監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
目次
ボディビルダーの食事はボディメイクの最適解!?
バランスの取れた筋肉を作ることを仕事にしているボディビルダーにとって、毎日の食事はトレーニングメニューと同じくらい重要。
コンテストで最大のパフォーマンスを発揮できるよう管理された食事は、ボディビルダーのみならず、ボディメイクを考える人にとっても大きな参考になるでしょう。
効率的なバルクアップのためには、増量期と減量期を交互に取り入れることが推奨されています。
増量期 | 減量期 | |
筋肉量 | 増えやすい | 増えにくい |
体脂肪 | 増えやすい | 減りやすい |
期間 | オフシーズン | コンテスト前 |
メリット | バルクアップの効率化 | 体の引き締め |
課題 | 体脂肪増加を抑える | 筋肉の減少を抑える |
以下ではボディビルダーが増量期、減量期において、どのように食事を調整すべきかについて解説しましょう。
コンテストに出場しない方であっても、増量期と減量期の両方を取り入れることで、より効率的なボディメイクにつながります。
体脂肪の増加を抑えつつ筋肉を増やすための食事が知りたい方は、ぜひ以下の内容を参考に、総摂取カロリーや食事回数などを見直してみましょう。
筋肉がつきづらい方必見!増量期の食事のポイント3選
増量期のバルクアップに必要なのはやはりカロリーです。トレーニングに耐えうるエネルギーと、筋肉の合成に使用されるたんぱく質の不足を起こさないよう、十分量の食事が求められます。
バルクアップの方法は主に以下の2つに分けられます。
- ダーティバルクアップ:必要以上のカロリーアップで効率的に体全体を大きく
- リーンバルクアップ:カロリーアップは必要な分だけに留めて体脂肪の増加をできるだけ防ぐ
ダーティバルクアップでは厳密な食事管理を行わず「とにかくたくさん食べる」ことが優先されます。余剰カロリーが多くなるため、短期間でより体全体を大きくできるでしょう。
しかし体脂肪も増えやすくなるため、減量期の難易度が上がるというデメリットもあります。健康的なボディメイクを目指す場合には、カロリーを計算して余分な脂肪をつけないように取り組むリーンバルクアップがおすすめです。
以下では摂取カロリーと体重を増やしつつ、体脂肪合成を極力抑えられる食事内容について解説しましょう。
ポイント1.カロリーバランス
体重を増やすためには当然ながら、消費エネルギーよりも摂取エネルギーが上回る食事を続ける必要があります。
ボディビルダーがオフシーズンの増量期に摂取すべき量として「やや高カロリー」を意識しましょう。増量期だからといっていくら食べてもよいというわけでは決してありません。
オフシーズンでは消費カロリー+10~20%の食事を続け、1週間あたり0.25~0.5kgのペースで体重を増やすことが推奨されています出典[1]。
ただしすでに上級者のボディビルダーにとっては、1週間あたり0.5kg、1か月あたり2kgの体重増加は多すぎる可能性があります。
不必要な体脂肪の増加を避けるため、ボディメイク歴が長い方は体重増加を小さく抑えるべきです。1週間あたり0.25kg、1か月あたり1kg程度の体重増加を目安としてみましょう。
次の減量期における体脂肪カットにかかる負担を少なくするためにも、体重測定は毎日欠かさず続けましょう。1週間あたりの体重増加が適正であるかチェックし、その都度カロリーの調整を入れることをおすすめします。
ポイント2.PFCバランス
ボディメイクにおいては、エネルギー産生栄養素であるたんぱく質(P)、脂質(F)、炭水化物(C)のバランスを整えて、適切にエネルギー管理を行うことが重要です。
増量期における栄養素配分として、PFC = 25~30:20~30:40~55が推奨されています出典[1]。
それぞれの栄養素についてより詳細に確認してみましょう。
たんぱく質(P)
筋肉の合成を促すため、たんぱく質の摂取は欠かせません。ボディビルダーに求められるたんぱく質量は1日あたり1.6g-2.2/kg(体重)とされています出典[1]。
なお、食事量が増え過ぎて必要以上の体重増加を起こしやすい方は、より多くのたんぱく質の摂取が有効である場合があります。
2015年にアメリカから発表された論文においては、3.4g/kgのたんぱく質を摂取した場合、総カロリー摂取量も増加したものの、体脂肪はより大きく減少したと報告されています出典[2]。
この研究を踏まえると、たんぱく質摂取量は多ければ多いほどよいとも考えられるかもしれません。
しかしそう単純な効率化が図れないのが食事の難しいところです。たんぱく質食品は満腹感を高めやすい性質が強いため、摂りすぎると必要なカロリー摂取が難しくなる可能性があるのです。
バルクアップのためにはカロリーを増やすことが欠かせません。そのためたんぱく質の摂取は、食事量の適切な増加に影響が出ない範囲で行うべきです。
基本として1.6~2.2g/kgの範囲で調節し、食欲のコントロールが難しい場合にはもう少し増やして全体量を調節してみましょう。
脂質(F)
脂質はエネルギー生成効率のよい栄養素。またテストステロンなど運動機能や筋肉の合成効率の上昇につながるホルモンの生成にも役立つため、適量の摂取が重要です。
増量期においては、総摂取カロリーの20~30%を脂質から摂取することが推奨されています。この量は体重換算すると、一般に0.5~1.5g/kgの範囲に収まります出典[1]。
全体カロリーに対する脂質の割合が増加すると、テストステロンの合成効率が高まる可能性があります。そのため高脂質低炭水化物の「ケトジェニック」がバルクアップにも有効ではと考える人もいるかもしれません。
しかし2018年にスペインで行われた研究では、高脂質低炭水化物の「ケトジェニック」とトレーニングを組み合わせても、筋肉量が増加する有意な効果は確認できなかったと報告されています出典[3]。
高脂質低炭水化物の食事は体重のコントロールに有効であるものの、筋肉量の増加には結びつきにくいようです。増量期においても脂質の増やしすぎは避けつつ、エネルギー効率を上げるための一定量の摂取に留めておきましょう。
炭水化物(C)
全体のカロリーをたんぱく質と脂質に割り当てた上で、残りを炭水化物から摂取する必要があります。一般には3~5g/kg(体重)以上の摂取が合理的と考えられています出典[1]。
総摂取カロリーに対する炭水化物の比率を70%まで押し上げても、炭水化物50%の食事との間に運動パフォーマンスの差は生じなかったことが、1997年のアメリカの研究において明らかになっています出典[4]。
一方、2013年のブラジルの研究では、炭水化物の比率を25%まで落とすと、運動パフォーマンスは著しく低下したと報告されており出典[5]、極端な低炭水化物食は危険であると考えられます。
食欲のコントロールのためたんぱく質を増やすことや、テストステロンなどのホルモン合成のため一定量の脂質を摂ることはもちろん重要です。
しかし全体のカロリーを考える際、たんぱく質や脂質が多くなりすぎて炭水化物の比重が減りすぎないように注意する必要があるでしょう。
ポイント3.食事回数
増量期に無理なく摂取カロリーを増やすためには、朝昼夕の3食に加えて、適切なタイミングで補食を取り入れるとよいでしょう。
2022年にアメリカで発表された論文においては、1日6食以上食べるグループは、1日3食で済ませていたグループと比較して、総エネルギー摂取量が76~330kcalほど増加したと報告されています出典[6]。
思うように食事量を増やせないと悩んでいる場合には、食事回数を増やすことを心掛けてみましょう。
摂取カロリーを増やすことに加えて、筋肉の分解を防ぎ適切に筋肉を増やすためにも、食事回数の調整は重要。
食事のタイミングや内容については、除脂肪体重の増加に有効とされる以下の内容が参考になるでしょう出典[1]。
- トレーニング前後に補食を摂る
- 就寝中の筋分解を防ぐため、たんぱく質食品を就寝前に摂る
- どの食事や補食においてもたんぱく質を摂取できるよう分配する
トレーニング前後や就寝前の補食を適切に取り入れて、バルクアップの効率を高めましょう。
誰でもバリバリに絞れる?減量期の食事のポイント3選
コンテストの時期が近付くと、増量期で大きくした体を引き締めて、体脂肪を落とす減量期に入ります。
当然ながら、増量期と同じような食事を続けると体脂肪は落ちないため、摂取カロリーやPFCバランスの調整が必要です。
コンテストに参加しない方でも、増量期の間に減量期を挟むことで、より引き締まったプロポーションに近付けます。
筋肉量を維持しながら効率よく体脂肪を落とすための食事法として、ぜひ参考にしてみましょう。
ポイント1.カロリーバランス
体脂肪を落として体を引き締めるため、カロリーの調整は欠かせませんが、極端な制限はおすすめできません。
消費カロリーから40%カットした食事を30日間続けた場合、減少体重3.3kgのうち除脂肪体重が占める割合は58%にもなるというデータがあります出典[7]。
一方、25%カットした制限食を3か月続けたところ、6kgの体重減少のうち除脂肪体重の割合は33%に抑えられています出典[8]。
このようにエネルギー制限を強めて短期間で減量しようとすると、除脂肪体重の減少が起きやすくなります。コンテストまでの時間にある程度の余裕を持たせた上で、比較的緩やかなカロリー制限を行うべきでしょう。
また、脂肪量の減少やテストステロンレベルの維持においても、比較的緩やかな長期間の減量が有効であることが示されています。
2010年、フィンランドの研究結果では、アスリートが1kg/週の減量を4週間行った場合、血清テストステロンが30%も減少し、ベンチブレスの強度も5%減少したと報告されています。
一方、0.5kg/週の減量ではテストステロンの減少は3%に留まっていました出典[9]。急激な減量はテストステロンを下げ、筋肉の維持を難しくするため、パフォーマンスの低下を引き起こしやすいと考えられるでしょう。
また、2011年にノルフエーで行われた研究においては、体重の1.4%/週の減少を続けたアスリートの体脂肪減少率は21%であったのに対し、体重の0.7%/週の減少を続けたアスリートでは31%と、より多くの体脂肪減少が見られたと報告されています出典[10]。
以上を総合すると、効率的な体脂肪減少と筋肉量・テストステロン量維持のため、週あたりの体重減少量は体重の0.5~1%程度に抑えるべきと言えるでしょう。
除脂肪体重を維持しやすいカロリー制限の目安として、消費カロリーから500~700kcalほど少なくなるような設定が推奨されています出典[11]。
緩やかな減少ペースでコンテストまでに理想の体重に届くよう、2~4か月前から減量期に切り替えられるようスケジュールを組んでおくのがおすすめです。
ポイント2.PFCバランス
各栄養素の性質や必要性の考え方は増量期と同じ。エネルギー効率の高い脂質を全体の15~20%まで減らすことで、ストレスなくカロリーカットが行えるでしょう。
減量期においても、たんぱく質と炭水化物の確保は重要です。とくに十分なたんぱく質の施摂取は、除脂肪体重の維持に役立つでしょう。
イギリスで2010年に発表された論文では、1.6g/kgのたんぱく質摂取よりも2.3g/kgの方が、除脂肪体重の減少を抑えられたと報告されています出典[12]。
しかし減量期には増量期よりも、たんぱく質の摂りすぎに注意する必要があります。総摂取カロリーに対するたんぱく質の割合が、28%から32~33%に増加したアスリートにおいては、最終的に除脂肪体重が1kg減少したことが明らかになっています出典[13]。
たんぱく質の摂取量を増やしすぎたことで、炭水化物や脂質をトレーニングに支障が出るレベルまで落としたことが原因と考えられているようです。
減量期においては、適切な炭水化物摂取量を維持するため、たんぱく質は2.3~3.1g/kgの範囲で摂取することが推奨されています出典[13]。
もちろんこの範囲内の増加であっても、炭水化物や脂質の量が減りすぎるようであれば、除脂肪体重の維持やトレーニングのパフォーマンスに悪影響が生じます。たんぱく質の増加は、炭水化物や脂質を必要量接種できるレベルに留めておくべきでしょう。
PFCバランスとしては、25~30:15~20:50~60が目安となります。この範囲を大きく超えないよう全体を調節してみましょう。
ポイント3.食事回数
減量期においても、筋肉の分解を防ぐため、各食事においてたんぱく質は均等に分配することをおすすめします。
朝昼夕の食事に加え、トレーニングの前後や寝る前など、増量期と同じタイミングでたんぱく質食品を取り入れるとより除脂肪体重の維持効果が期待できるでしょう。
カロリー制限のため、1日2回食や1回食にするといった極端な欠食はおすすめできません。また除脂肪体重の維持のためとして食事頻度を増やしすぎると、今度はカロリーコントロールが難しくなるでしょう。
そのため減量期においては、中程度の頻度として3~6回の食事を摂れるよう、タイミングや1回量を調節することをおすすめします。
食事を1日3回で済ませる場合にはたんぱく質の不足が起こらないよう、6回摂取する場合にはカロリーを摂りすぎないよう注意しましょう。
ボディメイクにおすすめ!積極的に摂りたい食品6選
必要なカロリーやPFCバランスは異なりますが、ボディビルダーが食べるべき食品は増量期においても減量期においてもほぼ同じです。健康的にボディメイクを行うにおいて役立つ食品について、5つほど紹介しましょう。
1.高たんぱく低脂質な白身魚や鶏むね肉
肉や魚などの動物性食品は、筋肉の合成に欠かせない必須アミノ酸のバランスが良好です。筋肉量を増やしつつ体脂肪合成を抑えるための第一選択肢となるでしょう。
ただしバラ肉やサーロインといった、脂身を多く含む食品は、脂質やカロリーの摂りすぎを招くため注意が必要です。とくに減量期においては、動物性食品由来の脂質を減らしてカロリーカットを行うべきです。
高たんぱく低脂質である肉や魚として、次の種類や部位が挙げられます。
- 牛ヒレ肉、豚ヒレ肉
- 鶏むね肉、鶏もも肉(いずれも皮なし)
- タラやスズキなどの白身魚
牛ヒレ肉はステーキに、豚ヒレ肉は煮込み料理などに使用するとおいしく食べられます。
鶏むね肉のパサつきが気になる場合には、片栗粉をまぶしたりあらかじめ調味液に漬け込んだりすると食べやすくなるでしょう。
2.ロイシンが豊富な牛乳やヨーグルト
必須アミノ酸のうち、とくにロイシンは必須アミノ酸のなかでも筋たんぱく質同化作用が強いことで知られています。十分な量のロイシンを摂取するとたんぱく質合成が促進されるため、より効率的に筋肉量を増やせるでしょう。
牛乳にはある程度の脂質が含まれていますが、体脂肪増加のリスクが高い飲料ではありません。
2011年にアメリカで行われた研究においては、4年間の食生活と体重推移の観察の結果、牛乳の摂取量と体重の増加量には相関が見られなかったと報告されています出典[14]。
ただしチーズやバターなど、乳脂肪分の割合が高い食品を多量に摂取することはおすすめできません。
ロイシンを含む必須アミノ酸の供給源として活用する場合には、牛乳やヨーグルトを選ぶようにしましょう。
3.不飽和脂肪酸を摂取できるアボカドや大豆、ナッツ類
脂質の中でも、体内で合成できない必須脂肪酸である不飽和脂肪酸は、体調管理のため意識して摂取するとよいでしょう。
リノール酸やリノレン酸は大豆やアボカド、ナッツ類などから摂取できます。大豆にはたんぱく質も豊富であり、必須アミノ酸のバランスも良好なため筋たんぱく質の合成にも役立ちます。
また不飽和脂肪酸は、肉類や乳製品に多い飽和脂肪酸とは異なり、体内でエネルギーに使われやすいという特徴があります。脂肪の合成に回されない脂質を優先的に摂ることで、体脂肪の増加を防ぎましょう。
4.白米やうどんなどの高糖質食品
血糖値を急激に上げる食品は、筋肉や脂肪組織にエネルギーを蓄えるよう働くホルモン「インスリン」の分泌量を増加させます。食べ過ぎると体脂肪合成のリスクが高まりますが、トレーニング前のエネルギー補給には最適です。
速やかに筋グリコーゲンを蓄えるための食事として活用できるため、パフォーマンス向上を目的として、積極的に取り入れてみましょう。
トレーニング前の食事においては、糖質量が十分であることに加え、脂質のような消化や吸収を遅くする栄養素が少ないことも重要です。
そのためうどんを食べる際には天ぷらや肉類などのトッピングを加えない素うどんがおすすめ。白米を食べる場合にも天むすのような具材を避けて、塩むすびや昆布など、低脂質なものを選ぶとよいでしょう。
5.玄米やオートミールなど未精製の穀類
トレーニング前には速やかに血糖値を上げられる食品が重宝します。しかし普段の食事、とくに減量期においては、体脂肪の合成を避けるべく血糖値の上昇を抑える必要があるでしょう。
減量期の主食として活用できるのが、玄米やオートミールのような未精製の穀物。白米や精製された小麦粉よりも、食物繊維やたんぱく質が豊富であるため、消化や吸収が緩やかになりやすいという特徴があります。
また食物繊維の多い食事は満足感を高めるためにも有効です。減量期の食べ過ぎを防ぐためにも、玄米やオートミールは活躍するでしょう。
一方、増量期の主食として未精製の穀物を取り入れすぎるのは危険です。豊富な食物繊維による高い満足感が、食事量を減らしてしまう可能性があるためです。
必要とされるカロリーを無理なく摂取できるよう、食物繊維の摂りすぎには気を付けましょう。
6.食物繊維や微量栄養素などが豊富な野菜類
野菜類はビタミンやミネラル、食物繊維の摂取源として活用できます。増量期にも減量期にも微量栄養素の摂取は欠かせません。
とくに減量期においては、カロリー制限によってビタミンやミネラルの不足が起こりやすいため出典[15]、野菜の摂取量を減らさないよう注意が必要です。
また、ボディメイクにおいてはたんぱく質の摂取を増やしますが、たんぱく質は腸内にて悪玉菌を増やすように働いてしまいます。
悪玉菌と拮抗する善玉菌を増やすには、善玉菌のエサとして機能する食物繊維の摂取が欠かせません。善玉菌を増やして腸内環境が整えば、ミネラルの吸収効率、ならびに睡眠の質を高めるホルモンの合成効率を高める効果も期待できるでしょう。
さらに、個々の野菜に含まれるポリフェノール類などの機能性成分の働きも見逃せません。フラボノイドやカロテノイドには強い抗酸化作用を持つものが多く存在します。
トレーニングで発生した活性酸素の働きを抑えるように働くため、疲労回復や筋肉痛の軽減にも役立つでしょう。
これだけは避けよう!減量期・増量期ともに控えたい食品3選
ボディビルダーが控えるべき食品も、減量期・増量期ともに共通しています。以下に紹介する3種類に注意し、パフォーマンスや筋肉の合成効率を落とさないようにしましょう。
なおこの章で紹介する食品以外にも「多量の脂質と糖質」で構成されたものには警戒すべきです。カロリー過多を招きやすく、ボディメイクの妨げとなることを覚えておきましょう。
コンビニやスーパーで食品を購入する際にはパッケージの成分表で、脂質と炭水化物の量、ならびにカロリーをチェックする癖をつけることをおすすめします。
1.超加工食品
菓子パン、スナック菓子、冷凍ピザ、カップ麺など、そのまま、あるいはごく簡単な調理のみで食べられる食品を超加工食品と呼びます。この並びだけでも、超加工食品が高脂質かつ高糖質であることに気付くのではないでしょうか。
超加工食品は多くが高カロリーであり、ビタミンやミネラルはほとんど含まれていません。また高塩分のものも多く、食欲を増す効果が高いため食べ過ぎてしまいやすい食品でもあります。
朝食の菓子パンや夜食のカップラーメンは、体脂肪合成のリスクを高める非常に危険な食事です。摂取が習慣化している方はこれを機に超加工食品断ちに挑戦してみましょう。
2.揚げ物
揚げ物は言わずと知れた高脂質食品。衣の分厚い天ぷらやとんかつは、とくにカロリーが高くなりやすいため注意が必要です。
揚げ物に使用される油は植物性であり不飽和脂肪酸ですが、加熱により酸化を受け、過酸化脂質を生成しています。過酸化脂質による酸化ストレスの影響は筋肉にも及びます。
筋疲労や筋肉痛からの回復が遅れ、パフォーマンスを下げることになりかねないため、酸化した油の摂取は控えるべきです。
一般の食生活においても、揚げ物は週に2~3回までが適切ですが、ボディメイクの際にはさらに頻度を落として週1回以下に留めた方がよいでしょう。
なお、揚げ物は揚げ時間が長くなるほど、また揚げてから時間が経過するほど過酸化脂質が増えやすい性質があります出典[16]。
そのため二度揚げされたファーストフード店のフライ商品や、スーパーに長時間並べられた天ぷらやフライの惣菜は、とくに過酸化脂質が多いと考えられます。
揚げ物を食べる機会がある場合には、二度揚げされていない揚げたてのものを選び、過酸化脂質によるダメージを最小限に抑えましょう。
3.アルコール飲料
アルコールはボディメイクと非常に相性の悪い成分です。特に夜間、寝る前のアルコール飲料が習慣になっている場合には要注意です。
摂取頻度が高い場合、次のようなリスクが考えられるでしょう。
- ビールや日本酒の糖質が体脂肪合成を促進する
- アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドにより眠りが浅くなる
- アルコールの利尿作用により深夜や早朝の覚醒が起こりやすくなる
- ストレスホルモン「コルチゾール」の分泌を増やして筋肉の合成を阻害する
- 過剰摂取によりテストステロン量が減少する
コルチゾールの増加やテストステロンの減少、睡眠の質の低下などは、いずれも筋肉の合成効率を大きく落とす危険な要素です。
ボディメイク中は思い切って断酒することで、筋肉の分解を防ぐ効果が期待できるでしょう。
食事にプラス!おすすめのサプリメント6種
ボディメイクの基本はもちろん毎日の食事です。しかし食事からの摂取が困難である、もしくは必要量が膨大である成分においては、サプリメントの利用が有効である場合もあります。
ボディメイクやトレーニングの効率を上げるために効果的な成分の中で、サプリメントの活用が適切と判断できるものを6種類紹介します。不足を補うため、より手軽に摂取するために、必要に応じて取り入れてみましょう。
1.プロテイン
プロテインはたんぱく質を摂取する手軽な手段としておすすめ。トレーニング直後や寝る前、時間がなく忙しい朝のタイミングなどには、粉状や液状のプロテインが活躍するでしょう。
1日の中でとくにたんぱく質が不足しやすいタイミングは、やはり朝です。睡眠中は食事を摂れないため空腹の状態が続いています。そのため朝にたんぱく質を補給して、筋分解を防ぐ必要があるのです。
にもかかわらず、調理の時間が取れないことやそもそも十分な食欲が出ないことなどから、朝食の摂取量は少なくなりがちです。たんぱく質の必要性を理解してはいるものの、パンとコーヒーしか摂れていないという方も少なくないのではないでしょうか。
プロテインであれば、お好みの飲み物に混ぜるだけで手軽に摂取できます。たんぱく質の強化手段として、ぜひ活用してみましょう。
2.マルチビタミン・ミネラル
ボディビルダーの減量期においては、ビタミンやミネラルの不足が起こりやすいため注意が必要。ビタミン類ではビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ミネラルではカルシウムや亜鉛、鉄分などが不足しやすいことが確認されています出典[1]。
ビタミンやミネラルなどの微量栄養素は、体の調子を整えるために必要不可欠です。増量期にはエネルギー代謝がより活発に行われるため、エネルギー代謝に関わるビタミンB群の要求量が増加しています。
微量栄養素の補給手段として、マルチビタミンやマルチミネラルの利用を検討してみましょう。
3.カフェイン
カフェインはトレーニーやボディビルダーの間で非常に人気の高い食品です。トレーニングの1時間ほど前に摂取することで、次のような効果が期待できるでしょう。
- 疲労軽減効果
- 集中力向上効果
- 脂肪燃焼効果
カフェインの補給手段としては、コーヒーかサプリメントで行うべきでしょう。トレーニング前に5~6mg/kg(体重) のカフェインを摂取すると、運動パフォーマンスの向上に効果的であると考えられています出典[1]。
体重60kgの方であれば、300~360mgのカフェイン摂取が理想的と考えられます。抽出濃度にもよりますが、この量をコーヒーで摂るためにはマグカップ3杯ほど(500~600mL)が必要であり、運動前の摂取には多すぎて難しいと考える方も多いでしょう。
コーヒー由来のカフェインとサプリメントの無水カフェインで効果に差はありません。より手軽なカフェイン補給にはサプリメントの活用をおすすめします。なお、無水カフェインにも食品由来のカフェインと同様に利尿作用があるため、トレーニング中の水分補給は十分に行いましょう。
4.クレアチン
クレアチンはアミノ酸の一種。体内で合成することができ、食事からは肉や魚などが主な供給源となります。
クレアチンには、エネルギーとなるATPの産生効率を上げる効果があります。効率的にエネルギー供給が行われることで、身体能力の向上、徐脂肪体重の増加、および筋肉の肥大にもつながります。
クレアチンは肥大をもたらす筋肉を選びません。瞬間的なパワーを発揮するための速筋と、持続的な運動の際に活躍する遅筋、どちらにも効果を発揮するため出典[17]、体全体を大きくしたいボディビルダーにはうってつけの成分です。
また、クレアチンには活性酸素の働きを抑える抗酸化効果も確認されています。筋肉の疲労を防止し、回復を促す効果が期待できるでしょう。
5.テストステロンブースター
テストステロンには活力や意欲を増し、筋肉の合成効率を高める効果が確認されています。ボディビルダーにおいてはテストステロンの維持が非常に重要となるでしょう。
テストステロン量を増やすには、筋力トレーニングや良質な睡眠、十分なたんぱく質の摂取が欠かせません。しかしテストステロンは加齢により減少するホルモンでもあるため、食事や生活習慣への意識では量の維持が追い付かない場合もあるでしょう。
テストステロンブースターは、体内のテストステロン産生を増やすように働くサプリメントです。筋力トレーニングや食事管理と並行して活用すれば、より高い効果が得られるでしょう。
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6.NOブースター
一酸化窒素(NO)は体内の血管内皮細胞に作用し、血管を拡張させるように働きます。トレーニング中に酸素やエネルギーを速やかに筋肉へ送り込むため、良好な血流の確保は欠かせません。
NOブースターの活用により、パフォーマンスを高めたり、疲労回復を促進したりする効果が期待できるでしょう。
またNOは抗酸化作用を持つ物質でもあります。激しいトレーニングによって過剰に生じた活性酸素の働きを抑える効果が期待できるため、筋肉痛の軽減にも役立つでしょう。
なお、体内でNOを産生する経路は一つではありません。そのためNOブースターにもどの経路に作用するかにより、アルギニン回路系やフラボノイド系など、複数の種類が存在します。血管拡張に特化したものや、NO以外の抗酸化物質を摂取できるものなど、サプリメントの配合もさまざまです。
パフォーマンスの増大や疲労軽減など、目的とする作用によってNOブースターを使い分ければ、より高い効果が得られるでしょう。
まとめ:増量も減量も焦らずにじわじわと行おう!
ボディビルダーの食事においては、増量期・減量期に合わせたカロリーの調整や栄養素配分が重要です。
増量期においては体脂肪の合成を防ぐため、1週間あたり0.25~0.5kgのペースで体重を増やしていきましょう。体を大きくする時期だからといって食べ過ぎは禁物です。食事回数を増やしたり、十分な量のたんぱく質を摂取したりすることで筋肉の合成効率を高められるでしょう。
減量期においても急激なカロリー制限はおすすめできません。1週間あたり体重の0.5~1%の減量ペースを心掛けましょう。コンテストまでの期間として2~4か月ほどの余裕を持たせて取り組むと、筋肉量を維持しながらより効率よく体脂肪を落とせます。
栄養補充やパフォーマンス向上のため、サプリメントを活用するのもよい方法です。ぜひ本記事の減量ペースやカロリー配分、PFCバランスを参考にボディメイクへ取り組んでみましょう。
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