山芋がテストステロンを増やす!?驚きの効果と食べ方を解説
2024年6月11日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

山芋ってどんな食べ物?

山芋は名前の通りイモ類の食品ですが、ジャガイモやサツマイモとは性質がやや異なります。

まずは山芋の特徴について解説しましょう。

生で食べられるイモ類

ジャガイモやサツマイモ、サトイモなどは、一般的に加熱して食べるものです。イモ類の主成分「でんぷん」は生のままでは消化が難しく、食べると消化不良を起こす可能性があるのです。

しかし「ヤマノイモ科」のイモは、消化酵素であるジアスターゼを豊富に含んでいますでんぷんがジアスターゼにより分解されるため生食が可能です。すりおろして「とろろ」にしたり、生のまま千切りにして、だし醬油で和えたりして食べる方法が一般的ですね。

「とろろ」の芋は広く「山芋」として認識されていますが、山芋はひとつの種類を指すものではありません。「ヤマノイモ科」に属するものすべてが山芋と呼ばれており、ながいも、じねんじょ、やまといもなど、様々な種類があります

【食品100gあたりの栄養素(日本標準食品成分表(八訂)増補2023年より)出典[1]

 

エネルギー(g)

単糖当量(g)

食物繊維(g)

ながいも

65

14.1

1.0

だいじょ

102

23.7

2.2

いちょういも

108

23.6

1.4

じねんじょ

118

25.7

2.0

やまといも

119

26.9

2.5

スーパーでよく売られている山芋は、水分が多くサラサラのなめらかな味わいが特徴的です。千切りや角切りにするとサクサクの食感を楽しめるでしょう。一方、山芋の特徴としても知られる強い粘り気は自然薯(じねんじょ)によく見られ、とろろへの活用に適しています。

山芋とひとくくりにされてはいますが、種類により性質がやや異なることを覚えておきましょう。

 

消化酵素や繊維、ビタミンが豊富

山芋に期待できる一般的な健康効果として、次のようなものがあります。

  • 食事の消化をサポートする
  • 血糖値の上昇を緩やかにする
  • 血中コレステロールのバランスを整える
  • 腸内環境を良好に保つ

山芋に含まれる消化酵素には食事全体の消化をサポートする効果が期待できます出典[2]。また粘り成分である糖たんぱく質が胃粘膜を保護するようにも働きます。つい食べ過ぎてしまいやすい飲み会の席などで山芋を食べておくと、胃もたれを防ぎやすくなるかもしれません。

また生食できる山芋にはレジスタントスターチが豊富に含まれています。レジスタントスターチは難消化性のでんぷんで、食物繊維に似た働きをすることで知られているのです。そのため山芋には食物繊維の数値以上の健康効果が期待できると考えられるでしょう。

とくに注目したいのが、食物繊維やレジスタントスターチの、血糖値の上昇を緩やかにする効果です。血糖値の急上昇は、体脂肪合成を促すホルモン「インスリン」の分泌を促します。血糖値を上げにくい生の山芋は体脂肪の合成を抑えやすいため、ダイエットのサポートとしても役立ちそうですね

血糖値を緩やかにする効果は、山芋から摂取できる水溶性食物繊維にも期待できます。加えて水溶性食物繊維には体内の余分なコレステロールの排出を促すため、血中脂質のバランスを整えるようにも働くでしょう

さらに食物繊維や難消化性でんぷんは腸内で善玉菌を増やすようにも働きます。腸活による便秘の改善や生活習慣病予防などの効果も得やすくなるでしょう。

ほかにも山芋は生食が可能なため、加熱、とくに茹で調理により失われやすいビタミンB群を効率的に摂れる点で非常に優れています。
 

山芋とテストステロンの関係5つ

山芋には消化やダイエットのサポート、生活習慣病予防、腸活など、さまざまな健康効果が期待できます。

加えて山芋は、男性ホルモンであるテストステロンとの関係の深い食べ物です。テストステロンは男性において、やる気や活力、性機能、筋肉の合成効率などを高める重要なホルモン。

40歳を境に急激に減少する性質があることでも知られています。食事に気を配ることで減少を食い止め、若々しく元気な体を維持したいものですよね。

ここからは山芋に期待できる効果のうち、テストステロンを増やすものや、減少の原因を取り除くように働くものについて解説しましょう。

DHEAを増強してテストステロンへの変換を促す

山芋に含まれる特徴的な成分として、ジオスゲニン配糖体があります。

ジオスゲニン配糖体は体内でジオスゲニンへと変換される物質です。ジオスゲニンはステロイド型サポニンとも呼ばれ、男性ホルモンの一種「デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)に非常に似たステロイド分子式を持つことで知られています出典[2]

DHEAは副腎で合成され、テストステロンやエストロゲンなどの性ホルモンに変換されています。DHEAの働きが強いほど、テストステロンの合成効率も高まると考えられるでしょう。

DHEAとの構造の類似性により、ジオスゲニンには生殖能力や性機能に関する効果を発揮する可能性が期待されているのです。

実際に2020年に立命館大学から発表された論文では、ヤマノイモ錠剤の摂取とトレーニングとの組み合わせにより、トレーニングのみ実施した場合と比較して、DHEAが2倍以上、遊離テストステロンが3倍以上高く観測されたとの報告が得られています出典[2]

DHEAの働きを強められるジオスゲニンを山芋から効率的に摂取できれば、テストステロンを増やしやすくなるかもしれません。

 

抗酸化物質によりテストステロンを保護する

山芋にはビタミンEやポリフェノールなど、さまざまな抗酸化物質が含まれています。先程のジオスゲニンも、強力な抗酸化物質として機能するもの。抗酸化物質には、体内で過剰に発生した活性酸素の働きを抑える効果が期待できるのです

過剰な活性酸素は酸化ストレスとして体のあらゆる細胞へダメージを与えてしまいます。抗酸化物質を山芋から積極的に摂り、酸化ストレスから体を守りましょう。

テストステロンと関係のある組織として、精巣と血管、血液などが挙げられます。精巣はとくに酸化ストレスに弱い場所テストステロンの主な合成場所が酸化ストレスにより傷付くと、合成できるテストステロンの量も減ってしまいます

また合成したテストステロンを全身へ運ぶためには、血流の維持も重要です。抗酸化物質により血中脂質の過酸化を防ぐことで、血液をサラサラに保ちやすくなります。さらに過酸化脂質による血管のダメージも抑えられるため、血管の柔軟性を保つ効果も期待できるでしょう。

2022年にエジプトのファイユーム大学から発表された論文では、高脂肪食とジオスゲニンの摂取を組み合わせることによる、マウスへの影響が調べられました。

6週間にわたる摂取の結果、ジオスゲニンの摂取では体重増加を5.6%、過酸化脂質の指標となるマロンジアルデヒド(MDA)を55.3%抑制でき、抗酸化能力を倍以上に保てたことが明らかになっています出典[3]

このように、山芋は私たちの抗酸化能力を高める作用が強いことがわかります。山芋を積極的に取り入れて、テストステロンの増強に役立てましょう。

 

血糖値スパイクを防いで酸化ストレスを減らす

白米や菓子パンのような高糖質食品を食べると血糖値が急激に上昇します。食後の血糖値スパイクは酸化ストレスとして体にダメージを与え、テストステロンを減らす可能性があるため注意が必要です。

2013年にアメリカでおこなわれた臨床試験では、19~74歳の男性74人のブドウ糖摂取(75g傾向ブドウ糖負荷試験)により、平均してテストステロンが約25%も低下したと報告されています出典[4]。血糖値スパイクによるテストステロンの低下リスクは、老若問わず非常に大きいことがわかるでしょう。

山芋は生での摂取によりでんぷんの分解率を抑えられるため、血糖値を急激に上げる単糖類が少ない傾向にあります。また食物繊維に加えレジスタントスターチの含有量も多いため、血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待できるでしょう。

さらにヤマイモに含まれるジオスゲニンをはじめとするステロイド型サポニンも、血糖値の低下に役立つ可能性が指摘されています。山芋と血糖値の関係を調べた複数の動物実験を分析した論文では、山芋の効果について次のようにまとめられています出典[6]

空腹時血糖

8件の研究すべてで減少

ヤマイモ成分の摂取量が多いほど大きく減少

ブドウ糖負荷試験

5件の研究すべてで減少

HbA1c

2件の研究でいずれも有意な低下

このように、山芋の水溶性食物繊維やレジスタントスターチ、ステロイド型サポニンは血糖値のコントロールに役立つことがわかります。白米やうどん、蕎麦などの高糖質食品を食べる際にはぜひ山芋を取り入れてみましょう。

 

肥満改善によりテストステロンの減少を防ぐ

肥満はテストステロンを減らしやすいため、肥満の防止はテストステロンの維持に非常に重要です。

また肥満の改善により、低下したテストステロンを増やすこともできます。2003年にフィンランドでおこなわれた臨床試験では、BMI35以上の肥満男性38名がダイエットで体重を約14%落とすと、遊離テストステロンが4倍以上に増加したと報告されているのです出典[6]

山芋が肥満改善に役立つ理由として、主に次の3点が挙げられます。

  • 血糖値の急上昇を抑えて体脂肪合成を抑える
  • 血中脂質のバランスを整えて肥満のリスクを下げる
  • 腸活により肥満と関連する腸内細菌の増殖を防ぐ

山芋と血糖値の関係について複数の動物実験を分析した論文では、山芋の摂取による体重の減少と同時に、総コレステロールの減少も確認されています出典[7]。ヒトの摂取でも同様に、肥満の防止効果や血中脂質の改善効果が期待できるかもしれません。

また、山芋による腸活効果も見逃せません。山芋に豊富な難消化性の多糖類が腸内で発酵を受けることで、腸内細菌のバランスが整いやすくなる可能性が指摘されています。

たとえば2022年に中国・カナダ食品栄養・健康共同研究室から発表された論文では、山芋による腸内細菌の変化が調べられました。加熱した山芋多糖類の発酵により、善玉菌として有名なビフィズス菌の増加や、ルミノコッカス属という細菌類の減少が確認されたのです出典[5]

肥満とルミノコッカス属、および総コレステロールとの間には相関関係があることが、メキシコの肥満児童を対象とした調査により明らかになりました出典[8]。山芋による腸活で肥満に関連する腸内細菌を減らすとともに血中コレステロールを減少させれば、より肥満を改善しやすくなるかもしれません。

合わせて読みたい:【テストステロン2.0】男性ホルモンを増やす最新戦略
 

テストステロンを高めるための山芋の食べ方

さまざまな効果が期待できる山芋を積極的に食事へ取り入れれば、テストステロンを増やしやすくなるかもしれません。

ここからはテストステロンを高めるために意識したい、山芋の食べ方のコツについて解説します。有効とされる成分を効率よく摂るためにも、ぜひ参考にしてください。

1日100g程度を目安に

山芋の食べ過ぎによる食事の偏りを防ぐため、山芋の摂取は1日100g程度を目安にしておきましょう

山芋自体は、肥満のリスクを高めない食品です。極端な食べ過ぎを起こさなければカロリーオーバーの心配もありません。また過剰摂取が懸念される栄養素の含有量が極めて多いというわけでもないため、100gまでとの目安を厳しく順守する必要もないでしょう

ただし、とろろは白米やうどん、蕎麦と非常に相性のよい食品です。山芋は高糖質食品の食べ過ぎを帳消しにできるような万能食材ではないため、白米やうどんの量を増やせば太ってしまうでしょう

山芋を食べていればいくら高糖質食品を食べてもよい、というわけでは決してありません。白米やうどんの量を調整するとともに、山芋も節度ある量での摂取を心掛けましょう。

 

食事の最初に食べて血糖値スパイク防止

山芋を食事に取り入れる際には、前菜の感覚で食事のはじめに食べることをおすすめします。

ダイエットや食後高血糖予防に役立つ食べ方として「ベジファースト」が知られています。食事はまず野菜料理から食べて、ご飯や麺類のような高糖質食品を後に回し、血糖値の急上昇を抑えようとする試みです。

実際に、2023年に京都女子大学から発表された論文では、食事の順番と食事時間を次のように変更することで、血糖値の上がり幅やインスリンの分泌量に違いが生じたと述べられています出典[9]

 

白米

野菜

(20分)

野菜

白米

(10分)

野菜

白米

(20分)

血糖値(平均)(mmol/L)

5.65

5.20

5.15

血糖値(最大)(mmol/L)

7.13

6.10

5.92

インスリン(平均)(μIU/mL)

47.9

37.7

37.9

インスリン(最大)(μIU/mL)

85.6

65.8

61.8

野菜、魚料理、白米の順に食べた方が、白米、魚料理、野菜の順に食べた場合よりも、血糖値の上昇幅を抑えやすいことがわかります。血糖値を上げにくい性質を持つ山芋を食事のはじめに取り入れて、テストステロンを守る効果を高めましょう。

また時間をかけて食べると、血糖値スパイクの予防効果がより出やすくなるようです。血糖値スパイク防止のためには早食いを避け、ゆっくりよく噛んで食べる意識も重要になるでしょう。

 

生での摂取がおすすめ

テストステロンを高める効果をより多く得たい場合には、生での摂取が最もおすすめです。

加熱により失われる栄養素は消化酵素やビタミンCなど複数ありますが、テストステロンとの関係で考える場合、レジスタントスターチの減少に注目すべきでしょう。

2011年に北海道の名寄市立大学で発表された論文では、生の状態では33.9%あったレジスタントスターチが、加熱後わずか6.9%にまで減少したと述べられています。一方、総炭水化物量は生の83.4%から加熱後には86.7%へとわずかながら増加が見られます出典[10]

レジスタントスターチの割合が大きく減少していることや、総炭水化物量が増えていることから、加熱した山芋の方が生よりも血糖値を上げやすいと考えられるでしょう。血糖値スパイクの防止効果を期待する場合、山芋は生での摂取を意識した方がよさそうです。

一方で、山芋の腸活効果は蒸し調理や茹で調理、電子レンジ調理などでも失われないとのデータも存在します出典[5]。生の山芋が苦手な場合には、蒸し調理での摂取を取り入れてもよいかもしれません。

 

発酵食品と組み合わせて腸活効果UP

山芋に含まれる食物繊維やレジスタントスターチには、ビフィズス菌のような善玉菌を増やす効果が確認されています。腸活効果をより高めるためには、山芋に加えて、善玉菌自体を増やす働きの強い食品を取り入れるとよいでしょう。

代表的なものはキムチや納豆、ヨーグルトなどの発酵食品です。とくにキムチにはビフィズス菌をはじめとしたさまざまな乳酸菌を摂取でき、山芋と味の面でも相性がよい食品です。

千切りまたは角切りにした山芋とキムチを和えれば、歯ごたえのあるおいしい副菜として楽しめます。山芋をよりおいしく食べるためにも、ぜひキムチを取り入れてみましょう。
 

山芋でテストステロンを増強しよう!

山芋にはジオスゲニン配糖体や抗酸化物質、食物繊維など、テストステロンの増強や減少防止に役立つさまざまな成分が含まれています。

DHEAをサポートしてテストステロンを増やす作用は、ジオスゲニン配糖体が豊富な山芋ならではのものです。加齢にともなうテストステロンの減少を食い止めたい方は、ぜひ積極的に取り入れましょう。

また山芋は、テストステロンを減らす原因を取り除く力に長けています。抗酸化作用や肥満を改善する作用、血糖値スパイクを防止する作用や腸活効果など、さまざまなアプローチでテストステロンを保護するように働きます。健康維持にも関わる効果が、そのままテストステロンを守ることにもつながっているのです。

山芋の健康効果を高めるためには生での摂取がおすすめです。食事のはじめに取り入れて、テストステロンの増強に役立てましょう。

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