監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
増量期の重要ポイントは「体脂肪合成を抑える」こと!
増量期においては体を大きくして筋肉量を増やす必要があります。食事管理によりバルクアップを効率化できれば、立派な筋肉づくりにも役立つでしょう。
しかし増量期においては、筋肉とともに体脂肪も増加することが大きな課題となります。コンテスト直前の減量期における負担を減らすため、体脂肪の増加はできる限り抑えたいものですよね。
一般的に行われている2種類のバルクアップについて、特徴を確認してみましょう。
ダーティバルクアップは筋肉も体脂肪も増やす
ダーティバルクアップとは、とにかくたくさん食べて体全体を大きくするというものです。カロリーや食事の制限を設けず、量を増やすことで筋肉の増加を狙います。
制限なく食べて余剰カロリーを多めに摂れば、確かに筋肉量を速やかに増やせます。しかし同時に体脂肪も多めに増加してしまいます。
減量期においては筋肉量を維持したまま体脂肪をカットしなければならず、このときに体脂肪が多めであると減量期の難易度が上がってしまいます。
折角増加させた筋肉を、減量期に体脂肪とともに落とすことにもなりかねないため、無計画な体重の増加は好ましくありません。
リーンバルクアップで体脂肪の増加を最小限に
ダーティバルクアップとは異なり、リーンバルクアップでは食べる量を増やしながらも、カロリーや栄養素の摂取量を調節する必要があります。
ダーティバルクアップよりも難易度が高い方法ではあり、食事量もダーティバルクアップよりは少なくなるため、筋肉量の増加はやや緩やかです。
しかし体脂肪の増加を効果的に抑えられるため、減量期に体を引き締めやすくなるというメリットがあります。
負担が少なく筋肉量を維持しやすい体作りのため、食事管理を伴うリーンバルクアップが増量期には適していると言えるでしょう。
増量期の食事の基本について解説
食事管理を伴うリーンバルクアップにおいては、摂取カロリーや栄養素のバランスの調整が欠かせません。余分な脂肪を付けないようにするための食事の基本を以下に解説しましょう。
カロリーバランス
体脂肪の合成を抑えたいとはいえ、やはり筋肉量を増やす以上、通常よりも多くのカロリーが必要です。トレーニングに耐えうるエネルギーと、筋肉の合成に使用されるたんぱく質の不足を起こさないよう、十分量の食事が求められるでしょう。
摂取カロリーと体重増加のペースについて、次の2点を目安としましょう。
- 消費カロリー + 10~20%の範囲でカロリー摂取
- 体重の増加ペースはは約0.25~0.5kg/週(約1~2kg/月)
増量期に摂取すべき量の目安は「やや高カロリー」です。普段の5割増しで食べるような食生活は体脂肪増加のリスクを高めるため好ましくありません。
たとえば1食に200g食べていた白米を225g~250gに増やせば、10~20%のカロリー増加に相当します。食パンであれば6枚切り1枚を5枚切り1枚に増やす程度の増加と考えましょう。
ボディビルダーにおけるオフシーズン(増量期)では、消費カロリー+10~20%の食事を続け、1週間あたり0.25~0.5kgのペースで体重を増やすことが推奨されています出典[1]。
ただし上級者のボディビルダーの場合は、よりカロリーの増量を抑える必要があります。体重増加のペースを1か月あたり1kg程度に留めることで、不必要な体脂肪の増加を抑えやすくなります。
その日の水分摂取量や発汗量、尿量や便の量などで体重は日々前後します。毎日の数値の変動に一喜一憂する必要はありませんが、体重測定は欠かさず行いましょう。
体重の推移を確認する習慣が身に付けば、増加が多すぎたり少なすぎたりした場合のカロリー調整を素早く行えます。効率的なボディメイクのためにも、日々の体重を記録し、1週間単位で変動をチェックするようにしましょう。
PFCバランス
体脂肪の増加を抑えながら体を大きくするためには、カロリー調整に加えて栄養素のバランスを整えることも重要です。
私たちが必要とする栄養素のうち、エネルギーの原料となるたんぱく質、脂質、炭水化物を「エネルギー産生栄養素」と呼びます。
エネルギー産生栄養素の比率を調節することで、筋肉の合成効率を高めたり、体脂肪の合成を抑えたりする効果が期待できるでしょう。
増量期におけるたんぱく質:脂質:炭水化物のバランスは、全体を100とした場合、30:20~30:40~50が理想と考えられています。
それぞれの栄養素の必要性や調整の注意点について、詳しく解説しましょう。
たんぱく質
たんぱく質は1gあたり4kcalのエネルギーを持つ栄養素であり、動物性食品や豆類から効率よく摂取できます。
たんぱく質は筋肉の合成に欠かせないため、筋肉を増やしたい増量期においては積極的に摂る必要があるでしょう。
ボディビルダーに求められるたんぱく質量は1日あたり1.6g/kg以上とされています出典[1]。もう少し増やして2.2g/kgの摂取を続けると、除脂肪体重を効率よく増加できます。
また、食事量が増え過ぎて必要以上の体重増加を起こしやすい方は、さらに多くのたんぱく質の摂取が有効である場合があります。
2015年にアメリカから発表された論文においては、3.4g/kgのたんぱく質を摂取した場合、総カロリー摂取量も増加したものの、体脂肪はより大きく減少したと報告されています出典[2]。
一方で、たんぱく質が豊富な食品は満腹感を高めやすい性質があります。たんぱく質の摂取により、コレシストキニン(CKK)という消化管ホルモンが分泌され、満腹感が得られやすくなることが分かっています。
筋肉量の増加のためとたんぱく質の摂取量を増やしすぎると、高すぎる満腹感から必要なカロリーを摂取できない可能性が出てきます。たんぱく質は多ければ多いほどよいという考えではなく、脂質や炭水化物の摂取に影響が出ない範囲で調整すべきでしょう。
<たんぱく質のポイント>
- 1gあたり4kcal
- 筋肉の合成材料として欠かせない
- 1.6~2.2g/kg/日の範囲で調節
- 食欲のコントロールが難しい場合にはもう少し増やす
- 摂りすぎによる満腹感に注意
脂質
脂質は1gあたり9kcalと、最もエネルギー生成効率のよい栄養素です。効率よくカロリー摂取を行えるほか、テストステロンなど運動機能や筋肉の合成効率の上昇につながるホルモンの生成にも役立ちます。
しかし当然ながら、過剰な摂取はカロリーの摂りすぎにつながります。また肉類や乳製品に多い飽和脂肪酸は体脂肪合成のリスクが高いため、より摂取に注意する必要があるでしょう。
増量期においては、全体カロリーの20~30%を脂質から摂取することが推奨されています。この量は一般に0.5~1.5g/kgの範囲に収まります出典[1]。体重70kgの方であれば、1日の摂取量は35~105g、カロリーにして315~945kcalの範囲となります。
脂質はテストステロンの材料として機能するため、同じカロリーを摂取する場合、脂質を抑えるのではなく炭水化物を抑えた「ケトジェニック」が有効ではと考えるかもしれません。
しかし2018年にスペインで行われた研究では、高脂質低炭水化物のケトジェニック食とトレーニングを組み合わせても、筋肉量の増加は確認できませんでした出典[3]。
より厳格な食事管理が求められるケトジェニックと、バルクアップの相性はあまりよくないようです。余分な体重増加を避けるため、脂質は適量の摂取に留めることが重要です。さらに脂身の多い肉類や生クリームなど、飽和脂肪酸の多い食品を控えれば体脂肪の合成をより抑えられるでしょう。
<脂質のポイント>
- 1gあたり9kcal、摂りすぎ注意
- テストステロンなどのホルモン合成に必須
- 全体の20~30%、0.5~1.5g/kg/日を目安に
- 脂身の多い肉や生クリームなどに多い飽和脂肪酸に注意
炭水化物
炭水化物は1gあたり4kcalのエネルギーを持ちます。速やかに吸収されてエネルギーとなるため、トレーニング前後の栄養補給には欠かせません。
筋肉を鍛えて大きくするためには、トレーニングのパフォーマンスを高める必要があります。炭水化物は筋グリコーゲンの材料として欠かせないため、増量期には減らすことなく十分量摂取すべきでしょう。
炭水化物の摂取量は、全体のカロリーをたんぱく質と脂質に割り当てた残りに相当します。一般的には3~5g/kg以上の範囲での摂取が合理的と考えられています出典[1]。体重70㎏の方であれば210g~350g、カロリーに換算すると840~1400kcalが目安量となるでしょう。
運動パフォーマンスの低下は、炭水化物を摂りすぎた場合よりも不足した場合に顕著に現れます。
たとえば1997年に発表されたアメリカの論文では、全体カロリーに対する炭水化物の比率を70%まで押し上げても、炭水化物50%の食事との間に運動パフォーマンスの差は生じなかったと報告されています出典[4]。
しかし、炭水化物の比率を25%まで落とした2013年のブラジルの研究では、運動パフォーマンスが著しく低下していたのです出典[5]。
このように、極端な炭水化物の制限はバルクアップの効率を大きく落とすため、危険です。たんぱく質や脂質の摂取量を多く設定するあまり、炭水化物の比率が減りすぎないよう注意すべきでしょう。
<炭水化物のポイント>
- 1gあたり4kcal
- 3~5g/kg/日を目安に
- 炭水化物の比率が落ちすぎないよう、たんぱく質や脂質量を調整
食事回数
増量期においては2つの観点から、食事回数を増やすことが効果的に働きます。
まず、食事回数を増やすことで摂取カロリーをより無理なく増やしやすくなります。
2022年にアメリカで発表された論文では、1日6食以上食べるグループは1日3食のグループよりも総エネルギー摂取量が76~330kcalほど増加したと述べられています出典[6]。
増量期において思うように食事量を増やせないと悩んでいる場合には、3食に加えて運動前後の補食や間食を取り入れ、1日6食以上の摂取を心掛けましょう。
また、食事回数を増やすことは、筋肉の分解を防ぎ適切に筋肉を増やすためにも役立ちます。除脂肪体重の増加に有効とされる以下の内容を参考に、食事のタイミングや内容を調整してみましょう出典[1]。
- 補食のタイミングはトレーニング前後と就寝前
- どの食事や補食においてもたんぱく質を摂取できるよう分配する
とくに就寝前のたんぱく質摂取は、長時間食事を取れない睡眠中の筋分解を防ぐため有効に働きます。適切な量の補食を適切に取り入れて、バルクアップの効率を高めましょう。
増量期のおすすめ食材5選
増量期においては、良質な高たんぱく質食品や、消化や吸収のよい糖質食品などを意識して摂取する必要があります。今回は増量期の食事へ積極的に取り入れたいおすすめ食材を5つ紹介しましょう。
増量期の食事メニューを組む際、ぜひ参考にしてみましょう。
1.牛ヒレ肉
肉類は筋肉を合成するための必須アミノ酸をバランスよく含んでいるため、増量期には積極的に摂取したい食品です。
高たんぱく低脂質な鶏肉や、ビタミンB1が豊富であり疲労回復に役立つ豚肉も優秀な食品ですが、今回はトレーニングとの相性を考えて牛肉を紹介しましょう。
牛肉に特に豊富な物質として、クレアチンとL-カルニチンが挙げられます。
クレアチンはエネルギーとなるATPの産生効率を上げる効果があります。L-カルニチンは筋肉における脂質代謝の効率を高めるように機能し、体脂肪合成を抑える効果が期待できます。
複数の研究を調べた2022年発表の中国医科大学における論文では、トレーニングとクレアチン補給の組み合わせで、トレーニングの成績が向上し、筋力と除脂肪体重を増やす効果が期待できると判明しています出典[7]。
また、骨格筋に全体の9割が貯蔵されているカルニチンは、筋肉の細胞において、長鎖脂肪酸をエネルギー生成の場であるミトコンドリアへ運ぶ働きがあります。ミトコンドリア内のL-カルニチンが多いほど、より多くの脂肪酸をエネルギーに変換できることが判明しています出典[8]。
このように、筋肉を増やしつつ体脂肪の合成を抑えたい増量期において、クレアチンやL-カルニチンを含む牛肉は非常に有効です。しかしサーロインやバラ肉などは脂質が多すぎるため増量期においても避けるべきです。
ヒレ肉は低脂質でありながら肉質が柔らかく、食べやすい部位です。ステーキにすれば簡単な調理で食べられるほか、外出先の食事にも取り入れやすいでしょう。
2.ホタテ
魚介類もまた、筋肉の合成効率を高めるための良質なたんぱく質を豊富に含んでいます。中でも貝類は低脂質な食品であり、さまざまなうま味成分を含むため食事全体の満足感を高めるためにも役立つでしょう。
ホタテ100gにはたんぱく質が13.5g含まれています。一方の脂質含有量は100gあたり0.9g。圧倒的な低脂質高たんぱくの食品であり、効率的にたんぱく質を摂取したい場合におすすめです。
【食品100gあたりの栄養素(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年版より)出典[9]】
エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | |
ほたてがい | 66kcal | 13.5g | 0.9g |
ほたてがい(貝柱) | 82kcal | 16.9g | 0.3g |
あさり | 29kcal | 5.7g | 0.7g |
しじみ | 54kcal | 7.5g | 1.4g |
かき(養殖) | 58kcal | 6.9g | 2.2g |
またホタテからは、疲労回復に役立つタウリンや、テストステロンの合成に欠かせない亜鉛を効率的に摂取できます。亜鉛不足は体内のテストステロン量を減らし、筋肉の合成効率を下げる可能性があります。
2000年に西ワシントン大学から発表された論文では、サッカー選手が30mg/日の亜鉛サプリメントを8週間継続して摂取したところ、血中のテストステロンおよび成長ホルモンの数値が増加し、筋肉量も11.6%上昇したと報告されています出典[10]。
亜鉛不足の解消はテストステロンの合成効率を高め、筋肉量の増加にも役立つと考えられています。
ホタテは筋肉の合成効率を上げるためにも、豊富なうま味成分で食事全体の満足感を高めるためにも役立つ食品です。魚介類のレシピに取り入れることで、バルクアップがより捗るでしょう。
3.餅
トレーニング前の食事には、血糖値を急激に上げてグリコーゲン貯蔵の効率を高められる糖質食品が有効です。また、脂質や食物繊維のような、消化や吸収を遅くする栄養素が少ないことも重要なポイントです。
餅は糖質含有量が高く、脂質や食物繊維をほとんど含んでいません。また餅は「アミロペクチン」という、より素早く分解されやすい種類のでんぷんで構成されているため、白米よりも素早く血糖値を上げられます。
血糖値を急激に上げる食品は、筋肉や脂肪組織にエネルギーを蓄えるよう働くホルモン「インスリン」の分泌量を増やします。インスリンを効率的に分泌できれば、その分筋グリコーゲンの貯蔵効率も上がるでしょう。
血糖値を急激に上げる食品は体脂肪合成のリスクも高い食品ではありますが、トレーニング前の筋グリコーゲン貯蔵には最適です。トレーニングの効率を高めるため、餅を積極的に取り入れてみましょう。
4.ヨーグルト
乳製品もまた、肉類や魚介類と同様に良質なたんぱく質を含む食品です。加えて乳製品からは必須アミノ酸のうち、ロイシンを多めに摂取できます。
ロイシンは筋たんぱく質同化作用が強いアミノ酸です。十分な量のロイシンを摂取することでたんぱく質の合成が促され、より効率的に筋肉量を増やせるでしょう。
牛乳やヨーグルトにはある程度の脂質が含まれていますが、体脂肪を増やすリスクは高くありません。
2011年にアメリカで行われた研究においては、4年間の食生活と体重推移の観察の結果、牛乳の摂取量と体重の増加量には相関が見られなかったと報告されています出典[11]。
ただしチーズやバター、生クリームなどの乳製品は脂質が多いため、摂りすぎは禁物です。特にバターや生クリームをたっぷり用いた洋菓子の摂取が習慣化すると、カロリーオーバーの原因となり体脂肪増加のリスクを高めるため危険です。
こってりとした味わいの洋菓子は、ごく限られたときにのみ食べる特別なものと認識しておきましょう。
また、ヨーグルトは発酵食品であり、善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌を摂取できる点においても優秀です。
ボディメイク中はたんぱく質を意識して摂取しますが、たんぱく質は腸内で悪玉菌のエサになり悪玉菌を増やすように働きます。悪玉菌が増えて腸内環境が乱れると、便秘やストレスを始めとした不調が生じやすくなり、パフォーマンスの低下にも繋がりかねません。
ヨーグルトから善玉菌を腸内に取り入れると、増殖した善玉菌が悪玉菌の活動や増殖を抑えるように働きます。ボディメイク中は高たんぱく質食により腸内で悪玉菌が増えやすいため、拮抗する善玉菌の摂取により腸内環境を良好に保ちましょう。
5.バナナ
果物からは適度な食物繊維や糖質、様々な機能性を持つポリフェノールなどを摂取できます。繊維が取り除かれたジュースの多飲は厳禁ですが、生の果物を適度に取り入れることは体調管理やパフォーマンスの維持にも役立つでしょう。
特にバナナは食物繊維やオリゴ糖、レジスタントスターチ、ビタミン類などを含むことに加え、トレーニングと相性のよい糖組成をしていることが判明しています。
一般的な果物の糖質はブドウ糖(グルコース)や果糖(フルクトース)といった、吸収の早い小さな分子で構成されています。一方、バナナはでんぷんやショ糖(スクロース)など、多糖類や二糖類と呼ばれる、消化に時間がかかる分子の大きな糖も含んでいるのです出典[12]。
小さな分子による速やかなエネルギー補給と、大きな分子による時間をかけたエネルギー補給との両方が行えるバナナは、長時間のトレーニングにおけるエネルギー切れの防止に役立つでしょう。
バナナの持久性は、機能性成分「ブロメライン」にも期待できます。ブロメラインは抗酸化作用を持つため、筋肉の炎症を抑え、疲労や筋肉の損傷を軽減するように働きます。加えてブロメラインには長時間の運動によるテストステロン減少を防ぐ効果もあることが確認されています。
2016年にオーストラリアのタスマニア大学から発表された論文では、運動前のブロメライン補給により、運動後の主観的な疲労度合いの改善が確認され、またテストステロン濃度も低下せず維持できていたと報告されています出典[13]。
筋肉の合成効率を高めるために重要なテストステロンの減少を防ぐことは、ボディメイクにおいて非常に重要です。持久力トレーニングや筋合成の効率を高めるため、補食としてぜひバナナを取り入れてみましょう。
合わせて読みたい:効果大!筋トレ効率を高めるテストステロンサプリの摂り方
増量期のメニュー例
それではここまでのカロリー量やPFCバランス、おすすめの食品を踏まえて、増量期のメニュー例を紹介しましょう。
1日にどれだけのカロリーが必要であるかは、消費エネルギーにより異なりますが、今回は以下の設定での紹介とします。
- 1日3200kcalの摂取(消費エネルギー2800kcalと想定し、+15%のカロリーアップをねらう)
- 1食あたり800kcal前後(補食を2~3回挟むことを想定)
- PFCバランスは30:20~30:40~50
朝食
<和食の場合>
- しらす玄米ご飯
- 焼き鮭
- 納豆
- アスパラガスときのこのバター炒め
- 果物
【主な食材のカロリーと栄養素(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)出典[9]】
重量 (g) | カロリー (kcal) | たんぱく質 (g) | 脂質 (g) | 炭水化物 (g) | |
玄米 | 200 | 304 | 5.6 | 2.0 | 71.4 |
しらす | 20 | 37 | 8.1 | 0.7 | 0.1 |
しろさけ | 120 | 148.8 | 26.8 | 4.9 | 0.1 |
納豆 | 40 | 74 | 6.6 | 4.0 | 4.8 |
野菜 | 100 | (40) | (2) | (0.5) | (10) |
バター | 5 | 35 | 0.2 | 4 | 0.1 |
バナナ | 100 | 93 | 1.1 | 0.2 | 22.5 |
(複数の食材があるものは概算として()で表記)
主な食材の総カロリー:732kcal
PFC = 27:20:53
※細かな調味料が加わるため、実際の摂取カロリーは主な食材の総カロリー + 30~50kcalと考えられます。
しらすは一般に売られている半乾燥品で100gあたりたんぱく質40.5g、脂質3.5gと、非常に高たんぱくかつ低脂質です。ご飯にかけたり和え物に混ぜたりして手軽にたんぱく質強化をはかりましょう。
焼き鮭1切れあたり80g程度ですが、たんぱく質確保のためには1.5~2切れ程度摂りたいところです。用意が難しい場合には1切れ+プロテインで代用してもよいでしょう。
たんぱく質量を増やすため、1食につき高たんぱく質食品を含む献立を最低2品用意する必要があります。たんぱく質が少ないと感じた場合には、献立が炭水化物中心のものになっていないか確認してみましょう。
<洋食の場合>
- トースト6枚切り2枚
- スクランブルエッグ
- 果物入りヨーグルト
- ミネストローネ
【主な食材のカロリーと栄養素(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)出典[9]】
重量 (g) | カロリー (kcal) | たんぱく質 (g) | 脂質 (g) | 炭水化物 (g) | |
食パン | 150 | 372 | 13.4 | 6.1 | 69.6 |
鶏卵 | 100 | 142 | 12.2 | 10.2 | 0.4 |
ヨーグルト | 100 | 56 | 3.6 | 3.0 | 4.9 |
キウイ | 100 | 51 | 1.0 | 0.2 | 13.4 |
野菜 | 100 | (50) | (2) | (0.5) | (10) |
ウインナー | 40 | 128 | 4.6 | 12.2 | 1.3 |
(複数の食材があるものは概算として()で表記)
(ウインナー2本抜き)
- 総カロリー:671kcal
- PFC = 19:27:54
(ウインナー2本入り)
- 総カロリー:799kcal
- PFC = 18:37:45
※細かな調味料が加わるため、実際の摂取カロリーは主な食材の総カロリー + 50~80kcalと考えられます。
洋食ではたんぱく質を増やしづらく、脂質が増えやすい点に注意すべきです。
朝食と相性のよい卵やヨーグルト、牛乳などは、肉や魚に比べてたんぱく質密度が低いため、思うように摂取量を増やせません。また、ウインナーやベーコンなどの加工肉はカロリーと脂質の大幅な増加に繋がるため、避けた方がよいでしょう。
和食と同様に、たんぱく質の比率を上げたい場合にはプロテインの力を借りるのもひとつの方法です。脂質を抑えつつたんぱく質を効率的に摂取する方法として、ぜひ検討してみてください。
昼食
- 海鮮丼
- 厚焼き玉子
- 豆腐とほうれん草の味噌汁
- きゅうりとワカメのしらす和え
【主な食材のカロリーと栄養素(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)出典[9]】
重量 (g) | カロリー (kcal) | たんぱく質 (g) | 脂質 (g) | 炭水化物 (g) | |
白米 | 200 | 312 | 5.0 | 0.6 | 74.2 |
鶏卵 | 100 | 142 | 12.2 | 10.2 | 0.4 |
魚介類 | 150 | (200) | (30) | (10) | (0.1) |
豆腐 | 50 | 28 | 2.7 | 1.8 | 1.0 |
野菜・海藻 | 100 | (50) | (4) | (0.5) | (15) |
(複数の食材が想定されるものは概算として()で表記)
- 総カロリー:732kcal
- PFC = 29:28:43
※細かな調味料が加わるため、実際の摂取カロリーは主な食材の総カロリー + 30~50kcalと考えられます。
朝食と同様、たんぱく質の摂取量を増やすため、高たんぱく質食品を含む献立を2品以上作ることを意識しましょう。
海鮮丼の上に乗せる魚介類にも工夫が必要です。サーモンやトロなど高脂質なものは控えめに、マグロの赤身やタイ、ホタテやイカ、タコなど低脂質なものを選びましょう。
とくにクロマグロは100gあたり約25gと、圧倒的なたんぱく質含有率を誇るため、たんぱく質の比率を上げたい場合の食事におすすめです。
夕食
- おにぎり100g2つ
- 牛ヒレステーキ
- ブロッコリーとタコのサラダ
- 根菜のスープ
【主な食材のカロリーと栄養素(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)出典[9]】
重量 (g) | カロリー (kcal) | たんぱく質 (g) | 脂質 (g) | 炭水化物 (g) | |
七分つき米 | 200 | 320 | 5.2 | 0.5 | 73.4 |
牛ヒレ肉 | 150 | 185 | 30.1 | 7.2 | 0.5 |
野菜 | 150 | (100) | (5) | (2) | (40) |
タコ | 40 | 28 | 6.4 | 0.4 | |
野菜 | 150 | (100) | (5) | (2) | (40) |
(複数の食材が想定されるものは概算として()で表記)
- 総カロリー:733kcal
- PFC = 28:15:57
※細かな調味料が加わるため、実際の摂取カロリーは主な食材の総カロリー + 50~80kcalと考えられます。
高たんぱく低脂質である牛ヒレ肉は、ステーキにすることで簡単においしく食べられます。脂質の少ない和風ソースを選び、おいしく食べましょう。
夕食の主食には血糖値を緩やかに上げられる玄米が適しています。玄米のパサつきが苦手という場合には、七分つきや五分つきのお米を選ぶ方法もあります。
白米として食べるよりもたんぱく質や食物繊維を多めに確保できるため、ぜひ試してみてください。
タコも魚介類の中では高たんぱく低脂質な食品であり、かつ疲労回復に役立つタウリンが豊富です。よく噛んで食べる食品でもあるため、満腹感を高めるためにも役立つでしょう。
まずは十分なたんぱく質の確保から始めよう!
増量期には摂取カロリーを増やして体を大きくしつつ、いかに体脂肪の増加を抑えるかがポイントとなります。たんぱく質量を十分に確保しつつ、高脂質食品の摂取を避けて食事全体のバランスを取れるよう意識しましょう。
増量期において最も摂取を意識したいのはやはりたんぱく質です。しかし高たんぱく質食品には脂質も多く含まれるため、食品選びにも注意しなければいけません。脂質の少ない牛ヒレ肉やホタテ、体脂肪増加のリスクが低いヨーグルトなどを積極的に活用しましょう。
毎食のPFCバランスを綿密に計算する必要はありません。まずはたんぱく質を十分量確保するため「1食中、高たんぱく質食品を含む献立を2品以上」を心掛けましょう。たんぱく質の摂取が難しい朝食や、手軽に素早く摂取したい補食などのタイミングには、プロテインを取り入れるのもよい方法です。
無理なく続けられる方法で食事を整え、効率的に体を大きくしましょう。
出典
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