監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
NSCA-CPT、調理師免許
大里 亮太(筋肉料理研究家Ryota)
激太り&うつで入院するも入院中にTeststerone氏の「筋トレが最強のソリューションである」に出会い、退院後に筋トレとお料理で体重-25kgに成功。精神的にも立ち直り、パーソナルトレーナー資格のNSCA-CPTを取得。元々所有していた調理師免許を生かし、筋肉料理研究家として活動するように。昔の自分のように心身ともに悩んでいる方のサポートになればと、日々簡単ダイエットレシピを発信している。
テストステロンとタンパク質の関係3つ
この項目ではエビデンスを基に、テストステロンとタンパク質が持つ関係を3つご紹介します。
テストステロンとタンパク質の2つが揃うことで筋肉が増える
テストステロンとタンパク質は、どちらも男らしい体を作り上げるには必須の物質。
特に、この記事をご覧の方の多くはタンパク質が筋肉の材料になることはご存知だと思います。
しかし、テストステロンと筋肥大の関係を詳しく説明できる方は、あまりいらっしゃらないのではないでしょうか。
というのも、じつはテストステロンが筋肥大にどんな影響を与えているのかは、現時点では完全に解明されていないんです。
そこで注目されているのが、インスリンに似た働きを持つインスリン様成長因子「IGF-1」という物質。
IGF-1は主に肝臓で分泌され、筋トレをすると筋肉内でも生成されます。
さらに、筋肉に働きかけてタンパク質の合成を促すことから、筋肥大に関与することが分かっています。
じつは、テストステロンはこのIGF-1のレベルを上昇させ、肝臓や筋肉内での生成も刺激すると言われているんです出典[1]。
つまり、筋肉を増やすためには、筋肥大反応を刺激するテストステロンと筋肉の材料になるタンパク質の両方が必要なのです。
タンパク質が不足するとテストステロンが不活性化する
タンパク質の不足は筋肉だけでなく、テストステロンにとってもマイナスの影響を与えてしまいます。
というもの、タンパク質の摂取量が少ないと、体内でSHBG(性ホルモン結合グロブリン)という物質が増加。
SHBGは主に肝臓で生成されて血中に分泌され、その名の通り性ホルモンと結合する働きを持っています。
じつは、このSHBGとテストステロンが結びつくとテストステロンは不活性化し、性欲向上や筋肥大などの働きを失ってしまうんです。
2000年にマサチューセッツ大学から発表された論文でも、高齢男性における低タンパク質食は、SHBGレベルの上昇とテストステロンの不活性化につながる可能性があると述べられています出典[2]。
しかし、タンパク質の摂取量を増やすことでインスリンの働きを活発化すれば、SHBGのレベルを低下させることが可能。
つまり、テストステロンの効果を最大限に発揮するためには、適度なタンパク質の摂取が必要なんです。
十分なタンパク質を摂ることでテストステロンの女性ホルモンへの変換を防げる
「肥満はテストステロンにとっても良くない」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
じつは、体脂肪にはアロマターゼというテストステロンを女性ホルモンに変換する酵素が多く含まれています。
そのため、体脂肪が増えるとテストステロンは減少してしまうんです。
実際に、2024年に北京ユニオン医科大学病院が5959名を対象に分析した論文では、男性においては体脂肪率が高いほどテストステロンのレベルが低いというデータがあります出典[3]。
そこで登場するのがタンパク質。
満腹感を高めてくれるタンパク質はダイエットにも有効なので、肥満の方のテストステロン増加につながる可能性があるんです。
2015年にミズーリ大学から発表された論文でも、1日体重1kgあたり1.2~1.6g、最低でも1食25~30gのタンパク質を含む食事は、肥満のリスクを改善させられると述べられています出典[4]。
つまり、タンパク質を摂って体脂肪を減らせば、テストステロンが女性ホルモンに変換されてしまうのを防ぐことができるんです。
テストステロンを高めるためのタンパク質の摂り方
この項目では、テストステロンを高めるための具体的なタンパク質の摂り方を、3つに分けて解説します。
摂取量は1日体重1kgあたり3.4gまで
ここまでの解説で「じゃあ、肉や魚、卵を食べまくれば良いんじゃ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
そう単純ではないところが、人間の体の不思議なところです。
じつは、2023年にウスター大学から発表された論文では、1日に体重1kgあたり3.4gの高タンパク食を食べるとテストステロンが減少してしまったというデータがあります出典[5]。
つまり、タンパク質は摂り過ぎてもテストステロンの減少につながってしまうんです。
また論文内では、1食事に含むタンパク質の摂取量を次のように定義しています。
非常に高い | 1日に体重1kgあたり3.4g以上 |
高い | 1日に体重1kgあたり1.9g~3.4g |
中程度 | 1日に体重1kgあたり1.25~1.9g |
低い | 1日に体重1kgあたり1.25g未満 |
テストステロンを高めるためのタンパク質の摂取量は、中程度の範囲に収まるくらいで十分。
摂り過ぎても、「高い」の3.4g以内に抑えておきましょう。
大豆タンパク質は摂りすぎない方が安全かも…
豆類や豆腐などの大豆加工食品は高タンパクでお腹持ちも良く、ダイエットにもおすすめの食材。
しかし、テストステロンを高めるという意味では、大豆タンパク質は控えめにしておいた方が良さそうです。
というのも、大豆などに含まれるイソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと同じような働きを持っています。
そのため、大豆タンパク質をたくさん摂取するとエストロゲンが増え、テストステロンの生成が抑制されてしまうことに。
たしかに、いくつかの論文では大豆タンパク質の摂取によるテストステロンの低下が否定されています出典[6]。
しかし、中にはイソフラボンを1日に100mg以上摂取するなどした場合には、テストステロンは減少することが確認されている研究も。
以上のことから、気になる方はイソフラボンの摂取量を1日100mg以内に留めておくのがおすすめです。
食品別のイソフラボン含有量は以下の表に示しているので、参考にしてみてください。
【食品中の100gあたりのイソフラボン含有量厚(生科学研究(生活安全総合研究事業)食品中の植物エストロゲンに関する調査研究(1998)より】
食品名 | 平均含有量(mg/100g) |
きな粉 | 266.2 |
大豆 | 140.4 |
納豆 | 73.5 |
味噌 | 49.7 |
油揚げ | 39.2 |
豆乳 | 24.8 |
豆腐 | 20.3 |
おから | 10.5 |
しょうゆ | 0.9 |
プロテインサプリメントに頼りすぎない
ここまでの解説で「量も調節しやすいし、プロテインだけ飲んでいればいいんじゃ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、テストステロンはさまざまな栄養素から作られるホルモン。
十分に分泌するためには材料となる脂質や、合成反応を促す亜鉛やビタミンDなどが必要です出典[7]。
さらに、マグネシウムなどのミネラルの補給は、テストステロンの利用効率を高めることにもつながります。
そのため、プロテインだけでタンパク質を摂取しようとすると材料となる栄養素が不足し、利用効率が低くなってしまう可能性も。
プロテインをはじめ、サプリメントはあくまでもサポート。
タンパク質はできるだけ肉や魚、卵などの食事から摂取するように心がけましょう。
適度なたんぱく質摂取でテストステロンを増やそう!
紹介した通り、テストステロンとタンパク質は深い関係性を持つ物質。
十分なタンパク質を摂取することで、よりテストステロンは力を発揮しやすくなります。
また、食べる食品の量や種類に注意を払うことで、さらに効率よく増やすことが可能。
ぜひ、記事で紹介したポイントやエビデンスを参考にして、テストステロンレベルを高めてください!
出典
LINEで専門家に無料相談
365日専門家が男性の気になる疑問解決します