継続して摂取することはもちろん効果的ですが、一つの食品のみに偏って摂取しすぎることのないように注意する必要があります。ビタミンCやポリフェノールによってNO合成が活性化されるように、ほうれん草を生で食べると尿路結石のリスクが増大するように、まだ判明していない成分同士の相乗効果、あるいは食品の有害性が、私たちの食べる食品には隠れている可能性があります。有効とされる食品を満遍なく摂取することで、安全にNOの健康効果を得るようにしましょう。

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